- 2025年3月22日
膝蓋骨骨折の治療と回復期間!日常生活への復帰までの道のり
膝蓋骨(しつがいこつ)骨折は、膝のお皿にあたる骨が折れるけがです。主な原因として、転倒やスポーツ中の衝撃が挙げられます。横骨折や縦骨折、粉砕骨折などの種類があり、痛みや腫れ、変形といった症状が現れることがあります。
本記事では、膝蓋骨骨折の治療や回復期間、日常生活への復帰までの道のりについて詳しく解説します。適切な治療を受ければ、日常生活への復帰が可能になる場合があるので、ぜひご覧ください。
膝蓋骨骨折の種類と症状の解説
膝蓋骨骨折の基本的な種類や症状などを以下の項目に沿って解説します。
- 膝蓋骨骨折の基本的な種類
- 各種類の症状と特徴
- 早期発見のための注意点
膝蓋骨骨折の基本的な種類
膝蓋骨骨折には、骨の折れ方や範囲、骨折片の数によって、いくつかの種類があります。主な種類は、以下のとおりです。
- 横骨折
膝蓋骨を横に割るように折れる、最も一般的な骨折 - 縦骨折
膝蓋骨を縦に割るように折れる、比較的まれな骨折 - 粉砕骨折
膝蓋骨が複数に砕ける骨折 - 剥離骨折
膝蓋骨の一部が剥がれるように折れる骨折 - 骨軟骨骨折
膝蓋骨の表面の軟骨と骨が一緒に折れる骨折
骨折の種類は、X線写真やCTスキャンなどの検査で診断します。CT検査は、骨折の程度や関節面の損傷の有無を詳しく調べることが可能で、粉砕骨折の場合は骨折片の数や大きさ、位置関係の正確な把握に役立ちます。
各種類の症状と特徴
膝蓋骨骨折の症状は、骨折の種類や程度によって大きく異なります。どの種類の膝蓋骨骨折でも共通する代表的な症状は、以下のとおりです。
症状 | 説明 | 代表的な例 |
痛み | 膝のお皿の部分に鋭い痛みを感じる | 膝に触れるだけでも激痛が走り、歩くのが困難になることもある |
腫れ | 膝全体が腫れ上がる | 膝がパンパンに腫れ、熱を持つことがある |
皮下出血 | 皮膚の下に出血が広がり、あざができる | 膝の周囲が青紫色に変色する |
変形 | 膝のお皿の形が変形したり、ずれたりする | 膝のお皿が本来の位置からずれて、触ると凹凸があるように感じる |
関節の動きの制限 | 膝を曲げ伸ばしすることが難しくなる | 正座や階段の上り下りが困難になる |
歩行困難 | 痛みや腫れで、歩くのが困難になる | 松葉杖が必要になる |
膝蓋骨骨折の種類によって現れる症状は、以下のとおりです。
- 横骨折の場合:膝のお皿の上部に痛みや腫れが現れる
- 粉砕骨折の場合:膝全体が腫れ上がり、激しい痛みで歩行が困難になる
- 骨軟骨骨折の場合:膝蓋骨脱臼を伴うことが多く、生まれつき膝蓋骨がずれやすい「滑車異形成(かっしゃいけいせい)」という膝の骨の変形など
早期発見のための注意点
膝蓋骨骨折は、早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。以下の症状が現れた場合は、速やかに整形外科を受診しましょう。
- 膝に強い痛みを感じ、歩行が困難である
- 膝が腫れて変形しているように見える
- 膝を曲げ伸ばそうとすると、痛みが増強する
- 膝に触れると、異常な熱感がある
膝の痛みや変形などの症状は、他の膝の病気でも現れる可能性があります。自己判断せず、医療機関を受診して、適切な検査と診断を受けることが重要です。
膝蓋骨骨折の治療法と回復期間
膝蓋骨骨折の治療法と回復期間について、以下の内容を解説します。
- 保存療法の具体的な内容
- 施術療法の種類と影響
- 回復期間の目安とリハビリの重要性
保存療法の具体的な内容
保存療法は、手術を行わずに骨折部を固定し、自然な骨の癒合を待つ治療法です。ギプスや装具、テーピングなどを使用するため、手術に比べて患者さんへの身体的負担が少ない特徴があります。保存療法が選択される主なケースは、以下のとおりです。
- 骨折のずれが小さい場合
- 横骨折で骨折線がきれいな場合
- 剥離骨折(はくりこっせつ)で、剥離した骨片が小さい場合
保存療法の流れは、以下のとおりです。
- ギプスや装具を装着する
- 固定期間中は安静にする(約4~6週間)
- 定期的なX線検査で、治癒状態を確認する
- 腫れや痛みの軽減処置をする
- 固定除去後は、リハビリテーションを行う
固定期間中は、松葉杖を使用して患部に体重をかけないように歩行したり、足を高く上げて安静にしたりする必要があります。医師の指示に従って、鎮痛剤を服用することもあります。
手術療法の種類と影響
骨折のずれが大きい場合や保存療法で十分な効果が得られない場合は手術が必要です。骨折の状態に合わせて、さまざまな手術方法があり、主な選択肢は以下の2つです。
- 張力帯固定法(ちょうりょくたいこていほう):膝蓋骨をワイヤーで固定
- プレート固定法:プレートとスクリューで固定
手術療法は保存療法に比べて、早い回復が期待できますが、感染症や血栓症などの手術に伴うリスクも存在します。医師とよく相談し、最適な治療法を選択することが重要です。
回復期間の目安とリハビリの重要性
膝蓋骨骨折の回復期間は、骨折の程度や治療法、患者さんの状態により異なります。保存療法では約3〜6か月、手術療法では約2〜4か月程度かかる可能性があります。回復期間中は、医師の指示に従ったリハビリテーションが重要です。必要なリハビリテーションには、以下のとおりです。
- 関節可動域訓練
- 筋力強化訓練
- 歩行訓練
初期のリハビリテーションでは、痛みや腫れの軽減に重点を置きます。運動強度を徐々に高め、日常生活の動作の改善を目指します。最終的には、スポーツへの復帰も視野に入れ、日常生活への復帰をサポートすることを目指します。
膝蓋骨骨折後の日常生活への復帰
膝蓋骨骨折後の日常生活への復帰について、以下の3点を解説します。
- 日常生活で注意するべき活動
- 職場復帰に向けたステップ
- 再発防止のためのポイント
日常生活で注意するべき活動
日常生活で注意するべき活動は、骨折の程度や治療法、回復状況によって大きく異なります。術後の時期や活動内容、注意点は以下の表のとおりです。
時期 | 活動内容 | 注意点 |
術後すぐ | 安静、患肢挙上、血栓予防運動 | 痛みや腫れがある場合は無理に動かさない |
術後数日~数週間 | 松葉杖や歩行器を使用した歩行練習、装具の装着 | 徐々に荷重を増やしていく。装具の締め付け具合や違和感に注意する |
術後数週間~数か月 | 階段昇降練習、自転車の練習、日常生活動作の練習 | 痛みや不安感がある場合は、手すりや補助具を使用する |
術後数か月~ | ジョギング、スポーツ | 痛みが再発しないよう、医師の指示に従って徐々に運動強度を上げていく |
日常生活でも注意点が必要です。長時間同じ姿勢での座位や立位を避けましょう。同じ姿勢を続けると、患部に負担がかかり、血行が悪くなる可能性があります。30分で立ち上がって軽く歩く、足をストレッチするなど、こまめに休憩を取るようにしましょう。
重いものを持ち上げる、急に動くなどの動作は控えてください。骨折部位に過度な負担をかけると、再骨折のリスクを高める可能性があります。重い荷物を持つ必要がある場合は、リュックサックなどを利用し、両肩に均等に重さを分散させましょう。急な動作を避け、常にゆっくりとした動作を心がけることも大切です。
入浴は医師の許可が出てから行います。滑らないようにマットを敷いたり、手すりをつけたり、ぬるめのお湯で短時間の入浴にするなどの、安全対策を心がけましょう。
階段の上り下りは手すりを使用し、一段ずつゆっくりと足を運ぶようにしましょう。安全を最優先に行動することが大切です。服装は、患部に負担がかからず、動きやすいものを選び、締め付けの強い服や、脱ぎ着が難しい服は避けましょう。
職場復帰に向けたステップ
職場復帰の時期は、仕事内容や骨折の程度、回復状況によって異なります。デスクワーク中心の場合は比較的早く復帰できますが、肉体労働が多い場合はより長い期間が必要です。
転倒や衝突による膝の骨折が多いため、職場環境の安全確認が重要です。職場復帰に向けて、以下のステップを踏むことをおすすめします。
- 主治医との相談:復帰時期や条件、仕事内容の制限について話し合う
- 職場との連携:上司や同僚に状況を説明し、必要な配慮を求める
- 段階的な復帰:短時間勤務から始め、徐々に仕事量を増やす
- 定期的な診察:回復状況を確認し、仕事量や活動レベルを調整する
復帰後も無理をせず、痛みや違和感がある場合は休憩を取りましょう。
再発防止のためのポイント
膝蓋骨骨折の再発を防ぐためには、以下の点に注意する必要があります。
- 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)のトレーニング
膝関節を安定させる効果が期待できます。スクワットやレッグエクステンションなど、適切なトレーニング方法を理学療法士の指導に従って行いましょう。 - 転倒リスクの軽減
家の中や外出先での段差や滑りやすい場所には注意を払いましょう。雨や雪の日は転倒しやすいため注意が必要です。杖や手すりを活用し、安全に移動できる工夫をすることも大切です。 - 適度な運動
ウォーキングやジョギング、水泳など、無理のない範囲で体を動かす習慣を身につけましょう。適度な運動は骨密度の維持に役立ちます。 - 栄養バランスの改善
カルシウムやビタミンDなど、骨の健康に良い栄養素を積極的に摂取しましょう。バランスの取れた食事を心がけることが大切です。 - 定期的な骨密度検査
定期的に骨密度の検査を受け、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に努めてください。閉経後の女性は骨密度が低下しやすいため、注意が必要です。
治癒した膝蓋骨骨折が再発すると、治療期間が長引いたり、日常生活への復帰が遅れたりする可能性があります。骨折は高齢者で起こりやすく、骨粗鬆症などの基礎疾患がある場合は、骨折しやすくなる可能性があります。
再発予防の対策を日常生活に取り入れることで、再発のリスクを低減する効果が期待できます。具体的な方法は、担当医師に相談しましょう。
まとめ
膝蓋骨骨折からの回復には、適切な治療とリハビリテーションが大切です。回復期間は、骨折の種類や症状、治療法によって異なり、一般的に3〜6か月程度です。保存療法は、ギプス固定による安静、手術療法は、骨折の固定が主な治療法となります。
リハビリテーションは、回復過程で重要な役割を果たします。段階的な運動療法で関節の可動域を広げ、筋力を強化することで、職場復帰やスポーツ活動への復帰ができる可能性が高まります。
日常生活では、医師の指導に従って患部への負担を避け、転倒予防に努め、再発防止のための適切な運動を継続することが大切です。痛みや不安がある場合は、担当の医師や理学療法士に相談しましょう。
参考文献
David Dreizin, Tyler Edmond, Tina Zhang, Nathan Sarkar, Ozerk Turan, Jason Nascone. CT of Periarticular Adult Knee Fractures: Classification and Management Implications. Radiographics, 2024, 44(9), e240014.