- 2025年5月21日
ぎっくり腰の時にやってはいけないことは?NG行動と対処法を専門医が解説
突然の激痛で動けなくなるぎっくり腰は、誰でも起こりうる腰痛です。ぎっくり腰になると、くしゃみや咳などのちょっとした動作で、腰に激痛を感じる場合があります。間違った対処法を行うと悪化する可能性があるため注意が必要です。
この記事では、ぎっくり腰になった際にやってはいけない行動や、適切な対処法を解説します。ぎっくり腰の正しい知識を身につけ、つらい痛みからの早期解放を目指しましょう。
ぎっくり腰の時に避けたいNG行動7選
ぎっくり腰の正式名称は、急性腰痛症です。ぎっくり腰になった時は、適切な対処が重要です。ぎっくり腰は、腰椎を取り巻く筋肉や靭帯などが過度に伸展されたり、断裂したりすることで引き起こされる傾向があります。激痛を感じた時に、してはいけない行動を7つ解説します。
- 無理に動いて日常生活を続ける
- 痛む部分を温める
- マッサージや整体をすぐ受ける
- 長時間同じ姿勢を続ける
- 重いものを持ち上げる
- 激しい運動をする
- 自己判断で市販薬を長期服用する
無理に動いて日常生活を続ける
ぎっくり腰の直後に痛みを我慢し、無理に動いて日常生活を続けると、損傷した筋肉や靭帯への負担が増し、炎症が広がります。炎症は痛みが長引く原因につながります。
ぎっくり腰は、腰の筋肉や靭帯、椎間板などが損傷している状態です。安静にすることで、損傷した組織の修復を促し、炎症を抑える効果が期待できます。炎症期に無理に動くと、組織の修復が妨げられ、慢性的な痛みにつながる可能性が高まります。
痛む部分を温める
ぎっくり腰を発症した後、48時間以内に患部を温めるのは避けてください。ぎっくり腰の初期は炎症が活発な状態です。温めると血管が拡張し炎症が悪化することで、痛みや腫れが増強する可能性があります。
ぎっくり腰になった直後は、アイスパックや冷湿布などで患部を冷やすことが大切です。冷却することで、炎症の広がりを抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。
マッサージや整体をすぐ受ける
痛みが強い場合は、マッサージや整体は避けましょう。ぎっくり腰の急性期(発症~約1週間)は、外部からの刺激により、症状が変化する可能性があります。痛みが落ち着いてから、医療機関に相談のうえ、ご自身の状態に適したケアを検討しましょう。
長時間同じ姿勢を続ける
ぎっくり腰になったときは、安静が大切ですが、長時間同じ姿勢を続けるのは避けましょう。同じ姿勢を続けると、血行が悪くなり、筋肉が硬くなるため、回復を遅らせる可能性があります。横になる場合は、膝を軽く曲げると腰への負担が軽減され、楽に感じる人が多いです。
重いものを持ち上げる
ぎっくり腰になったときは、重いものを持ち上げるのは避けましょう。重いものを持ち上げると、腰に負担がかかり、損傷した組織を傷つけるため症状が悪化する可能性があります。日常生活で、重い荷物を持つ場合は、他の人に協力の依頼やカートを使う、荷物を小分けにするなど工夫しましょう。
激しい運動をする
ぎっくり腰になったときは、激しい運動は避けましょう。激しい運動は、腰に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。痛みが落ち着いたら、医師の指示に従い、ウォーキングなどの軽い運動から始めましょう。無理のない範囲で運動を再開すると、腰周りの筋肉を強化し、再発予防を目指せます。
自己判断で市販薬を長期服用する
市販の鎮痛薬は、一時的に痛みを和らげる場合がありますが、根本的な治療にはなりません。自己判断で市販薬を長期服用すると、胃腸障害などの副作用のリスクが懸念されます。市販薬はあくまでも応急処置として活用しましょう。
痛みが緩和されても、意識しないところで腰に負担をかけてしまう可能性があります。症状が続く場合は医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。
正しい初期対応と応急処置のポイント
ぎっくり腰は、適切な初期対応と応急処置を行うことで、痛みを和らげ、回復を促すことが期待できます。正しい初期対応と応急処置のポイントを3つ解説します。
- 安静にして患部を冷やす
- 痛みが和らぐまで無理に動かない
- 楽な体勢で安静を保つ
安静にして患部を冷やす
ぎっくり腰になったら、安静が大切です。炎症を起こしている状態のため、安静にすると、悪化を防ぎ、自然治癒につながりやすくなります。横になる場合は、仰向けに寝て膝を軽く曲げる姿勢が、腰への負担を軽減します。座る場合は、背もたれのある椅子に深く腰掛け、リラックスした姿勢を保ちましょう。
患部を冷やすことも重要です。冷却することで炎症の広がりを抑え、痛みの軽減に役立つ可能性があります。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルに包み、10分~15分冷やしましょう。凍傷を起こす可能性があるため、時間を守り、感覚がなくなってきたらすぐに中断しましょう。
痛みが和らぐまで無理に動かない
痛みを我慢して無理に動くと、損傷した筋肉や靭帯への負担が増し、痛みが長引く可能性があります。慢性的な痛みにつながるリスクもあるため、痛みが強い場合は、日常生活の動作も最小限に抑え、仕事や家事も休み、体を休ませることが最優先です。
楽な体勢で安静を保つ
ぎっくり腰では、楽な体勢を見つけることが、痛みを和らげ、回復を促進するのに重要です。仰向けで膝を立てた姿勢が腰への負担を軽減するため、楽に感じる人が多いです。腰の筋肉をリラックスさせ、痛みを和らげる効果が期待できます。
横向きに寝る場合は、両膝を軽く曲げ、抱き枕などを抱えると、腰への負担を軽減しやすくなります。うつ伏せは腰を反らせるため、避けてください。座る場合は、背もたれのある椅子に深く腰掛け、足を床につけましょう。
長時間同じ姿勢を続けると、血行不良で筋肉が硬くなるため、適度に姿勢を変えながら安静を保つことが大切です。楽な姿勢は人それぞれ異なるため、いろいろな姿勢を試し、ご自身に合った楽な姿勢を見つけましょう。
専門医が勧める再発予防と対策
ぎっくり腰は、適切な対策を行うことで、再発の可能性を低減できる場合があります。ぎっくり腰は、普段の姿勢や生活習慣が関係している傾向があります。再発予防のためにも、以下の対策を生活に取り入れましょう。
- コルセットやサポーターの正しい使い方
- 日常生活での姿勢改善のコツ
- 筋力低下を防ぐストレッチと運動
- 生活習慣の見直し
- 病院に行くべきタイミングと判断基準
コルセットやサポーターの正しい使い方
コルセットやサポーターは、腰を支え、負担を軽減するのに役立ちますが、使い方を間違えると逆効果になる場合もあるので注意が必要です。コルセットは、症状や体型に合ったものを選びましょう。コルセットは、主に以下の3種類です。
- 硬性コルセット:腰椎の動きを制限し、固定する力が強い
- 軟性コルセット:腰をサポートする役割が強い
- サポーター:腰椎の動きを制限する力はなく、腰を保温したり、圧迫したりする
痛みが強いときや、重いものを持つときなど、必要な場面で使用しましょう。長時間の使用は、腰周りの筋肉がコルセットに依存し、筋肉を弱める可能性があります。皮膚かぶれや圧迫感による不快感が生じる人もいるため、使用時間と装着方法に注意が必要です。
コルセットを使用する際は、医師や理学療法士の指導を受けて、正しい位置に装着しましょう。装着位置がズレると、腰椎への負担が偏り、痛みを悪化させる可能性があります。
フランスの研究で、急性または極端な腰痛に対してコルセットの装着は有効であることが示されています。自身に適したコルセットや装着時間、装着方法などを守った再発予防を取り入れましょう。
日常生活での姿勢改善のコツ
ぎっくり腰は、日常生活での姿勢が原因である可能性があります。猫背で長時間座っていたり、重い荷物を持つときに腰を曲げていたりすると、腰に負担がかかります。
座る際は、椅子に深く座り、背筋を伸ばしましょう。1時間に1回は立ち、軽いストレッチをするのがおすすめです。座っている際に猫背になっていると、腰椎に負担がかかり、ぎっくり腰のリスクが高まります。正しい姿勢を意識することで、腰への負担軽減につながります。
立つ姿勢は、お腹に軽く力を入れて、背筋を伸ばし骨盤を立てる意識をしましょう。長時間立っている場合は、時々足を交互に台に乗せて、腰への負担を軽減しましょう。立っている際に姿勢が悪いと、腰椎に負担がかかり、ぎっくり腰のリスクが高まります。
荷物を持つときは、腰を曲げずに、膝を曲げて持ち上げましょう。荷物は体に近い位置で持ち、左右均等に重さを分散させることが大切です。重い荷物を持ち上げる際は、膝を曲げて持ち上げると腰への負担軽減につながります。
筋力低下を防ぐストレッチと運動
腰を支える筋肉が弱いと、ぎっくり腰になりやすいため、適度な運動やストレッチで筋肉を鍛え、柔軟性を保つことが大切です。ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行の促進に役立つ可能性があります。ストレッチは、腰をゆっくりと回し、前屈や後屈、側屈など、いろいろな方向に動かしましょう。起床時や入浴後などに行うと効果的です。
有酸素運動は、腰周りの筋肉を強化する効果が期待できます。急性腰痛の初期は安静を優先し、症状の変化に応じて徐々に活動量を増やす調整をしましょう。痛みが落ち着いてきた段階で、ウォーキングや水泳などの軽い運動から始めましょう。
生活習慣の見直し
体重が増えると、腰への負担が大きくなるため、バランスの良い食事と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。睡眠不足は、筋肉の疲労回復を妨げ、ぎっくり腰のリスクを高める可能性があります。
バランスの良い食事を心がけることが大切です。カルシウムやビタミンDなどの栄養素を含む食品は、骨や筋肉の健康維持を目指せます。乳製品や小魚、きのこ類を積極的に摂取しましょう。加工食品やインスタント食品だけに偏らず、野菜や果物なども含めた食品からの栄養摂取を心がけてください。
毎日同じ時間に寝起きし、睡眠時間を一定に保つことも大切です。寝る前のカフェイン摂取は避け、リラックスできる環境を整えてください。十分な睡眠は、疲労回復や免疫力向上につながるため、日ごろの習慣を少しずつ見直してみましょう。
病院に行くべきタイミングと判断基準
強い痛みやしびれ、発熱などの症状がある場合や、2週間以上症状が改善しない場合は、医療機関への受診を検討しましょう。以下の症状は緊急性が高い可能性があるため、該当する場合は、早期に医療機関を受診する必要があります。
- 激しい痛み
- 動けない状態
- しびれ
- 排尿・排便障害
痛みが長引く場合などは、専門医に相談し、適切な検査と治療を受けることが大切です。自己判断で治療を続けると、症状が悪化する可能性があります。ぎっくり腰を繰り返す場合は、生活習慣や姿勢、運動不足などが原因の可能性があります。専門医に相談し、具体的な改善策を指導してもらいましょう。
まとめ
ぎっくり腰になった際は安静にし、炎症が強い最初の48時間は患部を冷やしましょう。温めたり、マッサージ・整体を受けたりすると悪化する可能性があります。市販薬はあくまで応急処置とし、痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
コルセットやサポーターは正しい使い方を心がけることが重要です。補助的なアイテムのため、長時間の使用は避け、医師や理学療法士の指示を守りましょう。日常生活で正しい姿勢を意識することも、ぎっくり腰の予防につながります。適度な運動とストレッチで腰周りの筋肉を鍛え、再発予防につなげましょう。
痛みが強くしびれがある、症状が2週間以上にわたって長引く場合などは、医療機関の受診をおすすめします。ぎっくり腰の正しい知識を身につけ、つらい痛みの早期解放に役立てましょう。
参考文献
C Hérisson. Local and general rest in the treatment of common low back pain. Rev Prat, 2000, 50, 16, p.1774-1778.