• 2025年3月22日

脊柱管狭窄症の手術で後悔しないための重要な判断ポイント

腰や足の痛み、しびれは脊柱管狭窄症のサインの可能性があります。脊柱管狭窄症の手術は、症状を改善し、快適な生活を取り戻すための有効な手段になります。しかし、手術にはメリットだけでなく、リスクも存在するため注意が必要です。後遺症発生の可能性や術式選択の重要性など、手術を決断する前に知っておくべき情報が数多くあります。

この記事では、脊柱管狭窄症の手術における後遺症や具体的な手術方法、後悔しないための重要な判断ポイントを解説します。大きな決断をする前に、正しい知識を身につけて、最良の選択をしましょう。

脊柱管狭窄症の手術で起こりうる後遺症

脊柱管狭窄症の手術における後遺症の発生率は、1〜3割程度と言われています。脊柱管狭窄症の手術で起こりうる代表的な後遺症は以下のとおりです。

  • 手術部位の傷の痛み
  • 神経の痛み
  • 筋肉や筋膜の痛み
  • 関節の痛みなど
  • しびれ
  • 感覚異常

まれではありますが、感染症や出血、神経損傷などの重篤な合併症が起こる可能性もあります。感染症などの合併症は、生命に関わる危険性もあるため、決して軽視できません。

手術を受けるかどうかは、医師と相談し、納得のうえで決定することが大切です。医師とよく相談し、ご自身の症状や生活スタイル、価値観などを総合的に考慮して、後悔のない選択をしてください。

脊柱管狭窄症の手術で後悔しないためのポイント

脊柱管狭窄症の手術で後悔しないためのポイントは以下のとおりです。

  • 症状の程度に合った手術方法を選ぶ
  • 手術のリスクを理解する
  • 手術以外の治療法も検討する

症状の程度に合った手術方法を選ぶ

脊柱管狭窄症の手術にはいくつかの種類がありそれぞれにメリットやデメリットがあります。ご自身の症状の程度や全身状態に合った手術方法を選ぶことが大切です。

比較的症状が軽度で、特定の神経根だけが圧迫されているような場合は、内視鏡下手術などの低侵襲手術が選択肢になります。小さな傷で手術が可能なので、身体への負担が少なく、回復も早い傾向にあります。症状が重度の場合は、椎弓切除術や脊椎固定術などの、より広範囲に神経を減圧し、脊椎を安定させる手術が必要です。

最適な手術方法を選ぶ際は、医師との綿密な相談が欠かせません。医師は、あなたの症状や画像検査の結果などを総合的に評価し、最適な手術方法を提案します。セカンドオピニオンを受けることも大切です。複数の医師の意見を聞くことで、より多角的な視点からご自身の状態を理解し、納得のいく決断ができます。

手術のリスクを理解する

どんな手術にもリスクはつきものです。脊柱管狭窄症の手術においても、感染や出血、神経損傷、硬膜損傷などのリスクが存在します。術後の痛みやしびれ、麻痺などの後遺症につながる可能性もあるため注意が必要です。

手術後も必ずしもすべての症状が治るとは限りません。長期間にわたる神経圧迫によって神経自体がすでにダメージを受けている場合などは、症状が完全には改善しないこともあります。

手術を受ける前に、リスクや合併症、手術の成功率を医師から説明を受け、理解しておくことが重要です。不安なことは遠慮なく質問し、納得したうえで手術に臨みましょう。

手術以外の治療法も検討する

手術は最終手段です。手術を受ける前に、薬物療法や神経ブロック療法、リハビリテーションなどの保存療法を試みることも重要です。保存療法で症状が改善する場合もあります。手術を受ける場合でも、術前の状態を少しでも良くしておくことで、術後の回復を早める効果が期待できます。

薬物療法は、痛みや炎症を抑える薬、神経の働きを調整する薬などを使用する方法です。神経ブロック療法は、痛みやしびれを引き起こしている神経に直接薬を注射する方法で、ピンポイントで症状を緩和する効果が期待できます。リハビリテーションでは、ストレッチや筋力トレーニングなどを通して、腰や足の筋肉を強化し、身体の機能改善を図ります。

最適な治療法は、個々の症状や状態で異なります。医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を選択しましょう。手術以外の選択肢を知ることで、治療に対する視野が広がり、より納得のいく決断ができます。

脊柱管狭窄症の手術方法3選

脊柱管狭窄症の手術方法は以下の3つです。

  • 椎弓切除術:除圧による神経への負担軽減
  • 脊椎固定術:不安定な脊椎の安定化
  • 内視鏡下手術:低侵襲で身体への負担軽減

椎弓切除術:除圧による神経への負担軽減

椎弓切除術は、脊柱管を狭窄させている骨の一部(椎弓)を切除し、神経の圧迫を取り除く手術です。神経の通り道を広げることで、痛みやしびれなどの症状を和らげる効果が期待できます。

椎弓切除術のメリットは、神経への圧迫を直接的に取り除くため、症状の高い改善効果が期待できることです。比較的広く行われている手術法でもあります。長年、脊柱管狭窄症の標準的な手術法として用いられてきた方法です。

デメリットは、手術の規模が比較的大きく、入院期間が長くなる場合があることです。背中に切開を加えるため、術後の傷口の痛みも一定期間続く可能性があります。椎弓切除術は、広範囲の狭窄や重度の症状に対して特に有効です。しかし、患者さんの年齢や全身状態によっては、身体への負担が大きすぎる場合もあります。

脊椎固定術:不安定な脊椎の安定化

脊椎固定術は、不安定になった脊椎を金属製のインプラント(ボルトやプレートなど)を用いて固定する手術です。脊椎が不安定だと、背骨がグラグラと動いてしまい、神経を圧迫する原因になります。脊椎固定術は、不安定性を解消することで、神経への負担を軽減し、痛みやしびれなどの症状を改善します。

脊椎固定術のメリットは、脊椎を安定させることができるため、再発防止効果が高いことです。脊椎すべり症などを合併している場合に特に有効です。脊椎すべり症とは、椎骨が前後にずれてしまう病気で、脊柱管狭窄症を合併することがあります。脊椎固定術を行うことで、ずれた椎骨を元の位置に戻し、安定させる効果が期待できます。

デメリットは、手術の規模が大きく、身体への負担が大きいことです。入院期間も長くなる傾向があり、術後のリハビリテーションにも時間を要することがあります。固定した部分の脊椎の動きが制限されるため、手術後に身体の柔軟性が低下する可能性もあります。日常生活における姿勢の変化や、スポーツ活動への影響も考慮することが必要です。

内視鏡下手術:低侵襲で身体への負担軽減

内視鏡下手術は、皮膚を小さく切開し、内視鏡と呼ばれる細い管を挿入して行う手術です。内視鏡の先端にカメラと手術器具がついており、モニターを見ながら手術を行います。患部を直接見ながら手術を行うため、精密な操作が可能です。

内視鏡下手術の最大のメリットは、身体への負担が少ないことです。従来の手術に比べて傷口が小さいため、術後の痛みも少なく、回復も早い傾向があります。入院期間も短く、日帰り手術が可能な場合もあります。

デメリットとして、すべての症例に適用できるわけではないという点が挙げられます。狭窄の範囲が広い場合や、脊椎の不安定性が強い場合は、内視鏡下手術では対応できないことがあります。熟練した医師による高度な技術が必要となるため、どの医療機関でも実施できるわけではありません。

内視鏡下手術は、比較的症状が軽度で、特定の神経根だけが圧迫されているような場合に適しています。身体への負担が少ないため、高齢者や合併症のある患者さんにも適応しやすい手術法です。適応範囲が限られているため、医師との綿密な相談が欠かせません。

脊柱管狭窄症の手術後に気をつけるべきこと

脊柱管狭窄症の手術後は以下のポイントに気をつけましょう。

  • 腰に負担がかかる動作を避ける
  • 適切なリハビリを受ける
  • 腰椎コルセットを装着する
  • 定期的に病院を受診する

腰に負担がかかる動作を避ける

手術後の腰は繊細です。しっかりと保護し、負担をかけないようにすることが、早期回復の鍵になります。具体的には、以下の動作を避けてください。

  • 重いものを持ち上げる
  • 中腰や前かがみの姿勢を長時間続ける
  • 激しい運動を行う
  • 長時間のデスクワークを続ける
  • 急に動いたりひねったりする

腰に負担がかかる動作を避けることで、手術後の回復を促進し、再発のリスクを減らすことができます。日常生活の中で、腰に負担をかけない動き方や姿勢を意識することで、より快適に過ごせます。

適切なリハビリを受ける

手術後のリハビリテーションは、弱った筋肉を鍛え直し、身体の機能を回復させる重要なプロセスです。リハビリテーションは、医師や理学療法士の指導のもと、患者さんの状態に合わせて行われます。

リハビリテーションの主な目的は、筋力回復や柔軟性向上、痛みの軽減です。具体的には、ストレッチや筋力トレーニング、有酸素運動などを行います。

ストレッチは、手術によって硬くなった筋肉や関節を柔らかくし、可動域を広げる効果が期待できます。筋力トレーニングは、腹筋や背筋など、腰を支える筋肉を鍛えることで、腰への負担が軽減され、再発を防ぐ効果が期待できます。

有酸素運動は、ウォーキングや水中歩行など、無理のない範囲で身体を動かすことで、心肺機能の向上や血行促進に効果的です。手術後の身体への負担も少なく、安全に運動効果を得ることができます。

リハビリテーションは、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。無理せず、自分のペースで進めていきましょう。リハビリ中に痛みや違和感を感じた場合は、すぐに医師や理学療法士に相談してください。

腰椎コルセットを装着する

コルセットを装着することで、腰への負担を軽減して痛みを和らげ安定性を高める効果が期待できます。コルセットの種類や装着期間、使用方法は、医師の指示に従ってください。

コルセットには、ハードタイプとソフトタイプがあります。ハードタイプは、ギプスのようにしっかりと固定するもので、手術直後や痛みが強い場合に使用されます。ソフトタイプは、ハードタイプよりも柔軟性があり、日常生活での使用に適しています。

コルセットはあくまでも補助的な役割を果たすものであり、コルセットに頼りきりにならないようにすることが大切です。リハビリテーションを通じて、自身の筋力で腰を支えられるようにしましょう。

定期的に病院を受診する

定期的な受診も重要です。定期的に検査することで、早期に異常を発見し、適切な処置を行うことができます。受診時には、医師が患部の状態や回復状況を確認し、必要に応じて治療方針を調整します。

脊柱管狭窄症は再発する可能性もあるため、定期的な受診が重要です。定期的な診察で再発を早期発見できれば、適切な対応が可能です。医師や理学療法士は、リハビリテーションの進捗状況を確認し、必要に応じてプログラムを調整します。日常生活における注意点や再発予防のためのアドバイスも受けられます。

手術後の経過は人それぞれです。医師の指示に従い、適切なケアを続けることで、より良い回復と快適な日常生活を送れます。

まとめ

脊柱管狭窄症の手術は、痛みやしびれからの解放を目指すことができます。しかし、手術には、術中・術後に起こりうる「合併症」や、術後に長く残る「後遺症」といったリスクが伴います。手術を選択する際は、症状の程度や生活スタイル、全身状態を考慮し、医師と相談することが大切です。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、納得のいく選択をしましょう。手術以外の治療法も検討し、多角的な視点を持つことも重要です。術後のケアも回復に大きく影響します。以下のケアを意識することが大切です。

  • 腰への負担を避ける
  • 適切なリハビリを受ける
  • 腰椎コルセットを装着する
  • 定期的に病院を受診する

医師の指示に従いながら、日常生活でも注意を払いましょう。

参考文献

Mohamed Sarraj, Meerab Majeed, Mohammad Zarrabian, Jason Busse, Mohit Bhandari, Daipayan Guha, Markian Pahuta. Treatment decision-making factors among patients with cervical myelopathy: a discrete-choice experiment. J Patient Rep Outcomes, 2024 Nov 11;8(1):129

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