• 2025年3月24日

脊柱管狭窄症でやってはいけないこと!悪化リスクと対策

腰や足に痛みやしびれがある方は、脊柱管狭窄症の可能性があります。一時的な症状だからと放置すると、日常生活の些細な動作で、病状を悪化させてしまう危険性があります。重いものを持ち上げる行為や、長時間の同じ姿勢は脊柱管狭窄症を悪化させる要因です。この記事では、脊柱管狭窄症を以下の項目に沿って解説します。

  • 脊柱管狭窄症でやってはいけない日常動作
  • 脊柱管狭窄症を悪化させるポイント
  • 脊柱管狭窄症の対策3選

腰痛や足のしびれに悩まされている方は、ぜひ読んでください。脊柱管狭窄症を悪化させないための知識や、症状と上手に付き合っていくための過ごし方がわかります。

脊柱管狭窄症でやってはいけない日常動作

脊柱管狭窄症でやってはいけない日常動作を以下の項目に沿って解説します。

  • 重いものを持ち上げる
  • 立ち仕事や座り仕事を長時間続ける
  • 過度な前屈や後屈を行う

症状を悪化させないために、ぜひ参考にしてください。

重いものを持ち上げる

重いものを持ち上げる動作は、脊柱管狭窄症を悪化させる可能性があります。重いものを持ち上げるとき、無意識に腰に力を入れてしまいます。腰に力を入れたとき、腰椎に大きな負担がかかり、脊柱管をさらに狭めてしまう場合があります。結果として、神経への圧迫が増強し、痛みやしびれの悪化につながります。

特に、中腰(膝を十分に曲げずに腰を曲げた状態)の姿勢で重いものを持ち上げるのは避けましょう。中腰の姿勢は、腰を曲げるため、脊柱管への圧迫がさらに強くなります。日常生活の中で、重いものを持ち上げる場合は、以下の点に気をつけてください。

重いものを持ち上げるときの注意点詳細
膝を曲げて持ち上げる腰ではなく、膝を使って持ち上げるように意識することで、腰への負担を軽減できる可能性があります。スクワットをするように膝を曲げ、背筋を伸ばしたまま持ち上げるのがポイントです。
体幹を安定させる腹筋や背筋を使って体幹を安定させると、腰への負担を分散させることができる可能性があります。体幹を鍛えることで、脊柱を支える筋肉が強化され、腰への負担を軽減するのに役立つとされています。
荷物を体に近づける持ち上げるものは、できるだけ体に近づけて持ちましょう。物が体から離れているほど、腰への負担が大きくなる可能性があります。腕を伸ばして持ち上げるのではなく、抱え込むようにして持ち上げるのが理想です。
無理をしない重すぎるものや、持ち上げにくいものは、無理せず誰かに手伝ってもらいましょう。無理をして持ち上げようとすると、腰を痛めるだけでなく、脊柱管狭窄症の症状を悪化させる可能性があります。

立ち仕事や座り仕事を長時間続ける

長時間同じ姿勢を続けることも、脊柱管狭窄症の症状を悪化させる原因です。立ち仕事では、重力によって脊柱管が圧迫されやすくなります。座り仕事では、姿勢が悪くなりがちで、脊柱管が狭くなります。特に、猫背の姿勢は脊柱管を圧迫し、神経への負担が増大する可能性があります。

立ち仕事や座り仕事が多い方は、こまめな休憩を挟むようにしましょう。1時間に1回程度は、軽いストレッチや体操をして、体を動かす習慣をつけましょう。正しい姿勢を保つことも大切です。

過度な前屈や後屈を行う

脊柱管狭窄症の方は、腰を過度に曲げたり反らせたりしないようにする必要があります。前屈姿勢は脊柱管の前方部分を狭くし、後屈姿勢は脊柱管の後方部分を狭くして、神経を圧迫する可能性があります。

文献でも、直立や歩行、腰部伸展によって症状が悪化し、前屈や座位、仰臥位などで軽減されることが多いとされています。日常生活では、以下の動作に注意が必要です。

  • 洗顔や歯磨きの際の前かがみ
    洗面台に近づきすぎず、少し離れた位置に立って、膝を軽く曲げることで、腰への負担を軽減できる可能性があります。
  • 洗濯物を干す、拾うなどの動作
    かがむ際は、膝を曲げ、腰を落とすようにしましょう。腰だけを曲げると、脊柱管が圧迫されやすくなります。
  • 靴紐を結ぶ
    椅子に座るか、片膝を立てて行うことで、腰への負担を軽減できます。立ったまま前かがみで靴紐を結ぶのは避けましょう。
  • 後ろを振り向く
    急に振り返るのではなく、体全体を回すようにして振り返りましょう。腰だけをひねると、脊柱管に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。

腰をひねる動作も、脊柱管に負担をかけるため、注意が必要です。急な動作は避け、ゆっくりと動作を行うように心がけてください。

脊柱管狭窄症を悪化させるポイント

知らず知らずのうちに症状を悪化させないために、気をつけるべきポイントは以下のとおりです。

  • 不適切な運動やストレッチ
  • 体重の増加
  • ストレス

不適切な運動やストレッチ

脊柱管狭窄症では、腰を反らせる動きや、長時間同じ姿勢を続けることが症状を悪化させる可能性があります。ゴルフやテニスのように腰を捻る動きが多いスポーツや、長時間のランニングなど、腰に負担がかかる運動は控えましょう。

ストレッチも、腰を反らせるようなものは避け、医師や理学療法士へ相談しながら行うようにしましょう。仰向けに寝て膝を抱えるストレッチは、腰を丸める姿勢になるため比較的安全に行えます。うつ伏せで上半身を起こすようなストレッチは、腰を反らせるため、症状を悪化させる可能性があります。

痛みやしびれを感じた場合は、すぐに運動やストレッチを中止し、安静にすることが大切です。痛みを我慢して運動を続けると、炎症が悪化し、症状が長引く可能性があります。

体重の増加

体重が増加すると、腰への負担が増し、脊柱管狭窄症の症状を悪化させる可能性があります。適正な体重の維持は、症状の改善につながるだけでなく、再発予防にも役立つとされています。

食事は、1日3食規則正しく、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。特に、カルシウムやビタミンDは、骨の健康維持に不可欠な栄養素です。カルシウムやビタミンDが不足すると、骨がもろくなり、脊柱管狭窄症の悪化につながる可能性があります。乳製品や魚介類、緑黄色野菜などを積極的に摂りましょう。

運動することも大切ですが、急激なダイエットは、体に負担をかけるためおすすめできません。無理なく体重を減らすことが大切です。

ストレス

ストレスは、脊柱管狭窄症の症状を悪化させる要因の一つです。ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、筋肉が緊張しやすくなります。筋肉が緊張すると、血行が悪くなり、痛みやしびれの悪化につながります。おすすめのストレス解消法は以下のとおりです。

  • リラックスできる時間を作る
  • 趣味を楽しむ
  • 睡眠時間を確保する
  • 深呼吸をする
  • 瞑想やヨガを行う

文献には、急激な悪化はまれであり、症状は増悪と軽減を繰り返すか、徐々に改善することが多いと報告されています。慌てずに、適切な治療と生活習慣の改善を継続することが大切です。症状が改善しなかったり、悪化したりする場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

脊柱管狭窄症の対策3選

脊柱管狭窄症の症状を和らげ、進行を遅らせるための対策として、以下の3つをご紹介します。

  • 姿勢改善
  • 適切な運動
  • 定期的な医療機関の受診

姿勢改善

脊柱管狭窄症では、姿勢が悪くなると脊柱管がさらに狭くなり、神経が圧迫されて症状が悪化しやすくなります。特に、猫背や前かがみの姿勢は脊柱管への負担が大きいため注意が必要です。人間の背骨は、本来緩やかなS字カーブを描いており、背骨のカーブが体重を分散し、脊柱への負担を軽減する役割を果たします。

猫背になると背骨のS字カーブが崩れ、特定の部位に負担が集中しやすくなります。脊柱管狭窄症の方は、S字カーブの崩れによる負担の集中が、神経の圧迫を悪化させ、痛みやしびれを増加させる可能性があります。正しい姿勢を保つためには、以下のポイントを意識しましょう。

動作注意点
立つとき頭をまっすぐ上に引き上げ、あごを軽く引きます。肩の力を抜き、お腹に軽く力を入れて背筋を伸ばしましょう。鏡の前に立って、耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線上に並ぶように意識すると、正しい姿勢を保ちやすくなります。
座るとき浅めに座り、背もたれに寄りかかりましょう。深く座ってしまうと、猫背になりやすく、腰への負担が大きくなってしまいます。椅子に座るときは、膝が股関節よりも少し高くなるように調整すると、腰への負担を軽減できます。足を組む癖がある方は、長時間同じ足を組むことを避け、こまめに組み替えましょう。左右均等に組むように意識することも大切です。
寝るとき仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションなどを置き、膝を軽く曲げることで、腰への負担を軽減できます。横向きで寝る場合は、抱き枕を抱えたり、膝の間にクッションを挟んだりして、体が歪まないようにします。布団やマットレスは、適度な硬さのものを選びましょう。柔らかすぎるマットレスは腰を支えきれず、逆に硬すぎるマットレスは体の接地部分に痛みを生じさせる可能性があります。

適切な運動

脊柱管狭窄症では、適度な運動が症状の改善に役立つとされています。運動によって、脊柱周辺の筋肉が強化され、脊柱への負担を軽減することができます。血行が促進されることで、痛みやしびれの緩和にもつながります。

しかし、激しい運動や間違った方法で行うと、逆に症状を悪化させる可能性があります。急に激しい運動をせずに無理なくできる運動を始めましょう。痛みを感じたらすぐに中止し、専門家の指導を受けることが大切です。脊柱管狭窄症の方におすすめの運動や期待できる効果、注意点は以下のとおりです。

運動の種類期待できる効果注意点
ウォーキング脊柱の周りの筋肉を強化し、姿勢の改善に役立ちます。長時間歩いたり、硬い路面を歩いたりすると症状が悪化することがあります。30分を目安に、休憩を挟みながら行いましょう。
水中ウォーキングウォーキングよりも腰への負担が少なく行えます。水温が低いと体が冷えてしまうため、適切な水温で行いましょう。プールによっては、水中ウォーキング用のプログラムが用意されている場合もあります。
ストレッチ筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果が期待できます。無理に伸ばすと筋肉を痛める可能性があります。医師や理学療法士の指導のもと、適切なストレッチを行いましょう。前屈姿勢で症状が軽減する傾向があるため、腰を反らせるストレッチは避けましょう。

定期的な医療機関の受診

脊柱管狭窄症は、自然に治ることは少ないとされており、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があります文献でも、保存的治療で効果がない場合、外科手術も選択肢の一つとなることが示唆されています。定期的に医療機関を受診して、適切な治療を受けましょう。

医療機関では、症状の進行度合いに応じて、薬物療法や理学療法、神経ブロック注射などの治療が行われます。医療機関での治療は、症状の悪化を防ぎ、痛みを和らげる効果が期待されています。

ご自身の症状や生活習慣に合った治療法や生活習慣改善策を見つけるためには、医師との相談が不可欠です。自己判断で治療を中断したり、民間療法に頼ったりすることは避けましょう。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

まとめ

日常生活では重いものの持ち上げ方に注意したり、長時間同じ姿勢になったりしないよう気をつけましょう。症状の進行を防ぐために、過度な前屈や後屈、不適切な運動やストレッチには注意が必要です。体重の増加やストレスも、脊柱管狭窄症を悪化させる可能性があります。

適切な姿勢を保ち、負担の少ない運動を取り入れ、定期的に医療機関を受診することで、症状の悪化を防止できる可能性があります。痛みやしびれを感じたら、無理せず休息し、日常生活の中でできる範囲の改善を心がけましょう。症状に不安がある場合は、すぐに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

参考文献

Jon Lurie, Christy Tomkins-Lane. Management of lumbar spinal stenosis. BMJ, 2016, 352:h6234.

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