• 2025年3月24日

腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴と適切な対処法

朝、腰がこわばる、長時間座っていると腰に違和感があるなどの症状は、腰椎椎間板ヘルニアの初期症状である可能性があります。腰椎椎間板ヘルニアの腰の張りや違和感、痛みは、人によってさまざまです。初期の段階で適切な対処をしないと症状が進行し、日常生活に支障をきたす可能性があります。

この記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状を段階的に分け、診断方法や手術、リハビリ、予防策などを解説します。症状に合った対処法によって、健康な毎日を取り戻しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴3選

早めに医療機関を受診することで、腰椎椎間板ヘルニアの症状の悪化を防げる可能性があります。正しく理解できるように、症状を以下の3段階に分けて解説します。

  • 軽度:初期症状と日常生活への影響
  • 中程度:痛みやしびれの悪化、日常生活の制限
  • 重度:神経症状の深刻化と緊急性の高い状態

軽度:初期症状と日常生活への影響

初期の腰椎椎間板ヘルニアは、朝起きると腰がこわばったり、同じ姿勢が続くと腰に違和感や軽い痛みを感じたりする場合があります。腰だけでなくお尻や太もも、ふくらはぎなどに、軽いしびれやだるさを感じることもあります。

ストレッチで腰を回したり前後に曲げ伸ばしたりすることで、症状の軽減が期待できます。椅子に座るときは背筋を伸ばし、足が床につくよう意識することが推奨されています。適度な運動は腰回りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する効果が期待できます。

中程度:痛みやしびれの悪化、日常生活の制限

長時間同じ姿勢でいることが辛くなり、日常生活に支障が出る時期になると、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)が現れる場合があります。腰やお尻、太もも、ふくらはぎを通って足先まで、鋭い痛みが走ることがある症状です。足のしびれや筋力の低下により、つまずきやすくなったり歩行が困難になったりする可能性もあります。

日常生活の制限が出ている場合は、医療機関を受診し、専門医による適切な診断と治療を受けましょう。薬物療法や理学療法、装具療法などの保存療法により、症状の改善が期待できます。MRIやCTスキャンなどの画像検査で、椎間板の状態や神経の圧迫具合を評価することもあります。

重度:神経症状の深刻化と緊急性の高い状態

激しい腰の痛みや足全体のしびれ、筋力低下による麻痺感、歩行困難などが起こる時期とされています。特に注意が必要なのは、馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)と呼ばれる状態です。腰椎の中心部にある神経の束が圧迫されることで、以下のような症状が起こることがあります。

  • 排尿・排便障害
  • 会陰部の感覚鈍麻
  • 残尿感、尿漏れ

保存療法で改善が見られない・馬尾症候群が現れるなど、腰椎椎間板ヘルニアの症状が重度の場合は、手術が検討されることがあります。飛び出ている椎間板を取り除く・スクリューで椎骨を固定するなどの手術があり、術後はリハビリによって日常生活への復帰を目指します。

腰椎椎間板ヘルニアの診断と治療法3選

腰椎椎間板ヘルニアと診断されると不安になりますが、治療や日常生活へ与える影響について理解しましょう。腰椎椎間板ヘルニアの診断方法と治療法を、以下の流れに沿って解説します。

  • 診断方法
  • 保存療法
  • 手術療法
  • 術後のリハビリテーション

診断方法

腰椎椎間板ヘルニアの診断は、いつから・どのようなときに痛みやしびれが強くなるのか問診することがあります。デスクワークと力仕事ではヘルニアの原因や症状が異なると考えられるため、仕事の内容を確認する場合もあります。以下の検査と合わせて、総合的な診断を行います。

  • 神経学的検査
    神経の働きに異常がないかを評価します。
  • 下肢伸展挙上試験(かししんてんきょじょうしけん)
    仰向けの状態で足をまっすぐ上げ、神経の圧迫を評価します。特定の角度で痛みやしびれが強くなると、ヘルニアの可能性が高くなると考えられています。
  • レントゲン検査
    骨の状態を詳しく評価します。
  • CT検査
    骨の詳細な構造や、ヘルニアによる神経圧迫の程度を評価します。
  • MRI検査
    椎間板の突出や変性の程度、神経への圧迫の程度などを正確に評価するために有効とされています。

保存療法

腰椎椎間板ヘルニアの治療は、保存療法から開始する場合が多いです。以下の治療法を組み合わせて行い、手術を行わずに症状の改善を目指します。

  • 薬物療法
    痛みや炎症を抑える薬・神経の働きを調整する薬など、症状に応じた薬剤が用いられます。
  • 理学療法
    ストレッチや運動療法、マッサージなどを通して腰周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めることで腰への負担軽減が期待できます。
  • 装具療法
    コルセットなどを装着することで腰を安定させ、痛みの緩和を目指します。
  • 神経ブロック注射
    痛みやしびれの原因となっている部位に対して行われ、症状緩和の効果が期待できます。

保存療法の有効性を示唆した研究があり、北米脊椎協会(NASS)のガイドラインでも推奨されています。

手術療法

保存療法を数か月継続しても症状が改善しない場合や、排泄など日常生活に支障がある場合は、手術療法を検討することがあります。代表的な手術は、以下のとおりです。

  • 後方椎間板切除術
    飛び出ている椎間板の除去を行います。
  • 椎間固定術
    不安定な状態の椎骨をスクリューなどで固定し、背骨の安定が期待できます。
  • 内視鏡手術
    小さな傷口から内視鏡を挿入し、ヘルニアの除去を行います。
  • 経椎間孔式全内視鏡的腰椎椎間板切除術(FELD)
    体へのダメージや負担が少なく、早期の回復が期待できます。

フランスで行われた研究では、遠位側方腰椎椎間板ヘルニア患者さん58人を対象とした経椎間孔式全内視鏡的腰椎椎間板切除術(FELD)において、91%の患者さんが症状の改善を報告したことも示されています。

患者さんの症状や年齢、全身状態などを考慮して、適切な手術方法を判断します。痛みや合併症のリスクも伴うため、医師とよく相談をしましょう。

術後のリハビリテーション

手術を受けた後は、リハビリによって早期の社会復帰と再発予防を目指します。手術の種類や術後の経過によってリハビリ内容は異なりますが、一般的にはストレッチや筋力トレーニング、歩行訓練などを行います。腰周りの筋肉を強化し柔軟性を高めることで、腰への負担軽減を目指します。痛みや腫れが引いたら早期に開始することが大切です。

医師や理学療法士の指導のもと、適切なプログラムに取り組みましょう。正しい姿勢や動作を身につけることも、腰椎椎間板ヘルニアの再発防止につながります。無理なくリハビリを進め、日常生活へのスムーズな復帰を目指しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアを予防する日常生活の注意点3選

腰椎椎間板ヘルニアは、腰への負担が積み重なることで発症しやすく、再発のリスクも高いとされています。日常生活では以下の注意点を意識して、予防や再発防止を目指しましょう。

  • 日常生活での姿勢
  • 運動
  • 生活習慣

日常生活での姿勢

正しい姿勢を心がけることで、体への負担軽減が期待できます。以下のように、姿勢や動作を意識することをおすすめします。

  • 立ち方
    背筋を伸ばしお腹に軽く力を入れて、頭が天井に引っ張られるイメージをしましょう。前かがみの姿勢は腰椎に負担がかかり、椎間板への圧力を高める可能性があるため注意しましょう。
  • 座り方
    浅く腰掛けると腰椎の自然な湾曲が失われ、椎間板への負担が増大する可能性があります。深く腰掛け、背もたれに背中をしっかりつけるようにしましょう。足を組むと腰椎への負担が増加し、ヘルニアの発症や悪化につながる可能性があるため気をつけましょう。
  • 重いものを持ち上げる
    膝を曲げてスクワットの要領で物を持ち上げ、腰に負担を集中させないように心がけましょう。リュックのように両肩に均等に重さがかかるようにすると、重い物を持つときに腰椎への負担を抑えることが期待できます。

運動

腰への負担が少ない適度な運動は、健康の維持につながる可能性があります。おすすめの運動は、以下のとおりです。

運動の種類特徴注意点
ウォーキング有酸素運動で血行促進が期待できる無理のないペースで行い、適切な靴を選ぶ
水泳腰への負担が少ない全身運動水温に注意し、適度な距離で行う
腰痛体操腰周りの筋肉を強化し、腰椎の安定性向上が期待できる無理な姿勢は避け、痛みを感じたら中止する
ストレッチ筋肉の柔軟性を向上させ、血行促進が期待できる呼吸を止めず、反動をつけずに行う

生活習慣

生活習慣の改善によって、腰椎椎間板ヘルニアの予防が期待できます。すぐにできることから試してみましょう。おすすめの生活習慣は以下のとおりです。

  • バランスの良い食事
    栄養バランスに優れた食事は、健康の維持につながると考えられています。特に骨の健康に関わるカルシウム(牛乳・ヨーグルト・小魚など)やビタミンD(魚類・きのこ類・卵など)を適切に摂取することが推奨されています。さまざまな栄養素をバランスよく摂ることを心がけましょう。
  • 禁煙
    腰椎椎間板ヘルニアの治療では、禁煙が推奨されています。喫煙は椎間板の健康に影響があるとする研究もあります。ヘルニアの予防だけでなく、全身の健康のためにも禁煙をおすすめします。
  • ストレス管理
    ストレスは自律神経のバランスを崩し、筋肉の緊張を高めるため、腰痛を悪化させる可能性があります。ヨガや瞑想、軽い運動、音楽、読書など、自身に合ったストレス解消法でヘルニアの予防を目指しましょう。

まとめ

腰椎椎間板ヘルニアの症状には段階があり、日常生活へ与える影響はさまざまです。軽い痛みやしびれが現れる軽度、日常生活に支障をきたす中程度、神経症状が深刻化する重度と、症状が進行する可能性があります。

医師の診察を受け、保存療法や手術療法、リハビリなど、ご自身の症状に合った治療法を相談しましょう。正しい姿勢や適度な運動、健康的な生活習慣を心がけることも大切です。腰椎椎間板ヘルニアの予防や再発防止のために、できることから取り組んでみましょう。

参考文献

もり整形外科 079-562-5169 ホームページ