- 2025年3月2日
膝の痛みは場所で原因が違う!部位別の症状と治療のポイント
膝の痛みは、歩くことや階段を上り下りすること、立ち上がるといった日常動作を妨げ、スポーツや趣味を楽しめなくなる原因になります。痛む場所によって原因が異なり、適切な治療法も変わります。
日本人の40歳以上では、男性の42.6%、女性の62.4%に変形性膝関節症の所見が見られることが研究で報告されています。この記事では、膝の前側、内側、外側、後側の痛みの原因と治療法を解説します。記事を読むことで、日常生活を快適に過ごすためのヒントが得られます。
膝の痛みの部位別の症状
膝の構造は複雑で、骨や靭帯、軟骨、筋肉など多くの組織が組み合わさって機能しています。痛む部位を特定し、特徴を理解することで、適切な治療やケアにつなげることができます。膝の痛みについて、以下のように部位別で症状を解説します。
- 膝の前側の痛み
- 膝の内側の痛み
- 膝の外側の痛み
- 膝の後側の痛み
膝の前側の痛み
膝の前側の痛みは、膝のお皿「膝蓋骨(しつがいこつ)」の周辺に発生します。膝蓋骨の痛みには、以下の種類があります。
- ジャンパー膝
バスケットボールやバレーボールなどジャンプやダッシュを繰り返すスポーツで発症しやすく、膝のお皿の上や周囲に痛みを感じます。特に運動後やジャンプ動作後に痛みが強くなるのが特徴です。 - 膝蓋大腿関節症
加齢とともに膝蓋骨と大腿骨(だいたいこつ)の間にある軟骨がすり減ることで発症し、階段の上り下りや立ち上がりといった日常動作で痛みを感じます。進行すると膝のお皿の周囲が腫れたり、水が溜まったりすることもあり、膝を曲げ伸ばしする際にゴリゴリという音が鳴ることがあります。安静にすることで痛みが軽減する場合もありますが、進行すると安静時にも痛みを感じるようになります。
膝の内側の痛み
膝の内側の痛みとして、以下の原因が考えられます。
- 変形性膝関節症
軟骨のすり減りや老化によって引き起こされる炎症性疾患で、高齢者に多く見られます。初期症状として歩き始めや立ち上がり時に痛みを感じますが、進行すると常に痛みを感じるようになります。 - 鵞足炎(がそくえん)
膝の内側にある腱の付着部が炎症を起こす疾患で、ランニングやジャンプなどの繰り返し動作により発症しやすく、スポーツ愛好家に多く見られます。膝の内側に痛みや腫れ、熱感を伴うのが特徴です。 - 内側半月板損傷
スポーツや日常生活での急な動作によって半月板が損傷することで発症します。半月板は膝関節内の軟骨で、クッションの役割を果たしています。損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に引っかかりを感じたり、膝に力が入らなくなったりします。
膝の外側の痛み
膝の外側の痛みには、以下の種類があります。
- 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)
ランニングなどの繰り返し動作によって、膝の外側にある腸脛靭帯と大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)が摩擦を起こし、炎症を引き起こします。別名「ランナー膝」とも呼ばれます。ランニング中に痛みを感じ、特に下り坂で痛みが強くなる傾向です。 - 外側側副靭帯損傷(がいそくそくふくじんたいそんしょう)
スポーツや転倒によって膝の外側にある靭帯が損傷することで発症し、強い痛みや腫れ、膝の不安定感を伴います。膝関節内の半月板や十字靭帯の損傷を合併しているケースもあります。
膝の後側の痛み
膝の後側の痛みの原因は、主に以下の2つです。
- ベーカー嚢胞(ベーカーのうほう)
膝の裏側に袋状のものができ、そこに液体が溜まって腫れる疾患です。膝の裏側に痛みや腫れ、違和感を感じます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの基礎疾患に伴って発症することがあります。 - 筋肉の炎症
使いすぎや急な無理な動作によって引き起こされます。膝の裏側に痛みや腫れ、熱感を伴い、日常生活やスポーツ活動で膝関節に負担がかかることで炎症が発生し、痛みを生じます。
膝の痛みは原因によって適切な治療法が異なります。自己判断せず、医療機関を受診して正しい診断と治療を受けることが大切です。
膝の痛みの治療法
痛みの原因によって治療法が異なるため、適切な方法を選ぶことが重要です。主な治療法は以下のとおりです。
- 薬物療法
- ヒアルロン酸注射
- 手術
- 保存療法
- リハビリテーション
薬物療法
薬物療法は、痛みや炎症を抑えるための治療法です。鎮痛剤や抗炎症薬が内服薬や外用薬、注射薬として処方されます。特に痛みが強い場合には、より効果の高い薬が使用されることもありますが、副作用のリスクがあるため、医師の指示に従うことが大切です。
ヒアルロン酸注射
ヒアルロン酸は関節液の主成分で、関節の動きを滑らかにする役割を果たします。軟骨のすり減りによってヒアルロン酸が不足すると、関節の動きが悪くなり、痛みが生じやすくなります。ヒアルロン酸注射は、不足した成分を関節内に直接補充し、関節の動きを改善することで、痛みを軽減します。
手術
保存療法で効果が得られない場合や、重度の症状には手術が必要です。関節鏡手術は内視鏡を使用し、半月板損傷や靭帯損傷などを修復します。人工関節置換術は損傷が進行した関節を人工関節に置き換え、関節機能を回復させます。特に変形性膝関節症の末期に適応されます。
保存療法
保存療法は、手術を行わない治療法の総称で、薬物療法やヒアルロン酸注射、リハビリテーション、装具療法が含まれます。軽度の症状や初期段階では特に有効で、症状に応じて治療法を組み合わせることが重要です。膝の安定性を高めるために、サポーターや装具の使用が推奨されます。
リハビリテーション
リハビリテーションは、膝関節の機能回復や痛みの軽減を目的とし、ストレッチや筋力トレーニング、運動療法を通じて行われます。手術後の回復だけでなく、保存療法と併用することで効果を高めます。再発予防のためにも、痛みが軽減した後も継続的に行うことが推奨されます。
理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行うことで、膝関節の機能を維持・改善し、快適な日常生活を取り戻すことが期待できます。
膝の痛みを予防・改善する5つの方法
膝の痛みを防ぎ、改善するために効果的な5つの方法は以下のとおりです。
- 適度な運動
- ストレッチ
- 体重管理
- サポーター
- 生活習慣の改善
適度な運動
適度な運動は、膝関節の周囲の筋肉を強化し、関節を安定させる効果があります。膝への負担が少ないおすすめの有酸素運動は以下の3つです。
- ウォーキング
特別な道具が不要で、気軽に始められます。1日30分程度を目安に、自分のペースで歩きましょう。 - 水泳
浮力により膝への負担が軽減されるため、痛みがある方でも無理なく運動できます。水中ウォーキングも効果的です。 - サイクリング
ペダルを漕ぐ動作は膝関節の可動域を広げ、柔軟性を高めます。
運動前には必ず準備運動を行い、運動後にはクールダウンを忘れずにしましょう。
ストレッチ
ストレッチは、膝関節の柔軟性を高め、筋肉の緊張を和らげる効果があります。以下の3つの部位を中心にストレッチを行うことが効果的です。
- 大腿四頭筋のストレッチ
立った状態で片方の足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるように持ち上げます。太ももの前側が伸びているのを感じながら20~30秒間保持します。 - ハムストリングスのストレッチ
床に座り、片方の足を伸ばし、もう片方の足を曲げます。伸ばした足のつま先に向かって上体を倒し、太ももの裏側が伸びているのを感じながら20~30秒間保持します。 - 腓腹筋のストレッチ
壁に手をつき、片方の足を後ろに引き、かかとを地面につけたまま膝を伸ばします。ふくらはぎが伸びているのを感じながら20~30秒間保持します。
ストレッチは毎日行うのが理想的で、お風呂上がりなど体が温まっているときに行うとより効果的です。
体重管理
体重増加は膝への負担を増加させ、痛みを悪化させる原因となります。肥満は、変形性膝関節症のリスクを高める要因の一つです。適正体重を維持するために、バランスの良い食事を心がけましょう。適度な運動を継続することも体重管理に役立ちます。
サポーター
サポーターは、膝関節を安定させ、痛みの軽減が期待できます。スポーツ時や日常生活で膝に負担がかかるときに使用することで、痛みの予防に役立ちます。薬局やスポーツ用品店などで購入できますが、医師や理学療法士に相談して症状や目的に合ったものを選びましょう。
生活習慣の改善
姿勢や日常の動作も膝の痛みに大きく影響します。猫背は膝への負担を増大させるため、普段から背筋を伸ばすことを意識してください。靴選びも重要です。ハイヒールは膝に大きな負担をかけるため、なるべく避け、クッション性のある靴を選びましょう。
和式トイレの使用や正座は膝に負担がかかるため、洋式トイレを使用しましょう。正座はできるだけ避けるとともに、椅子に座る際は足を組む癖も控えるように心がけてください。
まとめ
膝の痛みは、場所によって原因が異なり、適切な治療法も変わってきます。自己判断で市販薬に頼ったり、放置したりせずに、医療機関を受診し、専門家の診断を受けることが大切です。
痛みの原因を特定し、適切な治療と予防策を行うことで、痛みを早期に改善し、快適な日常生活を取り戻しましょう。
参考文献
- Ma Y, Chen YS, Liu B, Sima L. Ultrasound-Guided Radiofrequency Ablation for Chronic Osteoarthritis Knee Pain in the Elderly: A Randomized Controlled Trial. Pain Physician, 27(3), 2024, p.121-128.
- Yoshimura N, Muraki S, Oka H, Kawaguchi H, Nakamura K, Akune T. Cohort profile: research on Osteoarthritis/Osteoporosis Against Disability study. International Journal of Epidemiology, 39(4), 2010, p.988-995.