• 2025年5月23日

四十肩の原因と効果が期待できる対処法!日常生活で気をつけたいポイントを解説

肩の痛みや動かしにくさを感じることはありませんか?40~50代で多く発症する四十肩は、肩関節周囲の炎症が原因で、肩の痛みや動きの制限が起こる状態です。加齢による組織の老化や肩関節の使いすぎ、血行不良、糖尿病などの基礎疾患、姿勢不良や猫背などの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

本記事では、四十肩の5つの原因を解説し、対処法や日常生活で気をつけたいポイントを紹介します。肩の痛みを我慢せず、適切なケアを学ぶことで、四十肩の症状を和らげ、生活の質を改善することが期待できます。

四十肩の5つの原因

四十肩の原因について、以下の5つを解説します。

  • 加齢による組織の老化
  • 肩関節の使いすぎ
  • 血行不良
  • 糖尿病などの基礎疾患
  • 姿勢不良や猫背

加齢による組織の老化

加齢は四十肩のリスク要因の一つです肩関節周囲の組織はコラーゲンというたんぱく質を主要成分としています。加齢とともにコラーゲンの生成が減少し、質も劣化するため、組織の柔軟性や弾力性が低下し、炎症を引き起こしやすくなります。

加齢に伴い、肩関節への血流も悪くなります。血流が悪くなると、組織の修復に必要な酸素や栄養の供給が不足し、老廃物の排出も滞ります。結果として、組織の修復が遅れ、四十肩の症状が長引く可能性があります。

加齢による影響を避けることはできませんが、日頃から適度な運動を心がけ、肩関節の柔軟性を維持することで、四十肩の発症リスクを低減できます。毎日のラジオ体操や軽いストレッチがおすすめです。

肩関節の使いすぎ

スポーツや重い荷物を運ぶ作業、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けることで、肩関節に過剰な負担がかかり、炎症を起こしやすくなります。肩関節は、腕をさまざまな方向に動かすことができる自由度の高い関節ですが、構造的に不安定な側面も持ち合わせています。

スポーツをする際は、適切なウォーミングアップとクールダウンを行い、体に負担をかけすぎないようにしましょう。日常生活でも、重いものを持ち上げるときや長時間同じ姿勢を続けるときは、こまめに休憩を取るように心がけてください。

血行不良

肩関節周囲の血行不良は、組織への酸素や栄養の供給を不足させ、老廃物の排出を妨げます。結果、組織の修復が遅れ、炎症が悪化しやすくなります。四十肩の発症と血行不良には関連がある可能性が考えられています。下記の5つは、血行不良を招く要因です。

  • 冷え性
  • 長時間同じ姿勢での作業
  • 運動不足
  • ストレス
  • 睡眠不足

血行不良は自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行している場合があります。肩や首のこりがある場合は、血行不良が起きている可能性があるため、注意が必要です。

糖尿病などの基礎疾患

糖尿病などの基礎疾患は、血管や神経に障害を引き起こし、肩関節周囲の組織への血流を悪化させ、炎症を長引かせる可能性があります。糖尿病では、高血糖状態が続くことで血管が傷つきやすくなり、全身の血流に影響を及ぼします。肩関節周囲の血管も傷つくことで血流が悪化し、組織への酸素や栄養の供給が不足します。

糖尿病は神経にも障害を与えるため、肩の痛みを感じにくくなり、症状が悪化するまで気づかない場合もあります。糖尿病以外にも、甲状腺機能低下症や高脂血症なども四十肩のリスクを高める場合があります。基礎疾患がある場合は、医師と相談しながら、適切な治療を受けることが重要です。

ホルモンバランスの変化も四十肩の発症に関与している場合があります。更年期障害などで女性ホルモンの分泌量が減少すると、腱や靭帯などの組織が弱くなり、炎症を起こしやすくなる可能性があります。

姿勢不良や猫背

姿勢不良は、肩甲骨の位置がずれることで、肩関節の動きを制限し、周囲の筋肉や腱に負担をかけ、炎症を引き起こしやすくなります。正しい姿勢では、肩甲骨が背骨に沿って適切な位置にありますが、猫背になると肩甲骨が外側に開き、前に傾いた状態になります。

傾いた状態が続くと、肩関節を動かす際に肩甲骨と上腕骨の連動が円滑に行われず、肩関節周囲の筋肉や腱に負担がかかりやすくなります。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用は、猫背になりやすいため、注意が必要です。

四十肩の経過

四十肩の経過について、下記の3段階に分けて解説します。

  • 急性期:激しい痛みと可動域制限がある
  • 慢性期:痛みが軽減するも動きが悪くなる
  • 回復期:徐々に可動域が改善する

急性期:激しい痛みと可動域制限がある

急性期は、発症してから約3か月までの期間です。特徴は、肩にズキズキとした強い痛みがあり、夜間や安静時にも痛みが強くなることです。炎症によって肩関節周囲の組織が腫れ上がり、神経を刺激するためです。腕を上げたり、回したりするなどの動作が制限され、衣服の着脱や髪をとかすなどの日常生活にも支障をきたします。

急性期には、痛みが強いので無理に動かさないことが大切です。肩を安静にし、炎症を抑えることを優先しましょう。アイシングを15~20分行ったり、消炎鎮痛剤を内服したり、三角巾で腕を固定するなどの方法で痛みを和らげます。痛みが軽度であれば、医師の指示のもと、振り子運動など負担の少ない運動を行うことも有効です。

夜間の安静時痛は、滑液包(関節の摩擦を軽減するために存在する液体を含んだ袋状の組織)と呼ばれる関節内の袋の圧力が上昇することが原因と考えられています。安静にしていてもズキズキと痛むため、睡眠不足に陥りやすく、日常生活に影響を及ぼします。

慢性期:痛みが軽減するも動きが悪くなる

慢性期は、発症から約3~12か月までの期間です。急性期に比べると痛みは軽減しますが、肩関節の動きが悪くなり、可動域制限が続きます。肩関節周囲の組織が癒着したり、硬くなったりするためです。腕を外側に広げたり、内側や外側に捻ったりする動きが制限され、日常生活動作が困難になることがあります。

慢性期には、痛みを我慢して無理に動かすと症状が悪化する場合があります。温熱療法やストレッチ、肩甲骨を動かす運動などを行い、肩関節周囲の筋肉を柔らかくし、関節の動きを改善していくことが重要です。理学療法士による指導のもと、適切な運動療法を行うことをおすすめします。

回復期:徐々に可動域が改善する

回復期は、発症してから約12か月以降の期間です。肩の痛みはほとんどなくなり、肩関節の動きも徐々に改善していきます。回復期には、積極的にリハビリテーションに取り組むことで回復し、以前のように肩を自由に動かせるようになることが期待できます。

焦って無理な運動をすると再発のリスクがあるため、医師や理学療法士の指示に従って、徐々に運動量を増やすことが大切です。四十肩は、腱板断裂などの他の疾患と症状が似ている場合があるため、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

四十肩の対処法

四十肩の対処法について、以下の3つを解説します。

  • 薬物療法:痛み止めや湿布
  • 理学療法:運動療法やリハビリ
  • 注射療法:ステロイド注射やヒアルロン酸注射

薬物療法:痛み止めや湿布

四十肩の痛みを和らげるには、薬物療法が有効です。内服薬は、痛みや炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。ロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェンなどの種類があり、効果や副作用も異なります。ご自身の体質や持病などを考慮して、医師と相談の上、適切な薬を選ぶことが大切です。

炎症を抑える効果のある湿布もよく使用されます。冷湿布と温湿布がありますが、急性期で炎症が強い場合は冷湿布、慢性期で血行不良が原因の場合は温湿布がおすすめです。痛みが強い時期は、内服薬と湿布を併用することで、痛みをコントロールできる場合があります。

理学療法:運動療法やリハビリ

四十肩の治療で重要なのは、肩関節の動きを良くするための理学療法です。理学療法では、肩甲骨の動きを改善する運動や肩関節周囲の筋肉を強化する運動が行われます。痛みがある場合は、無理に動かさずに、痛みのない範囲でゆっくりと行うことが大切です。

急性期には、振り子運動やタオルを使ったストレッチなど、負担の少ない運動から始めます。痛みが軽減してきたら、徐々に運動の強度や種類を増やします。肩甲骨を上下左右に動かす体操やゴムチューブを使った筋力トレーニングなどが挙げられます。理学療法士の指導を受けた適切な運動を行うことで、四十肩の症状の改善が期待できます。

理学療法は長期的視点で関節内ステロイド注射単独と同等以上の効果が見られ、可動域改善や日常生活動作の向上につながる可能性が研究により示唆されています理学療法が痛みの根本原因である肩関節周囲の筋肉や腱の柔軟性や機能を改善することで、長期的な改善効果をもたらすためと考えられます。

注射療法:ステロイド注射やヒアルロン酸注射

薬物療法や理学療法で十分な効果が得られない場合、注射療法が選択肢となります。ステロイド注射は、炎症を抑える作用があり、強い痛みや夜間痛の緩和が期待できます。研究では、関節内ステロイド注射は2週間後に痛みが軽減したという結果が出ています。

ステロイドには副作用があるため、使用回数や投与量には注意が必要です。多用すると腱が脆くなるなどのリスクも懸念されますので、医師とよく相談のうえ、決定する必要があります。

ヒアルロン酸注射は、関節内のヒアルロン酸を増やすことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減する可能性があります。ステロイド注射の即効性はありませんが、比較的副作用が少なく、長期的な効果が期待できる場合があります。適している注射療法は、症状や病状の進行具合によって異なります。

日常生活で気をつけたいポイント

日常生活で気をつけたいポイントについて、以下の3つを解説します。

  • 正しい姿勢を意識する
  • ストレスを管理する
  • 血行を促進する

正しい姿勢を意識する

長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などで、現代人は猫背になりがちです。正しい姿勢を保つためには、以下の点に注意しましょう。

  • 座っているとき:深く椅子に座り、背筋を伸ばす
  • 立っているとき:耳や肩、腰、くるぶしが一直線になるように意識する
  • 寝ているとき:高すぎる枕や低すぎる枕は避け、首や肩に負担がかからない高さのものを選ぶ

パソコンを使用する際は、モニター目線の高さに合わせ、キーボードと体の間は適切な距離を保ちましょう。正しい姿勢を保つことは、四十肩の予防だけでなく、肩こりや腰痛の予防にもつながります。日頃から意識して、美しい姿勢を心がけましょう。

ストレスを管理する

ストレスは自律神経のバランスを崩し、血行不良や筋肉の緊張を引き起こす原因です。血行不良は肩関節周囲の組織への酸素供給を滞らせ、炎症の悪化や治癒の遅延につながる可能性があります。筋肉の緊張は肩関節の動きを制限し、痛みを悪化させる場合があります。ストレスを管理するためには、以下の方法をおすすめします。

  • 適度な運動
  • 十分な睡眠
  • 趣味やリラックスできる活動
  • バランスの良い食事

軽いウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、リラックス効果が期待できます。

睡眠不足はストレスを増加させるため、7時間以上の質の高い睡眠を確保することが重要です。寝る前にカフェインを摂取するのは避け、リラックスできる環境を整えましょう。十分な睡眠は、組織の修復を促進するためにも重要です。

好きな音楽を聴いたり、読書をしたり、自然の中で過ごすなど、自分に合った方法でリラックスする時間を作るようにしましょう。栄養バランスの良い食事は、体の健康だけでなく、心の健康にもつながります。

ビタミンDやたんぱく質は、組織の修復に不可欠です。ビタミンやミネラルが不足すると、ストレスを感じやすくなるため、積極的に摂取するように心がけましょう。

血行を促進する

肩関節周囲の血行を促進することは、四十肩の症状緩和が期待できます。血行が良くなると、組織への酸素供給や栄養供給がスムーズになり、炎症の治癒を促進する効果が期待できます。冷えは血行不良を招くため、特に冬場は注意が必要です。血行を促進するためには、次の方法を試してみましょう。

  • 入浴
  • 温熱療法
  • 適度な運動
  • マッサージ

温かいお風呂にゆっくり浸かると、全身の血行が促進されます。38~40度くらいのぬるめのお湯に15~20分程度浸かるのがおすすめです。入浴は、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果も期待できます。蒸しタオルや温湿布などを肩に当てると、局所的に血行を促進します。

温めることで、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減される効果も期待できます。急性期で炎症が強い場合は、冷却が効果的な可能性がありますので注意しましょう。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、全身の血行を促進する効果があります。四十肩の急性期は激しい運動は避け、痛みのない範囲でゆっくりと行いましょう。

肩周りの筋肉を優しくマッサージすることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。痛みが強い場合は、マッサージを控えましょう。血行促進は、四十肩の症状改善だけでなく、冷え性の改善にも効果があります。日常生活に取り入れ、健康管理に役立てましょう。

まとめ

四十肩の原因は、下記の5つが挙げられます。

  • 加齢による組織の老化
  • 肩関節の使いすぎ
  • 血行不良
  • 糖尿病などの基礎疾患
  • 姿勢不良や猫背

四十肩の経過は、急性期、慢性期、回復期の3段階に分けられます。急性期は激しい痛みと可動域制限が特徴です。慢性期になると痛みが軽減する一方、動きが悪くなります。回復期には徐々に可動域が改善していきます。

四十肩の対処法としては、薬物療法や理学療法、注射療法があります。日常生活で気をつけたいポイントは、下記の3つです。

  • 正しい姿勢を意識する
  • ストレスを管理する
  • 血行を促進する

適切なケアで、つらい四十肩の痛みや動きの制限を緩和し、快適な日常生活を取り戻しましょう。

参考文献

Yaal Elango, Adinarayanan S, Srinivasan Swaminathan, Kirthiha Govindaraj, Sandeep Nema, Navin Kumar. Comparison of the analgesic efficacy of intra-articular steroid injections and its combination with suprascapular nerve block for adhesive capsulitis of the shoulder joint: a randomized clinical trial. Reg Anesth Pain Med, 2024

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