• 2025年4月23日

腰痛は何科を受診すべき?症状別にみる適切な診療科選び

腰痛は、多くの方が経験する一般的な症状ですが、適切な診療科選びに迷う方も多いのではないでしょうか?腰痛は、必ずしも整形外科を受診するべきとは限りません

腰痛の症状は、急性の痛みや広範囲に及ぶ痛み、内臓疾患に起因する痛みなどさまざまです。この記事では、腰痛について以下の内容を解説します。腰痛に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

  • 腰痛の原因5選
  • 腰痛がある場合の適切な診療科の選び方
  • 腰痛の治療法

腰痛の原因5選

腰痛の代表的な原因について、以下の5つを解説します。

  • ぎっくり腰
  • 椎間板ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症
  • 坐骨神経痛
  • その他の内臓疾患

腰痛の原因を特定することは、最適な治療法を選択するために重要です。5つの原因の症状や特徴を理解し、適切な医療機関を選びましょう。

ぎっくり腰

ぎっくり腰は「急性腰痛症」とも呼ばれ、突然の激しい腰の痛みが特徴です。以下のきっかけで、発症することが多いとされています。

  • 重い物を持ち上げる
  • 咳やくしゃみをする
  • 体をひねる

ぎっくり腰は、腰椎を構成する軟部組織(筋肉や靭帯など)や椎骨、椎間関節、仙腸関節などが損傷することで起こります。レントゲン画像に写りにくい軟部組織に損傷が集中しているため、レントゲン検査では異常が見つからないケースも多いです。

ぎっくり腰の痛みには、鋭い痛みや鈍い痛みなど、さまざまな種類があります。痛みの程度にも個人差があり、わずかな違和感や、まったく身動きが取れないほどの激痛などさまざまです。多くの場合、安静にしていれば数日で症状は軽減するとされています。痛みが長引く場合や再発を繰り返す場合には、医療機関を受診してください

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が飛び出して、神経を圧迫することで起こる病気です。以下のような要因により、発症しやすくなります。

  • 長時間のデスクワーク
  • 重い物を持ち上げる動作の繰り返し
  • 加齢に伴う椎間板の変性

椎間板ヘルニアの症状は、腰痛だけでなく、お尻や太もも、足先への痛みやしびれ、感覚異常など、神経が圧迫される部位によってさまざまです。咳やくしゃみで痛みが悪化する場合もあります。

初期の段階では、薬を用いた治療などの保存療法を選択することが多いです。症状が進行した場合や神経症状が強い場合は、手術が必要となることもあります

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、背骨の中を通る神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、神経を圧迫する病気です。腰や足の痛みやしびれを引き起こします。加齢に伴う背骨の変形や、長年の負担による椎間板の変性などが主な原因です。

間欠性跛行(かんけつせいはこう)は、脊柱管狭窄症の特徴的な症状です。しばらく歩くと足がしびれて歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるという症状です。進行すると、安静時にも痛みやしびれを感じるようになります。初期段階では、保存療法で経過を観察します。症状が進行した場合は、手術も検討されます。

坐骨神経痛

坐骨神経痛は、腰からお尻、太ももの後ろ側にかけて走る坐骨神経が何らかの原因で圧迫されることで、痛みやしびれが生じる状態です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などが原因で、坐骨神経痛が起こることがあります。多くの場合、腰痛に付随して発症します。

坐骨神経痛の痛みは、電気が走るような痛みやしびれと表現されることが多いです。腰やお尻、太もも、ふくらはぎ、足先など、さまざまな場所に症状が現れます。咳やくしゃみをしたり、長時間座っていたりすると痛みが悪化することがあります

その他の内臓疾患

腰痛は、以下の内臓の病気で起こることがあります。

  • 腎臓結石
  • 尿管結石
  • 膵炎
  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜症
  • 大動脈瘤

内臓の病気が原因の場合は、腰痛以外にも、発熱や吐き気、嘔吐、血尿、腹痛などの症状を伴うことがあります。内臓疾患が原因の腰痛は、安静にしていても痛みが軽減されにくいとされています。急激な痛みが出現したり、安静時にも強い痛みがあったりする場合は、内臓疾患の可能性も考慮し、医療機関を受診することが重要です。

研究によると、腰痛の原因は多岐にわたり、複雑に絡み合っていることが多いとされています。自己判断で治療法を選択するのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

腰痛がある場合の適切な診療科の選び方

腰痛は、原因に応じて適切な診療科が異なります。以下の6つの診療科について、腰痛の症状別の選び方を解説します。

  • 整形外科(腰の痛みやしびれ、動きの制限などの症状)
  • 内科(発熱や食欲不振、倦怠感などの症状)
  • 泌尿器科(排尿時の違和感や血尿、残尿感などの症状)
  • 婦人科(下腹部の痛みや不正出血などの症状)
  • 心療内科・精神科(腹痛が長引き原因も特定できない場合)
  • ペインクリニック(治療をしても改善しない場合)

間違った診療科を受診してしまうと、診断が遅れたり、適切な治療を受けられなかったりする可能性があります。腰痛の原因を特定し、最適な治療法を選択するためには、腰痛の症状を観察し、どの診療科を受診すべきかを適切に判断することが大切です。

整形外科(腰の痛みやしびれ、動きの制限などの症状)

整形外科は、腰痛で最も一般的な受診科です。腰の痛みやしびれ、動きの制限などの症状は、筋肉や骨などの運動器に原因があると考えられるため、整形外科を受診するのが適切です。

整形外科では、問診や身体診察、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査を行い、痛みの原因を調べます。ぎっくり腰や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など、整形外科で扱う腰痛の種類は多岐にわたるため、総合的な検査が必要です。

痛みの原因を特定したら、患者さんの状態に合わせて適切な治療を行います。保存療法として、薬物療法や理学療法、運動療法などがあります。症状が重い場合や、保存療法で効果が得られない場合は、手術療法が検討されることもあります。

内科(発熱や食欲不振、倦怠感などの症状)

発熱や食欲不振、倦怠感などの症状がある場合は、内科を受診する必要があります。腎盂腎炎(じんうじんえん)や膵炎などの内臓疾患が原因で腰痛が生じている可能性があります。高齢者の方や持病のある方は特に注意が必要です。

内科では、血液検査や尿検査、画像検査などを行い、内臓疾患の有無を調べます。内臓疾患が原因で腰痛が起きている場合は、内臓疾患に対する治療が行われます。初期の段階で適切な治療を開始することで、重症化を防げる可能性があります。

泌尿器科(排尿時の違和感や血尿、残尿感などの症状)

腰の片側に痛みがあり、排尿時の違和感や血尿、残尿感などの症状を伴う場合は、泌尿器科を受診しましょう。尿路結石や腎盂腎炎などの泌尿器系の疾患が原因で、腰痛が起きている可能性があります。

泌尿器科では、尿検査や超音波検査、CT検査などを行い、原因を特定します。結石が小さい場合は、自然排出を促す薬物療法を行うことが多いです。結石が大きい場合や、閉塞や感染などを合併している場合は、手術が必要となることもあります。

婦人科(下腹部の痛みや不正出血などの症状)

以下の症状がある場合は、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣嚢腫などの婦人科系の疾患が原因の可能性があるため、婦人科を受診しましょう

  • 月経周期と連動して腰が痛む
  • 下腹部が痛む
  • おりものが変化する
  • 不正出血を伴う

婦人科では、内診や超音波検査、MRI検査などを行い、原因を特定します。軽度の場合は、薬物療法で経過観察を行うことが多いです。症状が重い場合や、妊娠を希望する場合などは、手術が検討されることもあります。

心療内科・精神科(腹痛が長引き原因も特定できない場合)

長引く腰痛で、他の診療科を受診しても原因が特定できない場合は、心療内科や精神科の受診を検討しましょう。ストレスや不安、抑うつなどの精神的な要因が、慢性的な腰痛を引き起こしたり、悪化させたりしている可能性があります。

心療内科・精神科では、問診や心理検査などを通して、精神的な要因の有無を調べます。必要に応じて、カウンセリングや薬物療法、認知行動療法などの治療が行われます。

ペインクリニック(治療をしても改善しない場合)

さまざまな治療を試しても痛みが改善しない場合は、ペインクリニックの受診を検討しましょう。ペインクリニックは、痛みの専門的な治療を行う診療科です。

神経ブロック療法や薬物療法、リハビリテーションなど、痛みの種類や程度、原因に合わせて、より専門的な治療を提供します。ペインクリニックを受診する際は、これまでの治療経過や検査結果などをまとめておきましょう

腰痛の治療法

腰痛の治療法と予防策について、以下の内容を解説します。

  • 保存療法
  • 手術療法
  • セルフケア

腰痛は一つの原因に対処するだけでなく、多角的なアプローチが必要となる複雑な症状です。痛みの原因に応じた適切な治療と予防策で、早期に改善し、再発を防げる可能性があります。

保存療法

保存療法とは、手術を行わずに腰痛を治療する方法で、患者さんの体への負担が少ないメリットがあります。腰痛の多くのケースでは、保存療法による症状改善が期待できます。保存療法は、以下の方法があり、痛みの原因や程度に合わせて、複数の方法を組み合わせて行う場合もあります。

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える薬を使用する
  • 理学療法:専門の理学療法士が治療を行う
  • 運動療法:腰痛を改善するための運動を行う

薬物療法は、痛みや炎症を和らげる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、筋肉の緊張を和らげる筋肉弛緩薬などを使用します。内服薬だけでなく、湿布や塗り薬などの外用薬も効果が期待できます。薬物療法は比較的早く効果が現れることがあり、痛みが強い時期には選択肢の一つとなる場合があります

理学療法は、温熱療法や電気刺激療法、牽引療法、マッサージなどを行い、痛みを軽減し、体の機能の回復を目指す方法です。理学療法士は、患者さんの状態に合わせて適切な治療法を選択し、日常生活動作の改善をサポートします。

運動療法は、ストレッチや筋力トレーニングなどで腰周りの筋肉を強化し、腰の負担を下げることを目的とした方法です。患者さんの状態に合わせた運動プログラムを作成し、実施します。腰痛の再発予防にも効果が期待できます。

手術療法

保存療法で効果がない場合や、神経の圧迫が強い場合などは、手術療法が検討されます。近年では、内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)を選択することが多くなっています。従来の手術と比較して、身体への負担が軽減される場合があり、状態に応じて比較的早期の社会復帰が期待できる可能性があります。

手術の種類は、腰痛の原因や症状で異なります。代表的なものとして、以下の手術があります。

  • 椎間板切除術:椎間板ヘルニアに対して行う
  • 脊柱管拡大術:脊柱管狭窄症に対して行う

手術療法は最終手段であり、医師とよく相談し、最適な治療法を選択することが重要です。

セルフケア

家庭でもできるセルフケアは、腰痛の予防や症状緩和、再発防止に役立つ可能性があります。以下のようなセルフケアを正しく行うことで、医療機関での治療効果を高めることも期待できます。

  • ストレッチ:腰周りの筋肉を柔らかくし、血行を促進する
  • 温罨法(おんあんぽう):腰を温めて血行を促進し、痛みを和らげる
  • コルセット:腰を支え、負担を軽減する

ストレッチは、入浴後など体が温まっているときに行うと効果的です。痛みを感じない範囲で、無理のない姿勢で行うことが大切です。温罨法は、温かいタオルやカイロなどで腰を温めます。痛みが強い時期に効果を感じる方が多いようです。炎症が強い場合は、冷罨法(れいあんぽう)が適している場合もあります

コルセットは、腰痛の予防や再発防止に役立つ場合があります。長時間の使用は筋力低下につながる可能性があるため、医師の指示に従って使用することが重要です。

まとめ

腰痛がある場合は、症状に応じて以下の診療科を受診しましょう。

  • 整形外科:腰の痛みやしびれ、動きの制限がある場合
  • 内科:発熱や倦怠感を伴う場合
  • 泌尿器科:腰の片側の痛みや排尿時の違和感がある場合
  • 婦人科:月経周期と連動した腰痛や下腹部の痛みがある場合
  • 心療内科・精神科:慢性的な腰痛でストレスや不安が関係している場合
  • ペインクリニック:さまざまな治療を試しても痛みが改善しない場合

鍼灸院などで鍼灸治療を受けるという選択肢もあります。どの診療科を受診すべきか判断に迷うときは、かかりつけ医に相談するのもおすすめです。ご自身の症状に合った適切な診療科を選び、早期の改善と再発防止を目指しましょう。

参考文献

Nebojsa Nick Knezevic, Kenneth D Candido, Johan W S Vlaeyen, Jan Van Zundert, Steven P Cohen.Low back pain.Lancet,2021,398,10294,p.78-92

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