- 2025年5月22日
四十肩と五十肩の違いとは?症状と痛みの特徴を徹底比較
肩の痛み、年齢のせいだと諦めていませんか?四十肩と五十肩は、医学的にはほぼ同じ「肩関節周囲炎」と呼ばれ、適切な治療で改善が期待できます。肩関節周囲の炎症が原因で、腕が上がらない、服を着替えにくい、夜も痛みで眠れないなど、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
この記事では四十肩と五十肩の違いや症状の特徴、効果的な治療法とセルフケアについて、詳しく解説します。肩の痛みを我慢せず、快適な日常生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
四十肩と五十肩はどちらも「肩関節周囲炎」
四十肩と五十肩、他の疾患との見分け方について、以下の項目に沿って解説します。
- 四十肩の症状・痛みの特徴
- 五十肩の症状・痛みの特徴
- 他の疾患との鑑別方法(腱板断裂、石灰沈着性腱板炎など)
四十肩の症状・痛みの特徴
四十肩は、40歳代に多く発症する肩関節周囲炎です。初期症状は、肩を動かしたときに痛みを感じます。髪をとかしたり、服を着たりする際に、肩に痛みを感じる程度の軽い痛みから始まることが多いです。次第に、安静時にも痛みを感じるようになり、夜も痛みで目が覚めてしまうこともあります。
痛みの種類は、うずくような痛みや鈍い痛み、鋭い痛みなどさまざまです。特に夜間痛は、睡眠を妨げ日常生活にも大きな影響を与えます。仕事や家事、育児など、肩を動かす作業に支障が出るため、生活の質が低下してしまう方もいます。四十肩は、以下の3つの段階に分けられます。
- 炎症期:痛みが強く、夜間痛がある
- 拘縮期:痛みが軽減する一方、肩関節の動きが悪くなる
- 回復期:痛みも動きも徐々に改善していく
一般的には、数か月〜1年半程度の期間をかけて回復に向かうことが多いです。
五十肩の症状・痛みの特徴
五十肩は、50歳代に多く発症する肩関節周囲炎です。四十肩と同様に、初期は肩を動かしたときの痛みから始まり、徐々に安静時痛や夜間痛を感じるようになります。進行すると肩関節の動きが悪くなり、腕を上げたり、後ろに回したりすることが困難になります。
五十肩は、閉経後の女性に多く見られることから、女性ホルモンの減少との関連性も示唆されます。糖尿病や甲状腺疾患などの生活習慣病を合併している方は、五十肩を発症するリスクが高まる傾向があります。五十肩も四十肩と同様に、炎症期、拘縮期、回復期の3つの段階を経て、自然に治癒します。
回復までの期間には個人差がありますが、多くの場合、1〜2年程度かかります。
他の疾患との鑑別方法(腱板断裂、石灰沈着性腱板炎など)
四十肩・五十肩は、以下の肩の疾患と症状が似ています。
- 腱板断裂
- 石灰沈着性腱板炎
- 頸椎椎間板ヘルニア
腱板断裂は、肩の腱が部分的または完全に断裂する病気です。重いものを持ち上げたり、転倒したりした際に起こりやすく、断裂の程度によって痛みの強さや肩の動きの制限の程度が異なります。
石灰沈着性腱板炎は、肩の腱板にリン酸カルシウムが沈着し、炎症を起こす病気です。激しい痛みを伴うのが特徴で、夜間に痛みが強くなることもあります。頸椎椎間板ヘルニアは、首の骨と骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫します。首や肩、腕などに痛みやしびれが生じる病気です。
四十肩・五十肩と症状が似ていますが、別の疾患のため、異なる治療が必要です。整形外科を受診し、レントゲン検査やMRI検査などを行い、正確な診断を受けましょう。医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。
四十肩・五十肩の治療法
四十肩と五十肩の治療法について、以下の4つを解説します。
- 薬物療法
- 理学療法
- 注射療法
- 手術療法
薬物療法
薬物療法は、炎症や痛みを抑えることを目的とし、鎮痛剤や消炎鎮痛剤を内服します。一般的に、薬物療法は即効性があり、服用後すぐに効果を実感できることが多いです。痛みの程度に合わせて、適切な種類の薬剤や用量が選択されます。痛みが強い場合には、患部に直接作用する湿布薬も有効です。
理学療法
理学療法は、肩関節の動きを改善し、機能を回復させるための治療法です。肩関節周囲の筋肉の柔軟性を高めるストレッチや、肩関節の安定性を高める筋力トレーニングなど、患者さんの状態に合わせた運動療法が中心となります。温熱療法や超音波療法などの物理療法を組み合わせることもあります。
理学療法は、痛みの軽減だけでなく、肩関節の機能回復の促進や再発予防にも役立つことが期待されます。
注射療法
薬物療法や理学療法で十分な効果が得られない場合、注射療法が検討されます。肩関節内にステロイド注射やヒアルロン酸注射を行うことで、炎症を抑え、痛みを軽減し、関節の動きを滑らかにします。
ステロイド注射は強力な抗炎症作用があり、痛みの軽減に効果が期待できます。頻回に注射すると副作用のリスクが高まるため、使用回数には注意が必要です。ヒアルロン酸注射は、関節液の主成分であるヒアルロン酸を補充します。関節の動きをスムーズにし、痛みを軽減する効果が期待できます。
96人の肩関節癒着性関節包炎患者を対象とした研究では、関節内ステロイド注射(IAS)単独と肩甲上神経ブロック(SSNB)併用療法の鎮痛効果が比較されました。2週間後にはSSNB併用群のほうが痛みが軽減し、その後は差が見られていません。
IAS単独でも痛みや障害の軽減、可動域の改善効果が認められました。ステロイド注射単独でも効果が期待できます。
手術療法
手術療法は、保存療法で効果が得られない場合や、肩関節の癒着が重度のケースにのみ行われます。代表的な手術には、以下の2つの方法があります。
- サイレント・マニピュレーション(徒手授動術):全身麻酔あるいは神経ブロック麻酔下に、医師が肩関節を動かし癒着を剥がす
- 肩関節鏡視下授動術:小さな切開部から内視鏡を挿入し、関節内部の状態を確認しながら癒着を剥がす
手術療法は、他の治療法と比較して体への負担が高いため、慎重に検討する必要があります。
四十肩・五十肩のセルフケア
四十肩と五十肩のセルフケアについて、以下の5つを解説します。
- 急性期のアイシング
- 慢性期の温熱療法
- 振り子運動
- 正しい姿勢
- 生活習慣の見直し
急性期のアイシング
四十肩と五十肩の急性期(痛みが始まって間もない時期)は、炎症が強く出ている状態です。患部が熱を持っている、赤く腫れている、といった症状が見られます。患部を冷やすアイシングにより、炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
アイシングの具体的な方法としては、氷水を入れたビニール袋や保冷剤をタオルで包み、患部に15~20分程度当てます。冷やしすぎると凍傷の恐れがあるので、皮膚の感覚がなくなってきたらすぐに中断してください。冷蔵庫から出したばかりの氷や保冷剤を直接皮膚に当てるのも避けましょう。
アイシングは炎症を抑える効果がありますが、痛みを完全に取り除くものではありません。痛みが強い場合は、医療機関を受診し、鎮痛剤などの処方を受けることをおすすめします。
慢性期の温熱療法
痛みが続いて慢性期に入ると、肩関節の動きが悪くなり、筋肉が硬くなってしまいます。肩を動かすと痛みがあるため、無意識に肩を動かさなくなることが原因です。温熱療法により、血行の促進や筋肉の緊張がほぐれることが期待され、肩の動きがスムーズになる可能性があります。
温熱療法の方法としては、蒸しタオルや温湿布、お風呂などで患部を温めます。温熱療法は、1回20~30分程度行うのが目安です。熱すぎるお湯や、長時間温めすぎるのは、かえって炎症を悪化させる可能性があるので注意しましょう。
振り子運動
振り子運動は、肩の痛みを和らげ、肩関節の可動域を広げるのに役立つ可能性がある運動です。肩に負担をかけずに、優しく肩関節を動かすことができるため、四十肩や五十肩の症状がある方にも比較的安全に行えます。具体的な方法としては、まっすぐ立って、痛みのないほうの腕でテーブルや椅子の背もたれなどを支えます。
痛む方の腕を下にだらりと垂らし、力を抜き、体を前後に揺らして腕を振り子のように動かしましょう。前後に加えて、円を描くように腕を回すのも効果が期待できます。1日に数回、数分程度行いましょう。
正しい姿勢
日常生活での姿勢も、四十肩と五十肩の症状に大きく影響します。猫背や前かがみの姿勢は、肩周りの筋肉を緊張させ、血行不良を引き起こします。血行不良により、肩への負担を増大させ、症状を悪化させる可能性があります。正しい姿勢を意識することで、肩への負担を軽減し、痛みの悪化を防ぐことが期待できます。
具体的には、背筋を伸ばし、顎を引いて、肩の力を抜くように心がけましょう。パソコン作業やデスクワークが多い方は、椅子の高さやモニターの位置を調整し、正しい姿勢を保てるように工夫することも大切です。
生活習慣の見直し
四十肩と五十肩は、加齢や生活習慣、姿勢などが原因で発症します。日頃から、肩への負担を減らすように心がけ、再発予防に努めましょう。重い荷物を持つ際は、両肩に均等に重さがかかるようにリュックサックの使用がおすすめです。
長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチを行うなど、工夫しましょう。十分な睡眠やバランスの良い食事、適度な運動なども健康な体を維持するために重要です。糖尿病や甲状腺疾患などの生活習慣病は、五十肩のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
四十肩・五十肩は肩関節周囲の炎症によって起こる痛みで、どちらも肩関節周囲炎と呼ばれます。治療法には、薬物療法や理学療法、注射療法、手術療法などがあり、症状や状態に合わせて選択されます。肩の痛みを感じたら、自己判断せずに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。
セルフケアの方法として、急性期にはアイシング、慢性期には温熱療法が効果が期待できます。振り子運動や正しい姿勢を保つこと、生活習慣の見直しも大切です。重い荷物を持つ際は両肩に均等に重さがかかるようにする、長時間同じ姿勢を続けない、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけましょう。
参考文献
Yaal Elango, Adinarayanan S, Srinivasan Swaminathan, Kirthiha Govindaraj, Sandeep Nema, Navin Kumar. Comparison of the analgesic efficacy of intra-articular steroid injections and its combination with suprascapular nerve block for adhesive capsulitis of the shoulder joint: a randomized clinical trial. Regional Anesthesia & Pain Medicine, 2024,