- 2025年3月2日
階段の上りだけで膝が痛む!原因と対策で改善する方法を解説
階段の昇降は歩行よりも膝への負担が大きく、体重の何倍もの負荷がかかります。 本記事では階段の上りで膝が痛む4つの原因や効果的な改善策や予防策を整形外科医の視点から解説します。膝の痛みは誰もが起こりうることで、決して他人事ではありません。膝の痛みの改善に取り組み、快適な毎日を目指しましょう。
階段の上りだけで膝が痛む3つの原因
階段の上りだけで膝が痛む4つの原因について、以下の内容を解説します。
- 加齢による軟骨のすり減り
- スポーツによる半月板損傷
- 肥満による膝への負担増加
加齢による軟骨のすり減り
年齢を重ねるにつれて、膝関節の軟骨は徐々にすり減ってきます。軟骨がすり減ると骨同士が直接ぶつかるようになり、炎症や痛みを引き起こします。初期段階では自覚症状がない場合も多いですが、進行すると階段の上り下りだけでなく、歩行時や安静時にも痛みを感じるようになります。
階段を上る動作は、体重の何倍もの負荷が膝にかかるため、軟骨がすり減っていると痛みが出やすいです。軟骨のすり減りを防ぐことは難しいですが、進行を遅らせることは可能です。日頃から適度な運動を心がけ、膝周りの筋肉を鍛えることで、軟骨への負担を軽減し、変形性膝関節症の予防・進行抑制につながります。
スポーツによる半月板損傷
ジャンプや急な方向転換を伴う激しい動作は、膝関節の半月板を損傷するリスクを高めます。半月板が損傷すると、膝の曲げ伸ばしや階段の上り下りなどで痛みを感じることがあります。損傷の程度によっては、膝に引っかかり感や、急に力が抜けるような感覚を覚えることもあります。損傷部位によっては、階段を上るよりも降りるほうが痛みが強い場合もあります。
半月板損傷はスポーツをしている人だけでなく、日常生活での動作や転倒などでも起こり得ます。階段の上り下りでは、膝関節に体重の何倍もの負荷がかかるため、半月板損傷があると痛みが悪化しやすいです。半月板損傷の予防には、スポーツ時の適切なウォーミングアップやクールダウン、正しいフォームでの運動などが重要です。
肥満による膝への負担増加
体重が増加すると、膝関節にかかる負担も増大します。肥満による膝の痛みは、階段の上りだけでなく、歩行時や立ち上がり時などにも現れることがあります。肥満は変形性膝関節症のリスクを高める可能性もあります。
体重管理は膝の健康を守るうえで重要です。適切な食事と運動を心がけ、適正体重を維持することで膝への負担を軽減し、痛みの予防・改善につながります。
階段上りの膝痛を効果的に改善する4つの対策
階段を上るときのズキンとする膝の痛みを放っておくと悪化することもあります。階段上りの膝痛を効果的に改善する対策について、以下の4つを解説します。
- ストレッチで柔軟性を高める
- 筋力トレーニングで膝を支える筋肉を強化する
- サポーターやテーピングで膝関節を安定させる
- 薬物療法や注射で痛みを緩和する
ストレッチで柔軟性を高める
ストレッチによって筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げることで、膝への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。階段を上る動作に関係する以下の筋肉は重点的にストレッチをしましょう。
- 太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)
- 太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)
- ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)
高齢者の方や運動に慣れていない方は、椅子に座って行うストレッチや、タオルを使ったストレッチなど、負担の少ない方法から始めることをおすすめします。ストレッチは、息を止めずにゆっくりと行うことが大切です。
痛みを感じる場合は、無理をせず中止してください。毎日継続して行うことで、効果を実感しやすくなります。ご自身の生活スタイルに合わせて、無理なく続けられる方法を選びましょう。
筋力トレーニングで膝を支える筋肉を強化する
膝の痛みを根本的に改善するためには、膝関節を支える筋肉を強化することが不可欠です。筋力トレーニングは、膝の安定性を高める効果があります。大腿四頭筋やハムストリングス、お尻の筋肉(大殿筋)は、階段を上る際に重要な役割を果たします。筋力トレーニングには以下のようなものがあります。
- スクワット
階段を上る際の筋肉を総合的に鍛える効果的なトレーニングです。椅子に浅く腰掛けるようにゆっくりと立ち座りを繰り返します。 - レッグレイズ
椅子に座り、片方の足を上げて数秒間キープするトレーニングです。大腿四頭筋を鍛えることができます。 - カーフレイズ
床に立ちつま先立ちになって、かかとを上下に動かすトレーニングです。ふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。
筋力トレーニングを行う際は、正しいフォームで行うことが重要です。間違ったフォームで行うと膝を痛めてしまう可能性があります。トレーニングの負荷や回数はご自身の体力に合わせて調整し、無理なく継続することが大切です。
サポーターやテーピングで膝関節を安定させる
サポーターやテーピングは、膝関節を外部からサポートすることで安定性を高め、痛みを軽減する効果があります。さまざまな種類があり、特徴が異なるためご自身の症状や好みに合わせて適切なものを選びましょう。
- オープンタイプ
膝のお皿部分が開いているタイプで、通気性が良く動きを妨げにくいのが特徴です。 - クローズドタイプ
膝全体を覆うタイプで、保温性が高く安定感が強いのが特徴です。 - ストラップタイプ
膝のお皿の上下をストラップで固定するタイプで、動きをサポートする効果があります。
サポーターを選ぶ際にはサイズが合っているか、装着感が良いかなどを確認しましょう。適切なサポーターを使用することで、膝の安定性を高め、痛みを和らげることができます。
薬物療法や注射で痛みを緩和する
痛みが強い場合は、薬物療法や注射によって痛みを緩和する方法もあります。内服薬は、痛み止めや炎症を抑える薬などがあります。注射は、ヒアルロン酸注射やステロイド注射などがあります。
ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きをスムーズにする働きがあります。ヒアルロン酸注射は関節内のヒアルロン酸を補うことで、痛みを軽減する効果が期待できます。ステロイド注射は強力な抗炎症作用を持つ薬剤を、関節内に注射することで炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。
上記の治療法は医療機関で医師の診察を受けて、適切な処方を受けるようにしましょう。自己判断で薬を使用することは避け、必ず医師の指示に従ってください。
階段上りの膝痛を予防するための対策3選
階段上りの膝の痛みは、少しの工夫で予防や軽減が期待できる場合があります。階段上りの膝痛を予防するための対策について、以下の3つを解説します。
- 体重管理で膝への負担軽減
- 正しい姿勢での階段昇降を意識する
- 痛みを感じたら早めに医療機関を受診
体重管理で膝への負担軽減
体重管理は膝の痛み予防において重要です。厳しい食事制限や激しい運動をイメージする方もいらっしゃいますが、毎日の生活の中で少し意識を変えるだけでも効果が期待できます。
- エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う
- 間食を少し減らす
- 夕食の量を少し控える
- お菓子ではなく果物を食べる
無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。
正しい姿勢での階段昇降を意識する
階段の上り下りで膝が痛む場合、姿勢や動作に問題がある可能性があります。正しい姿勢で階段を上るには、背筋をピンと伸ばし目線は前方に向けます。お尻の筋肉や太ももの筋肉を使って体を持ち上げるように意識しながら、ゆっくりと足を上げます。
階段を下りるときは、痛くない方の足から先に地面に着けるようにしましょう。手すりがあれば、積極的に活用することで、膝への負担を軽減できます。
痛みを感じたら早めに医療機関を受診
膝の痛みが続く場合は自己判断せずに、早めに整形外科などの専門医療機関を受診しましょう。痛みの原因はさまざまで、適切な治療法も異なります。医療機関では、問診や診察、レントゲン検査などを通して、痛みの原因を詳しく調べます。必要に応じて、MRI検査やCT検査を行うこともあります。
痛みの原因が特定できれば、原因に応じた適切な治療を受けることができます。変形性膝関節症と診断された場合は、ヒアルロン酸注射や痛み止めの服用、運動療法などが行われます。半月板損傷などの場合は、手術が必要になることもあります。
早期に適切な治療を受けることで痛みを早く和らげ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
階段の上りで膝が痛む原因は、加齢やスポーツ、肥満、階段の上り方など、さまざまです。痛みを改善するには、ストレッチや筋トレで膝周りの筋肉を強化し、サポーターなどで膝関節を安定させることが有効です。痛みが強い場合は、薬物療法や注射も選択肢となります。
予防策として、体重管理や正しい姿勢での階段昇降、早期の医療機関の受診が重要です。ご自身に合った方法で、無理なく続けられるスタイルを探しましょう。
参考文献
- David Y Gaitonde, Alex Ericksen, Rachel C Robbins. Patellofemoral Pain Syndrome. Am Fam Physician, 2019, 99(2), p.88-94.
- Erin F Alaia, Mohammad Samim, Iman Khodarahmi, John R Zech, Alexandra R Spath, Madalena Da Silva Cardoso, Soterios Gyftopoulos. Utility of MRI for Patients 45 Years Old and Older With Hip or Knee Pain: A Systematic Review. AJR Am J Roentgenol, 2024, 222(6), e2430958.