• 2025年3月2日

膝の痛みと腫れが突然！考えられる原因と対処法を徹底解説

突然の膝の痛みや腫れ、経験したことはありませんか？スポーツや日常生活で何の前触れもなく生じる痛みに、不安を感じる方も多いです。整形外科領域では、症状で悩む患者さんが多く見られます。

原因は多岐に渡り、適切な対処をしないと症状が長引き、回復が遅れる可能性があります。この記事では、膝の痛みと腫れの原因を4つに分け、今すぐできる対処法と治療法を解説します。

膝の痛みと腫れの原因4選

膝の痛みと腫れの原因を以下の4つのグループに分けて解説します。

  • 急性外傷：靭帯損傷・骨折・半月板損傷
  • 炎症性疾患：変形性膝関節症・関節リウマチ・痛風
  • 感染症：化膿性関節炎・蜂窩織炎
  • その他：膝に水が溜まる・腫瘍

急性外傷：靭帯損傷・骨折・半月板損傷

急性外傷とは、スポーツや転倒、交通事故など、急激な衝撃により起こる怪我です。膝関節は、体重を支え、複雑な動きを可能にするため、さまざまな組織で構成されています。強い力が加わると、複数の部位が同時に損傷することもあります。代表的な急性外傷は以下のとおりです。

  • 靭帯損傷
    靭帯は、骨と骨をつなぎ関節を安定させる役割があります。膝には、前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯という4つの主要な靭帯があります。損傷すると、痛みや腫れ、関節の不安定感、膝が抜けるような感覚が現れます。スポーツで急な方向転換やストップをした際に起こりやすく、手術が必要になる場合もあります。
  • 骨折
    骨折は、骨が折れたりひびが入ったりした状態です。膝の骨折は、転倒や交通事故など、高いエネルギーの外力が加わった際に起こりやすいです。強い痛みや腫れ、変形などがみられ、皮膚を突き破って骨が露出する開放骨折もあります。
  • 半月板損傷
    半月板は大腿骨と脛骨の間にあるC型の軟骨で、クッションの役割があります。スポーツや日常生活での動作で損傷することがあり、軽度の場合は自然治癒しますが、断裂が大きい場合は手術が必要になります。痛みや腫れ、ひっかかり感、クリック音、膝の曲げ伸ばしがしにくいなどの症状が現れます。関節内に炎症が起こり、水が溜まることもあります。

炎症性疾患：変形性膝関節症・関節リウマチ・痛風

炎症性疾患は、関節に炎症が起こる病気の総称です。炎症とは、発赤や腫脹、熱感、疼痛、機能障害の5つの症状を伴う生体反応です。炎症性疾患は以下のとおりです。

  • 変形性膝関節症
    加齢や肥満、激しい運動、遺伝などが原因で、膝関節の軟骨がすり減り炎症が起こる病気です。初期は立ち上がりや歩き始めに痛みを感じることが多く、進行すると安静時にも痛みが続きます。軟骨がすり減ると骨と骨が直接こすれ合い、炎症が悪化し、さらに軟骨の損傷が進行する悪循環に陥ります。
  • 関節リウマチ
    免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。膝以外にも、手や足の関節が対称的に腫れたり、痛んだりします。朝、関節がこわばるのも特徴です。放置すると関節の変形や機能障害につながるため、早期診断と適切な治療が重要です。
  • 痛風
    血液中の尿酸値が高くなり、尿酸の結晶が関節に溜まって炎症を起こす病気です。足の親指の付け根に起こることが多いですが、膝関節に起こることもあります。風が吹くだけでも痛いほどの激しい痛みや腫れ、熱感が特徴です。食事療法と薬物療法で尿酸値をコントロールすることが重要です。

感染症：化膿性関節炎・蜂窩織炎

感染症は、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入して炎症を起こす病気です。感染した部位は炎症反応により、発赤や腫脹、熱感、疼痛、機能障害といった症状が現れます。感染症は以下のとおりです。

  • 化膿性関節炎
    細菌が関節内に侵入して炎症を起こす病気です。強い痛みや腫れ、熱感、発熱などが現れます。関節液が膿状になることもあり、放置すると関節の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
  • 蜂窩織炎
    皮膚や皮下組織に細菌が感染して炎症を起こす病気です。膝周辺の皮膚が赤く腫れ上がり、痛みや熱感を伴います。重症化すると、敗血症などの全身性の感染症を引き起こす可能性もあります。

その他：膝に水が溜まる・腫瘍

その他には、以下の疾患があります。

  • 膝に水が溜まる
    関節液が過剰に分泌されたり、関節内が出血したりして起こります。医学的には関節液貯留と呼ばれます。外傷や炎症性疾患、滑液包炎などが原因で起こります。膝蓋軟骨軟化症とは、膝蓋骨の裏側の軟骨が傷ついたり、炎症を起こしたりする病気で、膝に水が溜まります。ランナー膝とも呼ばれ、特に若い人に多く、膝蓋骨の軟骨の腫れや浮腫、軟化の変化を伴います。
  • 腫瘍
    細胞が異常に増殖してできる塊のことです。膝関節にも腫瘍ができることがあります。良性の腫瘍と悪性の腫瘍があり、悪性の腫瘍はがんと呼ばれます。稀なケースですが、膝の痛みや腫れの原因として腫瘍も考慮する必要があります。

今すぐできる対処法4選

適切な処置を早期に行うことで、回復を早め、より良い経過をたどることができます。ご自宅で今すぐできる対処法として、以下の4つをご紹介します。

  • 安静：膝を動かさず安静にする
  • 冷却：患部に氷嚢などを当てて冷やす
  • 圧迫：包帯やサポーターで圧迫する
  • 挙上：足を心臓より高い位置に上げる

痛みや腫れを一時的に和らげる効果が期待できますが、根本的な治療ではありませんのでご注意ください。

安静：膝を動かさず安静にする

安静にすることは、患部への負担を最小限に抑え、自然治癒力を高めます。痛みのある膝をできるだけ動かさないようにし、歩行や階段の上り下り、膝の曲げ伸ばしなどを控えましょう。痛みが強い場合は、松葉杖や車椅子の使用を検討してください。

安静期間は、痛みの程度や原因によって異なります。痛みが軽くなっても、すぐに激しい運動を再開すると再発するリスクを高めます。焦らず、時間をかけて回復させることが大切です。研究によると、自宅での運動介入は、クリニックでの治療と同等の効果が期待できます。

冷却：患部に氷嚢などを当てて冷やす

冷却は、炎症による熱や腫れを抑える効果があります。氷嚢や保冷剤をタオルに包み、患部に15～20分程度当てて冷やしましょう。冷却時間は厳守し、長時間冷やし続けると凍傷を起こす可能性があるので、注意が必要です。

冷却は、急性期、つまり痛みが発生してから48時間以内が特に効果的です。48時間を過ぎると、炎症よりも組織の修復が優先されるため、温熱療法のほうが適している場合もあります。

圧迫：包帯やサポーターで圧迫する

圧迫は、腫れや内出血の拡大を抑える効果があります。弾性包帯やサポーターを用いて、膝を適度に圧迫しましょう。締め付けすぎると血行が悪化し、逆効果になる可能性があります。指が1本入る程度の余裕を持たせて圧迫することが大切です。

長時間圧迫し続けると皮膚がかぶれたり、神経が圧迫されたりする可能性があります。定期的に包帯やサポーターを外し、皮膚の状態を確認しましょう。

挙上：足を心臓より高い位置に上げる

挙上は、重力によって患部に溜まった血液やリンパ液の還流を促し、腫れを軽減する効果があります。椅子に座っているときや横になっているときは、クッションや枕などを使い、足を心臓より高い位置に保つようにしましょう。

専門家による治療3選

ご自身でできる対処法を試しても改善が見られない場合は、医療機関を受診し、専門家による適切な治療を受けることが大切です。代表的な治療法は以下の3つです。

  • 薬物療法：痛み止め・抗炎症薬など
  • 理学療法：マッサージ・運動療法など
  • 手術療法：関節鏡手術・人工関節置換術など

薬物療法：痛み止め・抗炎症薬など

薬物療法は、炎症や痛みを抑え、症状を緩和する治療法です。内服薬や外用薬、注射薬などさまざまな種類があります。痛みが強い急性期には、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。非ステロイド性抗炎症薬は、痛みや炎症を引き起こすプロスタグランジンという物質の生成を抑えることで効果を発揮します。

炎症が強い場合や、非ステロイド性抗炎症薬で効果が不十分な場合には、ステロイド薬の注射を行います。ステロイド薬は強力な抗炎症作用があり、短期間で効果が現れますが、長期間使用すると感染症のリスク増加や骨粗鬆症などの副作用が現れる可能性があり、注意が必要です。

変形性膝関節症のように慢性的な痛みが続く場合は、ヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにします。関節内に直接注射することで、軟骨の保護や炎症の抑制、痛みの軽減効果が期待できます。

理学療法：マッサージ・運動療法など

理学療法は、身体の機能改善を目的とした治療法です。マッサージや運動療法、温熱療法などさまざまな方法があり、痛みの軽減、関節の動きの改善、筋力強化などが期待できます。マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進することで痛みを軽減する効果があります。

運動療法では、ストレッチや筋力トレーニングなど、患者さんの症状に合わせた個別のプログラムを作成し、関節の可動域の改善や筋力強化を目指します。温熱療法は、患部を温めることで血行を促進し、痛みを和らげます。

手術療法と異なり身体への負担が少なく、高齢の方や体力に自信のない方でも安心して受けられます。継続して行うことで、より効果を実感できます。

手術療法：関節鏡手術・人工関節置換術など

手術療法は、保存療法で効果が得られない場合や、症状が進行している場合に検討されます。関節鏡手術は、関節内に小さなカメラを挿入し、関節の状態を直接確認しながら行います。小さな手術跡で済み、身体への負担が少なく回復も比較的早いです。半月板損傷や靭帯損傷などの治療に用いられます。

人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。変形性膝関節症の末期などで、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合に検討されます。手術後はリハビリテーションが必要になり、症状の改善や生活機能の回復を目指します。

膝蓋軟骨軟化症(ランナー膝)と呼ばれる、若い世代に多い膝の痛みに対して、間葉系幹細胞(MSCs)を用いた細胞療法が注目されています。研究によると、MSCsを関節内に注射することで、損傷した軟骨の修復を促進する効果が期待されています。

まとめ

膝の痛みや腫れが突然起こると不安になります。まずは安静、冷却、圧迫、挙上の応急処置を試しましょう。初期対応が、痛みの早期回復につながります。痛みが強い、または長引く場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

整形外科では、薬物療法や理学療法、手術療法など、症状に合わせた最適な治療法を提案してくれます。

参考文献

仲里整形外科 079-562-5169 ホームページ

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