半月板損傷の手術のデメリットと保存療法を選ぶときの重要ポイント

膝の痛みや引っかかり感がある場合、半月板損傷の可能性があります。手術という選択肢もありますが、以下のデメリットが考えられます。

• 再手術の可能性
• 合併症のリスク
• 長期のリハビリ

この記事では、手術に頼らない保存療法や半月板を温存することの重要性、保存療法による症状改善の可能性についても解説します。 手術と保存療法の特徴を理解し、自分に合った治療法を選択するための知識を得ることができます。

半月板損傷手術のデメリット3つ

半月板は膝関節の中でクッションの役割を果たす組織であり、大腿骨と脛骨の間で衝撃を吸収し、滑らかな動きをサポートしています。半月板が損傷すると、痛みや腫れ、可動域制限などの症状が現れます。

半月板損傷の手術には、損傷した部分を縫い合わせる修復術と、損傷部分を取り除く切除術があります。患者さんの年齢や活動レベル、損傷の程度などを考慮して最適な方法を選択します。半月板損傷手術の3つのデメリットについて解説します。

• 再手術の可能性
• 合併症のリスク(感染症や出血)
• 運動復帰に向けた長期間のリハビリ

再手術の可能性

半月板損傷の手術後、一定の確率で再手術が必要になる場合があります。主なケースは次のとおりです。

• 半月板修復術の場合
  縫合した部分が完全に治癒せず、再び損傷してしまう可能性があります。半月板の外側部分は血流が乏しいため、治癒が難しい場合があり、再手術のリスクが高まります。
• 半月板切除術の場合
  損傷部分を取り除くことで一時的に症状は改善しますが、半月板の機能が失われるため、長期的には膝関節への負担が増加し、変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。残った半月板に負荷が集中し、新たな損傷が生じるリスクも懸念されます。

医学論文でも、半月板修復後の再手術率は部分切除術よりも高いと報告されており、手術方法の選択には慎重な判断が必要です。

合併症のリスク(感染症や出血)

半月板損傷の手術は、他の手術と同様に合併症のリスクが伴います。主な合併症は次のとおりです。

• 手術部位の感染症
  手術中に細菌が侵入することで起こり、傷の腫れや痛み、発熱などの症状が現れます。
• 出血
  手術中だけでなく、術後にも起こる可能性があり、大量出血の場合は再手術が必要となることもあります。
• 神経や血管の損傷
  手術中に周囲の組織を傷つけてしまうことで起こり、しびれや麻痺、冷感、血行不良などの症状が現れる可能性があります。
• 血栓
  術後に足の静脈に血栓ができることもあり、足の痛みや腫れ、呼吸困難などの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談する必要があります。

合併症はまれですが、可能性があることを理解しておくことが重要です。

運動復帰に向けた長期間のリハビリ

手術後の日常生活やスポーツ活動への復帰には、リハビリテーションが不可欠です。リハビリの期間は、手術の方法や損傷の程度、個々の回復状況、年齢などによって大きく異なります。手術直後は痛みや腫れがあるため、無理のない範囲で関節の動きを改善する運動から始めましょう。

徐々に筋力トレーニングや歩行練習を取り入れ、負荷を高めていきます。スポーツ復帰を目指す場合は、さらに集中的なリハビリが必要となり、競技レベルによっては半年以上かかることもあります。リハビリ期間中は、医師や理学療法士の指示に従い、焦らずに計画的に進めることが重要です。

修復術を選択した場合は、半月板の治癒を促すために、一定期間は運動を制限する必要があります。

半月板を温存する保存療法について

半月板損傷の治療には、手術だけでなく保存療法という選択肢もあります。保存療法について以下の内容を解説します。

• 半月板を温存する保存療法の意義
• 自然治癒が難しい理由
• 保存療法による症状改善の期待

半月板を温存する保存療法の意義

半月板をなるべく温存することが保存療法の大きな目的です。半月板を温存する主なメリットは、以下のとおりです。

• 将来的な変形性膝関節症のリスクを減らせる可能性がある
  半月板は、膝関節の安定性を保つ役割も担っているため、損傷すると、機能が低下します。将来、変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。
• 膝関節の機能を維持しやすくなる
  半月板は、膝関節の滑らかな動きに欠かせない組織です。半月板を温存することで、膝関節の本来の機能を維持しやすくなります。

自然治癒が難しい理由

血管は栄養や酸素を運び、組織の修復に重要な役割を果たします。半月板は、血管が少ないため、自然治癒が難しい組織です。半月板が損傷する原因は、加齢による変化も大きな要因の一つです。年齢を重ねるとともに、半月板の組織は水分が失われ、弾力性が低下していき、ちょっとした衝撃でも損傷しやすくなります。

保存療法による症状改善の期待

保存療法では、痛みや腫れなどの症状の軽減を図り、日常生活の質の向上を目指します。保存療法には、以下の方法があります。

• 薬物療法
• ヒアルロン酸注射
• 物理療法
• 運動療法
• 装具療法

治療法は単独で行うこともありますが、多くの場合は組み合わせて行います。痛みや炎症が強い時期には、薬物療法や物理療法を中心に行い、痛みが落ち着いてきたら、運動療法や装具療法を積極的に行っていきます。保存療法は、症状の改善に時間がかかることもあります。

あくまで保存的に治療を試みる方法であり、症状が改善しない場合や悪化する場合には、手術療法を検討する必要があることを覚えておきましょう。

半月板損傷手術後の生活への影響

手術は半月板損傷の治療における有効な手段の一つです。術後の痛みや腫れ、動かしにくさの経過は人それぞれで、年齢や活動レベル、損傷の程度、手術の方法によって異なります。以下のポイントを参考に、ご自身の状況を理解し、スムーズな回復を目指しましょう。

• 日常生活での注意事項
• リハビリテーションにおける重要なポイント
• 仕事や趣味への復帰プラン

日常生活での注意事項

日常生活では、できる限り膝への負担を軽減し、無理なく過ごせるように工夫することが重要です。日常生活での注意点は次のとおりです。

• 安静とアイシング
  手術後、患部を安静にすることは、炎症の抑制や回復の促進に役立つとされています。医師の指示に従って、適切な期間、松葉杖や装具を使用し、患部への負担を軽減することが推奨されます。腫れや痛みの緩和のために、医師の指導のもと、アイシングを1回20分程度、1日に数回行うことも検討されます。
• 日常生活動作の工夫
  日常生活の何気ない動作が、手術直後には負担になることもあります。入浴時には滑りにくいマットを敷き、手すりを使用するなどして転倒のリスクを減らし、膝への負担を軽減しましょう。トイレも、できる限り洋式トイレを使用し、必要に応じて補助便座などを利用しましょう。階段の上り下りも、手すりを使って一段ずつゆっくりと行うように心がけてください。
• 適切な靴の選び方
  ヒールが高い靴や不安定なサンダルは、膝関節への負担を増大させるため、控えることをおすすめします。歩きやすい運動靴など、靴底が厚く、クッション性のあるものを選ぶことが大切です。足元が安定することで、膝への負担を軽減し、転倒のリスクも抑えられます。
• 痛みや腫れの増減
  痛みや腫れがひどい場合や発熱、傷の悪化などの症状が現れた際は、感染症などの合併症の可能性が考えられます。速やかに医師に相談し、適切な処置を受けるようにしてください。

リハビリテーションにおける重要なポイント

リハビリテーションは、手術後の回復過程において重要な役割を担います。半月板修復術を選択した場合はリハビリテーションの重要性が高まります。一般的には以下の方法があります。

• 関節可動域訓練
  膝の曲げ伸ばし動作の範囲を広げ、スムーズな動きを取り戻すための訓練です。無理のない範囲で、徐々に可動域を広げていくことが大切です。
• 筋力トレーニング
  膝関節を支える筋肉、特に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏の筋肉)を強化することで、関節の安定性を高めます。
• バランス練習
  片足立ちなどのバランス練習は、身体のバランス感覚を養い、転倒予防に効果的です。

仕事や趣味への復帰プラン

仕事や趣味への復帰は、個々の回復状況や仕事内容、趣味の内容によって大きく異なります。年齢も回復速度に影響する重要な要素です。若年者のほうが一般的に回復が早い傾向があり、高齢者の場合、回復に時間がかかる場合があります。復帰に関しては、以下の点に注意しましょう。

• 復帰時期
  医師と相談し、無理のない復帰時期を設定します。
• 仕事内容の調整
  復帰当初は、仕事内容や時間などを調整してもらう必要があります。立ち仕事や重いものを持ち上げる作業が多い場合は、注意が必要です。
• 趣味の再開
  趣味の再開も、徐々に負荷を上げていくことが大切です。激しい運動は避け、ウォーキングなどの軽い運動から始めましょう。スポーツ復帰を目指す場合は、医師の許可を得てから、段階的に練習強度を上げていきましょう。

まとめ

手術には、再手術の可能性や合併症のリスク、長期のリハビリなど、考慮すべきデメリットが複数あります。保存療法は手術に比べて時間はかかりますが、半月板を温存できるメリットがあります。膝の痛みを抱えている方は、手術や保存療法それぞれのメリット・デメリットを理解しましょう。

ご自身の年齢、活動レベル、損傷の程度などを考慮し、最適な治療法を選択することが大切です。早期の受診と、医師の指示に従った治療・リハビリが、日常生活への復帰をサポートする要素となります。不安や疑問があれば、医師に相談しましょう。個々の状況に応じた治療方針を検討できます。

参考文献

Ozeki N, Seil R, Krych AJ, Koga H. Surgical treatment of complex meniscus tear and disease: state of the art. J ISAKOS, 2021 Jan;6(1):35-45.