- 2025年3月9日
半月板損傷の原因と予防法!膝関節を守るための正しい知識
日常生活に支障をきたす膝の痛みは、半月板損傷が原因の可能性があります。40代以降は、特に注意が必要です。半月板は膝関節のクッションの役割を果たしており、損傷すると激しい痛みや腫れ、可動域の制限を引き起こします。
スポーツによる急激な動き、加齢による変性、長時間の立ち仕事や正座などの日常の負担の蓄積などが原因です。日本人の生活習慣である正座や和式トイレは、半月板に大きな負担をかける可能性があります。
この記事では、膝の痛みで悩んでいる方、将来の膝の健康を守りたい方に、半月板損傷の原因と予防法、MRI検査による正確な診断など、膝の健康を維持するための知識をお伝えします。
半月板損傷の主な原因
半月板損傷の原因は、主に以下の3つです。
- スポーツや急激な動作による損傷
- 加齢や変性による内部的要因
- 膝に負担をかける生活習慣
膝の痛みの原因を理解することで、半月板損傷のリスクを軽減できる可能性があります。
スポーツや急激な動作による損傷
バスケットボールやサッカー、バレーボール、バドミントンやテニスなどの俊敏な動きが求められるスポーツでは、半月板損傷のリスクが高まります。ジャンプや着地、急な方向転換、ストップ動作など、膝関節に大きな負担がかかる動きが多く含まれているためです。
バスケットボールのジャンプや着地では、体重の何倍もの負荷が膝関節にかかります。サッカーやテニスの急な方向転換では、半月板がねじれるような力が加わり、損傷につながる可能性があります。地面が不安定な場所や滑りやすい場所での運動は、リスクが高まり注意が必要です。
激しい動きによって、半月板に亀裂が入ったり、断裂したりすることがあります。若い世代では、スポーツによる急激な外力が原因となることが多いです。スポーツ活動時は、適切なウォーミングアップと技術の習得が重要です。
加齢や変性による内部的要因
加齢とともに半月板は弾力性を失い、もろくなるため、損傷しやすくなります。若い頃は多少の負担がかかっても修復できていた半月板も、年齢を重ねるにつれて修復機能が低下します。自然な老化現象であり、誰にでも起こりうる変化です。40代頃から徐々に弾力性が失われ始め、60代になると損傷のリスクが高まります。
加齢以外にも、関節リウマチなどの炎症性疾患や変形性膝関節症も、半月板の変性を早める原因です。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす病気です。軟骨のすり減りが進行すると、半月板にも負担がかかり、損傷しやすくなります。
日常生活の動作で半月板を損傷する可能性があります。立ち上がる、しゃがむ、階段を昇り降りするといった動作でも、加齢によって弱くなった半月板には大きな負担がかかります。予防のためには、適度な運動と体重管理が重要です。
膝に負担をかける生活習慣
日常生活の中で、膝に負担をかける動作を繰り返すことも、半月板損傷のリスクを高めます。重い荷物を頻繁に持ち上げたり、正座や和式トイレを長時間続けたりすることは、膝関節に大きな負担をかけます。長時間の立ち仕事やデスクワークも、膝への負担を増加させる要因です。
和式トイレの使用や正座の習慣が多い場合は、膝への負担が大きくなる可能性があります。和式トイレを使用する際は、膝を深く曲げた状態が長く続くため、半月板への圧迫が強くなるためです。正座も膝関節を大きく曲げるため、半月板に負担がかかります。
重い荷物を持ち運ぶ際は、カートを使用しましょう。正座をする際は、こまめに休憩を取る、和式トイレではなく洋式トイレを使用するなどの工夫が有効です。長時間の立ち仕事やデスクワークをする場合は、適度に休憩を挟み、膝をストレッチするなどして、負担を軽減することが重要です。
半月板損傷の症状3選
半月板損傷の症状として、主に以下の3つが挙げられます。
- 膝の痛み
- 膝の腫れ
- 可動域制限
膝の痛み
半月板損傷の最も一般的な症状は、膝の痛みです。膝の内側や外側に鋭い痛みとして現れることが多いです。階段の昇り降りや、しゃがむ、立ち上がるといった動作で痛みが強くなる傾向があります。
安静時は痛みが和らぐこともありますが、損傷した半月板が関節に挟まると、膝が急に動かなくなるロッキングという症状が現れることがあります。ロッキングは、膝が動かなくなり、激しい痛みを伴う状態です。
スポーツ中の急な方向転換やジャンプの着地時など、膝をひねったり強い衝撃が加わったりしたときに、突然鋭い痛みを感じるのも特徴です。痛みの種類や痛む場所は、損傷の程度や部位によって異なります。
膝の腫れ
半月板が損傷すると、炎症反応が起こり、関節内に水が溜まって膝が腫れます。腫れの程度は、損傷の程度や炎症の強さによって異なり、軽度の損傷の場合は少し腫れて熱を持つ程度です。重度の損傷の場合は、大きく腫れて、膝の曲げ伸ばしが困難になることがあります。
炎症が強いほど腫れも大きくなり、皮膚が赤くなることがあります。腫れがひどい場合は、歩くことが困難になる場合もあります。安静にして炎症を抑えることが重要です。症状が続く場合は、医療機関での診察を受けましょう。適切な診断と治療により、症状の軽減や進行の抑制が期待できます。
可動域制限
半月板損傷によって膝の動きが悪くなり、可動域制限が起こることがあります。損傷した半月板が関節の動きを妨げたり、痛みや腫れによって筋肉が緊張したりすることが原因です。
膝を完全に伸ばしたり、深く曲げたりするほか、正座やあぐらをかく動作が制限され、日常生活に大きな支障が出ることがあります。
階段の上り下りや靴の着脱が困難になることもあります。半月板損傷は、スポーツによる急激な外力だけでなく、加齢に伴う変性や日常生活での膝への負担の蓄積など、原因はさまざまです。40代頃から半月板の弾力性は徐々に失われ始めます。
膝の痛みや腫れ、可動域制限などの症状に心当たりがある場合は、放置せずに整形外科を受診し、適切な検査と診断を受けることが重要です。
半月板損傷はMRIで診断する
半月板損傷の診断には、MRI検査が有効です。MRI検査は、強力な磁場と電波を用いて、体の内部を画像化する検査です。レントゲン検査では骨の状態はわかりますが、半月板の状態は詳細に把握できません。
MRI検査では、半月板損傷の有無や損傷の程度、種類、部位などを詳細に把握できます。最適な治療方針を決定するうえで重要な情報で、損傷の深さや周囲の組織への影響など、さまざまな情報が得られます。
半月板損傷の診断では、症状や痛めたときの状況などを詳しく問診した後、膝の診察を行い、腫れや痛み、動きの範囲、関節の不安定性などを調べ、半月板損傷の有無を推測します。
膝の痛みや違和感を感じたら、自己判断せずに整形外科を受診しましょう。問診や診察、MRI検査などを総合的に判断し、適切な治療方針を決定します。
半月板損傷の予防法
半月板損傷の予防法は以下の4つです。
- 膝を支える筋肉を鍛える
- 膝のストレッチをする
- サポーターを活用する
- 運動前後はウォーミングアップやクールダウンを行う
膝を支える筋肉を鍛える
膝関節の安定性を高めるには、膝関節周辺の筋肉を鍛えることが重要です。大腿四頭筋(だいたいしとうきん)やハムストリングスを強化すれば、膝関節への負担を軽減し、半月板損傷のリスクを下げられる可能性があります。椅子に座って膝を伸ばすレッグエクステンションは、大腿四頭筋を鍛えます。
うつ伏せで膝を曲げるレッグカールは、ハムストリングスを強化します。スクワットなどの自重トレーニングから始めるのも良い方法です。適切なトレーニング方法は、個々の体力や状態によって異なります。理学療法士やトレーナーに相談して、自分に合ったメニューを作成しましょう。
適切な運動強度やフォームを学べば、効果的に筋肉を鍛え、けがのリスクを減らせます。ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な有酸素運動も効果的です。運動は継続が大切ですが、痛みがある場合は無理をせず、適切な休息を取りましょう。
膝のストレッチをする
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高めて関節の可動域を広げ、円滑な動きを促します。以下の運動前後のストレッチが、けがの予防に効果的です。
- アキレス腱を伸ばすストレッチ
ふくらはぎの筋肉の柔軟性を高め、膝関節への負担を軽減する効果が期待できます。 - 太ももの前側を伸ばすストレッチ
大腿四頭筋の柔軟性を高め、膝の動きをスムーズにします。 - 太ももの裏側を伸ばすストレッチ
ハムストリングスの柔軟性を高め、膝関節の安定性向上に役立ちます。
ストレッチは、毎日継続して行うことで効果が期待できます。1回に長時間行うよりも、短い時間でも毎日続けることが重要です。入浴後など、体が温まっているときに行うと効果的です。ストレッチは痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。
サポーターを活用する
スポーツ時や日常生活で膝に負担がかかる作業をする際に、サポーターを着用することで膝関節を安定させ、半月板への負担を軽減できます。サポーターは、スポーツ用品店やドラッグストア、オンラインショップなどで購入できます。さまざまな種類があるので、自身の活動内容や膝の状態に合ったサポーターを選びましょう。
サポーターを選ぶ際には、サイズが重要です。きつすぎるサポーターは血行を阻害する恐れがあり、ゆるすぎるサポーターは十分なサポート力を発揮できません。適切なサイズを選ぶことで、サポーターの効果を最大限に引き出せます。
サポーターの使用については、医療専門家に相談することを推奨します。適切な使用方法や着用時間について、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的にサポーターを活用できます。
運動前後はウォーミングアップやクールダウンを行う
運動前のウォーミングアップは、体温を上昇させ、心拍数を徐々に上げて血液循環を促進する効果があります。筋肉や関節の柔軟性を高め、運動中のけがのリスクを軽減します。軽いジョギングやストレッチなどがウォーミングアップとして効果的です。
運動後のクールダウンは、運動によって発生した疲労物質(乳酸など)の排出を促し、筋肉痛やけがの予防に役立ちます。ストレッチやウォーキングなどがクールダウンとして効果的です。運動前後のウォーミングアップとクールダウンを適切に行うことで、運動の効果を高め、けがのリスクを軽減できる可能性があります。
半月板損傷の予防には、日々の生活習慣における適切なケアが重要です。紹介した方法を参考に、自身の生活に取り入れてみましょう。
まとめ
半月板損傷を防ぎ、健康な膝を維持するために、日々の生活習慣を見直しましょう。膝の周りの筋肉を鍛えることで、関節にかかる負担を軽減できます。大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えるトレーニング、アキレス腱や太もものストレッチを習慣化しましょう。
サポーターの活用や運動前後のウォーミングアップ・クールダウンも効果的です。重い荷物を持つ際はカートを使用したり、正座や長時間の立ち仕事を避けたりするなど、膝への負担を減らす工夫も大切です。
定期的な運動と適切なケアで、膝の健康維持に努めることが重要です。予防策を実践し、健康な膝を長く保ちましょう。気になる症状がある場合は、早めに整形外科を受診して適切な診断と治療を受けてください。
参考文献
Francisco Xará-Leite, André Vinha, Cristina Valente, Renato Andrade, João Espregueira-Mendes. Magnetic resonance imaging is able to detect patellofemoral focal cartilage injuries: a systematic review with meta-analysis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc, 2023, 31(6), p.2469-2481.