- 2025年3月22日
オスグッドの効果的な治し方と成長期の膝痛改善ステップ
スポーツが大好きな子どもが、膝の痛みに悩まされていませんか?10〜15歳の子どもに多くみられる「オスグッド・シュラッター病」が原因かもしれません。オスグッド・シュラッター病は、成長期の急激な骨の成長に筋肉や腱が追いつかず、膝のお皿の下が痛む病気です。
オスグッド・シュラッター病は、適切な治療を行わないと、症状が長期化し、日常生活に支障をきたすことがあります。具体的なケア方法や予防策を知り、適切な治療を行うことが大切です。この記事では、オスグッド・シュラッター病について、以下のポイントを解説します。
- オスグッド・シュラッター病の定義と症状
- 診断方法と治療法
- 成長期の膝痛改善ステップ
- 再発防止策と生活改善
オスグッド・シュラッター病の定義と症状
オスグッド・シュラッター病について、以下の内容を解説します。
- オスグッド・シュラッター病の定義
- 主要な症状と特徴
- 症状が悪化する時期と状況
オスグッド・シュラッター病の定義
オスグッド・シュラッター病とは、成長期の子どもに多く見られる膝の痛みで、膝のお皿の下にある脛骨粗面(けいこつそめん)という骨が突出し、痛みが生じる病気です。脛骨粗面は、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の腱が付着する部分です。
筋肉や腱の成長スピードは骨よりも少し遅いため、骨の成長に筋肉や腱がついていけず、脛骨粗面に負担がかかって、炎症を起こします。膝を繰り返し使う以下のようなスポーツをすると、脛骨粗面へ大きな負担がかかる可能性があるため、注意が必要です。
- バスケットボール
- バレーボール
- サッカー
- 陸上競技
主要な症状と特徴
オスグッド・シュラッター病の主な症状は、以下のとおりです。
- 膝のお皿の下に痛みがある(安静時や運動時、階段昇降時など)
- 膝のお皿の下が腫れている
- 膝のお皿の下を押すと痛みが増す
- 運動後に痛みが増す
- 階段の上り下りで痛みが増す
- 正座をすると痛みが増す
これらの症状がある場合、オスグッド・シュラッター病の可能性があります。オスグッド・シュラッター病の痛みは、成長痛と勘違いすることも多いので、痛みが長引く場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
症状が悪化する時期と状況
オスグッド・シュラッター病は、骨の成長が活発な10〜15歳の成長期に発症しやすい病気です。特に運動量が多い場合に症状が悪化しやすい傾向があります。オスグッド・シュラッター病が悪化する時期は、身長が急激に伸びる時期と重なることが多いです。
以下の表のような状況では、症状が悪化しやすいため、心当たりがある方は、早めに整形外科を受診しましょう。
状況 | 説明 |
スポーツ時 | ジャンプやダッシュ、キックなどを繰り返すスポーツは、脛骨粗面に負担がかかるため、症状を悪化させる可能性があります。 |
日常生活 | 以下の動作は、膝に負担がかかるため、症状を悪化させる可能性があります。・長時間の立ち仕事 ・重いものを持つこと ・階段の上り下り ・正座 |
その他 | 以下の状況では、膝や筋肉、腱への負担が大きくなるため、症状を悪化させる可能性があります。 ・急激に体が成長する・肥満である・サイズが合わない靴を履く・クッション性がない靴を履く・筋肉の柔軟性が不足している |
オスグッド・シュラッター病の診断方法と治療法
オスグッド・シュラッター病の治療法について、以下の内容を解説します。
- 整形外科での診断方法
- 保存療法
- 手術療法が必要なケース
- 自宅でできるケア方法
整形外科での診断方法
痛みが長引いたり、日常生活に支障をきたしたりする場合は、早めに整形外科を受診しましょう。整形外科では、痛みの程度に合わせて、以下のような処方や処置が行われる場合があります。
- 消炎鎮痛剤の処方
- 湿布やテーピングの使用
- サポーターの装着
- リハビリテーション
- ヒアルロン酸注射(痛みが強い場合)
サポーターやテーピングは、医療従事者から使用方法の指導を受けたうえで使用してください。リハビリテーションでは、理学療法士によるストレッチや筋力トレーニングの指導を受けられます。
オスグッド・シュラッター病は、レントゲン検査で診断することが多いです。レントゲン写真では、成長期に骨の端に存在する軟骨組織(成長軟骨板)の状態や、骨の突起、剥離骨折の有無などを確認します。
保存療法
オスグッド・シュラッター病の治療では、最初に保存療法を行います。保存療法とは、手術を行わずに、運動制限や薬物療法、理学療法(リハビリテーション)などで治療する方法です。オスグッド・シュラッター病は、保存療法で改善する場合が多いです。
保存療法では、痛みのある膝を適切に休ませることが重要です。膝の炎症を抑えるために、ジャンプやダッシュ、キックなどの膝に負担のかかる運動は避けましょう。痛みが強い時期は、運動を完全に休止することも必要です。安静にする期間は、痛みの程度や症状の改善具合によって、数週間〜数か月の場合が多いです。
整形外科では、大腿四頭筋などのストレッチや、スクワットなどの筋力トレーニングを指導することがあります。痛みが強い場合は、アイシングや消炎鎮痛剤の使用も有効です。
手術療法が必要なケース
オスグッド・シュラッター病では、通常、手術が必要になるケースはほとんどありません。成長期が終わっても症状が続き、日常生活に大きな支障がある場合は、手術が検討されます。医師とよく相談し、手術が必要か検討することが大切です。
自宅でできるケア方法
自宅では、RICE処置を実践することが推奨されます。RICE処置とは、以下の表の処置のことです。
処置 | 説明 |
安静(Rest) | 足を安静にし、運動を控えてください。松葉杖を使うなどして、患部に体重をかけないようにすることも有効です。 |
冷却(Ice) | 氷水を入れた袋や保冷剤などで、患部を15〜20分程度冷やしてください。1~2時間おきに、1日に数回行うのが効果的です。 |
圧迫(Compression) | 弾性包帯などで患部を圧迫することで、腫れや内出血を抑えられる可能性があります。きつく締めすぎないように注意してください。 |
挙上(Elevation) | 患部を心臓よりも高くすることで、血液の循環を良くし、腫れや痛みを軽減できる可能性があります。クッションなどを使い、足を高く上げて休んでください。 |
大腿四頭筋のストレッチも自宅でできるケアです。入浴後など、体が温まっているときに行うのが効果的です。以下の手順で行います。
- 立った姿勢で、片方の足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるように持つ
- この姿勢を20〜30秒維持する
- 反対側の足も同様に行う
適切な靴を選ぶことも重要です。サイズが合っていて、クッション性が高い靴を履くことで、膝への負担を軽減できます。スポーツをするときは、スポーツの種類に適した靴を選びましょう。
成長期の膝痛改善ステップ
オスグッド・シュラッター病の場合は、以下のポイントに注意して、適切な運動量と方法を選択する必要があります。痛みがある場合は、無理せず運動を控えましょう。
- 運動の種類を適切に選ぶ
膝に負担の少ない水泳やサイクリングなどの運動を選びましょう。水泳は、浮力で膝への負担が軽減されるため、オスグッド・シュラッター病の患者さんにおすすめの運動です。 - 運動強度を調整する
痛みの出ない範囲で運動を行い、無理をしないことが大切です。運動中に少しでも痛みを感じたら、すぐに運動を中止してください。 - 運動時間を管理する
長時間の運動は避け、適度な休憩を取りながら行いましょう。休憩を取ることで、膝への負担を軽減し、症状の悪化を防げます。 - ウォーミングアップとクールダウンを行う
運動前後にウォーミングアップとクールダウンを必ず行い、筋肉の柔軟性を高めて、ケガを予防しましょう。ウォーミングアップは、筋肉を温めて柔軟性を高める効果、クールダウンは、運動後の筋肉の疲労を軽減する効果があります。
オスグッド・シュラッター病の再発防止策と生活改善
オスグッド・シュラッター病の適切なケアと予防策について、以下の内容を解説します。
- 日常生活での注意点
- 適切な靴選びとフィットネスのポイント
日常生活での注意点
日常生活では、オスグッド・シュラッター病の再発を防ぐために、以下の表のような注意点を守ることが大切です。
注意点 | 具体的な行動 | 大切な理由 |
運動後のケア | 15~20分アイシングを行ったり、大腿四頭筋とハムストリングスのストレッチをしたりする | 炎症と痛みを抑え、早期回復を促す |
痛みが強いときの行動 | 運動を中止し安静にする | 症状の悪化を防ぎ、回復を早める |
日常生活での膝への負担軽減 | 長時間立ったり、重いものを持ったりしない。正座をしたり、膝を深く曲げたりする姿勢を避ける。 | 膝への負担を減らし、症状の悪化を防ぐ |
毎日のストレッチ | 入浴後に、大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチを行う | 筋肉の柔軟性を高め、膝への負担を軽減する |
成長期の栄養バランス | カルシウムやたんぱく質など、骨や筋肉の成長に必要な栄養素をバランスよく摂取する | 骨や筋肉の成長をサポートし、オスグッド・シュラッター病の予防につながる |
適切な靴選びとフィットネスのポイント
オスグッド・シュラッター病の再発防止には、適切な靴を選んだり、フィットネスをしたりすることも効果的です。以下の表のポイントに注意してください。
ポイント | 説明 |
慎重に靴を選ぶ | クッション性があり、足に合ったサイズの靴を選びましょう。かかとが高い靴や、底の薄い靴は避けることをおすすめします。スポーツをする際は、スポーツに適した靴を履くようにしてください。 |
インソールを検討する | インソールを使用すると、足の裏アーチがサポートされ、膝への負担が軽減する場合があります。 |
フィットネスで筋肉を強化する | 専門家の指導のもと、膝周辺の筋肉を強化するトレーニングを行いましょう。痛みがある場合は無理せず、医師に相談しましょう。 |
まとめ
オスグッド・シュラッター病は、適切な対処とケアを行うことで、多くの場合、症状の改善が期待できる病気です。治療は、保存療法(運動制限や薬物療法、リハビリテーション)が中心です。まれに手術の検討が必要になることもあります。自宅でのケアは、RICE処置と大腿四頭筋のストレッチが効果的です。
再発防止には、運動後のケアや日常生活での膝への負担軽減などが重要です。適切な運動の種類や強度、時間を守り、運動前後には必ずウォーミングアップとクールダウンを行いましょう。症状に心当たりがある場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。早期に適切な治療とケアを行うことで、子どもの健やかな成長をサポートできる可能性があります。
参考文献
Cornelia Neuhaus, Christian Appenzeller-Herzog, Oliver Faude. A systematic review on conservative treatment options for OSGOOD-Schlatter disease. Phys Ther Sport, 2021, 49, p.178-187.