• 2025年3月22日

【セルフチェック】膝の靭帯損傷の症状チェックで早期発見!

膝に痛みや違和感を感じたら、靭帯損傷の可能性があります。スポーツ選手だけでなく、日常生活で階段の上り下りや長時間の立ち仕事をする方も必要です。

膝の「バキッ」や「ポキッ」という音や、突然の激しい痛みがある場合は、膝の靭帯が損傷している可能性があります。放置すると日常生活に支障をきたす可能性があります。将来的に変形性膝関節症のリスクも高まるため、早めの対処が必要です。

この記事では、自宅で簡単にできるセルフチェックリストと、病院を受診すべきサインを解説します。セルフチェックで少しでも不安を感じたら、整形外科の受診をおすすめします。膝の健康を維持するために、定期的にセルフチェックを行いましょう。

膝靭帯損傷の症状チェックリスト

靭帯損傷の疑いがある場合、以下の項目をチェックしてみましょう。

  • 膝の痛み
  • 膝の腫れ
  • 不安定感
  • 可動域制限
  • その他

膝の痛み

膝の痛みに関して確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 痛みの程度
  • 痛む場所
  • 痛みを感じるタイミング

安静時にも持続的な痛みがある場合は、炎症が強い可能性があるため注意が必要です。どの靭帯を損傷したかによって痛む場所が異なります。階段の上り下りなど、日常生活で痛みを感じる場合は医療機関を受診しましょう。

膝の腫れ

膝の腫れも重要なチェック項目です。以下のポイントを中心に確認してください。

  • 腫れの程度
  • 腫れが始まった時期
  • 熱感や赤みの有無

靭帯損傷直後は出血を伴うため、腫れが顕著に出ることがあります。受傷直後に腫れが生じる場合は靭帯損傷の可能性が考えられますが、数日後に腫れが生じる場合は、他の原因も考慮する必要があります。熱感や赤みを伴う場合は、炎症が強い可能性があるため要注意です。

不安定感

不安定感は靭帯損傷の症状の1つです。以下の項目をチェックしてみましょう。

  • 膝にぐらつきや不安定感の有無
  • 膝が抜けるような感覚の有無
  • 歩くときや立ち上がるときの不安定感の有無
  • 引っかかる感じの有無

膝のぐらつきや不安定感、抜けるような感覚があるときは靭帯を損傷している可能性があります。ぐらつきが強い場合は、日常生活に影響を及ぼすため注意が必要です。膝を曲げ伸ばししたときに引っかかる場合は、靭帯損傷に伴い関節内に異常がある可能性があります。

可動域制限

可動域制限について確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 膝をスムーズに曲げ伸ばしできますか?
  • どのくらいまで膝を曲げることができますか?
    健側の膝と比較して可動域に制限がないか確認しましょう。
  • 膝を曲げ伸ばしするときに痛みや違和感を感じますか?
  • 普段通りの生活で支障がありますか?

痛みがあって膝が思うように動かないときは、無理に動かしてはいけません。日常生活の動作に支障がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

その他

その他にも、けがをしたときの状況を思い出しながら以下のチェック項目を確認してください。

  • スポーツ中や転倒など、膝を捻ったりぶつけたりした記憶はありますか?
    受傷機転の把握は診断の重要な手がかりとなります。
  • けがをした直後に膝から音がしましたか?
  • けがをした直後に膝に力が入らなくなったり、歩けなくなったりしましたか?

セルフチェックはあくまで簡易的な確認方法であり、確定診断をするものではありません。セルフチェックで靭帯損傷の可能性が低いように見えても、痛みや違和感が続く場合は医療機関を受診しましょう。自己判断で治療を遅らせると、症状が悪化し回復が遅れる可能性があります。

病院受診のタイミング

以下の場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。

  • 膝に強い痛みがあり歩けない
  • 膝が大きく腫れている
  • 膝の形が通常と異なる
  • 膝の形が左右で異なる
  • 膝に力が入らずぐらつく
  • 膝を曲げ伸ばしできない
  • けがをした直後から痛みが続いている

上記以外にも少しでも不安な場合は、自己判断せずに医療機関に相談することが大切です。早期発見・早期治療は、後遺症のリスクを減らし日常生活やスポーツへの復帰が早まる可能性があります。

膝靭帯損傷の診断

膝の靭帯を損傷した場合は、早期発見・早期治療が重要です。膝靭帯損傷の診断方法や、早期に発見・治療するメリットを解説します。

医療機関での診断方法

医療機関では、問診や画像検査、ラックマンテスト、前方引き出しテストを用いて靭帯損傷を診断します。

最初に問診を行い、患者さんの状況を確認します。痛みの状況を医師に伝えてください。次に視診触診を行います。膝の腫れや変形、熱感、圧痛などを確認することで、損傷の程度や範囲を推測します。

問診や視診、触診から得られた情報を元に画像検査を行います。レントゲン検査では骨折の有無を確認し、MRI検査では靭帯の状態を詳しく調べます。MRI検査では、靭帯の部分断裂や完全断裂といった損傷の程度まで確認可能です。

前十字靭帯(ACL)の部分断裂を診断する際は、症状や経過、検査結果などさまざまな情報を総合的に用います。

具体的には、ラックマンテスト前方引き出しテストといった特殊な検査で靭帯の緩みをチェックします。膝関節を特定の方向に動かしたときの膝のぐらつき具合を診て、靭帯の損傷を判断するものです。

早期発見がもたらすメリット

靭帯損傷の早期発見と適切な治療は、スポーツや日常生活への復帰がより円滑になる可能性があります。靭帯損傷を早期に発見することのメリットは、二次的な損傷の予防リハビリ期間の短縮です。

靭帯が損傷すると、膝の他の部分に負担がかかり、半月板損傷などの二次的なけがにつながる可能性があります。

靭帯損傷を放置すると、関節の不安定感が続き、変形性膝関節症へと進行するリスクがあります。変形性膝関節症は、関節軟骨のすり減りや変形によって痛みや運動制限が生じ、日常生活に大きな支障をきたすことがあり注意が必要です。

膝靭帯損傷の治療法3選

膝靭帯損傷の治療法は以下のとおりです。

  • 保存療法
  • 手術治療
  • リハビリテーション

保存療法

靭帯損傷の治療法は、大きく分けて保存療法手術療法の2つがあります。保存療法とは、手術を行わずに装具やサポーター、薬物療法、リハビリテーションなどによって症状の改善を図る治療法です。

保存療法が検討されるのは、主に軽度~中等度の靭帯損傷の場合が多いです。靭帯の部分断裂で日常生活に支障がない程度の痛みや腫れのケースなどが挙げられます。

保存療法では、まず患部を安静にして炎症を抑えます。アイシングや鎮痛剤の内服によって痛みや腫れを軽減します。痛みや腫れが軽減された後、関節の可動域を回復させるためのリハビリテーションを徐々に開始します。

手術治療

保存療法で改善が見られない場合や、靭帯の完全断裂など重度の損傷の場合は、手術治療が必要となる場合があります。手術の必要性は、損傷の程度や日常生活への影響、スポーツ活動への復帰の希望などを総合的に判断して決定されます。

手術治療では、損傷した靭帯を再建する手術が行われます。選択的バンドル再建術や従来のACL再建術による健全バンドルの増強といった方法も選択肢の一つです。

リハビリテーション

膝靭帯損傷の回復には、保存療法、手術療法に関わらずリハビリテーションが重要です。リハビリテーションの目的は、膝関節の機能回復や筋力強化、再発予防です。リハビリテーションでは、ストレッチや筋力トレーニング、バランス練習などを行います。

リハビリテーションは、専門家である理学療法士の指導のもと患者さんの状態に合わせて進めます。リハビリテーションを適切に行うことで、スポーツや日常生活への早期復帰や再発防止につながります。

膝の靭帯損傷をしないための日常生活での注意点

膝の靭帯損傷をしないための日常生活での注意点は以下の3つです。

  • 運動前の準備体操を徹底する
  • 適切な運動強度を維持する
  • 日常生活での姿勢や動作に気を配る

運動前の準備体操を徹底する

運動前の準備体操は、膝の靭帯を守るために重要です。急に激しい運動を始めると、準備運動をしていない固い筋肉や靭帯に急激な負荷がかかります。準備運動により筋肉や靭帯の柔軟性が高まり、急な負荷による損傷リスクを軽減できる可能性があります。

運動を始める前には、必ずストレッチや軽いジョギングなどで体を温め、筋肉や靭帯を伸ばしましょう。膝周りの筋肉である大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎの筋肉を重点的にストレッチしてください。靭帯への負担を軽減し損傷のリスクを減らせます。

準備体操では、静的ストレッチだけでなく、動的ストレッチを取り入れましょう。動的ストレッチとは体を動かしながら行うストレッチで、関節の可動域を広げ筋肉の柔軟性を高める効果があります。ラジオ体操のような運動も動的ストレッチの一つです。

適切な運動強度を維持する

運動は健康維持に不可欠ですが、過度な運動は逆効果になることもあります。特に、ジャンプや急な方向転換を伴うスポーツは膝への負担が大きくなり靭帯損傷のリスクを高める可能性があります。

バスケットボールやサッカー、テニス、バドミントンなどは、急なストップやターン、ジャンプといった動作が多く、膝関節への負荷がかかりやすいです。体力や体調に合った運動強度を心掛け、無理のない範囲で運動を楽しみましょう。

運動中に痛みや違和感を感じたら、すぐに運動を中断し安静にしてください。痛みを我慢して運動を続けると、損傷が悪化して回復に時間がかかるとともに、将来的な変形性膝関節症のリスクが高まります。

日常生活での姿勢や動作に気を配る

日常生活の何気ない動作も膝の靭帯に負担をかけている可能性があります。正しい姿勢を保つことで膝への負担軽減が期待されます。

長時間同じ姿勢でいたり猫背でいたりすると、膝だけでなく腰や肩にも負担がかかりやすくなるため注意が必要です。重い物を持ち上げるときも膝を曲げて持ち上げるようにして、腰への負担を軽減することが大切です。

階段の上り下りの際も、手すりを使う、一段ずつゆっくりと足を運ぶなど、膝への負担を意識した動作を心掛けましょう。下り階段は上り階段よりも膝への負担が大きいため注意が必要です。

日常生活での注意点を守り膝の靭帯をいたわることで、損傷のリスクを減らし健康な膝を維持できます。膝に痛みや違和感を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し専門家のアドバイスを受けましょう。

まとめ

膝靭帯の損傷は、早期発見・早期治療が重要です。チェックリストを活用し、少しでも気になる症状があれば早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。膝の痛みや不安定感、腫れなどチェックリストの複数の項目に当てはまる場合や、強い痛み、歩行困難などがある場合は早急な受診をおすすめします。

膝靭帯の損傷を放置すると、回復が遅れたり変形性膝関節症などのリスクが高まったりします。自己判断せず専門家の診断と治療を受けることが大切です。膝靭帯損傷の治療には、保存療法や手術療法、リハビリテーションが用いられます。膝の健康を守るためには、適切な運動などのセルフケアも重要です。

参考文献

Austin V Stone, Sean Marx, Caitlin W Conley. “Management of Partial Tears of the Anterior Cruciate Ligament: A Review of the Anatomy, Diagnosis, and Treatment.” J Am Acad Orthop Surg, 2021, 29(2), p.60-70

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