半月板損傷の症状と治療法！早期回復のための専門的アドバイス

膝の痛みや曲げ伸ばしで違和感がある場合、半月板損傷が疑われます。半月板損傷は、スポーツ中だけでなく日常生活の些細な動作でも起こりうる膝の疾患です。適切な治療を受けずに放置すると、慢性的な痛みや膝関節の変形につながる可能性があります。この記事では、半月板損傷を以下に沿って解説します。 

• 半月板損傷の症状
• 半月板損傷の治療法
• 早期回復のためのアドバイス
• 再発を防ぐための筋力トレーニング

膝の痛みや違和感の解決策と、早期回復するための方法を理解しましょう。

半月板損傷の症状

半月板は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にあるC型の軟骨で、膝関節のクッションの役割を果たします。半月板損傷で現れる症状を以下の項目に沿って解説します。

• 膝の痛み
• 膝の腫れ
• 可動域の制限
• クリック音

膝の痛み

半月板損傷で最もよく見られる症状は、膝の痛みです。痛みは損傷の大きさや場所、活動レベルによって大きく変わります。詳細は以下のとおりです。

• 痛みの種類
  鋭い痛みや鈍い痛み、うずくような痛みなど、感じ方は人それぞれです。ナイフで刺されたような鋭い痛みを感じる方もいれば、重だるいような鈍い痛みを感じる方もいます。
• 痛む場所
  膝の内側や外側、膝の裏側、膝全体など、痛む場所もさまざまです。内側半月板損傷の場合は膝の内側に痛みを感じる場合が多く、外側半月板損傷の場合には膝の外側に痛みを感じることが多いです。半月板が水平方向に割れる水平断裂の場合は、膝の前面や後面に痛みを感じる場合があります。
• 痛みを起こす動作
  しゃがむ動作や階段の上り下り、正座、スポーツなど、膝に負担がかかる動作で痛みが強くなることが多いです。特に、膝を深く曲げたり、捻ったりする動作で痛みが悪化しやすい傾向があります。
• 安静時の痛み
  損傷がひどい場合、安静にしていても痛むことがあります。初期は運動時のみの痛みでも、損傷が進行すると安静時にもズキズキとした痛みが続く場合があります。

膝の腫れ

半月板が損傷すると炎症反応が起こり、膝が腫れる場合があります。損傷直後には、膝全体が腫れ上がり、熱感や赤み、圧痛を伴うケースが多いです。膝に水が溜まり、膝の曲げ伸ばしが難しくなる場合もあります。炎症が慢性化すると、常に膝に水が溜まり腫れている状態になり、膝が重だるく感じられることもあります。

可動域の制限

半月板が損傷すると、膝の動きが悪くなり、可動域が制限されることがあります。膝の可動域の制限は痛みや腫れ、半月板の断片が関節の動きを妨げることが原因です。

膝の曲げ伸ばしが難しく、椅子に座ったり、立ち上がったりする動作や、階段の上り下りが困難になる場合があります。膝を動かすと途中で引っかかるような感覚がある場合は、断裂した半月板の一部が関節の動きを妨げていると考えられます。可動域の制限は、日常生活のさまざまな動作に支障をきたす可能性があります。

クリック音

膝を動かしたときにクリック音やゴリゴリと音が鳴る場合があります。動作時の音は、損傷した半月板が関節の中で引っかかったり、こすれたりすることが原因と考えられています。詳しくは以下のとおりです。

• 音の種類：クリック音やパキッという音、ゴリゴリという音など、さまざまな音が鳴ることがあります。音の大きさや種類は、損傷の程度や場所によって異なります。
• 音の頻度：毎回音が鳴る場合もあれば、たまに鳴る場合もあります。音が鳴る頻度は、損傷の程度や膝の動かし方によって変わる可能性があります。
• 音に伴う症状：音とともに、痛みや違和感を伴うこともあります。音が鳴るたびに痛みを感じたり、膝の動きが制限されたりする場合は注意が必要です。

半月板損傷の症状は多様であり、他の膝の疾患と似た症状を示すこともあります。大切なことは、自己判断せずに医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けることです。早期に適切な治療を開始して日常生活への影響を最小限に抑えましょう。

半月板損傷の治療法

半月板損傷の治療は、損傷の程度や患者さんの年齢、活動レベル、症状によって大きく異なります。半月板損傷の治療法を以下の項目に沿って解説します。

• 保存療法
• 手術療法
• リハビリテーション

保存療法

半月板損傷の初期治療では多くの場合、手術をせずに保存療法を行います。保存療法は損傷の程度や症状が、比較的軽度の場合に選択されることが多いです。

保存療法の目的は、痛みや腫れなどの炎症症状をコントロールし、日常生活への支障を最小限にすることです。保存療法で行われる治療は以下のとおりです。

治療の種類	詳細
RICE処置	Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つのステップからなる応急処置です。損傷直後から行うと、炎症の拡大を抑える効果が期待できます。安静では、患部に負担をかけないようにすることが大切です。可能であれば、座ったり横になったりして膝を休めましょう。冷却は、炎症を抑え痛みを和らげる効果が期待できます。アイスパックや冷湿布で、1回15〜20分程度、1日数回行います。圧迫は腫れを抑える効果が期待でき、弾性包帯などで適度に圧迫するように巻きます。締め付けすぎると、血行が悪くなるため注意が必要です。挙上は、重力によって膝に溜まった血液や体液の循環を促し、腫れを軽減する効果が期待できます。クッションなどを用いて心臓よりも高く足を上げます。
薬物療法	消炎鎮痛剤の内服や外用薬などが用いられ、痛みや炎症を抑える効果が期待できます。ヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする働きがあります。
理学療法	理学療法士の指導のもとストレッチや筋力トレーニングなどを行います。膝関節の柔軟性や安定性を高め、日常生活動作の改善を目指します。

手術療法

保存療法で症状が改善しない場合や半月板が大きく断裂している場合には、手術療法が検討されます。手術療法には、主に半月板縫合術と半月板部分切除術の2種類があります。

半月板縫合術は、断裂した半月板を縫い合わせる手術です。半月板の辺縁部(外側)は血流が豊富であるため、縫合して治癒する可能性が高く、比較的若い患者さんでは縫合術が選択される傾向にあります。一方、半月板の中央部は血流が乏しいため、縫合しても治癒が難しい場合が多いです。

半月板部分切除術は、損傷した半月板の一部を切除する手術です。縫合が難しい場合や、損傷が大きい場合に選択されるケースが多いです。近年では関節鏡という細い管を用いての手術が多く、傷口が小さくて済むため、体への負担を軽減する可能性があります。

リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、膝関節の機能回復を促進し、日常生活への復帰を早めることです。リハビリテーションの内容は患者さんの状態や手術の方法によって異なりますが、一般的には以下の項目を実施します。

• 関節可動域訓練：膝の曲げ伸ばし運動などを行い、関節の柔軟性を高める
• 筋力トレーニング：膝関節周辺の筋肉を強化し、関節の安定性を高める
• 歩行訓練：松葉杖の使用から始め、徐々に体重をかけて歩けるように練習する

リハビリテーションは医師や理学療法士の指導のもと、適切な方法で行うことが重要です。無理な運動は、かえって症状を悪化させる危険性があるため注意しましょう。

リハビリテーションは継続して行うことが大切です。途中で中断してしまうと、回復した機能が低下してしまう可能性があります。

早期回復のためのアドバイス

半月板損傷からの早期回復を目指すには、医療機関での治療だけでなく、患者さん自身によるセルフケアも重要です。早期回復のために必要な知識を以下の項目に沿って解説します。

• アイシング
• 十分な休養
• 栄養バランスの良い食事
• 定期的な医師の診察

アイシング

アイシングは炎症を抑え、痛みや腫れを軽減するのに役立つとされています。患部を冷却すると血管が収縮し、炎症反応に関与する物質の放出を抑えられる可能性があります。

アイシングを行う際は、アイスパックや氷をビニール袋に入れたものをタオルで包んで患部に当てます。凍傷を防ぐため、直接皮膚に氷を当てるのは避けましょう。1回15〜20分程度、1日に数回行うことが推奨されます。

損傷から数日経ち急性炎症期を過ぎると、アイシングだけでなく温熱療法も有効な場合があります。温めると血行が促進され筋肉の緊張が和らぎ、痛みの軽減が期待できます。温熱療法には、温湿布や蒸しタオルを用います。

どのタイミングでアイシングから温熱療法に切り替えるかは、痛みの状態や腫れの程度によって異なります。自己判断せずに、医師や理学療法士に相談しながら適切な方法を選択しましょう。

十分な休養

半月板損傷からの回復には十分な休養が不可欠です。患部に負担をかけ続けると、炎症が悪化し回復が遅れる可能性があります。スポーツや激しい運動は避け、安静を心がけましょう。炎症が強い時期に無理に動くと、損傷部位を広げたり新たな損傷を引き起こしたりするリスクがあります。

日常生活においても、膝に負担をかけない工夫が大切です。椅子に座る際は浅めに座るようにしたり、立ち上がるときは手すりや杖を使ったりして膝への負担を軽減する動作を意識しましょう。

痛みが強い場合は、松葉杖の使用も有効な場合があります。使用方法は医師や理学療法士の指導を受け、正しく使うようにしましょう。

栄養バランスの良い食事

栄養バランスの良い食事は、体の回復を促し、免疫力を高めるために役立つ場合があります。以下の栄養素を積極的に摂取するよう心がけましょう。

栄養素	役割	多く含まれる食品
タンパク質	筋肉や組織の修復に役立つ	肉や魚、卵、大豆製品
ビタミン	コラーゲンの生成を促進し、損傷した組織の回復を助ける	果物や野菜
カルシウム	骨の健康を支える	牛乳や乳製品、小魚

バランスの取れた食事を摂ることは、体全体の機能維持をサポートし、回復過程に良い影響を与える可能性があります。半月板損傷の回復期には、栄養状態も回復に関わる要素の一つとして考えられています。

定期的な医師の診察

定期的な診察を受けることで、症状の変化や回復状況を医師に確認してもらうことができます。半月板損傷の悪化を放置すると、慢性的な痛みや関節の変形につながる可能性があります。痛みが強くなった場合は自己判断せずに、必ず医師の診察を受け、適切な診断と治療を受けましょう。

リハビリテーションの方法や日常生活での注意点なども、医師に相談しながら進めていくことが大切です。半月板損傷は、他の膝関節の疾患と合併している場合もあります。医師の診察を受けることで、他の疾患の有無も確認できます。

再発を防ぐための筋力トレーニング

半月板損傷は、一度損傷すると再発しやすい疾患です。以下の筋肉を強化すると、再発防止の効果を期待できます。

• 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)
• 太ももの後ろの筋肉(ハムストリングス)
• ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)

膝周りの筋肉をバランス良く鍛えることで、膝関節の安定性を高め、半月板への負担を軽減できる可能性があります。筋力トレーニングを行う際は、誤ったフォームで行うと逆に膝を痛めてしまう可能性があるので、正しいフォームで行うことが重要です。トレーナーや理学療法士に適切なトレーニング指導を受けましょう。

スポーツを行う際は、ウォーキングや水中ウォーキング、サイクリングなど、膝に負担の少ない運動から始め、徐々に負荷を上げていきましょう。

急激な方向転換やストップ動作を伴うスポーツは、半月板に大きな負担をかけます。ウォーミングアップを十分に行い、テーピングなどで膝関節をサポートすることも有効とされています。

まとめ

半月板損傷は、膝の痛みや腫れ、可動域の制限などの症状を引き起こす可能性があります。自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

保存療法ではRICE処置、薬物療法、理学療法などが行われます。手術が必要な場合は、半月板縫合術や部分切除術などが用いられます。治療法は損傷の程度や患者さんの状態によって異なり、医師とよく相談して決めることが重要です。

手術後は医師や理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行って早期回復を目指しましょう。アイシングや十分な休養、栄養バランスの良い食事も早期回復に役立つ可能性があります。

ご自身の状態を理解し適切なケアを行って、半月板損傷から早期の回復を目指しましょう。

参考文献

Hao Wang, Zhenning Liu, Baoqiang Li, Hao Wu, Liping Pan, Daojian Zhang, Yongping Cao. Longer time between anterior cruciate ligament injury and reconstruction is associated with a greater risk of medial meniscus injury. J Exp Orthop, 2024, 11(4), e70101.