• 2025年3月9日

変形性膝関節症が若い人に発症する原因と効果的な対処法

変形性膝関節症は、加齢によるものと思われがちですが、若い世代でも発症するケースが増えています。原因はさまざまで、スポーツによる外傷や肥満、遺伝的要因、過度な運動、炎症性疾患などが挙げられます。

本記事では、若い世代に増加している変形性膝関節症の原因や症状を解説します。ご自身の膝の状態と照らし合わせて、変形性膝関節症のリスクを確かめてみましょう。 早期発見、早期治療が、膝の健康維持につながります。

変形性膝関節症の若い人に見られる主な発症原因5つ

若年層で発症する変形性膝関節症は、将来への不安につながる場合があります。若い人の変形性膝関節症に見られる発症原因について、以下の5つ解説します。

  • 外傷による膝関節の損傷
  • 肥満による関節への負担
  • 遺伝的要因と先天的な姿勢
  • 過度な運動や仕事に伴う負荷
  • 炎症性疾患の影響

外傷による膝関節の損傷

過去に膝を痛めたことが、後々変形性膝関節症につながる可能性があります。スポーツでのジャンプの着地時や急な方向転換で膝をひねり、靭帯や半月板を損傷するケースが多く見られます。

交通事故などで膝に強い衝撃が加わった場合も軟骨が損傷し、将来変形性膝関節症のリスクが高まります。若い頃は多少のケガでも治りが早く、すぐにスポーツなどに復帰してしまうことが多いですが、小さな損傷が蓄積され、後遺症として残ってしまう場合もあります。

膝をケガした後は、専門医の診察を受けましょう。適切な治療とリハビリテーションが大切です。

肥満による関節への負担

体重が増えると膝への負担も大きくなります。肥満気味の方はそうでない方に比べて、変形性膝関節症のリスクが高いことが統計的にも示されています。体重が増えるほど膝への負担は大きくなり、軟骨のすり減りを促進してしまいます。

適正体重を維持することは、変形性膝関節症の予防に不可欠です。BMI(ボディマスインデックス)を指標として、適正体重を意識しましょう。

遺伝的要因と先天的な姿勢

生まれつきO脚やX脚の方は、膝関節にかかる力が均等に分散されにくく、内側もしくは外側の特定の部分に負担が集中しやすくなる傾向があります。

正常な膝関節であれば体重は均等に分散され、軟骨への負担も均一です。しかし、O脚やX脚の場合、バランスが崩れ、特定の部位の軟骨が過剰にすり減ってしまう可能性があります。

両親や祖父母など、家族に変形性膝関節症の方がいる場合、遺伝的な要因も関係している可能性があります。

過度な運動や仕事に伴う負荷

激しいスポーツや、立ち仕事、重いものを運ぶ作業などを日常的に行っていると、膝への負担が大きくなり、変形性膝関節症のリスクが高まります。ジャンプ動作を伴うスポーツは着地時に膝に大きな衝撃が加わるため、軟骨への負担が大きくなります。マラソンなどの長距離走も、膝への負担が蓄積しやすく注意が必要です。

仕事で長時間立ち続ける場合も、膝への負担が大きくなります。同じ姿勢を続けることで膝関節周辺の筋肉が疲労し、関節の安定性が低下するため、軟骨への負担が増加します。こまめな休憩やストレッチを心がけ、膝への負担を軽減することが重要です。

炎症性疾患の影響

関節リウマチなどの炎症性疾患は、関節自体に炎症が起こり、軟骨や骨を破壊してしまう病気です。免疫システムが関節組織を攻撃してしまうことで炎症が引き起こされます。炎症が慢性化すると軟骨が破壊され、変形性膝関節症に似た症状を引き起こすことがあります。

化膿性関節炎などにかかったことがある場合も、後遺症として変形性膝関節症になる可能性があります。化膿性関節炎は、細菌感染によって関節に炎症が起こる病気です。炎症が重症化すると関節軟骨が破壊され、変形性膝関節症へと進行することがあるので注意が必要です。

若い人の変形性膝関節症に伴う具体的な症状4つ

若い人の変形性膝関節症に伴う具体的な症状について、以下の4つ解説します。早期発見・早期治療のためにも、ご自身の体の変化に気を配り、少しでも気になる症状があれば整形外科を受診しましょう。

  • 膝の痛みと腫れ
  • 可動域の制限と動きにくさ
  • 膝のクリック音や引っかかり感
  • 疲労感や運動後の不快感

膝の痛みと腫れ

変形性膝関節症の初期症状として最も多く見られるのが、膝の痛みと腫れです。初期の痛みは、立ち上がったり、歩き始めたりしたとき、階段の上り下りなどで強く感じることが多いです。動き始めに軟骨への負担が集中し、炎症が起きやすいためです。

長時間同じ姿勢を続けていると、膝がこわばって痛むことがあります。進行すると、安静時にも痛みを感じるようになり、夜眠れないほどの激痛に悩まされる場合もあるので注意が必要です。痛みとともに膝が腫れることもあります。

可動域の制限と動きにくさ

変形性膝関節症が進行すると、膝の関節の動きが悪くなり可動域(関節が動かせる範囲)が制限されます。正座やしゃがみ込みが難しくなったり、足を完全に伸ばせなくなったりします。

正常な膝関節であれば、180度近くまでスムーズに足を伸ばしたり、正座のように深く膝を曲げたりすることができます。しかし、変形性膝関節症が進行すると、軟骨のすり減りや骨棘(こつきょく)の形成によって関節の動きが阻害され、動作が困難になってしまいます。

膝のクリック音や引っかかり感

膝を動かしたときに、「ポキッ」「ゴリゴリ」といったクリック音や音が鳴ったり、引っかかり感を感じたりすることも、変形性膝関節症の症状の一つです。軟骨がすり減ったり、骨が変形したりすることで、関節の表面が粗くなり、動きがスムーズではなくなるために起こります。

クリック音自体は痛みを伴うとは限らず、変形性膝関節症ではない場合にも起こることがあります。若い方で症状が現れた場合は、変形性膝関節症の初期のサインである可能性があるため注意が必要です。クリック音とともに痛みや腫れがある場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

疲労感や運動後の不快感

変形性膝関節症になると膝の痛みや動かしにくさから、疲れやすくなったり、運動後に強い不快感を感じたりするようになります。膝関節への負担が増加することで、周囲の筋肉が過剰に緊張し、疲労が蓄積しやすくなるためです。

若い人では、スポーツ活動に支障が出たり、日常生活での活動量が減ったりすることもあります。スポーツをアクティブに行っていた人が、変形性膝関節症によって活動が制限されると、精神的なダメージを受ける可能性もあります。

変形性膝関節症の効果的な治療法と予防策6つ

変形性膝関節症の効果的な治療法と予防策について、以下の7つ解説します。膝の痛みや違和感を感じ始めたら、早期に適切な治療と予防策を講じることが大切です。

  • 生活習慣の改善
  • 運動療法
  • 医療的治療:薬物療法と手術の選択肢
  • 適切な体重管理の重要性
  • 膝への負担を減らす生活スタイル
  • ストレス管理とメンタルヘルスのケア
  • 定期的な専門医によるフォローアップ

生活習慣の改善

若い方でも、日常生活の中で少し意識を変えるだけで、膝への負担を軽減することができます。生活習慣の改善方法は以下のとおりです。

  • 正座を避ける
    正座は膝関節への負担が大きいため、椅子やソファに座る生活スタイルに変えましょう。どうしても避けられない場合は、正座椅子などを活用し、膝への負担を軽減する工夫をしましょう。
  • 靴を見直す
    ヒールが高すぎる靴や、底が薄くクッション性の低い靴は、膝への負担を増大させます。歩きやすくクッション性の高い靴を選びましょう。必要に応じて、インソール(中敷き)を使用するのも良いです。インソールを選ぶ際には、土踏まずの部分をしっかりサポートし、衝撃吸収性に優れたものを選びましょう。
  • 適切な装具の使用
    膝関節をサポートするテーピングやサポーターを使用することで、痛みを軽減し、関節の安定性を高めることができます。自分の膝の状態に合ったものを選ぶことが重要です。初めて使用する場合は、医師に相談しましょう。正しく装着しないと効果が得られないばかりか、逆効果になる場合もあります。装着方法の説明書をよく読んで、正しく装着するようにしましょう。
  • 温熱療法と冷湿布
    痛みが強い急性期には冷湿布、慢性的な痛みには温熱療法が推奨されることがあります。冷湿布は炎症を抑え、痛みを和らげるために用いられることがあります。温熱療法は、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる目的で使用されることがあります。症状に合わせて使い分けましょう。入浴も温熱療法として役立つ場合があります。ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、リラックスすることで、膝の痛みの軽減に役立つ場合があります。

運動療法

運動療法は以下のとおりです。

  • ストレッチ
    太ももの前側(大腿四頭筋)や後側(ハムストリングス)、ふくらはぎなどの筋肉を伸ばすストレッチは、関節の可動域を広げ、痛みを和らげる効果が期待できます。毎日継続して行うことが重要です。入浴後などの体が温まっているときに行うと、筋肉がより伸びやすくなります。
  • 筋力トレーニング
    太ももの筋肉を鍛えることで膝関節を安定させ、負担軽減に役立つ可能性があります。スクワットやレッグプレスなどの運動が有効ですが、無理のない範囲で行うことが大切です。痛みがある場合は、無理せず中止しましょう。水中での運動は浮力によって膝への負担が軽減されるため、膝に痛みがある方でも比較的楽に行うことができます。
  • ウォーキングや水中ウォーキング
    ウォーキングなどの有酸素運動は、体重管理にも役立ち、膝関節への負担軽減に役立つ可能性があります。ウォーキングは、特別な道具や場所を必要とせず、手軽に始められる運動です。1日30分程度のウォーキングを目標に、無理のない範囲で継続して行いましょう。水中ウォーキングは浮力によって関節への負担が軽減されるため、膝に痛みがある人でも比較的楽に行うことができます。

医療的治療:薬物療法と手術の選択肢

保存療法で十分な効果が得られない場合、医師の判断により薬物療法や手術療法が検討されます。薬物療法には以下のようなものがあります。

  • 消炎鎮痛剤
    痛みや炎症を抑える効果があります。内服薬や外用薬(湿布や塗り薬)、注射薬などさまざまな種類があります。医師の指示に従って、適切な薬剤を使用しましょう。
  • ヒアルロン酸注射
    関節液の粘性を高め、関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節のクッションの役割を果たしています。変形性膝関節症では、ヒアルロン酸が減少していることが多いため、注射によるヒアルロン酸の補充が、痛みや炎症の軽減に寄与する可能性があります。
  • ステロイド注射
    強力な抗炎症作用があり、炎症や痛みを速やかに抑える効果が期待できます。ステロイド注射は、長期的に使用すると副作用が現れる可能性があるため、医師の指示に従って使用することが重要です。

手術療法には以下のような術式があります。

  • 人工関節置換術
    痛んだ膝関節を金属やセラミックなどの人工関節に置き換えることで、痛みを軽減し、歩行能力の改善を目指す手術です。高齢者の変形性膝関節症に対する手術療法として、広く行われています。人工関節の寿命は一般的に15〜20年程度と言われていますが個人差があります。
  • 骨切り術
    膝のO脚や内側への負担を軽減するため、脛骨を切開して角度を調整する手術です。主に若い世代や活動性の高い患者さんに適応されます。

適切な体重管理の重要性

体重が増加すると、膝関節への負担が大きくなり、変形性膝関節症の症状が悪化しやすくなります。研究によれば、1kg体重が増えると、膝にかかる負担は歩行時で約3~6kg、階段昇降時では約6~10kg増加するとされています。

適切な体重を維持することは、変形性膝関節症の予防と治療の一助になるとされています。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。BMI(ボディマスインデックス)を指標として、適正体重を維持するようにしましょう。BMIは、[体重(kg)] ÷ [身長(m)の2乗]で計算できます。日本肥満学会では、BMI 25以上を肥満と定義しています。

膝への負担を減らす生活スタイル

日常生活の中で膝への負担を意識的に減らす工夫をすることで、変形性膝関節症の予防と症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。生活スタイルの工夫として以下のようなものがあります。

  • 椅子やベッドの高さ
    立ったり、座ったりする際に膝に負担がかかりにくい高さに調整しましょう。椅子に座ったときに、太ももと床が平行になるくらいの高さが適切です。ベッドも同様に、立ち上がる際に膝に負担がかかりにくい高さに調整しましょう。
  • 洋式トイレの使用
    和式トイレを使用する際に膝を深く曲げる姿勢は、膝関節に大きな負担をかけます。洋式トイレであれば膝の屈曲が少なく、負担を軽減できます。
  • 階段の上り下り
    階段の上り下りをする際には、手すりを使う、一段ずつゆっくりと上り下りするなど、膝への負担を軽減する工夫をしましょう。エスカレーターやエレベーターがあれば、積極的に利用しましょう。

ストレス管理とメンタルヘルスのケア

ストレスは、自律神経のバランスを崩し、筋肉の緊張を高め、痛みを悪化させる要因となることがあります。ストレスをうまく管理し、メンタルヘルスを良好に保つことは、変形性膝関節症の症状の悪化を防ぐ一助になります。

  • リラックスできる時間を作る
  • 趣味を楽しむ
  • 人に話を聞いてもらう

上記に挙げられるような、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。

定期的な専門医によるフォローアップ

変形性膝関節症は、進行性の病気であるため、定期的に専門医の診察を受けることが重要です。症状の変化や治療の効果などを確認し、治療方針を見直すことで、病気の進行を抑制し、より良い状態の維持につながる可能性があります。

変形性膝関節症は、放置すると徐々に進行し、最終的には歩行困難や日常生活動作の制限につながる可能性があります。早期発見・早期治療が大切です。少しでも気になる症状があれば、早めに整形外科を受診しましょう。

まとめ

若い世代でも発症する変形性膝関節症の原因はさまざまですが、早期発見と適切な対処が大切です。膝の痛みや違和感を感じたら、決して我慢せず、整形外科を受診して専門医に相談してください。

適切な治療と予防策を行うことで、健康的な生活を続けやすくなる可能性があります。ぜひご自身の生活習慣を見直してみましょう。

参考文献

仲里整形外科 079-562-5169 ホームページ