• 2025年3月9日

変形性膝関節症はどんな人に多い?発症リスクと予防のための対策

立ち上がるときや階段の上り下りで膝の痛みを感じることはありませんか?2023年の研究では、世界中で約6億5400万人が変形性膝関節症に罹患していると推定されています。45歳以上の方で活動時に膝の痛みや、朝のこわばり(30分以内)を感じる場合は、変形性膝関節症の症状である可能性があります。

本記事では、変形性膝関節症の症状や原因、日常生活に取り入れられる効果的な予防策をわかりやすく解説します。本記事を読むことで、加齢や肥満、遺伝なども関係する変形性膝関節症から、あなたの膝の健康を守ることが期待できます。

変形性膝関節症の定義と症状

立ち上がるときや階段の上り下りなどで痛みが出ると、日常生活にも支障が出てきます。変形性膝関節症について、以下の内容を解説します。

  • 変形性膝関節症の定義
  • 変形性膝関節症の主な症状3つ

変形性膝関節症の定義

変形性膝関節症とは、膝関節のクッションの役割を果たす軟骨がすり減ったり、変形したりすることで、痛みや腫れ、動きの悪さなどの症状が現れる病気です。私たちの膝は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)の3つの骨からできています。

骨の表面は、ツルツルした軟骨と呼ばれる組織で覆われており、軟骨がクッションの役割を果たし、骨同士がぶつかり合うのを防いでいます。変形性膝関節症は、加齢や肥満、激しい運動、過去のケガなど、さまざまな原因によって軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こすことで発生します。

2023年の研究では、世界中で約6億5400万人が変形性膝関節症に罹患していると推定されており、決して珍しい病気ではありません。45歳以上の方で、活動に伴う膝関節痛があり、朝のこわばりが30分以内の場合は、変形性膝関節症の初期症状である可能性があります。

変形性膝関節症の主な症状3つ

変形性膝関節症の主な症状は、以下の3つです。

  • 痛み
    初期は、立ち上がりや歩き始めなど、動き出すときに膝に痛みを感じます。椅子から立ち上がろうとした瞬間や、歩き始めて数歩のときに「ズキッ」とした痛みを感じることが多いです。しばらく動いていると和らぐことが多いですが、軟骨のすり減りがまだ軽度であるためです。
    中期になると、動作中の痛みが続くようになり、日常生活にも支障をきたし始めます。
    さらに病気が進行すると、安静時にも痛みが続くようになり、夜も眠れないほどの激痛に悩まされることもあります。
  • 腫れ
    膝関節には、関節をスムーズに動かすための関節液があります。変形性膝関節症になると、関節液の産生と吸収のバランスが崩れ、貯留することがあり、腫れや熱感を伴うことがあります。
    炎症が強い場合は、膝に触れると熱く感じたり、赤く腫れ上がったりすることもあります。さらに、膝を曲げ伸ばしするのがつらくなることもあります。
  • 動きの悪さ
    軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかるようになると、膝をスムーズに動かせなくなります。正座や階段の上り下りが難しくなり、歩くときに膝が突っ張るような感覚を覚えることもあります。ひどい場合は歩行も困難になり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

以下の表では、膝の痛みや腫れ、動きの悪さが初期・中期・末期でどのように変化するかを示しています。

症状の種類初期中期末期
痛み動き始め動作中安静時
腫れ少ない増える強い
動きの悪さ軽い中等度重い

変形性膝関節症は、放置すると徐々に進行していく病気です。早期発見・早期治療が重要ですので、整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。

変形性膝関節症になりやすい人の特徴5選

変形性膝関節症になりやすい人の特徴は、以下の5つです。

  • 加齢による軟骨のすり減り
  • 肥満による膝への負担増加
  • 女性ホルモンの減少
  • 遺伝的要因
  • その他:特定の職業・スポーツ

加齢による軟骨のすり減り

加齢は、変形性膝関節症の最も大きなリスク要因の一つです。年齢を重ねるごとに、私たちの体のさまざまな組織は老化していきます。軟骨は、骨と骨が直接ぶつかり合わないように、クッションの役割を果たしています。若い頃は、軟骨はみずみずしく、弾力性も豊かです。

年齢を重ねるにつれて、軟骨は水分を失い、弾力性が低下し、薄くなっていきます。軟骨がすり減ると、骨同士がぶつかりやすくなり、炎症や痛みを引き起こします。

南京の研究によると、60歳以上の方で変形性膝関節症のリスクが特に高いことが報告されています。高齢になるにつれて、軟骨の修復能力も低下するため、一度すり減ってしまった軟骨は元に戻りません。日頃から膝を労わり、軟骨への負担を軽減することが重要です。

肥満による膝への負担増加

体重が増えると、膝関節への負担も大きくなります。歩くたびに、膝には体重の何倍もの力が加わります。体重が重ければ重いほど、膝への負担も大きくなり、軟骨のすり減りを加速させてしまいます。研究によると、体重が5kg増えるごとに、変形性膝関節症の発症リスクが約36%上昇する可能性があるとされています。

肥満の方は、適正体重を維持することで、膝への負担を軽減し、変形性膝関節症の予防につなげることができます。

女性ホルモンの減少

女性は、男性に比べて変形性膝関節症になりやすい傾向があります。女性ホルモン、特にエストロゲンが軟骨の保護に役立っているためです。エストロゲンは、軟骨細胞の働きを活性化させ、軟骨の分解を抑える働きがあります。

閉経を迎えると、エストロゲンの分泌が急激に減少すると、軟骨がもろくなりやすく、変形性膝関節症のリスクが高まります。南京市の研究でも、女性のほうが変形性膝関節症のリスクが高いことが報告されています。閉経後の女性は、特に膝の健康に気を配り、予防に努めることが大切です。

遺伝的要因

変形性膝関節症は、遺伝的な要因も関係していると考えられています。ご家族に変形性膝関節症の方がいる場合は、発症するリスクが高くなる可能性があります。軟骨の質や骨の形状などが遺伝的に受け継がれる可能性があるためです。生まれつき軟骨が弱い体質の場合、変形性膝関節症になりやすいので、注意しておくことが大切です。

遺伝的要因だけで変形性膝関節症が決まるわけではありません。遺伝的要因があっても、生活習慣の改善などによって、リスクを減らすことは十分に可能です。

その他:特定の職業・スポーツ

特定の職業やスポーツも、変形性膝関節症のリスクを高める可能性があります。長時間の立ち仕事や、重いものを持ち上げる作業が多い方は、常に膝に大きな負担がかかっています。

サッカーやバスケットボール、スキーなどのスポーツは、ジャンプや急な方向転換など、膝への衝撃が大きいです。変形性膝関節症のリスクを高める可能性がありますので、日頃のケアや注意が必要です。自分の仕事や趣味が膝に負担をかけているかどうかを意識し、適切な対策をとりましょう。

変形性膝関節症の予防法

変形性膝関節症は、一度進行してしまうと完全に元の状態に戻すことは難しい病気です。だからこそ、日々の生活の中で意識することが大切です。日常生活の中で少し意識を変えるだけで実践できる予防法は、以下のとおりです

  • 適度な運動:ウォーキングや水泳など
  • 体重管理:適正体重を維持
  • ストレッチ:関節の柔軟性を保つ

適度な運動:ウォーキングや水泳など

適度な運動は、変形性膝関節症の予防に効果的です。ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動がおすすめです。

ウォーキングは、特別な道具も必要なく、いつでもどこでも手軽に始められます。1日30分程度を目安に、自分のペースで歩くことを習慣づけてみましょう。ポイントは、正しい姿勢で歩くことです。背筋を伸ばし、腕を大きく振ることで、全身運動になり、膝への負担も軽減されます。

水泳は、浮力によって膝への負担がほとんどかからないため、変形性膝関節症の予防に最適な運動です。水中ウォーキングやクロール、背泳ぎなど、無理のない範囲で行いましょう。プールの中を歩くだけでも、膝周りの筋肉を効果的に鍛えることができます。

運動には、膝周りの筋肉を強化し、関節を支える力を強くする効果があります。体重管理にも役立ち、肥満による膝への負担を軽減します。運動によって血行が促進され、関節の炎症を抑える効果も期待できます。

糖尿病や高血圧、肥満などの基礎疾患をお持ちの方は、運動を始める前に医師に相談することをおすすめします。研究によれば、基礎疾患がある場合、適切な管理のない運動は膝の症状に影響を与える可能性があります。

変形性膝関節症の患者8万人以上を対象に調査した研究でも、糖尿病や高血圧、肥満を併発している方は、運動療法後により強い痛みを感じていたことが報告されています。基礎疾患をお持ちの方は、医師に相談し、適切な運動方法や強度を指導してもらいながら、無理のない範囲で運動を行いましょう。

体重管理:適正体重を維持

体重が増加すると、膝関節にかかる負担も大きくなります。歩くたびに、膝には体重の何倍もの力が加わるため、体重が重ければ重いほど、膝への負担も大きくなり、軟骨のすり減りを加速させてしまいます。

適正体重を維持することは、変形性膝関節症の予防に重要です。肥満は、変形性膝関節症の大きなリスク要因の一つであり、体重が5kg増えるごとに、発症リスクが約36%も上昇するという研究結果もあります。

体重管理は、食事と運動の両面からアプローチすることが効果的です。食事面では、バランスの良い食事を心がけ、食べ過ぎに注意しましょう。野菜や果物を積極的に摂り、脂肪分の多い食事は控えめにしましょう。間食や夜食もできるだけ避け、規則正しい食生活を心がけましょう。

運動面では、ウォーキングや水泳など、膝に負担の少ない運動を習慣に取り入れましょう。適度な運動は、体重管理だけでなく、膝周りの筋肉を鍛える効果もあります。

ストレッチ:関節の柔軟性を保つ

ストレッチは、関節の柔軟性を保ち、変形性膝関節症の予防に役立ちます。ストレッチを行うことで、筋肉の緊張をほぐし、関節の可動域を広げることができます。血行促進効果も期待できるため、関節の炎症を抑える効果も期待できます。

ストレッチを行う際の注意点は、無理のない範囲で行うことです。痛みを感じる場合は、すぐに中止しましょう。入浴後や運動後など、体が温まっているときに行うと、より効果的です。

おすすめのストレッチとしては、太ももの前側を伸ばすストレッチや、ふくらはぎを伸ばすストレッチなどがあります。椅子に座ったままでも簡単に行うことができますので、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。

まとめ

変形性膝関節症は加齢や肥満、遺伝などが原因で発症リスクが高まります。特に女性は閉経後、女性ホルモンの減少により軟骨が弱くなりやすいので注意が必要です。変形性膝関節症を予防するには、適度な運動、体重管理、ストレッチが効果的です。

ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動を心がけ、バランスの良い食事で体重管理をしましょう。ストレッチで関節の柔軟性を保つことも大切です。日々の生活習慣を少し見直すことで、将来の膝の痛みを予防し、快適な生活を送れるように心がけましょう。

参考文献

仲里整形外科 079-562-5169 ホームページ