- 2025年3月2日
膝の違和感!症状と早めの対処法
膝に違和感を感じたことはありませんか?膝の違和感は、さまざまな原因で起こりうる症状です。厚生労働省の報告書(2008年)によれば、変形性膝関節症の潜在患者を含めた推計患者数は約3,000万人とされています。
この記事では、膝の違和感の主な原因と症状、そして効果的な対処法をわかりやすく解説します。あなたの将来の膝の健康を守るヒントをお届けします。
膝の違和感に対する原因と症状
膝の違和感の主な原因と症状について、以下の4つを解説します。
- 加齢による軟骨のすり減り
- スポーツによるケガや負担
- デスクワークなどによる運動不足
- その他の病気
加齢による軟骨のすり減り
軟骨は、骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす、ツルツルとした組織です。加齢とともにすり減ると、骨同士が直接こすれ合い、炎症や痛みを引き起こします。これが変形性膝関節症です。変形性膝関節症の初期には、次の症状が見られます。
- こわばりや違和感
- 起床時や、長時間座っていた後の動き始めに違和感を感じやすい
- スムーズに動かない
- 階段を降りるときの違和感
スポーツによるケガや負担
スポーツは健康に良いですが、膝への負担も大きいため、さまざまなケガのリスクが伴います。具体的なケガについては以下のとおりです。
- 半月板損傷
半月板は膝関節の中にあるC型の軟骨で、クッションの役割を果たしています。損傷すると強い痛みが出ることもありますが、「膝に何かが引っかかる感じがする」「カクンと音が鳴る」「違和感だけを感じる」といった症状が現れる場合もあります。 - 靭帯損傷
靭帯は、骨と骨をつないでいる丈夫な組織です。靭帯が損傷すると、痛みや腫れ、膝の動かしづらさ、グラグラとした不安定感などが現れます。 - 膝蓋骨の亜脱臼
膝のお皿(膝蓋骨)が正しい位置からずれる症状で、膝に負担がかかる動作で発生しやすいです。強い痛みを伴うこともありますが、違和感だけの場合もあります。
デスクワークなどによる運動不足
運動不足になると、太ももの筋肉、特に大腿四頭筋が弱くなり、膝の安定性が低下し違和感を感じやすくなります。「階段の上り下りで膝がカクンとなる」「立ち上がるときに、膝がずれるような感じがする」といった症状が現れます。
O脚の方は、内転筋やハムストリングスといった筋肉の柔軟性が低下しやすく、膝への負担が大きくなります。変形性膝関節症では、中殿筋というお尻の筋肉が萎縮していることが多いです。中殿筋は歩行時に骨盤を安定させる役割があり、筋肉が弱ると膝への負担が増加し、違和感や痛みにつながります。
その他の病気
以下の病気が原因で、膝の違和感が起こることがあります。
- 関節リウマチ
免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。膝の痛みや腫れ、しびれ、朝起きたときのこわばりなどの症状が現れます。関節リウマチは、左右対称に症状が現れることが多いのが特徴です。 - タナ障害
滑膜ひだ(関節を包む膜のひだ)という組織が膝関節に挟まって炎症が起こる病気です。「膝を動かすとクリック音がする」「引っかかり感を感じる」といった症状が現れます。 - 椎間板ヘルニア
腰から出ている神経は足の先までつながっているため、腰に異常があると、膝にしびれや違和感を感じることがあります。「安静にしているときは症状がなく、歩くと症状が現れる」といった症状が現れます。
急な痛みに!RICE処置のやり方と注意点
膝に急な痛みや腫れが生じた場合は、RICE処置を行いましょう。RICE処置とは、R以下の4つの手順からなる応急処置です。
- Rest(安静)
- Ice(冷却)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
Rest(安静)
安静にすることで、炎症の悪化を防ぐことができます。松葉杖を使う、椅子に座って安静にするなど、膝に負担がかからないようにしましょう。無理に動かすと症状が悪化することがありますので、注意が必要です。
Ice(冷却)
氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、痛めた部分に15〜20分程度当てます。冷却することで、血管が収縮し、炎症や腫れを抑える効果が期待できます。冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、注意が必要です。皮膚の状態を確認しながら、適切な時間で行いましょう。
Compression(圧迫)
弾性包帯などで痛めた部分を適度に圧迫します。圧迫することで、腫れや内出血の広がりを抑えることができます。締め付けすぎると血行が悪くなるので注意しましょう。指先の色や温度を確認し、異常があれば圧迫を緩めてください。
Elevation(挙上)
痛めた膝を心臓より高い位置に上げます。クッションなどを使い、楽な姿勢を保ちましょう。重力によって血液やリンパ液の流れが促進され、むくみを軽減する効果があります。
RICE処置はあくまで応急処置です。違和感が強くなったり、膝に痛みが出始めたり、数日経っても症状が続いたりする場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
膝の違和感への対処法4選
膝の違和感をどのように対処すれば良いのか、以下の4つのポイントを解説します。
- 市販薬
- サポーター
- 家庭でできるケア
- 専門家への相談
市販薬
市販薬には以下の2つがあります。痛みや炎症を抑えることができます。
- 痛み止め
鎮痛剤には、痛みを感じにくくする作用があります。用法・用量を守って服用しましょう。 - 湿布薬
患部に貼ることで、痛みや炎症を和らげる効果があります。冷感タイプと温感タイプがあるので、症状に合わせて選びましょう。冷感タイプは炎症が強いときに、温感タイプは慢性的な痛みに適しています。湿布薬は皮膚から薬剤が吸収されるため、貼る時間や枚数を必ず守りましょう。
市販薬はあくまで対症療法であり、根本的な原因を治療するものではありません。
サポーター
サポーターは、膝関節を安定させ痛みや違和感の軽減に役立ちます。以下の2つのタイプがあります。
- 固定タイプ
膝関節をしっかりと固定することで、痛みや不安定感を軽減します。スポーツ時やケガの直後などに使用されます。関節の動きを制限することで、炎症の悪化を防ぎます。 - サポートタイプ
膝関節を適度にサポートすることで、動きを制限せずに痛みを軽減します。日常生活や軽い運動時に使用されます。膝周りの筋肉をサポートすることで、関節への負担を軽減します。
サポーターを選ぶ際には、自分の症状や目的に合ったものを選びましょう。きつすぎると血行が悪くなるため、適切なサイズを選び、正しく装着しましょう。
家庭でできるケア
家庭でできるケア方法と注意点は、以下のとおりです。
- 温熱療法
温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。温タオルや湯たんぽなどを使い、患部を温めましょう。ただし、急性期の炎症には冷やすことが重要です。熱を持っている場合は、温めないようにしましょう。 - ストレッチ
柔軟性を高め、痛みを軽減する可能性があります。無理のない範囲で行いましょう。痛みを感じたらすぐに中止してください。 - マッサージ
血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる可能性があります。ただし、炎症が強い場合はマッサージを控えましょう。
ケアを行っても症状が改善しない場合や、痛みが増す場合は、すぐに中止し医療機関を受診しましょう。
専門家への相談
膝の違和感が続く場合は、整形外科を受診しましょう。医師は、症状や診察結果にもとづいて以下の検査を行い、原因を特定します。
- レントゲン検査
骨の状態を確認するために用いられます。骨折や変形性膝関節症などの診断に役立ちます。 - MRI検査
軟骨や靭帯、半月板などの状態を確認するために用いられます。レントゲン検査ではわからない軟部組織の損傷を診断することができます。
自己判断で治療を行うと、症状が悪化したり、適切な治療の開始が遅れたりする可能性があります。早期に専門家へ相談し、適切な治療を受け回復を目指しましょう。
膝の違和感の予防と再発防止策
日常生活で以下の点に注意することで、膝への負担を軽減できる可能性があります。
- 適度な運動
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 体重管理
- 生活習慣の改善
適度な運動
適度な運動は、膝の周りの筋肉を鍛え、関節を安定させることができます。膝への負担が少ない以下の運動がおすすめです。
- ウォーキング
毎日30分程度のウォーキングは、膝の健康維持に最適です。無理のないペースで、景色を楽しみながら歩きましょう。坂道は避け、平坦な道を歩くことを心がけてください。正しい姿勢で歩きましょう。猫背にならないように背筋を伸ばし、かかとから着地するように意識しましょう。 - 水中ウォーキング
水の中は浮力があるので、膝への負担が軽減されます。陸上でのウォーキングが難しい方にもおすすめです。水の抵抗を利用することで、効率的に筋力トレーニングを行うことができます。 - サイクリング
自分のペースで漕ぐことができ、景色も楽しめるので、長続きしやすいというメリットもあります。電動アシスト付き自転車を利用すれば、さらに膝への負担を軽減できます。
最初から無理をするのは禁物です。自分の体力に合わせて、徐々に運動量を増やしていくようにしましょう。痛みを感じたらすぐに運動を中止し、安静にすることが大切です。
ストレッチ
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、膝の動きをスムーズにするために不可欠です。具体的なストレッチ方法について解説します。
- 大腿四頭筋のストレッチ
壁や椅子につかまり、片方の足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるようにします。この姿勢を20〜30秒間保持します。大腿四頭筋は、膝を伸ばす際に働く筋肉です。筋肉が硬くなると、膝の動きが悪くなり、違和感につながる可能性があります。 - ハムストリングスのストレッチ
床に座り、片方の足を伸ばし、もう片方の足を曲げます。伸ばした足のつま先を手でつかみ、体を前に倒します。この姿勢を20〜30秒間保持します。ハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉です。筋肉が硬くなると、膝を曲げる際に違和感を感じることがあります。 - 内転筋のストレッチ
床に座り、両足を大きく開きます。両手を前に伸ばしながら、上体を前に倒します。この姿勢を20〜30秒間保持します。内転筋は、太ももの内側にある筋肉です。筋肉が硬くなると、O脚になりやすく、膝への負担が増加する可能性があります。
ストレッチを行う際は、息を止めずに、ゆっくりと行いましょう。痛みを感じるところまで無理に伸ばさないように注意し、反動をつけずに、静かに伸ばすようにしてください。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、膝関節を支える筋肉を強化し、安定させます。具体的なトレーニング方法と、効果的な箇所については以下のとおりです。
- スクワット
椅子に座るように腰を落とし、立ち上がる動作を繰り返します。スクワットは、大腿四頭筋やハムストリングス、臀筋など、複数の筋肉を同時に鍛えることができるトレーニングです。 - レッグエクステンション
椅子に座り、片方の足を伸ばす動作を繰り返します。レッグエクステンションは大腿四頭筋を重点的に鍛えるトレーニングです。 - レッグプレス
マシンを使って足を押し出す動作を繰り返します。大腿四頭筋を鍛えるトレーニングですが、マシンを使うことで負荷を調整しやすいため、初心者の方にもおすすめです。
自分の体力に合った負荷で行い、正しいフォームで行うことが大切です。痛みを感じたらすぐにトレーニングを中止しましょう。
体重管理
適正体重を維持することは、膝の健康を守るうえで大切です。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、健康的な生活習慣を維持しましょう。肥満は、膝関節症のリスクを高める要因の一つです。膝への負担が大きくなり、違和感や痛みが悪化する可能性があります。体重管理によって膝への負担を軽減し、健康な膝を維持しましょう。
生活習慣の改善
日常生活の中で、膝への負担を軽減する習慣を取り入れることにより、膝の違和感を予防できます。以下の点に注意しましょう。
- 靴
ヒールが高い靴や底の薄い靴は、膝への負担が大きくなります。底が厚く、クッション性のある靴を選びましょう。適切な靴を選ぶことで、歩行時の衝撃を吸収し、膝への負担を軽減することができます。 - 歩き方
猫背にならないように背筋を伸ばし、かかとから着地するようにしましょう。歩幅を大きくしすぎると、膝への負担が増加するため、適切な歩幅で歩くことが重要です。 - 姿勢
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、ストレッチを行うようにしましょう。同じ姿勢を長時間続けると、筋肉が硬くなり、血行が悪くなるため膝の違和感につながる可能性があります。
まとめ
膝の違和感はさまざまな原因で起こります。違和感を感じた場合は、医療機関に相談することをおすすめします。応急処置を行う場合は、正しい方法で実施することが重要です。RICE処置などの応急処置を行い、市販薬やサポーターの使用も検討しましょう。ストレッチや筋トレなどのセルフケアも有効ですが、症状が改善しない場合は整形外科を受診しましょう。
適切な検査と治療を受けることが重要です。日頃から適度な運動やストレッチ、体重管理を心掛け、膝への負担を軽減することで、違和感の予防・再発防止につながります。快適な日常生活のために、膝のケアを習慣づけましょう。
参考文献
Jonathan Galvão Tenório Cavalcante, Victor Hugo de Souza Ribeiro, Rita de Cássia Marqueti, Isabel de Almeida Paz, Júlia Aguillar Ivo Bastos, Marco Aurélio Vaz, Nicolas Babault, João Luiz Quagliotti Durigan. Effect of muscle length on maximum evoked torque, discomfort, contraction fatigue, and strength adaptations during electrical stimulation in adult populations: A systematic review. PLoS One, 2024, 19(6), e0304205