- 2025年3月2日
膝の痛みと湿布の関係!効果的な貼り方と注意点を解説
階段の上り下りや立ち上がりで膝がズキズキしませんか? 実は、日本で変形性膝関節症の患者数は推定3,000万人以上いるとされており、膝の痛みに悩んでいる方は決して少なくありません。この記事では、以下の内容について整形外科医の視点から詳しく解説します。
- 痛みの種類に合わせた湿布の選び方
- 効果的な湿布の貼り方
- 湿布を使ううえでの注意点
- 湿布以外の対処法
湿布の正しい知識を身につけて、膝の痛みを和らげる方法を学びましょう。
湿布の種類と効果的な貼り方5選
手軽に使える湿布の効果的な使い方について、整形外科医の立場から以下の項目に分けて詳しく解説します。
- 冷湿布と温湿布の特徴と使い分け
- 湿布の成分と効果の違い
- 貼る部位と適切なサイズ
- 膝のお皿への負担を軽減する貼り方
- 貼り替え頻度と適切な使用期間
冷湿布と温湿布の特徴と使い分け
湿布には、大きく分けて冷湿布と温湿布の2種類があります。それぞれに特徴があるので、痛みの種類や時期に合わせて適切に使い分けることが重要です。
- 冷湿布
急性の炎症や腫れを抑える効果があります。スポーツで膝を捻挫した直後や、ぶつけて腫れている時などに使用すると効果的です。冷湿布は、ひんやりとした感触で患部を冷やし、炎症によって拡張した血管を収縮させることで、腫れや痛みを和らげる効果が期待できます。炎症の広がりを抑える効果も期待できますので、ケガの初期には冷湿布が選択肢の一つとなる可能性があります。 - 温湿布
血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。慢性的な痛みや、冷えによるこわばりや肩こり、腰痛などに使用すると効果的です。温湿布は、温かい感触で患部を温め、血行を良くすることで、筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげる効果が期待できます。変形性膝関節症のように、慢性的な炎症を伴う場合にも使用されます。
あくまで一般的な目安です。痛みの原因や状態によって適切な湿布は異なりますので、迷った場合は薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
湿布の成分と効果の違い
湿布には、炎症を抑えたり、痛みを和らげたりするさまざまな成分が含まれています。代表的な成分としては、以下のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる成分が配合されています。
- インドメタシン
- フェルビナク
- ジクロフェナクナトリウム
- ケトプロフェン
炎症や痛みを引き起こす物質であるプロスタグランジンの生成を抑えることで、痛みや腫れ、発熱といった炎症症状を緩和します。成分によって、効果の持続時間や効き目、副作用の出方などが異なる場合があるので、ご自身の症状や体質に合った湿布を選ぶことが大切です。
薬剤師や医師に相談することで、痛みの種類に応じた湿布を選ぶことができます。
貼る部位と適切なサイズ
湿布は、痛む部分に直接貼るのが基本です。湿布のサイズもさまざまなので、痛む範囲に合わせて適切なサイズを選びましょう。痛む範囲よりも小さすぎる湿布では、十分な効果が得られない可能性があります。
大きすぎる湿布は、はみ出して剥がれやすくなってしまったり、必要以上に皮膚に薬剤が付着してしまったりなど皮膚トラブルのリスクが高まります。
膝のお皿への負担を軽減する貼り方
膝のお皿(膝蓋骨)は、膝の動きにおいて重要な役割を果たしています。お皿に湿布を貼ってしまうと、膝を曲げ伸ばしする際に、湿布がお皿に引っかかり動きを妨げ、皮膚への負担を増大させる可能性があります。
膝のお皿には直接貼らず、お皿の周囲に貼るようにしましょう。湿布を短冊状に切って、お皿を避けるように貼る方法も効果的です。膝の動きを妨げない貼り方を工夫することで、湿布をより適切に使用できます。
貼り替え頻度と適切な使用期間
湿布の貼り替え頻度は、湿布の種類や含まれている成分によって異なります。一般的には、1日に1~2回程度、8~12時間を目安に貼り替えるのが良いとされています。
湿布の添付文書に記載されている用法・用量をよく確認し、指示に従って使用することが大切です。長時間同じ場所に貼り続けると、皮膚がかぶれたり、色素沈着を起こしたりするなど、皮膚トラブルのリスクが高まります。同じ湿布を長期間使い続けても、効果が弱まる場合があります。
痛みがなかなか改善しない場合は、自己判断で湿布を使い続けるのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
湿布使用時の注意点
皮膚の状態や体質によっては、湿布かぶれなどの皮膚トラブルが起こる可能性があります。湿布の種類によっては、日光に当たると皮膚に炎症を起こす光線過敏症のリスクもあります。湿布使用時の注意点として、以下の項目について詳しく解説します。
- 湿布かぶれや皮膚炎への対策
- 光線過敏症の症状と予防策
- 湿布の副作用と使用上の注意
安全に湿布を使うために、正しい知識を身につけましょう。
湿布かぶれや皮膚炎への対策
湿布かぶれは、湿布に含まれる成分に対するアレルギー反応や、湿布を貼ることによる皮膚への刺激が原因で起こります。かゆみや赤み、腫れ、水ぶくれなどの症状が現れ、場合によっては、皮膚がただれてしまうこともあります。湿布かぶれを防ぐためには、以下の対策を心がけましょう。
- 湿布を貼る部位の清潔を保つ
湿布を貼る前に、石鹸をよく泡立てて手を洗い、皮膚の汗や汚れをしっかり落とします。皮膚をしっかりと乾燥させてから湿布を貼るようにしてください。 - 長時間同じ場所に貼らない
同じ場所に長時間湿布を貼っていると、皮膚への負担が大きくなり、かぶれやすくなります。湿布は、8~12時間を目安に貼り替え、就寝時に貼る場合は、朝起きたらすぐに剥がすようにしましょう。 - 汗をかいた場合は貼り替える
汗をかいた場合は湿布が剥がれやすくなるだけでなく、皮膚への刺激も強くなりますので、貼り替えましょう。
皮膚に異常を感じたらすぐに使用を中止し、皮膚科を受診しましょう。自己判断で市販薬を使用すると、症状が悪化することがあります。
光線過敏症の症状と予防策
光線過敏症とは、特定の物質が皮膚に付着した状態で日光に当たると、皮膚に炎症反応が起こることです。ケトプロフェンやフェルビナクを含む湿布は、光線過敏症を起こすリスクがあるため、使用後もしばらくは日光を避けることが推奨されます。光線過敏症の症状は、日光があたった部分に以下のような症状が現れます。
- 赤くなる
- 腫れる
- かゆくなる
- 水ぶくれができる
光線過敏症を防ぐためには、湿布を貼った部分をできるだけ日光に当てないようにしましょう。湿布を貼った部分を覆うように衣類を着用するか、日焼け止めを塗るなどして、日光に当てないようにしましょう。紫外線の強い時期や時間帯は注意が必要です。心配な場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
湿布の副作用と使用上の注意
湿布は医薬品ですので、個人差はありますが、副作用が起こる可能性があります。主な副作用として、以下のような症状があります。
- 皮膚のかぶれ
- 発疹
- かゆみ
- 色素沈着
- 接触皮膚炎
NSAIDsを含む湿布は、長期間または過剰に使用すると、まれに胃腸障害や吐き気、めまいなどの症状が現れることがあります。湿布を使用する際には、使用前に必ず説明書をよく読み、用法・用量を守りましょう。使用期限を過ぎた湿布は使用しないでください。
他の薬と併用する場合は医師や薬剤師に相談しましょう。妊娠中や授乳中の人は、湿布の使用について医師に相談するようにしてください。湿布を使用しても症状が改善しない場合は、自己判断で使い続けず、医師に相談しましょう。膝の痛みが続く場合は、整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
湿布以外の対処法
湿布薬を使うことで一時的に膝の痛みが和らぐ場合が多いですが、痛みの根本原因に対処するには、湿布以外の方法も併用することが重要です。湿布以外の対処法として、以下の2つを解説します。
- RICE処置
- ストレッチ
- 専門医への相談
RICE処置
スポーツ中のアクシデントで膝を捻ってしまった、ぶつけて腫れてしまった、といった急性の膝の痛みに有効な応急処置として「RICE処置」があります。RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つのステップを組み合わせた応急処置法です。それぞれの方法をまとめます。
- Rest(安静)
痛む膝をできるだけ動かさずに安静にします。安静にすることで、炎症の悪化を防ぎ、痛みが広がるのを抑えることができます。患部に負担がかかるような動作は避け、安静を保つことが重要です。 - Ice(冷却)
氷水を入れた袋や保冷剤をタオルに包み、痛む部分に15~20分程度当てて冷やします。冷却は炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。ただし、冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、感覚がなくなってきたら冷却を中断し、感覚が戻ったら再び冷やすようにしてください。数時間おきに繰り返すと効果が期待できます。 - Compression(圧迫)
弾性包帯などで、痛む部分を適度に圧迫します。圧迫することで、腫れや内出血の広がりを抑える効果が期待できます。締め付けすぎると血行が悪くなる可能性があるので、適度な圧迫を心がけてください。 - Elevation(挙上)
痛む膝を心臓よりも高い位置に上げます。クッションや枕などを利用して、足を高く上げることで、患部の血行を促進し、腫れやむくみを軽減する効果があります。
RICE処置は、捻挫や打撲などの急性外傷による膝の痛みに対して有効とされています。RICE処置を行うことで、炎症や腫れの悪化を抑え、痛みの軽減に役立つとされています。
ストレッチ
ストレッチも効果が期待できる対処法の一つです。慢性的な膝の痛みには、ストレッチによって筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することで痛みの緩和が期待できます。太ももの前側(大腿四頭筋)や裏側(ハムストリングス)、ふくらはぎなどの筋肉を、無理のない範囲でゆっくりと伸ばすようにしましょう。
痛みを感じる場合は、無理にストレッチを行うのは避けてください。
専門医への相談
湿布やRICE処置、ストレッチなどを行っても痛みが改善しない、あるいは痛みが悪化する場合、自己判断せずに専門医に相談することが重要です。整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
膝の痛みは、さまざまな原因で起こります。加齢による変形性膝関節症やスポーツによる靭帯損傷、炎症性疾患など、原因は多岐にわたります。原因によって適切な治療法が異なるため、自己判断で治療法を選択することは危険です。
自己判断で市販薬を長期間使用したり、間違った対処法を続けたりすると、症状が悪化したり、他の病気を併発する可能性があります。医療機関を受診することで、痛みの原因を特定し、より適切な治療を受けることができます。
日常生活での注意点や、運動療法の指導なども受けることができますので、安心して治療に取り組むことができます。
まとめ
冷湿布と温湿布を使い分けることで、さまざまな膝の痛みを和らげる作用が期待できます。ただし、効果には個人差があり、使用前に医師や薬剤師に相談することが望ましいです。効果的な貼り方や注意点を守ることで、より安全に湿布を使用できます。
湿布は対症療法なので、根本治療にはなりません。痛みが長引く場合は自己判断せず、整形外科を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることが、膝の痛みを根本的に改善する第一歩です。
参考文献
Dorian Emmert, Tim Rasche, Christiane Stieber, Rupert Conrad, Martin Mücke. Knee pain – symptoms, diagnosis and therapy of osteoarthritis. MMW Fortschr Med, 2018, 160(15), p.58-64.