膝裏の腫れは要注意！考えられる原因と治療のすべてを解説

膝の裏に違和感を感じたことはありませんか？ 実は、膝裏の腫れはさまざまな原因で起こりうる症状で、放置すると日常生活に支障をきたすこともあります。

 この記事では、膝裏の腫れの原因4選とそれぞれの症状や特徴、治療法についてもわかりやすく解説します。記事を読むことで、膝の健康維持に役立つ情報がわかり、適切な対処法を見つけられます。

膝裏の腫れの原因4選

膝裏の腫れを引き起こす代表的な4つの原因は、以下のとおりです。

• ベーカー嚢腫
• 変形性膝関節症
• 半月板損傷
• その他の原因(リンパの詰まり・血栓など)

ベーカー嚢腫

ベーカー嚢腫は、膝関節の滑膜という部分が膨らみ、中に滑液と呼ばれる関節液が溜まってできる袋状の腫瘍です。膝の裏に膨らみができ、特に膝を曲げると目立ちます。痛みや腫れは、膝を曲げ伸ばししたときに強くなる傾向があります。膝の裏に何か詰まっているような違和感や圧迫感を感じることもあります。

多くの場合、痛みはそれほど強くありませんが、腫れが大きくなると、神経や血管を圧迫してしびれや冷えなどの症状が現れることもあります。大人と子供で原因が異なり、大人は、変形性膝関節症や半月板損傷などの膝の病気が原因で起こることが多いです。関節に炎症が起こり、滑液が過剰に作られることが原因です。

子供の場合は、膝関節の滑膜が生まれつき少し弱く、滑液が溜まりやすいことが原因となることが多いです。大人のベーカー嚢腫の場合、半月板が損傷すると、関節液が一方通行に流れ込み、膝窩に溜まって嚢腫が形成されます。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って、骨と骨が直接接触することで痛みや腫れを起こす病気です。加齢や肥満、激しい運動などが原因で起こることが多く、中高年の方に多く見られます。初期には、立ち上がったり、歩き始めたりしたときに膝に痛みを感じることがあります。正座や階段の上り下りも難しくなることがあります。

変形性膝関節症が進行すると、炎症によって関節に水が溜まり(医学的には関節液貯留といいます)、膝の裏が腫れてくることがあります。炎症がひどくなると、膝全体が腫れぼったくなり、熱を持つこともあります。膝が変形してO脚になることもあります。

半月板損傷

半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるC型の軟骨で、膝関節にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たします。スポーツや転倒など、急激な動作や強い衝撃によって、半月板が損傷してしまうことがあります。損傷すると、膝の痛みや腫れの他に、膝を曲げ伸ばししにくくなったり、ひっかかるような感じがしたり、クリック音がしたりすることがあります。

半月板損傷は、スポーツをしている若い人に多く見られるけがですが、加齢とともに半月板が弱くなるため、高齢者でも比較的軽微な外力によって損傷が起こりやすくなります。

その他の原因(リンパの詰まり・血栓など)

リンパの流れが滞ると、老廃物が溜まってむくみ、膝の裏が腫れることがあります。長時間同じ姿勢でいたり、運動不足だったりが原因で起こりやすくなります。血栓(血の塊)が血管に詰まることで、膝の裏が腫れることもあります。

エコノミークラス症候群とも呼ばれ、飛行機での長旅などで起こりやすいです。血栓により血管が詰まると、痛みや腫れの他に、皮膚の色が変化したり、熱を持ったり、強い痛みを感じることがあります。ガングリオンという良性の腫瘍や、化膿性関節炎などの感染症が原因で膝の裏が腫れることもあります。

膝裏の腫れの症状

膝裏の腫れでよく起こる症状は以下のとおりです。

• 痛み・熱感
• 膝の曲げ伸ばしの制限
• 歩く・階段の上り下りで悪化する痛み

痛み・熱感

健康な状態の膝の裏は、滑らかで柔らかいものですが、炎症が起こると、腫れの他に熱感や痛みが現れます。身体が異物や損傷から身を守るための自然な防御反応です。原因は、膝の使いすぎやけが、細菌感染などさまざまです。激しい運動の後や、転倒して膝をぶつけた後、細菌感染が原因で炎症が起こるなど、膝の裏が腫れる場合があります。

初期の軽い炎症であれば、安静にすると自然に治まることもありますが、痛みが強い、腫れが引かない、あるいは熱を持っている場合は、医療機関を受診することが大切です。炎症を放置すると、症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

軽度の炎症では、膝の裏が少し腫れて、軽い痛みや熱感がある程度です。中等度になると、腫れがよりはっきりとして、中等度の痛みと熱感を伴います。重度の炎症になると、腫れがさらに大きくなり、強い痛みと熱感に加えて、皮膚が赤くなることもあります。さまざまな疾患で共通してみられます。

膝の曲げ伸ばしの制限

膝の裏の腫れは、膝の動きを悪くし、曲げ伸ばしを制限することもあります。腫れによって膝関節周辺の組織が圧迫され、スムーズな動きが阻害されるためです。日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると症状が悪化し、将来的に歩行困難になる可能性もあります。

高齢者の場合、転倒のリスクが高まるため、早期の診断と治療が重要です。

歩く・階段の上り下りで悪化する痛み

膝裏の腫れに伴う痛みは、歩く、階段を上り下りする動作で悪化することがあります。膝関節に大きな負担をかけるため、炎症を悪化させ、痛みを増強させるのです。階段の上り下りでは、膝を深く曲げるため、膝裏にかかる負担が大きくなり、痛みが強くなる傾向があります。

歩く際にも、地面からの衝撃が膝に伝わり、痛みが増すことがあります。長時間歩いたり、坂道や階段を上り下りしたりすると、痛みが強くなることがあります。放置すると、日常生活の制限が増し、QOL(生活の質)の低下につながる可能性があります。

深部静脈血栓症のように、血栓が原因で膝裏が腫れている場合、歩行時の痛みは血栓が移動する兆候である可能性もあり、注意が必要です。エコノミークラス症候群のように、長時間同じ姿勢でいることで発症する血栓症は、肺塞栓症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

深部静脈血栓症は、下肢の静脈に血栓（血の塊）が形成される病気で、膝裏の腫れや痛みを引き起こすことがあります。特に長時間の座位や脱水がリスク要因となり、放置すると血栓が肺に移動して肺塞栓症を引き起こす危険があります。

膝裏の腫れの治療法

膝の裏の腫れは、原因によって適切な治療法が異なります。自己判断でケアするのではなく、医療機関を受診し、医師の診断にもとづいた治療を受けることが大切です。主な膝裏の腫れの治療法は以下の4つです。

• 保存療法：安静・冷却・圧迫・湿布など
• 薬物療法：痛み止め、消炎鎮痛剤など
• 手術療法：関節鏡手術など
• 理学療法：リハビリテーションなど

保存療法：安静・冷却・圧迫・湿布など

保存療法は、手術を行わずに症状を改善させる治療法です。比較的症状が軽い場合や、手術が適さない場合に選択されます。治療法は以下のとおりです。

• 安静
  まずは膝への負担を軽減することが重要です。激しい運動や長時間の立ち仕事は避け、可能な範囲で安静を保ちましょう。松葉杖や車椅子を使用することで、膝への負担をさらに軽減できます。
• 冷却
  炎症による痛みや腫れを抑えるために、氷嚢や保冷剤を用いて患部を冷やします。冷却時間は1回につき15～20分程度とし、凍傷を防ぐためにタオルなどで包んで使用しましょう。1日に数回繰り返すことが効果的です。
• 圧迫
  弾性包帯やサポーターで膝を適度に圧迫することで、腫れや内出血の広がりを抑えることができます。締め付けすぎると血行が悪くなるため、適度な圧迫を心がけましょう。就寝時は圧迫を外すことをおすすめします。
• 湿布
  消炎鎮痛作用のある湿布薬を使用することで、痛みや炎症を和らげることができます。市販薬もありますが、症状が改善しない場合は医師に相談し、より効果的な処方薬を検討しましょう。

薬物療法：痛み止め、消炎鎮痛剤など

薬物療法は、痛みや炎症を抑える薬剤を使用する治療法です。保存療法と並行して行われることが多く、症状に合わせて適切な薬剤が選択されます。治療法は以下のとおりです。

• 痛み止め
  アセトアミノフェンなどの鎮痛剤は、痛みを緩和する効果が期待できます。比較的副作用が少ないとされ、医師の判断により使用されることがあります。
• 消炎鎮痛剤
  非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる薬剤は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。内服薬だけでなく、外用薬(塗り薬、湿布薬)もあります。胃腸障害などの副作用に注意が必要です。
• ヒアルロン酸注射
  関節内のヒアルロン酸を補うことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減する効果が期待できます。変形性膝関節症などで効果を発揮します。

手術療法：関節鏡手術など

保存療法や薬物療法で効果が得られない場合や、膝関節内部に明らかな損傷がある場合、手術療法が検討されます。治療法は以下のとおりです。

• 関節鏡手術
  小さな切開部からカメラと器具を挿入して行う手術です。身体への負担が少なく、術後の回復も比較的早いというメリットがあります。半月板損傷や靭帯損傷などの治療に用いられます。
• 人工関節置換術
  変形性膝関節症が進行し、日常生活に支障をきたす場合に検討される手術です。損傷した関節を人工関節に置き換えることで、痛みを軽減し、関節の機能を回復させます。

理学療法：リハビリテーションなど

手術後や、膝の機能が低下している場合、理学療法(リハビリテーション)を行います。専門家の指導のもと、以下のようにストレッチや筋力トレーニングなどを行い、膝の機能回復を目指します。

• ストレッチ
  膝周辺の筋肉の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにします。ハムストリング損傷の予防や再発防止にも効果的です。大腿部後面にある3つの主要な筋肉(半膜様筋、大腿二頭筋、半腱様筋)のストレッチを丁寧に行うことで、筋肉の柔軟性を維持し、損傷のリスクの軽減を期待できます。
• 筋力トレーニング
  膝周辺の筋肉を強化することで関節を安定させ、再発を予防します。特に大腿四頭筋のトレーニングは重要です。

理学療法は、患者さんの状態に合わせて個別にプログラムが作成されます。何よりも継続して取り組むことが重要です。

まとめ

膝裏の腫れには、さまざまな原因があります。ベーカー嚢腫や変形性膝関節症、半月板損傷、スポーツでのけが、日常生活での動作、加齢なども原因となります。症状は、痛みや腫れ、膝の曲げ伸ばしの制限などさまざまです。症状が現れたら、まずは医療機関を受診しましょう。自己判断は禁物です。

治療法は、安静や冷却、圧迫などの保存療法から、薬物療法、手術療法まで、原因や症状に合わせて選択されます。膝裏の腫れが気になる方は、専門医の診断を受けることをおすすめします。早期の相談が症状改善につながる可能性があります。

参考文献

Bikash Poudel, Shivlal Pandey. Hamstring Injury. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan. 2023 Aug 8.