- 2025年4月23日
腰椎分離症の症状と治療法!若年層に多い腰痛の対処法
腰に違和感や軽い痛みを感じたことはありませんか?腰の違和感や痛みは腰椎分離症のサインである可能性があります。16歳未満の場合、放置すると分離すべり症へと進行するリスクもあるため特に注意が必要です。
この記事では、若年層に多い腰椎分離症の症状と治療法を解説します。初期症状のサインを見逃さないためのチェックポイントや日常生活での予防策、さらに家庭でできるストレッチなどの具体的な対策も紹介します。将来の腰痛を防ぎ、スポーツを長く楽しむためにも、ぜひチェックしてみてください。
腰椎分離症の詳細な症状
腰椎分離症は、成長期に多く見られる腰の痛みです。特にスポーツをしているお子さんによく見られます。腰椎分離症は、骨の疲労骨折が原因で起こります。腰椎分離症の詳細な症状を、以下の項目に沿って解説します。
- 初期の自覚症状
- 慢性化した場合の症状
- 腰椎分離症による神経症状
- 症状が悪化する場合
- 他の病気との見分け方
初期の自覚症状
腰椎分離症の初期症状は、腰の違和感や軽い痛みです。スポーツ後や、長時間立っていたり座っていたりした後などに、腰に鈍い痛みを感じることがあります。初期症状の痛みは、安静にしていると治まることが多いですが、再び運動したり、同じ姿勢を続けたりすると、痛みがぶり返すことがあります。
「ちょっと痛いな」と感じたら、身体が発するサインです。椅子から立ち上がるときに腰に痛みを感じたり、前かがみになったときに痛みが強くなったりする場合もあります。運動後に腰が痛むケースも珍しくありません。痛みが断続的に表れるのも、腰椎分離症の初期症状の1つです。
慢性化した場合の症状
腰椎分離症を放置して慢性化すると、初期症状よりも強い痛みやしびれが現れるようになります。安静にしていても痛みが治まらず、日常生活にも支障をきたすため早めの対処が必要です。慢性化した場合、痛みは鋭く、持続的になることがあります。
腰だけでなく、お尻や太もも、ふくらはぎなどにも痛みやしびれが広がる「放散痛」が現れる場合もあります。しばらく歩くと足が痛くなり、休むとまた歩けるようになる「間欠跛行」も慢性化した場合の症状です。
腰椎分離症による神経症状
腰椎分離症は、神経を圧迫することで、神経症状を引き起こす場合があります。代表的な神経症状は、下肢のしびれや痛み、感覚異常、筋力低下などです。症状が悪化すると、トイレに行きにくくなる、尿が出にくい、便が出にくいなどの排尿・排便障害が現れる場合があります。
神経症状は、腰椎分離症が進行し、腰椎分離すべり症(分離した椎骨が前方にずれる状態)に移行した場合に起こりやすくなります。16歳未満では、分離すべり症に移行しやすいため注意が必要です。特に、第5腰椎の両側性の腰椎分離症の場合、腰椎分離すべり症へ進行するリスクが高まります。
症状が悪化する場合
腰椎分離症の症状は、過度な運動や長時間の同じ姿勢、重い物を持ち上げるなどの動作によって悪化することがあります。肥満や猫背などの姿勢も症状を悪化させる要因です。疲労やストレス、睡眠不足なども症状を悪化させる可能性があります。
成長期のスポーツ選手は、特に注意が必要です。野球のピッチャーのように、腰を繰り返し反らす動作が多いスポーツでは、腰椎への負担が大きくなり、分離症を発症しやすくなります。
他の病気との見分け方
腰椎分離症の症状は、他の腰痛疾患と似ている場合があり、自己判断で腰椎分離症と決めつけるのは危険です。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症などは、腰椎分離症と似た症状を引き起こすことがあります。
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫する病気です。腰部脊柱管狭窄症は、神経の通り道が狭くなることで神経を圧迫し腰の痛みを引き起こします。変形性腰椎症は、加齢によって椎間板や椎間関節が変形し、痛みやしびれを引き起こす病気です。
他の病気を見分けるためには、医療機関を受診し、レントゲン検査やMRI検査などを受ける必要があります。自己判断で治療を行うと、症状を悪化させる可能性があるため、必ず医療機関を受診してください。
腰椎分離症の治療法4選
腰椎分離症の4つの治療法は以下のとおりです。
- 装具療法
- 運動療法
- 薬物療法
- 手術療法
装具療法
装具療法は、コルセットなどの装具を装着することで、腰椎の動きを制限し、分離した部分への負担を軽減する治療法です。コルセットによって腰椎を安定させることで、痛みを和らげ、分離した骨が癒合するのを助けます。
コルセットには、硬性コルセットと軟性コルセットがあります。硬性コルセットは、プラスチックや金属などで作られており、強力な固定力が特徴です。初期の腰椎分離症や、痛みが強い場合に効果を発揮するとされています。軟性コルセットは、布やゴム素材で作られており、比較的動きやすいのが特徴です。日常生活での使用に適しています。
装具療法は、特に成長期の若年層の患者さんに有効である場合が多いです。成長期の骨はまだ柔らかく、修復力も高いため、コルセットによる固定で骨の癒合を促進することが期待できます。2021年の研究でも、保存的治療、特に装具療法が軽症例において第一選択であることが示唆されています。
運動療法
運動療法は、腰椎分離症の治療において重要です。ストレッチや筋力トレーニングを行うことで、腰周りの筋肉を強化し、腰椎の安定性を高めます。ストレッチは、硬くなった筋肉を伸ばし、柔軟性を高める効果が期待できる方法です。筋力トレーニングは、腹筋や背筋、お尻の筋肉など、体幹を支える筋肉を強化します。
運動療法は、医師や理学療法士の指導のもと、適切な方法で行うことが重要です。自己流で行うと、かえって症状を悪化させる可能性があります。運動療法を行う前には、必ず医療機関を受診しましょう。
薬物療法
薬物療法は、痛みや炎症を抑える治療です。腰椎分離症では、分離した部分の炎症によって痛みが生じるため、消炎鎮痛剤の服用により炎症を抑え、痛みの軽減が期待できます。内服薬の他に、湿布などの外用薬を使用することも多いです。
痛みが強い場合には、神経ブロック注射を行うこともあります。神経ブロック注射は、痛みを感じている神経に直接薬剤を注射することで、痛みを遮断する治療法です。即効性があるとされており、比較的早期に効果を感じる場合があります。
薬物療法は、あくまで対症療法であり、根本的な原因を治療するものではありません。他の治療法と組み合わせて行うことが一般的です。
手術療法
保存療法で効果が得られない場合や、神経症状が強い場合は、手術療法が検討されます。手術療法には、大きく分けて分離部修復術と固定術の2種類があります。
分離部修復術は、分離した骨を直接修復する手術です。スクリューやプレートなどの金属を用いて、分離した骨を固定します。スポーツへの早期復帰を希望する方に適した手術法です。固定術は、分離した部分だけでなく、上下の椎骨も一緒に固定する手術です。分離が進行している場合や、脊椎すべり症を合併している場合に適応されます。
手術療法は、身体への負担が大きいため、慎重に検討する必要があります。手術のリスクや合併症、術後のリハビリテーションについても、医師から十分な説明を受けましょう。
腰椎分離症の予防と日常生活の注意点
腰椎分離症の予防と日常生活の注意点について、以下の項目を解説します。
- スポーツにおける予防策
- 日常生活での予防策
- 家庭でできるストレッチとエクササイズ
スポーツにおける予防策
野球やバレーボールなど、腰の負担がかかりやすいスポーツは、腰椎分離症のリスクを高める一因です。スポーツ自体は健康維持に役立ちますが、間違った方法で行うと、身体に負担がかかり、思わぬケガにつながることがあります。
スポーツを安全に楽しむためには、正しいフォームを身につけることが重要です。野球のピッチングフォームが正しくないと、投げるたびに腰に大きな負担がかかり、疲労骨折を起こしやすくなります。正しいフォームは、専門家に見てもらうのが一番です。コーチやトレーナーに指導してもらい、自分のフォームをチェックしてもらいましょう。
ウォーミングアップも欠かせません。ウォーミングアップは、身体を運動に適した状態にする準備運動です。筋肉を温めて柔軟性を高めることで、ケガをしにくくする効果があります。ウォーミングアップ不足の状態での激しい運動は、身体に大きな負担がかかり、故障の原因になります。
10分程度の軽いジョギングやストレッチで、筋肉をほぐしてから運動を始めましょう。運動後も、クールダウンとしてストレッチを行うことで、疲労物質の排出を促し、筋肉痛の予防につながります。練習量のコントロールも大切です。過度な練習は、身体への負担が大きくなり、かえって逆効果になることがあります。
成長期の骨はまだ発達段階にあるため、過度な負荷がかかると、疲労骨折を起こしやすいです。適切な練習量と休息をバランスよく組み合わせることで、身体への負担を軽減し、腰椎分離症の予防につながります。
日常生活での予防策
スポーツだけでなく、日常生活での何気ない動作や姿勢も、腰椎分離症のリスクを高める可能性があります。普段から正しい姿勢を意識し、腰への負担を減らすように心がけることが重要です。
正しい姿勢は腰の負担を軽減する第一歩です。立っているときも座っているときも、背筋を伸ばし、良い姿勢を意識することが大切です。猫背は、腰に負担がかかりやすいため、特に注意が必要です。長時間のデスクワークやスマートフォンの操作は、猫背になりがちです。こまめに休憩を取り、姿勢を正すように心がけましょう。
重いものを持ち上げるときは、腰ではなく膝を曲げて持ち上げてください。腰に負担がかからないように、荷物を持つときは、身体に近づけて持ち上げるのがポイントです。重い荷物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、スクワットのように膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。
長時間同じ姿勢を続けるのも避けましょう。勉強やゲームなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチなどを行いましょう。1時間ごとに立ち上がって身体を動かす、軽いストレッチをするなど、工夫してみましょう。
家庭でできるストレッチとエクササイズ
家庭でできる簡単なストレッチやエクササイズも、腰椎分離症の予防のために重要です。毎日続けることで、腰周りの筋肉を柔軟にし、腰への負担を軽減できます。
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果があります。股関節のストレッチやハムストリングスのストレッチなど、腰周りの筋肉を柔らかくするストレッチを行いましょう。体幹トレーニングも腰周りの筋肉を鍛えられるおすすめの運動です。プランクやニートゥーチェストなどの体幹トレーニングは、特別な器具を必要とせず、自宅で手軽にできます。
軽い運動も効果的です。ウォーキングやサイクリングなど、軽い運動を習慣的に行うことで、腰周りの筋肉を鍛え、腰痛を予防できます。無理のない範囲で、軽い運動を日常生活に取り入れてみましょう。
痛みがある場合は、無理にストレッチやエクササイズを行わず、医療機関を受診してください。自己判断で運動を続けると、症状を悪化させる可能性があります。専門家の指導のもと、適切な運動を行いましょう。
まとめ
腰椎分離症は、特にスポーツをする成長期に起こりやすい腰の痛みです。初期は軽い違和感ですが、悪化すると日常生活に支障が出ることもあるため、早期発見・治療が大切です。「少し痛いな」と感じたら、迷わず医療機関を受診しましょう。
治療法は、装具療法や運動療法、薬物療法、手術療法などがあり、症状や年齢、生活スタイルに合った方法を選択することが重要です。日頃から正しい姿勢や適切な運動を心がけ、腰への負担を減らしましょう。ストレッチや体幹トレーニングも予防に効果が期待でき、毎日の心がけから始まります。一緒に腰を守り、健康的な毎日を送りましょう。
参考文献
Christopher C Chung, Adam L Shimer. Lumbosacral Spondylolysis and Spondylolisthesis. Clin Sports Med, 2021, 40(3), p.471-490.