• 2025年1月21日

肩の痛みの場所

肩の痛み、悩んでいませんか? 日常の何気ない動作で突き刺すような痛み、夜も眠れないほどの不快感…。実は、その痛み、放置すると深刻な事態を招く可能性があります。肩の痛みは、整形外科で3番目に多い症状。放置していると日常生活に支障をきたすだけでなく、手術が必要になるケースも。1999年の調査では、肩の痛みで病院を受診した人は全国で約150万人。これは10年前の約4倍にものぼる増加です。現代社会のデスクワーク中心の生活やスマホの普及も、肩への負担を増大させている要因と言えるでしょう。この記事では、肩の痛みの原因を場所別に特定し、考えられる病気、そして効果的な治療法と自宅でできるケアまで、小学生でも理解できるよう具体的な例を交えて解説します。肩の痛みを根本から改善し、快適な生活を取り戻すため、ぜひこの記事をご活用ください。

肩の痛みの場所|症状から考えられる病気3選

肩の痛みは、日常生活でとてもつらいものです。肩の痛む場所によって、原因となる病気が異なる場合もあります。この記事では、肩の痛む場所別に考えられる病気について、小学生でもわかるように具体例を交えて解説します。肩の痛みの場所を特定し、適切な治療への第一歩として、ぜひご活用ください。

肩甲骨付近の痛み

肩甲骨付近の痛みは、肩甲骨を覆う僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋などの筋肉の凝りや炎症が原因であることが多いです。肩甲骨は背中の上部に位置し、腕の動きと連動して様々な方向へ動くため、これらの筋肉に負担がかかりやすい構造となっています。

例えば、長時間のパソコン作業やスマホの使いすぎで姿勢が悪くなると、肩甲骨が外側に広がり、周りの筋肉が常に引っ張られた状態になります。これは、まるでゴムバンドを伸ばしっぱなしにしているようなもので、筋肉が緊張し、痛みを引き起こします。私は、小学生の患者さんには「肩甲骨が背中で迷子になっている状態だよ」と説明しています。

また、重いランドセルを背負ったり、塾のテキストをたくさん持ち運んだりする小学生も、肩甲骨周りの筋肉に負担がかかり、痛みを感じることがあります。普段運動をしていない子が、急に激しい運動をした場合も同様です。筋肉や靭帯を痛めてしまう可能性があります。

このような肩甲骨付近の痛みは、肩こり、肩甲骨周囲炎、筋筋膜性疼痛症候群といった病気が考えられます。

肩甲骨付近の痛みを和らげるには、温湿布やストレッチ、マッサージなどが効果的です。お風呂で温めた後、肩甲骨を意識的に動かす体操をするのも良いでしょう。また、正しい姿勢を保つことも重要です。私は患者さんによく「背中に羽が生えているイメージで、肩甲骨を寄せて胸を張るんだよ」とアドバイスしています。痛みが強い場合や長引く場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

肩峰の痛み

肩峰とは、肩の先端にある骨の出っ張りのことです。肩峰の痛みは、肩峰と腕の骨(上腕骨)の間にある腱板という組織が、肩峰と擦れて炎症を起こす「肩峰下インピンジメント症候群」が原因であることが多いです。腕を上げるときに痛みが出やすく、特に90度くらいまで上げたときに痛みが強くなるのが特徴です。

肩峰下インピンジメント症候群は、野球の投球動作やバレーボールのアタック、水泳のクロールなど、腕を繰り返し上げる動作をするスポーツで起こりやすいです。成長期の小学生が、急に激しい運動を始めると発症するリスクが高まります。大人の場合は、加齢とともに肩峰と腱板の間のスペースが狭くなるため、中高年の方にも多くみられます。

治療法としては、安静、消炎鎮痛剤の服用、リハビリテーションなどがあります。症状が改善しない場合は、手術が必要になることもあります。

上腕骨の痛み

上腕骨は、肩から肘まで伸びている骨です。上腕骨の痛みは、肩関節の炎症である「五十肩(肩関節周囲炎)」が原因であることが多いです。五十肩は、肩関節の周りの組織が炎症を起こし、肩の痛みや動きの制限を引き起こす病気です。夜間に痛みが強くなるのも特徴です。

五十肩は40~50代に多く発症しますが、他の年齢層でも発症することがあります。原因ははっきりとは分かっていませんが、加齢や肩の使いすぎ、ケガなどが関係していると考えられています。小学生ではまれですが、スポーツによる肩への負担や外傷が原因で発症することもあります。

治療法としては、痛み止めや消炎鎮痛剤の服用、リハビリテーション、注射などがあります。症状が改善しない場合は、手術が必要になることもあります。

肩関節の痛み

肩関節の痛みは、様々な原因で起こります。肩関節周囲炎、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、関節リウマチ、肩関節脱臼など、多様な病気が考えられます。肩関節の痛みは整形外科で3番目に多い症状です。多くの場合、腱板断裂やインピンジメント症候群が原因となります。インピンジメント症候群の患者は、腕を上げると軟部組織の痛みを伴う症状を呈します。これは肩峰下腔の構造的な狭窄によるものです。

これらの病気は、それぞれ症状や治療法が異なります。肩の痛みがある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

肩の痛みの原因|日常生活で起こる4つの原因と対処法

肩の痛みは、本当に辛いですよね。肩が痛むと、腕を動かすのも億劫になり、夜も眠れないことがあります。肩の痛みの原因は、日常生活の中に潜んでいることが多く、それらの原因を知ることで、適切な対処法が見えてきます。今回は、肩の痛みを引き起こす日常生活での原因を4つご紹介します。

デスクワーク

長時間のパソコン作業や書き物など、デスクワーク中心の生活は、肩の痛みの大きな原因となります。同じ姿勢を続けることで、肩や首の筋肉が緊張し、血行が悪くなることで肩こりが発生します。また、パソコンの画面を覗き込むような姿勢は、首が前に出てしまい、肩や首の筋肉にさらに負担をかけます。

私の患者さんにも、長時間のパソコン作業で肩の痛みを訴える方が多くいらっしゃいます。特に、プログラマーやデザイナーなど、細かい作業を長時間続ける方は、肩こりの症状が重症化しやすい傾向にあります。

長時間同じ姿勢でいると、筋肉は硬くなり、血管を圧迫して血行不良を引き起こします。すると、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されなくなり、老廃物が蓄積されてしまいます。これが、肩の痛みやこりの原因となるのです。

例えば、毎日8時間パソコン作業をするAさんと、4時間ごとに休憩を取り、軽いストレッチをするBさんを比較してみましょう。Aさんは、肩や首の筋肉が常に緊張しているため、慢性的な肩こりに悩まされています。一方、Bさんは、こまめな休憩とストレッチによって筋肉の緊張を和らげているため、肩こりの症状は軽度です。

デスクワークでの肩の痛みを予防・改善するためには、1時間に1回程度、立ち上がって肩を回したり、首をストレッチしたりするなど、こまめな休憩とストレッチが効果的です。また、パソコン作業時の姿勢にも気を配り、正しい姿勢を保つように心がけてください。

猫背

猫背は、背中が丸まって肩が前に出ている姿勢のことで、肩甲骨が外側に広がり、肩や首の筋肉に負担がかかりやすいため、肩の痛みの原因になります。

猫背の姿勢で重い荷物を持つと、肩への負担はさらに大きくなります。また、猫背で長時間過ごすと、肩の筋肉が常に緊張し、血行不良から肩こりや痛みを引き起こします。

例えば、小学校高学年で同じくらいの体重のCさんとDさんがいるとします。姿勢の良いCさんは、ランドセルを背負っても肩への負担が少ないですが、猫背のDさんは、肩や首の筋肉に大きな負担がかかり、肩こりや痛みに悩まされています。

猫背を改善するためには、普段から正しい姿勢を意識することが重要です。背筋を伸ばし、顎を引いて、肩甲骨を内側に寄せるように意識しましょう。壁に背中をつけて立つ練習も効果的です。

運動不足

運動不足は、肩周りの筋肉を弱らせ、肩の痛みを引き起こす原因となります。肩周りの筋肉が弱くなると、肩関節を安定させる力が低下し、些細な動作でも痛みを感じやすくなります。

例えば、運動不足の人Eさんは、スーパーで買い物袋を持っただけで肩に痛みを感じることがあります。一方、普段から運動をしているFさんは、同じ重さの買い物袋を持っても痛みを感じません。これは、Fさんの肩周りの筋肉がEさんに比べて発達しており、肩関節をしっかりと支えているからです。

適度な運動は、肩周りの筋肉を強化し、柔軟性を高める効果があります。ウォーキングや水泳などの全身運動はもちろんのこと、肩甲骨を動かすストレッチなども効果的です。インピンジメント症候群は、肩峰下腔と呼ばれる肩の空間が狭くなり、腕を上げた際に腱や滑液包が挟み込まれて炎症を起こす状態です。ローテーターカフは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉の腱の総称で、肩関節の安定性と動きに重要な役割を果たしています。

加齢による筋肉の衰え

加齢に伴い、筋肉は徐々に衰えていきます。肩周りの筋肉も例外ではなく、年齢を重ねるごとに衰えていくことで、肩関節を支える力が弱まり、痛みが生じやすくなります。

肩の筋肉や腱の炎症は、特定の角度で腕を動かすと痛みを伴う絞扼症状を引き起こす場合があります。これは、肩峰下腔の狭窄によるインピンジメント症候群が原因である可能性があります。整形外科で3番目に多い症状である肩の痛みは、多くの場合、腱板断裂やインピンジメント症候群が原因です。

例えば、70代のGさんは、若い頃は趣味のテニスを楽しんでいましたが、最近は肩の痛みでラケットを振ることが難しくなってきました。これは、加齢による筋肉の衰えが原因と考えられます。

加齢による肩の痛みの予防には、適度な運動が効果的です。軽い筋力トレーニングやストレッチなどで、肩周りの筋肉を鍛え、柔軟性を維持しましょう。また、バランスの良い食事を摂り、健康的な生活習慣を心がけることも大切です。

肩の痛みの治療|病院での治療法と自宅でできるケア

肩の痛み…本当につらいですよね。私も肩こりに悩まされた時期があり、腕を上げるのも億劫で、夜も眠れないほどでした。肩の痛みは、単なる肩こりだけでなく、様々な原因が潜んでいる可能性があります。適切な治療を受けるためにも、病院で行う治療と自宅でできるケアについて詳しく見ていきましょう。

病院での治療法:薬物療法、注射、手術など

病院では、痛みの原因や状態に合わせて最適な治療法を選択します。肩の痛みは、整形外科で3番目に多い症状と言われており、腱板断裂やインピンジメント症候群など、様々な原因が考えられます。インピンジメント症候群の場合、腕を特定の角度に動かすと、肩峰下腔と呼ばれる肩の空間で組織が挟み込まれて痛みが出ます。

  1. 薬物療法:炎症や痛みを抑える薬を内服または外用します。例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は炎症を抑えることで痛みを軽減します。よく使われるロキソニンやボルタレンは、市販薬としても販売されているため、ご存知の方も多いかもしれません。胃に負担がかかりやすいといった副作用も存在するため、医師の指示に従って服用することが大切です。

  2. 注射療法:薬物療法で効果が不十分な場合、肩関節に直接注射を行うことがあります。ステロイド注射は強力な抗炎症作用があり、炎症を抑え、痛みを素早く軽減します。その他、ヒアルロン酸注射は関節の動きを滑らかにし、痛みを和らげる効果があります。

  3. 手術療法:腱板断裂や骨折など、保存療法で改善が見られない重症の場合には手術が必要となることもあります。例えば、腱板が完全に断裂している場合、縫合手術を行います。近年では、内視鏡を用いた低侵襲手術も普及しており、身体への負担が少ない手術も選択できるようになっています。

  4. その他の治療法:温熱療法、電気刺激療法、リハビリテーションなど、症状に合わせて様々な治療法を組み合わせることもあります。リハビリテーションでは、肩関節の可動域改善や筋力強化のための exercises を行います。理学療法士の指導のもと、適切な exercises を行うことで、肩の機能回復を促進し、再発予防にも繋がります。

家庭でできるケア:温罨法、冷罨法

ご自宅でもできるケアとして、温罨法と冷罨法があります。

  1. 温罨法:温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されます。蒸しタオルや使い捨てカイロ、温湿布などを患部に当てて温めましょう。入浴も効果的ですが、熱いお湯に長時間浸かるのは避け、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるようにしてください。

  2. 冷罨法:炎症が強い急性期には、冷やすことで炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、患部に15~20分程度当てて冷やしましょう。凍傷を防ぐため、直接皮膚に当てないように注意してください。

家庭でできるストレッチ、マッサージ

肩の痛みを和らげるストレッチやマッサージも、自宅でできる効果的なケアです。

  1. ストレッチ:肩甲骨を動かすストレッチや肩周りの筋肉を伸ばすストレッチは、肩こりや四十肩・五十肩の予防・改善に効果があります。お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うと効果的です。無理に伸ばすと逆効果になる場合があるので、痛みを感じない範囲で行いましょう。インターネットや書籍で様々なストレッチが紹介されていますが、自分に合った方法を見つけることが大切です。

  2. マッサージ:肩や首の筋肉を優しくマッサージすることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。マッサージは、専門家による施術を受けるのも良いですが、自分で行うことも可能です。肩や首の筋肉を指で優しく押したり、揉んだりすることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。

痛みを悪化させないための注意点

肩の痛みを悪化させないためには、以下の点に注意しましょう。

  1. 無理に動かさない:痛みがあるのに無理に動かすと、症状を悪化させる可能性があります。激しい運動や重い物を持ち上げることは避け、痛みが強い時は安静にすることが大切です。

  2. 正しい姿勢を保つ:猫背などの悪い姿勢は、肩や首に負担をかけ、痛みを悪化させる原因となります。パソコン作業やスマートフォンの使用中は特に姿勢に気を付け、こまめに休憩を取りましょう。

  3. 適度な運動:運動不足は筋肉の衰えや柔軟性の低下を招き、肩こりや五十肩などを引き起こす原因となります。ウォーキングや水泳など、適度な運動を習慣づけましょう。ただし、痛みがある場合は無理せず、医師に相談してから運動を始めるようにしてください。

  4. 適切な睡眠:睡眠不足は、身体の回復力を低下させ、痛みを悪化させる可能性があります。質の良い睡眠を十分に取るように心がけましょう。

肩の痛みは様々な原因で起こるため、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

まとめ

肩の痛みの原因は、肩甲骨付近、肩峰、上腕骨など、痛む場所によって様々です。それぞれの痛みに関連する病気や、日常生活で起こりうる原因、そして病院や自宅でできる治療法やケアをご紹介しました。肩の痛みは、放置すると悪化することもあります。痛みが長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてくださいね。肩の痛みを和らげ、快適な日常生活を送れるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

参考文献

  • Garving C, Jakob S, Bauer I, Nadjar R, Brunner UH. Impingement Syndrome of the Shoulder. Deutsches Arzteblatt international 114, no. 45 (2017): 765-776.

追加情報

[title]: Impingement Syndrome of the Shoulder.,

【要約】

  • 肩の痛みは整形外科における3番目に多い筋骨格系の訴えであり、多くの場合、ローテーターカフの損傷やインピンジメント症候群が原因となる。

  • インピンジメント症候群患者は、腕を挙げると軟部組織の痛みを伴う絞扼症状を呈する。病理学的メカニズムは、肩峰下腔の構造的な狭窄である。

  • 多様な原因が存在するため診断は困難であり、病歴と身体診察によって確定され、X線、超音波検査、MRIで確認できる。

  • 初期治療は保存療法(非ステロイド系抗炎症薬、注射、患者の運動療法など)であり、患者の60%において2年以内に良好な結果が得られる。

  • 症状が持続する場合、ローテーターカフの連続性が保たれ、滑液包の病理学的異常が存在する限り、減圧手術が行われる。

  • 正しい病因診断と治療法の選択が良好な転帰に不可欠である。最適な治療戦略に関するエビデンスレベルは低く、手術療法と保存療法のどちらが優れているかは未だ決定されていない。

  • 標準化された治療法を確立するためには、ランダム化比較対照試験が必要である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29202926,

[quote_source]: Garving C, Jakob S, Bauer I, Nadjar R and Brunner UH. “Impingement Syndrome of the Shoulder.” Deutsches Arzteblatt international 114, no. 45 (2017): 765-776.

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