• 2025年1月21日

肩の痛みとストレッチ

肩の痛み、それは日常生活を脅かす悩みの種。朝、服を着る動作で激痛が走る。夜、寝返りを打つたびに目が覚める。あなたは今、そんな苦痛に耐えていませんか?実は、肩の痛みは日本人の約8人に1人が悩まされている、まさに国民病ともいえる身近な症状です。その原因は、肩こり、五十肩、回旋腱板損傷など、実に様々。この記事では、肩の痛みの原因5選と、その症状、そしてストレッチ7選、自宅でできるケア4選まで、肩の痛みに関する情報を網羅的にご紹介します。肩の痛みについて理解を深め、適切なケアを行うための第一歩を、今すぐ踏み出しましょう。

肩の痛みの原因5選とタイプ別の症状

肩の痛みは、日常生活に支障をきたす非常に厄介な症状です。朝、服を着ようとして腕が上がらなかったり、夜、寝返りを打つたびに痛みが走ったりすると、それだけで気分が沈んでしまいますよね。その原因は実に様々です。ここでは代表的な5つの原因と症状について、小学生でも理解できるように丁寧に解説します。

肩こりからくる肩の痛み

肩こりは、長時間同じ姿勢での作業や、猫背、運動不足、精神的なストレスなど、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。肩や首の筋肉が緊張し、硬くなって血行が悪くなることで、肩に鈍い痛みや重だるさを感じます。ひどい場合は頭痛やめまい、吐き気などを伴うこともあります。

例えば、デスクワークで長時間パソコン作業をしていると、肩や首の筋肉が緊張しやすく、肩こりによる痛みが生じやすくなります。また、スマートフォンを長時間使用する場合も、下を向いた姿勢が続くため、同様に肩こりの原因となります。

肩こりは、実は日本人の約8人に1人が自覚症状を抱えているほど、国民病とも言えるほど多くの人が悩まされている症状です。軽度の肩こりは、ストレッチや体操、入浴などで改善することが多いですが、日常生活で同じ姿勢を長時間続けることが多い人は再発しやすい傾向にあります。日頃からこまめな休憩や軽い運動を心がけることが大切です。

五十肩(肩関節周囲炎)

五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節の周りの組織に炎症が起こり、強い痛みや肩の動きの制限が生じる病気です。40代から60代に多く発症することから、「四十肩」「六十肩」と呼ばれることもあります。

五十肩の痛みは、突然肩に激痛が走る場合もあれば、徐々に痛みが強くなっていく場合もあります。特徴的なのは、夜間や安静時にも痛みが強く、特に寝返りを打つ際に激痛が走るため、睡眠不足に悩まされる患者さんも少なくありません。腕を上げたり、後ろに回したりする動作が困難になり、日常生活に大きな支障をきたします。

五十肩は自然に治る病気ですが、痛みが強い時期は数ヶ月続くこともあり、完全に治るまでには半年から1年以上かかることもあります。回復期間には個人差があり、中には数年経過しても痛みが残ってしまうケースもまれにあります。

回旋腱板損傷・断裂

回旋腱板(かいせんけんばん)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称です。肩関節を安定させ、腕をスムーズに動かす役割を担っています。この回旋腱板が損傷、あるいは断裂してしまう病気が、回旋腱板損傷・断裂です。

回旋腱板が損傷・断裂すると、肩に痛みを感じ、腕を動かしにくくなります。特に腕を上げたり、後ろに回したりする動作で強い痛みを感じます。症状が軽い場合は、安静にしていれば痛みは治まりますが、重症化すると、安静時にも痛みを感じたり、夜間痛で眠れないといった症状が現れることもあります。

回旋腱板損傷・断裂は、加齢やスポーツ、転倒などの外傷によって起こることがあります。40歳以上の方に多く見られ、多くの方が悩まされている症状です。。いくつかの研究では、保存療法である運動療法が、手術と同等の効果を示すという報告も出てきています。しかし、症状の残存や再発のリスクも存在するため、専門医による適切な診断と治療が重要です。

腱板炎

腱板炎は、回旋腱板に炎症が起こることで、痛みや運動制限が生じる病気です。野球やテニス、バレーボールなど、腕を繰り返し使うスポーツをする人に多くみられます。また、加齢によって腱が弱くなっている場合にも起こりやすくなります。

腱板炎の症状は、回旋腱板損傷・断裂と似ていますが、痛みは比較的軽度であることが多いです。安静にしていれば痛みは治まりますが、腕を動かすと再び痛みが出ることがあります。腱板炎を放置すると、回旋腱板損傷・断裂に進行する可能性もあるので、適切な治療を受けることが大切です。

石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱板炎は、腱板にカルシウムが沈着し、炎症を起こす病気です。なぜカルシウムが沈着するのか、はっきりとした原因は解明されていませんが、腱の老化や血行不良などが関係していると考えられています。

石灰沈着性腱板炎の特徴的な症状は、突然の激しい肩の痛みです。まるで肩にナイフが刺さったような激痛と表現されることもあり、腕を全く動かせなくなる場合もあります。石灰が吸収されると痛みは軽減しますが、再発することもあります。

肩の痛みに効果的なストレッチ7選

肩の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす厄介な症状です。安静にしていてもズキズキと痛む、腕が上がらない、夜寝ているときも痛みで目が覚めてしまうなど、その症状は人それぞれです。肩の痛みを和らげ、快適な生活を取り戻すためには、原因に合わせた適切な治療が必要です。その中でも、ストレッチは肩の痛みの改善に効果的な方法の一つです。今回は、肩の痛みに効果的な7つのストレッチをご紹介します。

振り子運動

振り子運動は、肩関節の可動域を広げ、筋肉の緊張をほぐす効果が期待できるストレッチです。五十肩などで肩を動かすのが辛い方でも、比較的負担が少なく行えるのがメリットです。

やり方

  1. 少し前かがみになり、痛くない方の腕で机や椅子などの安定した場所に掴まります。
  2. 痛む方の腕を、力を抜いてだらりと下に垂らします。
  3. 体を左右に軽く揺らし、腕を振り子のように動かします。前後に揺らすのも効果的です。
  4. この動きを10回ほど繰り返します。

ポイント

  • 無理に腕を大きく振ろうとせず、小さな動きから始めましょう。
  • 痛みを感じたらすぐに中止し、無理は禁物です。
  • 回旋腱板関連の肩の痛みにおいても、運動療法は有効とされています。特に、肩の痛みが強い急性期を過ぎた後に行うと効果的です。
  • 毎日継続することで、肩関節の柔軟性を徐々に改善し、痛みの軽減につながることが期待できます。

タオルを使ったストレッチ

タオルを使ったストレッチは、肩甲骨を動かすことで肩周りの筋肉の柔軟性を高め、肩こりや五十肩の改善に役立ちます。

やり方

  1. タオルの両端を持ち、頭の上で持ちます。
  2. 痛む方の腕を曲げ、タオルを背中に回します。
  3. 反対側の手でタオルの下端を持ち、優しく下に引っ張ります。
  4. この姿勢を20秒ほど維持します。
  5. 左右交互に3回ずつ行います。

ポイント

  • タオルを持つ手の位置を調整することで、ストレッチの強度を調節できます。
  • 呼吸を止めずに、自然な呼吸を続けましょう。
  • 回旋腱板損傷や断裂の場合、無理にストレッチを行うと悪化させる可能性があります。痛みの程度に合わせて行い、専門医の指導を受けることが重要です。

手のひら回し

手のひら回しは、肩関節の動きを滑らかにし、肩の痛みだけでなく、肩こりや首こりの予防にも効果的です。

やり方

  1. 両腕を肩の高さまで上げ、手のひらを上に向けます。
  2. そのまま手のひらを下に向け、腕を後ろに回します。
  3. この動きを10回ほど繰り返します。

ポイント

  • 肩甲骨を意識して動かすようにしましょう。
  • 肩に痛みがある場合は、無理に行わないでください。
  • 石灰沈着性腱板炎のように、炎症が強い時期は安静が第一です。痛みが落ち着いてきたら、徐々に可動域を広げるように手のひら回しなどの軽い運動を始めましょう。

腕の上げ下げ運動

腕の上げ下げ運動は、肩関節の可動域を広げる効果があり、五十肩などで腕が上がりにくい場合に有効なストレッチです。

やり方

  1. 椅子に座り、背筋を伸ばします。
  2. 痛む方の腕をゆっくりと真上に上げます。
  3. 上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元の位置に戻します。
  4. この動きを10回ほど繰り返します。

ポイント

  • 痛みがある場合は、無理に腕を上げようとしないでください。
  • 呼吸を止めずに、自然な呼吸を続けましょう。
  • 腱板炎の初期症状で、腕を上げると痛みが出る場合、無理に動かさず安静にすることが大切です。炎症が治まってきたら、徐々に腕の上げ下げ運動を始め、可動域を広げていきましょう。

肩甲骨はがしストレッチ

肩甲骨はがしストレッチは、肩甲骨周りの筋肉をほぐし、柔軟性を高める効果があります。猫背の改善にも効果的です。

やり方

  1. 両腕を前に伸ばし、手のひらを合わせます。
  2. そのまま両腕を上に持ち上げ、肩甲骨を寄せます。
  3. そこから両腕を後ろに回し、肩甲骨を引き離します。
  4. この動きを10回ほど繰り返します。

ポイント

  • 肩甲骨を意識して動かすようにしましょう。
  • 痛みがある場合は、無理に行わないようにしてください。
  • 肩こりは、肩甲骨周りの筋肉が硬くなることが原因の一つです。肩甲骨はがしストレッチは、肩甲骨の動きをスムーズにし、肩こりの改善に役立ちます。

猫背改善ストレッチ

猫背改善ストレッチは、猫背によって縮こまった胸の筋肉を伸ばし、肩甲骨の動きをスムーズにする効果があります。

やり方

  1. 壁の前に立ち、両手を肩幅に開いて壁につけます。
  2. そのまま体を前に倒し、胸を壁に近づけます。
  3. この姿勢を20秒ほど維持します。

ポイント

  • ストレッチ中は、お腹を引っ込め、背筋を伸ばすように意識しましょう。
  • デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、猫背になりやすく、肩こりの原因となります。猫背改善ストレッチは、姿勢を正し、肩こりを予防する効果も期待できます。

チューブを使ったストレッチ

チューブを使ったストレッチは、肩周りの筋肉を強化する効果があります。肩の痛みを予防し、再発を防ぐためにも効果的です。

やり方

  1. チューブを両手で持ち、肩幅より少し広めに立ちます。
  2. チューブを引っ張りながら、両腕を胸の前に伸ばします。
  3. この姿勢を20秒ほど維持します。
  4. これを10回ほど繰り返します。

ポイント

  • チューブの強度は、自分の体力に合わせて調整しましょう。
  • 痛みがある場合は、無理に行わないようにしてください。
  • 回旋腱板損傷や断裂の術後、リハビリテーションとしてチューブを使ったストレッチを行うことがあります。肩関節の安定性を高め、再発予防に効果的です。しかし、症状や回復状況によっては適さない場合もあるので、必ず医師の指導のもとで行いましょう。

肩の痛みには様々な原因があり、それぞれ適切な治療法が異なります。運動療法は手術と同等の効果が期待できる場合もありますが、症状が残存したり再発するリスクも存在します。自己判断せずに、整形外科医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

肩の痛みの改善と予防のためのケア4選

肩の痛み。それは、まるで重りが肩にのしかかるような重苦しさ、腕を動かすたびに走る鋭い痛み、そして夜も安眠を妨げる不快感など、日常生活を大きく阻害する悩ましい症状です。肩の痛みの予防・改善には、ストレッチだけでなく、多角的なケアが重要です。痛みの原因や状態に合わせた適切なケアを続けることで、症状の緩和が期待できるでしょう。

ストレッチ以外のリハビリテーション方法

肩の痛みの改善には、ストレッチ以外にも様々なリハビリテーション方法があります。肩関節の動きが悪くなっている五十肩の患者さんには、まず温罨法で患部を温めて血行を促進し、痛みが軽減した後に、無理のない範囲で関節を動かす運動療法が有効です。

腱板断裂のように炎症が起きている場合は、アイシングで炎症を抑えることが重要です。

このように、痛みの原因や状態によって適切なリハビリテーション方法は異なります。自己判断せず、医師や理学療法士に相談し、個別の症状に合わせたプログラムを作成してもらうことが大切です。

家庭でできる温罨法と冷罨法

温罨法と冷罨法は、家庭でも手軽に行える効果的なケアです。温罨法は、蒸しタオルやホットパックなどで肩を温めることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、肩こりや五十肩による痛みの緩和に役立ちます。

冷罨法は、氷水を入れた袋や冷却スプレーなどで患部を冷やすことで、炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。腱板炎や石灰沈着性腱板炎などで炎症が強い場合に有効です。

温罨法と冷罨法は、症状に合わせて使い分けることが重要です。急性の痛みや炎症がある場合は冷罨法、慢性的な痛みやこわばりがある場合は温罨法が効果的です。

例えば、スポーツで肩を痛めた直後などは、炎症を抑えるために冷罨法を行います。一方、慢性的な肩こりで肩が重だるい場合は、温罨法で血行を促進すると効果的です。

ただし、温罨法では低温やけどに注意し、冷罨法では冷やしすぎに注意する必要があります。また、皮膚に傷や炎症がある場合は、温罨法や冷罨法を行わないようにしましょう。

肩の痛みに良い生活習慣と姿勢

肩の痛みを予防・改善するためには、日常生活の姿勢や習慣を見直すことが重要です。猫背は肩こりの原因となり、肩の痛みを悪化させる可能性があります。パソコン作業やスマートフォンの使用中は、意識的に背筋を伸ばし、肩甲骨を寄せるように心がけましょう。

適度な運動は、肩周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めるため、肩の痛みを予防するために効果的です。ウォーキングや水泳など、肩に負担の少ない運動を習慣的に行うと良いでしょう。

睡眠不足は体の回復力を低下させ、痛みを悪化させることがあります。質の高い睡眠を十分に確保することも重要です。バランスの取れた食事は、健康な体を維持し、肩の痛みを予防する上で不可欠です。特に、筋肉や骨の健康をサポートするタンパク質、ビタミン、ミネラルを積極的に摂取しましょう。

専門家への相談と適切な治療の重要性

肩の痛みが続く場合は、自己判断せずに整形外科医などの専門家に相談することが重要です。特に、耐え難いほどの強い痛み、腕が上がらない、しびれ、腫れや熱感などの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

専門家は、問診、視診、触診、画像検査などを通して痛みの原因を特定し、適切な治療法を提案します。治療法には、運動療法、薬物療法、注射療法、手術など様々な選択肢があり、患者さんの状態に合わせて最適な方法が選択されます。

肩の痛みは、早期に適切な治療を開始することで、より早く改善する可能性が高まります。自己判断で放置せず、専門家に相談し、適切な治療を受けることが大切です。回旋腱板関連の肩の痛みにおいて、適切な運動療法が手術と同等、あるいはそれ以上の効果を示すという報告も出てきています。しかし、症状の残存や再発のリスクも存在するため、専門医の指導のもと、適切な治療とリハビリテーションを行うことが重要です。

まとめ

肩の痛みは、肩こり、五十肩、回旋腱板損傷など様々な原因で起こり、日常生活に支障をきたすこともあります。肩の痛みを和らげるには、原因に合わせた適切な対処が必要です。この記事では、肩の痛みの原因別にストレッチやリハビリテーション、日常生活での注意点などを紹介しました。ストレッチは、肩こりや五十肩など、様々な肩の痛みに効果的です。ご紹介したストレッチは、自宅で簡単に行えるものばかりなので、ぜひ試してみてください。
肩の痛みが強い場合や、ストレッチを行っても改善しない場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。医師の診断のもと、適切な治療を受けることが大切です。日頃から正しい姿勢を意識し、適度な運動を取り入れるなど、生活習慣にも気を配り、肩の痛みを予防・改善していきましょう。

参考文献

  • and Lewis J. “Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties.” Manual therapy 23, no. (2016): 57-68.

追加情報

[title]: Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties.,

回旋腱板関連肩痛:評価、管理、そして不確定要素

【要約】

  • 回旋腱板関連肩痛(RCRSP)は、肩峰下痛症候群、回旋腱板腱症、部分断裂および全層断裂といった様々な肩の疾患を含む包括的な用語である。

  • 高品質な研究によると、段階的な適切な運動療法は、肩峰下痛症候群、回旋腱板腱症、部分断裂、外傷性でない全層断裂において、手術と同等以上の効果を示す。

  • しかし、RCRSPの理解には依然として多くの不足点がある。(i)症状の原因と発生源、(ii)確定診断、(iii)有症RCRSPの疫学、(iv)介入の対象となる組織やシステム、(v)最も効果的な介入法など。

  • 本稿では、これらの不確実な点を明らかにするために、(i)回旋腱板の機能、(ii)症状、(iii)病因、(iv)評価と管理、(v)画像診断、(vi)手術に伴う不確実性について焦点を当てる。

  • 運動療法は手術と同等の成功率を示すが、症状の残存や再発がみられる場合があり、完全な回復とは限らない。そのため、病因の解明、評価と管理方法の改善、そして最終的にはこれらの疾患の予防のための継続的な研究が必要である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27083390,

[quote_source]: and Lewis J. “Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties.” Manual therapy 23, no. (2016): 57-68.

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