• 2025年3月22日

膝の裏に違和感があるときの原因と対策!見逃せない危険な症状

膝の裏の違和感、放っておいて大丈夫かどうか迷っていませんか?膝の裏の違和感にはさまざまな原因が考えられ、状況によっては日常生活に支障をきたす可能性があります。

この記事では、膝の裏の違和感の原因を4つに分類し、わかりやすく解説します。注意が必要な症状や、考えられる対処法についても紹介します。ご自身の症状について理解を深め、適切な対処法を見つけましょう。

膝の裏の違和感で考えられる4つの原因

膝の裏に違和感があると、何気ない日常生活の動作でさえ苦痛に感じてしまいます。膝の裏の違和感には、さまざまな原因が考えられます。原因を特定することが、適切な対処への第一歩となります。膝の裏の違和感で考えられる要因は、以下のとおりです。

  • 筋肉や腱の損傷
  • ベーカー嚢腫
  • 半月板損傷
  • 神経の圧迫

筋肉や腱の損傷

膝周辺の筋肉や腱は負荷がかかりやすく、筋肉や腱の損傷により、以下のような症状が現れます。

  • 肉離れ
    スポーツ中に急にダッシュしたり、重い物を持ち上げたりする際に、膝の裏の筋肉や腱が損傷してしまうことで起こります。肉離れは、スポーツだけでなく、日常生活でも起こるため、注意が必要です。
  • 鵞足炎(がそくえん)
    膝の内側には、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)の3つの筋肉が合流して鵞足の腱を形成しています。鵞足に炎症が起こることを「鵞足炎」といいます。ランニングのように膝を繰り返し曲げ伸ばしする動作は、鵞足への負担が大きいため炎症を起こしやすくなります。

ベーカー嚢腫

膝関節は、骨と骨の間を滑らかに動かすために、関節液で満たされています。関節液が過剰に産生されたり、吸収が滞ったりすると、膝の裏に袋状の腫瘤が形成されます。これが「ベーカー嚢腫」です。

ベーカー嚢腫は、変形性膝関節症や半月板損傷といった他の膝関節疾患に伴って発生する可能性があります。関節内に炎症が起こり、関節液の産生と吸収のバランスが崩れることが原因と考えられます。

半月板損傷

膝関節には、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間に、半月板と呼ばれるC型の軟骨があります。半月板は、クッションの役割を果たし、膝への衝撃を吸収してくれます。スポーツ中の急な方向転換やジャンプ、加齢による変性によって、半月板が損傷する可能性があります。

半月板が損傷すると、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、膝に引っかかり感や違和感があります。膝を動かすと痛みを感じたり、クリック音やゴリゴリと音がしたりすることもあります。

神経の圧迫

腰から足にかけて伸びている坐骨神経が、何らかの原因で圧迫されると、痛みやしびれなどの症状が現れることがあります。これが「坐骨神経痛」です。

坐骨神経は、人体で最も太い神経であり、腰からおしり、太ももの裏、ふくらはぎ、足先までつながっています。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが原因で坐骨神経が圧迫されると、膝の裏にも痛みやしびれを感じることがあります。

見逃せない危険な症状5選

膝の裏に違和感があるとき、以下の5つの症状が現れた場合は注意が必要です。

  • 腫れが急激に大きくなる
  • 安静時にも痛みが続く
  • 動かすと強い痛みや異音がする
  • 足のしびれやむくみがある
  • 発熱や倦怠感がある

腫れが急激に大きくなる

膝の裏が急に腫れた場合は注意が必要です。ベーカー嚢腫が破裂した可能性も考えられます。ベーカー嚢腫は、通常は痛みはそれほど強くありません。しかし、破裂すると以下の症状が現れます。

  • 急激な腫れ
  • 強い痛み
  • 熱感
  • 足のしびれ
  • 冷感

安静時にも痛みが続く

安静にしていても、膝の裏に鈍い痛みやズキズキとした痛みが続く場合は、以下の病気が考えられます。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
    腰の骨と骨の間にあるクッション材である椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、膝の裏に痛みやしびれを引き起こします。
  • 関節リウマチ
    免疫システムの異常により関節に炎症が起こり、膝の痛みや腫れ、朝のこわばりなどの症状が現れます。

安静時の痛みは、体のSOSサインです。自己判断せずに、整形外科医に相談することをおすすめします。

動かすと強い痛みや異音がする

膝を曲げ伸ばしする際に、強い痛みや「ゴリゴリ」「ミシミシ」といった異音がする場合は、半月板損傷や変形性膝関節症の可能性があります。初期段階では軽い症状しか現れないこともありますが、放置すると日常生活に支障をきたすほど症状が悪化する可能性もあります。違和感がある場合は、早期に整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。

足のしびれやむくみがある

膝の裏の違和感に加えて、足全体にしびれやむくみがある場合は、以下の病気が疑われます。

  • 深部静脈血栓症
    足の奥深くにある静脈に血栓ができる病気で、足の腫れや痛み、熱感などを引き起こします。血栓が肺に移動すると、肺塞栓症という生命に関わる危険な状態を引き起こす可能性があります。
  • 腰椎椎間板ヘルニア
    神経を圧迫することで足のしびれや痛みを引き起こすことがあります。

足のしびれやむくみを放置すると、重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。すぐに整形外科や血管外科を受診することをおすすめします。

発熱や倦怠感がある

膝の裏の違和感とともに、発熱や倦怠感、全身の倦怠感といった症状が現れる場合は、以下の病気が考えられます。

  • 感染症:細菌やウイルスが体内に侵入し、炎症を引き起こすことで発熱や倦怠感などの症状が現れる
  • 関節リウマチ:免疫システムの異常によって関節に炎症が起こり、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことがある

体の免疫システムが何らかの異常と戦っているサインです。自己判断せずに、内科や整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。

膝の裏の違和感に対する適切な対処法

違和感の原因に応じた対処を行うことで、症状の改善が期待できます。膝の裏の違和感を和らげるための対処法については、以下のとおりです。

  • ストレッチやマッサージ
  • 冷却・温熱療法
  • 適切な運動
  • 専門医による治療

ストレッチやマッサージ

膝の裏の違和感は、筋肉の疲労や血行不良によって引き起こされることがあります。血行を促進することで、筋肉の緊張が和らぎ、違和感が軽減する可能性があります。具体的なストレッチやマッサージは以下のとおりです。

  • ハムストリングスのストレッチ
    椅子に座り、片足を伸ばし、かかとを床につけたまま上体を前に倒します。太ももの裏が伸びているのを感じながら、20~30秒ほどキープします。
  • ふくらはぎのストレッチ
    壁に手をついて立ち、片足を後ろに引き、かかとを床につけたままアキレス腱を伸ばします。20~30秒ほどキープします。
  • 膝窩筋(しつかきん)のストレッチ
    床に座り、片足を伸ばし、もう片方の足を曲げます。伸ばした足のつま先を持ち、膝の裏が伸びているのを感じながら、20~30秒ほどキープします。
  • マッサージ
    膝の裏を両手の指で優しく円を描くようにマッサージします。痛気持ちいい程度の強さで、5~10分程度行います。入浴後など、体が温まっているときに行うとより効果的です。

痛みがある場合は無理に行わず、違和感がある場合はすぐに中止してください。セルフケアで改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。

冷却・温熱療法

膝の裏の違和感は、炎症を伴う場合もあります。炎症を抑えるには、以下の方法があります。

  • 冷却療法
    急性の痛みや腫れがある場合に有効です。10~15分程度、氷や保冷剤をタオルに包んで患部に当てます。凍傷を防ぐため、直接皮膚に当てないように注意しましょう。
  • 温熱療法
    慢性的な痛みやこわばりがある場合に有効です。20~30分程度、温湿布やホットタオルを患部に当てます。熱すぎる場合は温度を下げ、やけどに注意しましょう。低温やけどにも注意が必要です。

適切な運動

膝の裏の違和感の予防・改善には、膝周りの筋肉を鍛えることが大切です。膝関節の安定性を高め、負担を軽減するには、以下の運動が効果的です。

  • ウォーキング
  • スクワット
  • 水泳

水泳は、水中では膝への負担が軽減されるため、膝に痛みがある場合でも比較的安全に行えます。痛みがある場合は無理に行わず、徐々に運動量を増やしましょう。違和感がある場合はすぐに中止し、医療機関を受診しましょう。

専門医による治療

セルフケアで症状が改善せず、痛みが強い場合は、整形外科を受診しましょう。医師はレントゲンやMRIなどの検査を行い、原因を特定したうえで以下の治療を行います。

  • 薬物療法
    痛みや炎症を抑える薬が処方されます。内服薬だけでなく、外用薬や注射薬など、さまざまな種類があります。
  • ヒアルロン酸注射
    関節液の働きを補うことを目的とした治療法です。変形性膝関節症などの治療に用いられます。
  • 手術療法
    半月板損傷やベーカー嚢腫など、手術が必要な場合があります。関節鏡手術など、体への負担が小さい手術法も開発されています。

まとめ

膝の裏の違和感は、筋肉や腱の損傷やベーカー嚢腫、半月板損傷、神経の圧迫など、さまざまな原因で起こります。症状が軽い場合は、ストレッチやマッサージ、冷却・温熱療法、運動などのセルフケアも検討できます。以下の症状がある場合は、他の病気の可能性もあるため早めに医療機関を受診することをおすすめします。

  • 痛みが強い
  • 腫れがある
  • 足のしびれやむくみがある
  • 発熱や倦怠感がある

医師の診断と適切な治療によって、症状の緩和が期待されます。

参考文献

Miguel Ángel Saavedra, José Eduardo Navarro-Zarza, Pablo Villaseñor-Ovies, Juan J Canoso, Angélica Vargas, Karla Chiapas-Gasca, Cristina Hernández-Díaz, Robert A Kalish. Clinical anatomy of the knee. Reumatol Clin, 2012, 8 Suppl 2, p.39-45.

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