- 2025年3月9日
変形性膝関節症とスクワットの関係性!正しい方法と負担軽減のコツ
変形性膝関節症は、加齢とともに発症リスクが高まる病気です。放置すると日常生活に大きな支障をきたすこともあります。適切に行われるスクワットは、変形性膝関節症の進行予防や症状の緩和に役立つ可能性がある運動の一つです。
この記事では、変形性膝関節症とスクワットの関係性や、正しい方法、負担軽減のコツについて、整形外科医の視点で解説します。特に以下の方々におすすめの記事です。
- 膝の痛みで悩んでいる方
- 運動不足が気になる方
- 健康的な生活を送りたい方
日常生活を快適に送るためのヒントが満載ですので、ぜひ最後まで読んで、膝の健康状態の改善を目指しましょう。
変形性膝関節症とスクワットの関係性
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで痛みや動きにくさが生じる病気です。スクワットは、膝周りの筋肉を鍛えるために有効な運動ですが、やり方を間違えると逆に膝に負担をかけてしまうことがあります。
膝がつま先より前に出ると、膝蓋大腿関節に過剰な負荷がかかり、痛みが悪化する可能性があります。膝に優しいフォームを意識することが重要です。痛みが強いときに無理にスクワットを行うと、症状が悪化することがあるため、医師や理学療法士に相談することが大切です。
スクワットが膝に与える影響
スクワットは正しく行えば変形性膝関節症の緩和に役立ちますが、間違った方法で行うと逆効果になる可能性があります。スクワットのメリットとデメリットを解説します。
スクワットのメリット
メリットとして膝周りの筋肉を強化し、関節の安定性を高める可能性があります。膝の痛みが軽減され、歩行や階段の上り下りなどの日常生活動作が楽になる可能性があります。スクワットは全身の大きな筋肉を使うため、基礎代謝が向上し、ダイエット効果や生活習慣病の予防に役立つ可能性があります。
高齢者の患者さんにとっては、転倒リスクの軽減に役立つ可能性があります。
スクワットのデメリット
デメリットとして、間違ったフォームで行うと膝関節に負担がかかり、症状を悪化させる可能性があることが挙げられます。痛みがある状態で無理にスクワットを行うと、炎症を悪化させる可能性もあるため、注意が必要です。重要なのは、自分の身体の状態に合わせた適切なスクワットを行うことです。
安全に行うためのスクワット方法
スクワットは適切な方法で行えば、変形性膝関節症の緩和に役立つ可能性があります。安全にスクワットを行うために、以下のポイントを解説します。
- 変形性膝関節症に配慮した正しい姿勢
- 膝への負担を軽減するためのテクニック
- スクワットの回数と頻度の設定
変形性膝関節症に配慮した正しい姿勢
スクワットの効果を最大限に引き出し、かつ膝への負担を最小限に抑えるには、正しい姿勢を維持することが重要です。変形性膝関節症の方は、膝関節への負担を軽減する姿勢を意識する必要があります。単に「膝を曲げる」のではなく、全身のバランスを保ちながら行うことが大切です。
以下のポイントを参考に、鏡を見ながら練習し、正しい姿勢を身体に覚え込ませましょう。
- 足の幅
肩幅よりも少し広めに足を開き、つま先は少し外側に向けます。つま先と膝の向きをそろえることも重要です。つま先よりも膝が内側に入ってしまうと、膝関節の内側に過剰な負担がかかり、痛みを増悪させる可能性があります。 - 背筋
背筋をまっすぐ伸ばし、お腹に軽く力を入れて体幹を安定させます。スクワットは下半身の運動と思われがちですが、体幹の強さも重要です。猫背や反り腰になると、腰痛の原因にもなりますので、常に正しい姿勢を意識しましょう。 - 目線
目線はまっすぐ前方に固定します。目線が下がると猫背になりやすく、体幹が不安定になります。顎を軽く引いて目線を水平に保つことで、自然と背筋も伸び、バランスが取りやすくなります。 - 重心
かかとに重心を乗せるように意識します。つま先に重心が乗ってしまうと、膝の前方に負担が集中し、痛みを悪化させる可能性があります。かかとに重心を乗せることで、お尻や太ももの筋肉を効果的に使えて、膝への負担を軽減できます。
膝への負担を軽減するためのテクニック
正しい姿勢に加えて、いくつかのテクニックを用いることで、膝への負担を軽減し、スクワットの効果を高めることができます。変形性膝関節症の方だけでなく、膝に不安を抱えている方にも有効です。膝への負担を軽減するためのテクニックは、以下のとおりです。
- 椅子を使う
スクワットの動作に慣れていない方や、膝の痛みが強い方は、椅子の背もたれに軽く手を添えて行うことでバランスを保ちやすくなり、安心してスクワットを行うことができます。椅子の座面を目安にして、浅めのスクワットから始めるのもおすすめです。ご自身の膝の状態で無理なく行える範囲で行い、徐々に可動域を広げていくことが大切です。 - ゆっくりとした動作
勢いをつけずに、ゆっくりと動作を行うことが重要です。急な動きは膝関節への衝撃を大きくし、痛みを悪化させる可能性があります。呼吸を止めずに、深く吸って吐きながら行うと、自然とゆっくりとした動作になり、筋肉への酸素供給もスムーズになります。 - 痛みのサインに気づく
スクワット中に膝に少しでも痛みを感じたら、すぐに動作を中断しましょう。痛みを我慢して続けると、炎症が悪化し、症状が長引く可能性があります。痛みは身体からの重要なサインです。
スクワットの回数と頻度の設定
スクワットの効果を最大限に引き出しつつ、膝への負担を最小限にするためには、回数と頻度を適切に設定することが不可欠です。スクワットの回数と頻度の設定について、以下を参考にしてください。
- 回数
最初は1セット5回程度から始め、慣れてきたら徐々に回数を増やしていきましょう。10回を1セットとして、1日に2~3セット行うのが理想的ですが、無理のない範囲で行うことが大切です。「痛みが出ない範囲」で「少しきつい」と感じる程度が適切な負荷です。 - 頻度
週に2〜3回程度の頻度で行うのがおすすめです。毎日行う必要はありません。適切な休息を挟むことで、筋肉の修復と成長を促し、怪我の予防にもつながります。筋肉痛が続く場合は、休息日を増やすなど、ご自身の身体の状態に合わせて調整しましょう。 - 休憩
セット間の休憩は、1〜2分程度とりましょう。筋肉の疲労回復を促し、次のセットに備えるために必要な時間です。
最初から無理をせず、徐々に負荷を上げていくことが大切です。変形性膝関節症とスクワットの関係は複雑ですが、正しく行えば症状の緩和や、生活の質の向上に貢献する可能性があります。ご自身のペースでスクワットに取り組んでみましょう。少しでも不安なことがあれば、遠慮なく医師や理学療法士に相談しましょう。
変形性膝関節症におすすめの代替運動
変形性膝関節症の方でも、膝への負担を軽減しながら行える運動はたくさんあります。変形性膝関節症の方におすすめしたい代替運動について、以下を紹介します。
- 膝に優しい運動方法の紹介
- スクワット以外の有効な運動
- 日常生活に取り入れやすい運動例
これらの運動は一般的に膝への負担が比較的少ないため、状態に合わせて選択できます。
膝に優しい運動方法の紹介
変形性膝関節症で膝に痛みがある方にとって、運動の種類を選ぶことは重要です。陸上での運動は、地面からの衝撃が膝にかかり、負担が大きくなってしまいます。膝に優しいおすすめの運動は、以下のとおりです。
- 水中運動
水の浮力によって体重が支えられ、膝関節への負担が軽減されます。水中ウォーキングは、陸上ウォーキングに比べて膝への負担が約半分になると言われています。水の抵抗を利用することで、筋力トレーニングの効果を高めることも可能です。膝関節周辺の筋肉を強化し、関節の安定性を高める効果が期待できます。水温が体温よりも低いため、運動後の炎症を抑える効果も期待できます。 - 自転車漕ぎ
座った状態で運動を行うため、体重による膝への負担が軽減されます。ペダルを漕ぐ動作は、膝関節の屈曲角度を小さく抑えながら、太ももの筋肉を効果的に鍛えることができます。有酸素運動でもあるため、心肺機能の向上にも効果的です。屋外でのサイクリングは気分転換にもなり、精神的な健康にも良い影響を与えます。
スクワット以外の有効な運動
スクワットは、変形性膝関節症の方にとっては、膝への負担が大きすぎる場合があります。スクワット以外の運動で、膝関節周辺の筋肉を個別に鍛える方法をご紹介します。
- 大腿四頭筋の強化
レッグエクステンションは、椅子に座った状態で足を伸ばすだけのシンプルな運動ですが、大腿四頭筋を効果的に鍛えることができます。ウェイトを使わずに行うことも可能ですし、徐々に負荷を上げていくこともできます。 - ハムストリングスの強化
レッグカールは、うつ伏せの状態で膝を曲げる運動で、ハムストリングスを鍛えることができます。負荷を調整することで、ご自身の状態に合わせたトレーニングが可能です。 - 臀筋の強化
ブリッジは、仰向けに寝た状態で腰を持ち上げる運動です。臀筋だけでなく、体幹の筋肉も同時に鍛えることができます。
ご自宅で簡単に行うことができます。無理のない範囲で、毎日続けることが大切です。
日常生活に取り入れやすい運動例
特別な時間を割いて運動することが難しい方でも、日常生活の中に運動を取り入れる工夫をすることで、変形性膝関節症の予防や改善につなげられます。日常生活に取り入れやすい運動例について、以下の表にまとめました。
取り組み | 効果 |
階段の利用 | 下半身の筋力強化、心肺機能向上 |
歩く習慣 | 下半身の筋力強化、持久力向上 |
家事への積極的な参加 | 全身の筋力強化、カロリー消費 |
特別な道具や場所を必要とせず、誰でも簡単に行うことができます。ご自身の体調に合わせて、無理なく続けられる運動を見つけて、積極的に日常生活に取り入れていきましょう。少しでも膝に違和感を感じたら、すぐに整形外科を受診するようにしてください。
まとめ
スクワットは正しく行えば膝周りの筋肉を強化し、関節への負担を軽減する効果が期待できます。間違ったフォームでは、逆効果になる可能性があります。 膝に痛みがある方は、無理せず椅子を使ったスクワットや、水中ウォーキング、自転車漕ぎなどの代替運動から始め、徐々に負荷を増やしていくことが大切です。
ご自身の状態に合った方法で、無理なく継続できる運動を取り入れて、健康な膝を保ちましょう。 痛みや不安がある場合は、必ず医師や理学療法士に相談し、適切なアドバイスを受けてください。 健康な毎日を送るために、一歩ずつ進んでいきましょう。
参考文献
Vicky Duong, Win Min Oo, Changhai Ding, Adam G Culvenor. Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review. JAMA, 2023, 330(16), p.1568-1580.