- 2025年4月23日
腰痛があるときにやってはいけない運動とは?悪化させる動きと代替法
現代社会において、多くの人々が腰痛に悩まされています。ぎっくり腰などの突発的な痛みから、慢性的な鈍痛まで、腰痛の症状はさまざまです。痛みの原因は多岐にわたり、神経の損傷や炎症、原因不明のものまで存在します。日常生活における何気ない行動が、腰痛を悪化させる可能性があります。
本記事では、腰痛を悪化させる可能性のある5つの行動と腰痛時に効果的な4つの運動、腰痛予防のための5つの注意点を解説します。将来の腰痛リスクを軽減するために、参考にしてください。
腰痛を悪化させる行動5選
腰痛を悪化させる可能性のある行動を5つ紹介します。
- 前かがみで重いものを持つ動作
- 反り返る運動
- 捻る動きを伴う激しい運動
- 長時間同じ姿勢
- 急な激しい運動
前かがみで重いものを持つ動作
前かがみで重いものを持つ動作は、腰痛の原因になる代表的な姿勢です。前かがみの姿勢は腰に大きな負担をかけ、腰痛を悪化させる可能性があります。前かがみの姿勢では、腰の筋肉や椎間板に圧力が集中しやすくなるため、腰への負担が増加します。重いものを持ち上げる際は、さらに大きな圧力がかかり腰を痛めやすいため注意が必要です。
重いものを持ち上げるときは、荷物に近づき、膝を曲げて腰を落とし、腕と脚の力を使って持ち上げるように心がけましょう。背中を丸めないように注意してください。お腹に力を入れると、腰への負担を軽減できます。
反り返る運動
腰痛があるときに、腰を反らせる運動はおすすめできません。腰を反らす動きは、腰椎の後ろ側の関節や靭帯を圧迫するため、炎症を起こしたり、損傷させたりする可能性があります。腰痛がある場合は、腰を反らす動きのある運動を行う前に、医師や理学療法士に相談しましょう。
腰を反らす運動の代わりとして、腰を安定させるための体幹トレーニングや、股関節の柔軟性を高めるストレッチが適している場合があります。体幹トレーニングは、お腹周りの筋肉(腹横筋や腹斜筋、腹直筋など)を鍛えることで、腰椎を支える力を強化し、腰への負担を軽減する効果が期待できます。
捻る動きを伴う激しい運動
腰を捻る動作は、腰椎の椎間関節や周囲の筋肉、靭帯に影響を与えるため注意が必要です。捻る動きを繰り返すことで、腰に炎症や損傷を引き起こし、腰痛を悪化させる可能性があります。腰痛がある場合は、ゴルフやテニスなどの腰を捻る動作を含むスポーツを行う前に、医師や理学療法士に相談してください。適切な運動方法や強度を指導してもらうことをおすすめします。
捻る動きを伴う激しい運動の代わりに、ウォーキングや水中ウォーキングなど腰への負担が少ない運動を選ぶことが大切です。水中ウォーキングは、水の浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛がある方に特におすすめの運動です。運動は無理のない範囲で行い、痛みがでたらすぐに中断してください。
長時間同じ姿勢
デスクワークや運転など長時間同じ姿勢を続けることで、特定の筋肉に負担が集中し、筋肉の疲労や炎症を引き起こす可能性があります。血行不良によって、筋肉や神経への酸素供給が不足し、痛みが増強することもあります。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢になりやすい方は、こまめな休憩を意識することが重要です。30分に1回は立ち上がって軽いストレッチをする、1時間に1回は5分ほど歩くなど、こまめに体を動かすようにしましょう。
急な激しい運動
急な激しい運動は、けがのリスクを高める要因です。準備運動が足りない状態で激しい運動を行うと、筋肉や関節に過剰な負荷がかかり、炎症や損傷を引き起こす可能性があります。運動を始める際には、準備運動をしっかり行い、徐々に運動強度を上げていくようにしましょう。
運動を行う際は、ウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に強度や時間を増やしていくのがおすすめです。自分に適した運動がわからないときは、医師や理学療法士に相談してください。
腰痛時に効果が期待できる運動4選
腰痛時に効果が期待できる4つの運動方法は以下のとおりです。
- 有酸素運動
- ストレッチ
- 体幹トレーニング
- 水中運動
有酸素運動
有酸素運動は、心肺機能を高め全身の血行を促進し、腰痛の改善に役立つことが2021年の研究で示唆されています。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなど体に負担の少ない運動を選びましょう。運動不足の方は、軽いウォーキングから始めて徐々に時間を延ばしていき、最終的には30分を目標に、週に2回以上行うと効果的です。
ウォーキング中は正しい姿勢を保つことが重要です。背筋を伸ばし、ゆったりとしたペースで歩くと腰への負担が少ないです。運動前後に、股関節周りの柔軟性を高めるストレッチを併せて行うことで、より効果的に腰痛を改善し、再発を予防することができます。
ストレッチ
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、腰痛の予防と改善に役立つ可能性があります。腰やお尻、ハムストリングス(太もも周りの筋肉)、大臀筋、股関節周囲の筋肉を重点的にストレッチすることで、腰への負担を軽減できます。
ストレッチを行う際は、反動をつけずにゆっくりと行い、痛みを感じる手前で止めましょう。気持ちよさを感じる範囲で、1回につき10~30秒ほど保持するのが効果的です。呼吸を止めずに、自然な呼吸を続けることも大切です。ストレッチは、入浴後など体が温まっているときに、毎日継続して行うと、より効果が期待できます。
体幹トレーニング
体幹トレーニングは、体幹の筋肉を鍛えることで、姿勢を安定させ、腰への負担を軽減する効果が期待できます。腰痛の方には、ドローインなどの、腰に負担の少ない運動がおすすめです。
ドローインは、お腹を凹ませたまま呼吸をするトレーニングで、体幹を鍛える効果が期待できます。ドローインを行う際は、椅子に浅く座って背筋を伸ばしましょう。背筋を伸ばした姿勢を保ちながら、お腹を凹ませながら息を吐き、お腹を元に戻しながら息を吸ってください。
体幹トレーニングを行う際は、正しい姿勢を意識することが大切です。腹筋を使って腰を支えるように意識することで、より効果的に体幹を鍛えることができます。
水中運動
水中運動は、浮力により腰への負担が軽減されるため、腰痛の改善に効果が期待できます。水中で体を動かすことで、血行を促進し、痛みが軽減する可能性もあります。水の抵抗を利用することで筋力トレーニングの効果も期待でき、腰痛の改善だけでなく全身の健康増進が期待できます。
腰痛は、生理学的、心理学的、社会的な要因が複雑に絡み合って起こります。運動療法だけでなく、日常生活での姿勢や動作、精神的なストレスへの対処なども重要です。
腰痛予防の注意点5選
腰痛予防のための5つの注意点を紹介します。
- 正しい姿勢を保つ
- 重いものを持ち上げるときは膝を使う
- 適度な運動を心がける
- 長時間同じ姿勢を続けない
- 腰を冷やさないようにする
正しい姿勢を保つ
正しい姿勢を保つことは、腰への負担を軽減するため、腰痛を予防するうえで重要です。立っているときは、背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れて、骨盤を立てるように意識しましょう。顎を引いて目線をまっすぐにすることも、正しい姿勢を保つうえで大切です。
座っているときは、深く椅子に腰掛けて背もたれにしっかりともたれかかりましょう。足を組む癖がある方は、骨盤の歪みにつながるため注意が必要です。デスクワークなどで長時間同じ姿勢で座り続ける場合は、1時間に1回程度は立ち上がって軽いストレッチを行い、血行を促進し、筋肉の緊張をほぐすようにしましょう。
重いものを持ち上げるときは膝を使う
重いものを持ち上げるときは、腰に大きな負担がかかります。腰を曲げて持ち上げることは避け、膝を曲げて腰を落としてから持ち上げるようにしましょう。背中を丸めずに、背筋を伸ばしたままの状態を保つことが大切です。荷物を持つときは、体の中心に近づけて持ち、バランスを崩さないように注意しましょう。
無理せず誰かに手伝ってもらう、台車を使用するなど、重いものを持たない工夫することも必要です。重いものを持つ必要がある場合は、コルセットを着用するのも腰の負担を軽減する一つの方法です。
適度な運動を心がける
適度な運動は、腰痛予防に効果的です。運動不足は、筋力や柔軟性の低下につながり、腰痛を引き起こしやすくなります。激しい運動は腰痛の原因になるため注意が必要です。ウォーキングや水泳などの軽い運動を行いましょう。
運動を行う際は、必ず医師や理学療法士に相談し、自分の状態にあった運動を選んでください。無理をせず、痛みがでたら運動を中止することも重要です。
長時間同じ姿勢を続けない
長時間同じ姿勢を続けると、筋肉が緊張し、血行が悪くなり、腰痛を引き起こしやすくなります。デスクワークや長時間の運転など、同じ姿勢を続けることが多い場合は、1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをする、軽い歩行をする、姿勢を変えるだけでも効果が期待できます。
こまめに休憩を取り、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進するように心がけましょう。座っているときは、正しい姿勢を保つように意識することも大切です。
腰を冷やさないようにする
腰が冷えると血行が悪くなり、筋肉がこわばって腰痛を引き起こしやすくなります。特に冬場やエアコンの効いた室内では、無意識のうちに腰が冷えてしまうこともあるため注意が必要です。
腹巻きや腰回りを覆う服装で保温を意識し、冷え対策を行いましょう。血流が良くなることで、筋肉や関節の動きもスムーズになり、腰への負担を減らせます。
まとめ
腰痛を悪化させる行動は、前かがみで重いものを持ち上げる動作や腰を反らせる運動などが挙げられます。腰痛時には有酸素運動やストレッチなど、腰への負担が少ない運動を取り入れましょう。
腰痛予防には、正しい姿勢を保ったり重いものを持ち上げるときは膝を使ったりして腰の負担を軽減することが重要です。長時間同じ姿勢をしない、腰を冷やさないなども腰痛予防の効果が期待できます。
腰痛は、さまざまな原因が複雑に絡み合って発症するため、日ごろの動作を少しずつ意識することが重要です。少しでも違和感を覚えたら、早めに医療機関に相談し、適切なケアを受けるようにしましょう。
参考文献
Nebojsa Nick Knezevic, Kenneth D Candido, Johan W S Vlaeyen, Jan Van Zundert, Steven P Cohen. Low back pain. Lancet, 2021, 398, 10294, p.78-92.