• 2025年1月21日

手の痛みの原因

手の痛み、それは日常生活の些細な動作から、仕事や趣味まで、あらゆる場面で私たちを苦しめる悩ましい症状です。朝、顔を洗う、服を着るといった何気ない動作でさえも、痛みが走ると苦痛に変わります。 手の痛みの原因は多岐にわたり、使いすぎや腱鞘炎といった比較的軽いものから、関節リウマチや骨折といった重篤なケースまで様々です。統計によると、40代以降の女性では、指の第一関節に起こる変形性関節症であるヘバーデン結節も珍しくありません。 この記事では、手の痛みの代表的な原因5つとそれぞれの症状の特徴、そして効果的な治療法とケアについて、具体的な例を交えながら詳しく解説します。つらい手の痛みから解放され、快適な日常生活を取り戻すためのヒントがここにあります。

手の痛みの原因5選と症状の特徴

手の痛みは、日常生活において私たちを大きく制限する可能性のある悩ましい症状です。朝、顔を洗う、服を着る、食事をするといった動作から、仕事や趣味に至るまで、手の自由が奪われると、普段当たり前にできていたことができなくなり、大きなストレスを感じます。

手の痛みの原因は実に多様で、単純な使いすぎから、重篤な病気が隠れているケースまで様々です。早期に適切な治療を開始するために、まずはどのような原因が考えられるのか理解しておきましょう。今回は、手の痛みの代表的な原因5つと、それぞれの症状の特徴について、具体的な例を交えながら詳しく解説します。

腱鞘炎

腱鞘炎は、指や手首を動かす腱と、それを包んでいる腱鞘が擦れ合って炎症を起こし、痛みが生じる病気です。例えるなら、ロープが通る管の中でロープが擦り切れて炎症を起こしているような状態です。

例えば、長時間のパソコン作業やスマートフォンの操作、ピアノの演奏、工場での組み立て作業など、同じ動作を繰り返すことで腱鞘炎を発症するリスクが高まります。

症状は、痛み、腫れ、熱感、動きの制限などです。朝起きた時に手がこわばって動かしにくい、指を動かすと引っかかるような感覚やキュッキュッという音がする、といった症状が現れることもあります。私の患者さんの中には、裁縫が趣味の女性で、細かい作業を長時間続けた結果、親指の付け根に強い痛みを感じ、ボタンをかけるのも困難になった方がいました。

親指の付け根に起こる腱鞘炎は「ドケルバン病」と呼ばれ、スマートフォンをよく使う人に多く見られます。また、更年期を迎えた女性にも多く、ホルモンバランスの変化も関係していると考えられます。

ばね指

ばね指は、腱鞘炎の一種で、指を曲げる腱が腱鞘の中でスムーズに動かず、引っかかってしまうことで起こります。名前の通り、指を曲げ伸ばしするときに、ばねのように急に動くのが特徴です。

例えば、洗濯物を干す、包丁を使う、ゴルフクラブを握るといった動作を繰り返すことで発症リスクが高まります。また、糖尿病やリウマチなどの基礎疾患がある方は、ばね指を発症しやすい傾向があります。

症状としては、指の付け根の痛みや腫れ、指の動きの悪さなどがあります。朝起きた時に指が曲がったまま伸びない、指を伸ばそうとすると急に伸びる、といった「ばね現象」が起こることもあります。実際に、私のクリニックには、朝、指が曲がったまま伸びず、慌てて来院された患者さんもいらっしゃいました。

ヘバーデン結節

ヘバーデン結節は、指の第一関節にできる変形性関節症です。40代以降の女性に多く、遺伝やホルモンバランスの変化などが原因と考えられています。指の第一関節が赤く腫れ、痛みを伴います。進行すると関節が変形し、指が曲がりにくくなることもあります。

初期症状は関節の腫れ、赤み、熱感、痛みなどです。更年期を迎えた女性に多く見られることから、女性ホルモンの減少との関連性も指摘されています。進行すると関節が変形し、日常生活にも支障をきたす場合もあります。例えば、瓶の蓋が開けられない、ボタンを留めるのが難しい、といった症状が現れることもあります。

関節リウマチ

関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。手だけでなく、全身の関節に症状が現れることもあります。特に、手首や指の関節が腫れたり、痛んだり、変形したりするのが特徴です。

関節リウマチは進行性の病気であるため、早期に適切な治療を始めないと関節の破壊が進んでしまいます。メトトレキサートという薬は、関節リウマチの治療に使用されることがあります。

初期症状は、朝起きた時の手のこわばりです。その他、関節の痛み、腫れ、熱感などがみられます。進行すると関節が変形し、日常生活に支障をきたすこともあります。例えば、字が書きにくい、箸が使いにくい、といった症状が現れることもあります。

骨折

手の骨折は、転倒やスポーツ、交通事故など、外部からの強い衝撃によって起こります。強い痛みや腫れ、変形などがみられます。骨折が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。

骨折の種類によって症状は異なりますが、共通して強い痛み、腫れ、皮下出血、変形などがみられます。場合によっては、骨が皮膚を突き破ることもあります。例えば、転倒して手をついた際に、手首に強い痛みを感じ、腫れや変形が見られる場合は、骨折の可能性が高いです。

手の痛みに効果的な治療法とケア

手の痛み。それは、日常生活のあらゆる場面で私たちを悩ませる影の忍び寄るような存在です。朝、目覚めて顔を洗う時、温かいコーヒーを淹れる時、パソコンのキーボードを叩く時、大切な人に手紙を書く時…、何気なく行っていた動作が突如として苦痛に変わってしまう。手の痛みは、まるで日常生活の喜びを少しずつ奪っていくかのような、不安と焦燥感をもたらします。

しかし、諦めないでください。適切な治療とケアによって、手の痛みを和らげ、再び輝く毎日を取り戻すことは可能です。ここでは、手の痛みに対する様々な治療法とケアの方法を、具体的な症例を交えながら分かりやすく解説します。

薬物療法(湿布、鎮痛剤、メトトレキサートなど)

薬物療法は、炎症や痛みを抑え、症状の緩和を目指す治療法です。症状や痛みの程度、原因疾患によって、湿布、鎮痛剤、メトトレキサートなど、様々な薬が使い分けられます。

例えば、スポーツで手首を捻挫し、炎症と痛みがある場合は、湿布や消炎鎮痛剤が有効です。湿布には冷感タイプと温感タイプがあり、炎症の急性期には冷感タイプを使用し、痛みが慢性化している場合は温感タイプを使用するなど、症状に合わせて使い分けます。

また、リウマチなどの自己免疫疾患による手の痛みには、メトトレキサートは、関節リウマチなどの自己免疫疾患による手の痛みに対して処方されることがあります。

薬の種類によって効果や副作用が異なるため、医師の指示に従って適切に服用することが重要です。

手術療法

薬物療法や理学療法などの保存療法で効果が得られない場合、あるいは症状が重い場合には、手術療法が検討されます。

例えば、腱鞘炎が重症化し、腱が肥厚して神経を圧迫している場合、腱鞘切開術が行われます。この手術によって、神経への圧迫が解除され、痛みやしびれが改善されます。

また、手根管症候群の場合、手根管を切開し、正中神経への圧迫を取り除く手術が行われます。

手術療法は、症状や原因に応じて適切な方法が選択されます。

理学療法(リハビリテーション)

理学療法は、体の機能回復を目的とした治療法です。マッサージ、ストレッチ、運動療法など、様々な方法があり、患者さんの状態に合わせて適切なプログラムが作成されます。

例えば、腱鞘炎のリハビリテーションでは、手首や指のストレッチを行い、関節の可動域を広げ、柔軟性を高める exercises が行われます。また、骨折後のリハビリテーションでは、筋力トレーニングを行い、関節の安定性を高める exercises が行われます。

理学療法は、専門の理学療法士によって行われ、患者さんの状態に合わせて適切な指導とサポートが提供されます。

家庭でできるセルフケア

手の痛みを予防・改善するためには、日常生活でのセルフケアも重要です。

痛みが強い場合は、まず手を休ませることが大切です。炎症がある場合は、患部を冷やすことで痛みや腫れを軽減できます。また、温めることで血行が促進され、痛みが和らぐこともあります。

さらに、ストレッチや軽い体操を定期的に行うことで、関節の柔軟性を維持し、手の痛みを予防することができます。

日常生活で、パソコンやスマートフォンを長時間使用する場合は、こまめに休憩を取り、手首や指を休ませることが大切です。また、重いものを持つ際は、手首に負担がかかりすぎないように注意しましょう。

装具療法

装具療法は、手首や指をサポーターや装具で固定することで、関節を保護し、痛みを軽減する治療法です。

例えば、腱鞘炎や手根管症候群では、手首サポーターを装着することで、手首の動きを制限し、炎症を悪化させるのを防ぎます。また、骨折後には、ギプスやシーネなどの装具を用いて骨折部を固定し、骨の癒合を促進します。

装具療法は、痛みの軽減だけでなく、関節の変形予防にも役立ちます。

手の痛みは、原因や症状が多岐にわたるため、自己判断で治療を行うのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

手の痛みの予防と日常生活の注意点

手の痛み。それは、私たちの日常生活を影のように脅かす、静かなる苦痛です。朝、温かいコーヒーカップを握ろうとした瞬間、鋭い痛みが走る。パソコンのキーボードを叩くたびに、指先に響く鈍い痛み。そして、夜、布団の中で疼く痛みは、安らかな眠りさえも妨げます。

「これくらい大丈夫だろう」と放置していると、痛みは徐々に悪化し、日常生活のあらゆる動作が困難になることも。例えば、私の患者さんの中には、初期の軽い痛みを放置した結果、最終的には箸を持つことも、服のボタンを留めることもできなくなってしまった方がいらっしゃいます。

このような事態を防ぐためには、日頃からの予防と適切なケアが不可欠です。今回は、手の痛みを予防するための具体的な方法と、日常生活での注意点について、詳しく解説します。

適切な姿勢と手の使い方

まるで、長年使い込んだ道具のように、私たちの体も、間違った使い方を続けると徐々に摩耗し、痛みというサインを発し始めます。特に、手は日常生活で最もよく使う部位の一つであるため、負担がかかりやすく、痛みに悩まされる方も多いです。

適切な姿勢と手の使い方を意識することは、手の痛みを予防する上で非常に重要です。例えば、デスクワークで長時間パソコン作業をする際は、肘を90度に曲げ、手首をまっすぐに保つように心がけてください。猫背気味に作業したり、手首を曲げたままキーボードを叩いたりすると、手首や指の関節に過剰な負担がかかり、腱鞘炎や手根管症候群などの原因となる可能性があります。

また、スマートフォンを操作する際も、長時間同じ姿勢を続けるのは避け、こまめに休憩を取りながら、軽いストレッチをするのがおすすめです。最近では、スマホの使いすぎで手の親指の付け根が痛む「ドケルバン病」の患者さんも増えています。

重い荷物を持つ際は、指先だけで持つのではなく、手のひら全体でしっかりと包み込むように持つことで、指の関節への負担を軽減できます。

ストレッチや体操

手の筋肉や関節は、定期的にストレッチや体操を行うことで、柔軟性を維持し、痛みの発生を予防することができます。まるで、植物に水をやるように、私たちの体も、適切なケアを行うことで、健康な状態を保つことができるのです。

朝起きた時や仕事の休憩時間など、ちょっとした空き時間を利用して、簡単なストレッチや体操を取り入れてみましょう。例えば、指を組んで手のひらを前に向けて伸ばしたり、指先を反対の手で軽く引っ張ったりするだけでも、手の筋肉や関節の柔軟性を高める効果があります。

その他、手首をゆっくりと回したり、指を一本ずつ曲げ伸ばしする体操も効果的です。これらの運動は、特別な道具を必要とせず、いつでもどこでも手軽に行えるため、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。

栄養バランスの良い食事

私たちの体は、食べたものから作られます。バランスの取れた食事は、健康な体を作るための基盤であり、手の痛みを予防するためにも重要な役割を果たします。

骨や関節の健康を維持するためには、カルシウム、ビタミンD、コラーゲンなどの栄養素を積極的に摂取することが大切です。カルシウムは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、小松菜やひじきなどの緑黄色野菜に多く含まれています。ビタミンDは、鮭やさんまなどの魚類、きのこ類、卵に豊富に含まれています。また、コラーゲンは、鶏皮や豚足、魚の皮などに多く含まれています。

これらの栄養素をバランスよく摂取することで、骨や関節を丈夫にし、手の痛みを予防することができます。例えば、朝食にヨーグルトと果物を添えたり、昼食に鮭の塩焼きとほうれん草のおひたしを組み合わせたりするなど、毎日の食事に意識的にこれらの食材を取り入れてみましょう。

適度な休息

現代社会は、常に時間に追われ、忙しく過ごす人が多いでしょう。しかし、体を酷使し続けると、筋肉や関節に過剰な負担がかかり、手の痛みを引き起こす原因となります。

手を使いすぎると、筋肉や関節が疲労し、炎症を起こしやすくなります。十分な休息を取らずに作業を続けると、まるで、エンジンオイルを交換せずに車を走らせ続けるように、体の機能が低下し、故障のリスクが高まります。

1時間作業したら5分程度の休憩を挟む、2時間作業したら10分程度の休憩を取るなど、作業時間に応じて適切な休息時間を確保することが重要です。また、睡眠不足も手の痛みの原因となることがあるため、質の良い睡眠を十分に取るように心がけましょう。

定期的な検診

手の痛みは、様々な原因によって引き起こされるため、自己判断で対処するのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

特に、手の痛みやしびれが続く場合や、関節が変形している場合は、早めに整形外科を受診しましょう。早期発見・早期治療によって、重症化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

定期的な検診は、まるで、家のメンテナンスを行うように、体の状態を定期的にチェックし、潜在的な問題を早期に発見するために重要です。

手の痛みを放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的な負担も大きくなります。専門医に相談し、適切な治療を受けることで、痛みを和らげ、快適な生活を取り戻すことができるのです。

まとめ

手の痛みは、腱鞘炎、ばね指、ヘバーデン結節、関節リウマチ、骨折など、様々な原因で起こります。日常生活に支障をきたす前に、適切な治療とケアを始めましょう。

痛みを感じたら、まずは安静にして、炎症がある場合は冷湿布を試してみてください。痛みが続く場合は、自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。整形外科で適切な診断を受け、原因に応じた治療法を選びましょう。

日頃から、正しい姿勢や手の使い方、ストレッチ、バランスの良い食事を心がけ、適度な休息を取ることで、手の痛みを予防できます。また、定期的な検診も早期発見・早期治療につながります。手の健康を守り、快適な毎日を送りましょう。

参考文献

  • McHugh J. Methotrexate improves pain in hand OA. Nature reviews. Rheumatology 20, no. 1 (2024): 3.

追加情報

[title]: Methotrexate improves pain in hand OA.,

メトトレキサートによる手指骨関節炎の疼痛改善

【要約】

  • メトトレキサートが手指骨関節炎の痛みを軽減する効果を示した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37949970,

[quote_source]: and McHugh J. “Methotrexate improves pain in hand OA.” Nature reviews. Rheumatology 20, no. 1 (2024): 3.

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