- 2025年5月22日
ぎっくり腰の予防に効果が期待できる筋トレと生活習慣の見直し方
ぎっくり腰は多くの人が経験する可能性のある身近な疾患です。突然の強い腰の痛みにより、日常生活が一時的に制限されることも少なくありません。特に一度経験すると再発しやすく、予防が重要とされています。この記事では、ぎっくり腰について以下の4つの内容を解説します。
- ぎっくり腰とは急な強い腰痛のこと
- ぎっくり腰になりやすい人の特徴
- ぎっくり腰の予防が期待できる筋トレ
- 生活習慣の見直しポイント5選
自宅でできるトレーニングや、日々の行動で意識すべきポイントを知ることで、再発のリスクを減らすことが可能です。つらいぎっくり腰を繰り返さないために、ぜひ本記事を参考に予防対策を始めましょう。
ぎっくり腰とは急な強い腰痛のこと
ぎっくり腰とは、医学的には「急性腰痛症」と呼ばれる、突然起こる腰の痛みです。くしゃみや咳、軽い動作などがきっかけで発症することもあります。強い痛みは、全く身動きが取れなくなるほどです。ぎっくり腰の主な原因は、腰を支えている筋肉や靭帯の損傷、椎間板のズレなどが考えられます。
発症リスクを高める要因は以下のとおりです。
- 長時間のデスクワーク
- 運動不足
- 肥満
- 精神的なストレス
- 睡眠不足
- 喫煙
ぎっくり腰は30代以降に多く発症し、約3割の人が再発を経験するというデータもあります。再発すると痛みの期間が長引く傾向があるため、日常生活での予防が重要です。
ぎっくり腰になりやすい人の特徴
ぎっくり腰になりやすい人には、以下の特徴があります。
- 運動不足
- 肥満
- ストレス過多
- 睡眠不足
運動不足
運動不足の方は、腹筋や背筋などの腰を支える体幹の筋肉が弱くなりやすく、腰への負担が増えてぎっくり腰のリスクが高まります。重い物を持ち上げるとき、腰と周囲の筋肉・靭帯に過剰な負荷がかかり、損傷しやすくなります。体幹の筋肉の衰えは姿勢の悪化にもつながり、腰の負担も増えることになります。
運動不足の解消には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加え、体幹を強化する筋トレが効果的です。週に2~3回トレーニングを行い、体幹の安定性を高めることを目指しましょう。日本整形外科学会も体幹トレーニングの有効性を認めており、再発リスクを30%以上低減させるという報告もあります。
肥満
肥満はぎっくり腰のリスクを高める要因です。体重が増えると、腰への負担も大きくなるためぎっくり腰を起こしやすくなります。肥満の方は運動不足の傾向があることも、発症リスクを上げる原因となっています。
ストレス過多
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、筋肉の緊張を高めます。慢性的なストレスにさらされていると、腰の筋肉が常に緊張した状態になり、血行不良を引き起こします。血行不良は筋肉や靭帯の柔軟性を低下させ、損傷しやすくするため、ぎっくり腰のリスクを高めます。
ストレスを解消するためには、以下の方法をおすすめします。
- リラックスできる時間を作る
- 趣味を楽しむ
- 十分な睡眠時間を確保する
自分に合った方法を見つけることが大切です。精神的な緊張がとれることで、筋肉の緊張も緩和され、ぎっくり腰の予防につながります。
睡眠不足
睡眠不足は、体の回復を妨げ、筋肉の疲労を蓄積させます。疲労が蓄積した筋肉は、損傷しやすくなり、ぎっくり腰のリスクを高めます。睡眠中は成長ホルモンが分泌され、組織の修復が行われます。睡眠不足になると、成長ホルモンの分泌が低下し、ぎっくり腰からの回復を遅らせる可能性があります。
質の良い睡眠を十分に取ることは、ぎっくり腰の予防だけでなく、健康維持にも不可欠です。毎日7時間程度の睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めるように心がけましょう。
ぎっくり腰の予防が期待できる筋トレ
ぎっくり腰のリスクを低減させるためには、日頃から腰を支える筋肉を鍛え、柔軟性を高めておくことが重要です。自宅で簡単にできる筋トレ方法を以下の3つご紹介します。
- プランク
- バードドッグ
- デッドバグ
プランク
プランクは、体幹を鍛える定番のトレーニングです。腹筋群全体を効果的に鍛えることができます。プランクの正しいやり方は以下のとおりです。
- うつ伏せになり、肘を肩の真下に置き、前腕は床につける
- 肘を肩幅より少し広めに開き、つま先を立てる
- 肘とつま先で体を支え、頭からかかとまでが一直線になるように体を持ち上げる
- 正しい姿勢を維持したまま30秒間キープする
- 30秒×3セットを目安に行う
プランクを行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 呼吸を止めるとめまいなどを引き起こす可能性があるため、自然な呼吸を続ける
- お腹に力を入れて、お尻が上がりすぎたり、腰が反ったりしないように注意する
- きつい場合は10〜20秒で始めて、徐々に時間を延ばす
腰に痛みを感じる場合は、無理をせず中止しましょう。痛みがある状態で続けると、症状を悪化させる可能性があります。高齢者や体力に自信のない方は、膝をついた状態で行うなど、負荷を調整しましょう。
バードドッグ
バードドッグは、体幹を鍛えるのと同時にバランス力も鍛えることができるトレーニングです。体幹の筋肉だけでなく、お尻や太ももの裏側の筋肉も一緒に鍛えることができます。バードドッグの正しいやり方は以下のとおりです。
- 四つん這いになり、手は肩幅、膝は腰幅に開く
- 肩の真下に手首、股関節の真下に膝が来るようにポジションを調整する
- 背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れた状態を保つ
- 右腕と左足を同時に伸ばし、床と平行になるまで上げる
- 数秒間キープした後、ゆっくりと元の姿勢に戻す
- 反対側の左腕と右足も同様に行う
- 左右交互に10回×3セットを目安に行う
バードドッグを行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 体が傾いたり、腰が反ったりしないように、頭からかかとまで一直線になるように意識する
- バランスを崩しやすい場合は、無理に腕や足を高く上げようとせず、安定した姿勢で行う
- 呼吸を止めずに、自然な呼吸を続ける
デッドバグ
デッドバグは、体幹のインナーマッスルを強化するトレーニングです。インナーマッスルとは、体の奥深くにある筋肉のことで、姿勢の維持や内臓の保護など、重要な役割を担っています。デッドバグは、仰向けに寝た状態で行うため、腰への負担が少なく、安全に鍛えることができます。デッドバグの正しいやり方は以下のとおりです。
- 仰向けになり、膝を90度に曲げ、両腕を天井に向けて伸ばす
- 腰が浮かないように、お腹に軽く力を入れる
- 右腕を頭の後ろに、左足を床に近づけるように伸ばす
- 元の姿勢に戻し、反対側の左腕と右足も同様に行う
- 左右交互に10回×3セットを目安に行う
デッドバグを行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 腕や足を動かす際に、痛みが出る可能性があるため腰を反らない
- 呼吸を止めずに、自然な呼吸を続ける
生活習慣の見直しポイント5選
ぎっくり腰の予防として、日常生活の中で簡単に取り入れられる見直しのポイントは以下の5つです。
- こまめに動く
- 適正体重を維持する
- 睡眠を十分にとる
- 入浴で血流を改善する
- ストレッチで柔軟性を高める
こまめに動く
日常生活の中で体を動かす工夫として、以下の例を参考に取り入れてみましょう。
- 30分ごとに軽いストレッチをする
- スタンディングデスクを導入する
- 1時間に1回は席を立つ
- エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使う
- 遠くのトイレに行く
- 休憩時間に軽い散歩をする
体を動かすことで、筋肉の柔軟性を維持できます。血流が改善することで、ぎっくり腰の予防にもつながります。
適正体重を維持する
適正体重を維持することは、腰への負担を軽減し、ぎっくり腰の予防につながります。BMI(ボディマス指数)は、肥満度を表す国際的な指標であり「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」という式で計算できます。
日本肥満学会の基準では、BMIが25以上は肥満とされ、適正体重としてBMI25未満を目安にすることが推奨されています。バランスの良い食事と適度な運動を心がけることで、健康的な体重管理を行いましょう。食事の栄養バランスは、体の機能を正常に保つためにも大切です。
睡眠を十分にとる
質の良い睡眠をとるためのポイントとして、以下の表におすすめの行動と避けるべき行動を紹介します。
テーマ | おすすめの行動 | 避けるべき行動 |
生活リズム | 毎日同じ時間に寝起きする | 休日の寝坊や夜更かしをする |
朝の過ごし方 | 起床時に日光を浴びる | カーテンを閉めっぱなしにする |
運動習慣 | 日中にウォーキングや軽い運動をする | ほとんど家から出ない |
寝る前のルーティン | 読書やストレッチなど心を落ち着かせる習慣をもつ | 寝る前にスマホやパソコンを見る |
食事や飲み物 | カフェインやアルコールを避ける | 夜にコーヒーやお酒を飲む |
入浴 | ぬるめのお湯に浸かる | 長風呂や熱い風呂に入る |
入浴で血流を改善する
入浴は血行を促し、筋肉の緊張を和らげる効果があるため、シャワーだけで済ませず湯船に浸かる習慣を身につけましょう。38~40℃くらいのお湯に15~20分程度浸かるのがおすすめです。熱いお湯に短時間入るよりも、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる方が、血行促進効果が高く、リラックス効果も得られます。
入浴剤を使用するのもおすすめです。入浴剤には、血行促進効果を高めるものや、リラックス効果を高めるものなど、さまざまな種類があります。自分に合った入浴剤を選び、快適なバスタイムにしましょう。
ストレッチで柔軟性を高める
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、ぎっくり腰の予防に効果的です。日常生活の中でよく使われる筋肉として以下の3つが挙げられます。
- ハムストリングス:太ももの裏にある筋肉
- 殿筋群(でんきんぐん):お尻の筋肉
- 大腰筋(だいようきん):背骨と大腿骨をつなぐインナーマッスル
毎日継続してストレッチを行うことで、筋肉が柔らかくなり、ぎっくり腰になりにくい体を作ることができます。朝起きたときやお風呂上がりなど、毎日決まった時間に行うと習慣化しやすいです。無理に伸ばしすぎると筋肉を痛める可能性があるので、痛みを感じない範囲で、ゆっくりと呼吸をしながら行いましょう。
まとめ
ぎっくり腰は、急な動作や重いものを持ち上げたときだけでなく、日常生活の何気ない動作がきっかけで起こることもあります。日頃から予防を意識することが大切です。ぎっくり腰予防のための筋トレ(プランク、バードドッグ、デッドバグ)は自宅で簡単に行えるので、ぜひ取り入れてみてください。
運動だけでなく、生活習慣の見直しも重要です。こまめな運動、適正体重の維持、十分な睡眠、入浴、ストレッチなどを意識し、ぎっくり腰になりにくい体作りを心がけましょう。ご紹介した方法を継続的に実践することで、ぎっくり腰のリスク低減に役立ち、より快適な毎日を送る助けになる可能性があります。
参考文献
- Gustavo C Machado, Chris G Maher, Paulo H Ferreira, Jane Latimer, Bart W Koes, Daniel Steffens, Manuela L Ferreira. Can Recurrence After an Acute Episode of Low Back Pain Be Predicted?. Phys Ther, 2017, 97, 9, p.889-895
- 佐藤 正裕. 腰部・体幹障害予防とアスレティックトレーニング. 日本アスレティックトレーニング学会誌, 2019, 5, 1, p.19-25.