- 2025年3月9日
半月板損傷でやってはいけないことと回復を妨げる危険な行動
半月板損傷は、半月板が傷つくことで、痛みや可動域の制限を引き起こす可能性のある疾患です。正座やしゃがみ込み、長時間同じ姿勢を続けることが、半月板を傷つけ、回復を遅らせる危険な行動となる場合があります。
本記事では、半月板損傷でやってはいけないことや回復を妨げる危険な行動を具体的に解説します。快適な日常生活を目指すための具体的な対策がわかります。
半月板損傷のときにやってはいけないこと
半月板損傷のときにやってはいけないことを以下の5つ説明します。
- 過度な運動
- 無理なストレッチやリハビリテーション
- 正座
- しゃがむ姿勢
- 治療の不徹底
過度な運動
半月板損傷後は、膝への負担をなるべく減らすことが大切です。さらに負荷をかけ続けると、損傷が拡大し、回復を遅らせてしまう可能性があります。
激しい運動や重いものを持つのはもちろんのこと、ジャンプや急に方向転換するような動きも避けましょう。膝をひねりやすく、半月板への負担が大きくなってしまいます。ランニングやサッカー、バスケットボールなどの膝への負担が大きいスポーツも、回復するまでは控えましょう。
ウォーキングや水泳など、比較的膝への負担が少ない運動でも、痛みを感じたらすぐに中止し、急に激しい運動を再開するのは避けましょう。半月板の状態が悪化し、治りが遅くなってしまうだけでなく、手術が必要になる可能性も高まります。
運動を再開する際は、必ず医師や理学療法士に相談し、適切な指導を受けましょう。専門家のアドバイスのもと、徐々に運動強度を上げていくことが、安全かつ確実な回復への近道です。
無理なストレッチやリハビリテーション
ストレッチやリハビリテーションは、半月板損傷の回復を支援するために重要です。しかし、痛みを感じながら無理に行うと、逆効果になってしまうことがあります。
膝を深く曲げるストレッチや膝をねじるストレッチは、損傷した半月板をさらに傷つけてしまう可能性があります。リハビリテーションも、自分のペースで無理なく行うことが大切です。他の人と比べて焦ったり、無理に早く進めようとしたりすると、かえって回復を遅らせてしまうため注意が必要です。
リハビリテーションの内容や強度は、損傷の程度や個々の状態によって異なります。専門家の指導のもと、自分に合ったプログラムで進めていくことが重要です。
正座
正座は、膝を深く曲げるため、半月板に大きな負担がかかります。損傷した半月板を圧迫し、痛みや炎症を悪化させる可能性があります。
床に座る生活スタイルの方は、正座を避け、椅子に座るなど、膝への負担が少ない姿勢を心がけましょう。あぐらをかく場合は、膝に違和感がないか確認しながら行うことが大切です。どうしても正座をしなければならない場合は、クッションなどを使い、膝への負担を軽減するようにしましょう。
しゃがむ姿勢
しゃがむ姿勢も、膝を深く曲げるため、半月板に負担がかかります。重い荷物を持つときやガーデニングをするとき、子供と遊ぶときなど、日常生活で何気なくしゃがむ場面は意外と多いです。
半月板損傷中は、なるべくしゃがむことを避け、膝への負担を減らすように心がけましょう。しゃがむ必要がある場合は、ゆっくりと動作し、痛みが出たらすぐに中断してください。片方の足に重心を乗せて立つ「片足立ち」も、損傷した膝に負担がかかるため、避けるようにしましょう。
治療の不徹底
医師の指示に従わず、自己判断で治療を中断すると、半月板損傷が慢性化する可能性があります。痛みが治まっても、医師の指示があるまでは治療を続けることが大切です。
自己流の治療法を試したり、インターネットの情報だけで判断したりするのも危険です。必ず医師の指導のもと、適切な治療を受けるようにしましょう。
半月板損傷の回復を妨げる行動3選
半月板損傷の回復を妨げる、注意すべき3つの行動について説明します。
- 痛みや炎症を放置する
- 長時間同じ姿勢を保つ
- 自己流の治療法を試す
痛みや炎症を放置する
半月板損傷の初期には、炎症反応によって膝が腫れ、熱を持ち、強い痛みを感じることがあります。炎症反応による自然な修復過程の一部です。痛みや炎症を我慢したり、放置したりすると、症状が悪化し、回復が遅れる可能性があります。
炎症を抑えるためには、RICE処置が有効な場合があります。RICE処置とは、以下4つのステップからなる応急処置です。
- Rest(安静)
損傷した膝をできるだけ動かさないように安静を保つことが重要です。炎症を悪化させないために必要です。 - Ice(冷却)
氷や保冷剤をタオルに包んで、15~20分程度患部に当てます。数時間おきに繰り返すことで、炎症を抑え、痛みを和らげることが期待できます。冷却時間は、冷たすぎると凍傷の恐れがあるので、気をつけましょう。 - Compression(圧迫)
弾性包帯などで患部を適度に圧迫することで、腫れや内出血を抑える効果が期待できます。締め付けすぎると血行が悪くなるため、適度な圧迫を心がけましょう。 - Elevation(挙上)
損傷した膝を心臓より高い位置に保つことで、血液の循環を良くし、腫れを抑えることが期待できます。クッションや枕などを使い、膝の下に敷いて高くしましょう。
痛みや炎症が強い場合は、自己判断せずに整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
長時間同じ姿勢を保つ
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、膝周りの筋肉が固まり、血行が悪くなります。半月板損傷の回復を妨げるだけでなく、膝の痛みの悪化や関節の動きが悪くなる可能性があります。
座っている場合は、1時間ごとに立ち上がって軽く歩いたり、膝を曲げ伸ばしたりするなど、適度に体を動かすようにしましょう。足を組む癖がある人は、膝に負担がかかるため、なるべく控えるようにすることが大切です。足を組むと、片方の膝がねじれた状態になり、半月板に負担がかかります。
就寝時は、膝の下にクッションやタオルなどを挟むと、膝の負担を軽減し、リラックスすることができます。膝が少し曲がった状態を保つことで、膝関節への圧力を分散させることができます。
自己流の治療法を試す
インターネットや知人から聞いた情報をもとに、自己流の治療法を試すのは危険です。半月板の状態は人それぞれ異なり、適切な治療法も異なります。自己流の治療は、症状を悪化させる可能性もあるため、やめましょう。
膝周りを強く押したり揉んだりするマッサージやストレッチは、損傷した半月板をさらに傷つけてしまう可能性があります。民間療法やサプリメントなども、効果が科学的に証明されていないものが多く、症状を悪化させる可能性があります。
半月板損傷が疑われる場合は、自己判断せずに、整形外科を受診するようにしてください。医師の診察を受け、適切な診断と治療を受けることが大切です。医師は、レントゲンやMRIなどの検査を行い、損傷の程度や部位を正確に診断し、患者さんの状態に合った適切な治療法を提案します。
半月板損傷の治療法
半月板損傷の主な治療法について以下の内容を解説します。
- 運動療法
- ヒアルロン酸注射
- 外科的治療
運動療法
半月板損傷の初期治療として、運動療法が選択されるケースが多いです。損傷の程度が軽く、日常生活に大きな支障がない場合は、運動療法だけで十分な改善が見込まれる可能性があります。運動療法の目的は、主に次の3つです。
- 膝関節の周りの筋肉を鍛えることで、膝関節を安定させる
- 関節の動きをスムーズにすることで、痛みや違和感を軽減する
- 半月板への負担を軽減することで、自然治癒を促進する
具体的な運動療法の内容は、患者さんの状態に合わせて、理学療法士など専門家が指導します。以下の表では、代表的な運動療法についてまとめています。
運動の種類 | 効果 | 注意点 | 具体的な例 |
大腿四頭筋セッティング | 太ももの前の筋肉を鍛え、膝関節を安定させる | 膝を伸ばした状態で、太ももの筋肉を緊張させる | 椅子に座り、膝を伸ばした状態で、太ももの筋肉を5秒間緊張させ、5秒間緩める。10回繰り返す。 |
ハムストリングス強化 | 太ももの裏の筋肉を鍛え、膝関節のバランスを整える | 膝を曲げた状態で行う | うつ伏せになり、膝を曲げながらかかとをお尻に近づける。10回繰り返す。 |
カーフレイズ | ふくらはぎの筋肉を鍛え、膝関節の安定性を高める | つま先立ち運動 | 壁に手をついて、ゆっくりとつま先立ちになり、ゆっくりとかかとを床につける。15回繰り返す。 |
ストレッチ | 関節の柔軟性を高め、痛みや違和感を軽減する | 無理のない範囲で行う | 床に座り、両足を伸ばし、つま先をゆっくりと手前に倒す。15秒間保持する。 |
運動療法は、半月板損傷の治療だけでなく、再発予防にも効果が期待できます。適切な運動療法を続けることで、半月板への負担を軽減し、健康な膝関節を維持しやすくなります。
ヒアルロン酸注射
半月板損傷に伴う痛みや炎症が強い場合、ヒアルロン酸注射を行うことがあります。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であり、関節の動きをスムーズにする潤滑油の役割を担っています。ヒアルロン酸注射を行うことで、以下の効果が期待されています。
- 関節の潤滑性を高め、動きをスムーズにする
- 痛みや炎症を軽減する
- 軟骨の保護作用を高める
ヒアルロン酸注射は、1週間に1回、計3〜5回程度の注射を行うのが一般的です。効果には個人差がありますが、注射後数日で痛みが軽減されることが多いです。
ヒアルロン酸注射は、損傷した半月板を修復する治療法ではありません。痛みや炎症を抑え、日常生活を送りやすくするための対症療法です。根本的な解決のためには、他の治療法と組み合わせることが重要です。
外科的治療
保存療法で効果が得られない場合や半月板が大きく断裂している場合、手術が必要になることもあります。半月板手術には、大きく分けて次の2つの方法があります。
- 半月板縫合術
断裂した半月板を縫い合わせる手術です。半月板の機能を温存できる可能性が高いですが、縫合できるのは、血流が豊富な半月板の外側部分に限られます。すべての症例に適用できるわけではなく、手術後のリハビリ期間が比較的長くなる場合があります。 - 半月板切除術
断裂した半月板の一部または全部を切除する手術です。関節鏡を用いて行うことが多く、体への負担が比較的少ないメリットがあります。半月板の機能が損なわれる可能性があるため、長期的な予後については慎重な経過観察が必要です。将来的に関節の変形性変化が進行するリスクも報告されています。
どの手術方法が適しているかは、損傷の程度や部位、患者さんの年齢や活動レベルなどを総合的に判断して決定されます。
まとめ
半月板損傷は、膝に痛みや腫れを引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。しかし、適切な対処と治療によって、症状の改善が期待できます。安静、冷却、圧迫、挙上(RICE処置)などの適切な処置を行いましょう。
痛みや症状が続く場合は、自己判断せず、整形外科医を受診し、専門家の診断と指導に従って治療を進めてください。早期の受診と適切な治療が、スムーズな回復への近道です。医師の指示に従い、無理のないリハビリテーションを行うことで、膝の機能回復を目指しましょう。
参考文献
- Beaufils P, Pujol N. Meniscal repair: Technique. Orthopaedics & Traumatology, Surgery & Research, 2018, 104, no. 1S, p. S137-S145.
- Poulsen E, Goncalves GH, Bricca A, Roos EM, Thorlund JB, Juhl CB. Knee osteoarthritis risk is increased 4-6 fold after knee injury – a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med, 2019 Dec;53(23):1454-1463.