- 2025年1月21日
足首の痛みの原因
足首の痛み、それは歩行時や運動時の急な不快感、あるいは慢性的な鈍痛など、さまざまな形で私たちを悩ませます。実は、その原因は日常生活の些細な動作やスポーツ、加齢など多岐にわたり、放置すれば日常生活に支障をきたす深刻な事態に発展する可能性も。
統計によると、足関節症は人口の1~4%に影響を与え、外傷が最も一般的な原因と言われています。さらに、初期段階ではレントゲン検査でも異常が見られないケースもあるため、軽度の痛みであっても専門医の診察を受けることが重要です。
この記事では、整形外科医の視点から、足首の痛みの代表的な5つの原因と、効果的な4つの治療法、そして予防のための4つの対策を詳しく解説します。今まさに足首の痛みにお悩みの方、そして将来の痛みを防ぎたい方も、ぜひこの記事を参考に、健康な足首を保つための知識を深めてください。
足首の痛みの原因5選
足首の痛みは、スポーツ活動中の子どもから、日常生活を送る高齢者まで、幅広い年齢層で経験するありふれた症状です。何気なく歩いている時のつまずき、スポーツでの急な方向転換、あるいは加齢に伴う関節の摩耗など、様々な原因が考えられます。
痛みを感じた時、多くの人は「大したことないだろう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、初期の段階で適切な対応を取らないと、痛みが慢性化したり、日常生活に支障をきたす深刻な事態に発展する可能性も否定できません。
この記事では、足首の痛みの代表的な原因5つを、整形外科医の視点から詳しく解説します。それぞれの原因による痛みの特徴や症状、そして日常生活での注意点について理解を深め、適切な対処法を見つけるための一助となれば幸いです。
捻挫
捻挫は、関節を支えている靭帯が損傷することで起こります。足首の捻挫は非常に多く、特にスポーツ活動中に発生しやすい怪我です。例えば、バスケットボールの試合中にジャンプの着地でバランスを崩し、足首をひねってしまうケースがよく見られます。
私のクリニックにも、部活動中に捻挫をした中学生や高校生が頻繁に訪れます。彼らは「少しひねっただけだから大丈夫」と言うことが多いのですが、実際には靭帯が部分的に断裂しているケースも少なくありません。靭帯の損傷程度は、痛みや腫れの程度、歩行の可否によって判断できます。軽度の捻挫であれば、数日で痛みは治まりますが、中等度以上の捻挫では、数週間から数ヶ月にわたって痛みが続くこともあります。
靭帯が完全に断裂した重度の捻挫では、足首がグラグラと不安定になり、歩行が困難になることもあります。私は、重度の捻挫を放置すると、将来的に変形性関節症のリスクが高まると患者さんに説明しています。適切な治療とリハビリテーションが重要です。
骨折
骨折は、骨にひびが入ったり、完全に折れたりする状態です。足首の骨折は、高いところからの転落や交通事故など、強い衝撃によって引き起こされます。子どもであれば、遊具から落ちて骨折するケースも珍しくありません。
骨折の症状は、激しい痛み、腫れ、変形などです。捻挫と異なり、骨折の場合は、患部を動かすと激痛が走り、骨が擦れるような音が聞こえることもあります。
先日、私のクリニックに、サッカーの試合中に相手選手と接触して転倒し、足首を骨折した大学生が来院しました。彼は当初、「捻挫だと思った」と話していましたが、レントゲン検査の結果、腓骨の骨折が判明しました。
骨折は、適切な処置を行わないと骨が変形して癒合し、後遺症が残る可能性があります。そのため、早期の診断と治療が非常に重要です。
変形性関節症
変形性関節症は、関節軟骨のすり減りによって痛みや炎症が生じる病気です。加齢や肥満、過去の怪我などが原因で発症します。足首の変形性関節症は、長年立ち仕事を続けている人や、過度な運動を繰り返している人に多く見られます。
初期症状は、歩行時や運動後の軽い痛みです。しかし、病気が進行すると、安静時にも痛みを感じ、足首の動きが悪くなります。さらに、関節が変形し、腫れや熱感を伴うこともあります。
変形性関節症は、症状のある足関節変形症は人口の1~4%に影響し、最も一般的な原因は外傷後であるという報告もあります。また、初期段階では、レントゲン検査で異常が見られない場合もあります。そのため、症状が軽微であっても、専門医の診察を受けることをお勧めします。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫システムの異常によって関節に炎症が起こる病気です。手足の関節に発症することが多く、足首もその一つです。関節リウマチによる足首の痛みは、朝起きた時や、長時間同じ姿勢を続けた後に強くなる傾向があります。
関節リウマチは、進行性の病気であるため、早期発見と適切な治療が重要です。放置すると、関節の変形や機能障害につながる可能性があります。
腱炎
腱炎は、腱に炎症が起こることで痛みや腫れが生じる状態です。足首の腱炎で代表的なのは、アキレス腱炎です。アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉と踵の骨をつないでいる腱で、ランニングやジャンプ動作で大きな負荷がかかります。
アキレス腱炎は、ランニングやバスケットボールなどのスポーツをしている人に多く見られます。初期症状は、運動後のアキレス腱周辺の痛みや腫れです。炎症がひどくなると、歩行時にも痛みを感じ、日常生活に支障をきたすこともあります。
腱炎は、安静と適切な治療によって改善しますが、再発しやすいという特徴があります。そのため、予防策として、運動前後のストレッチや適切な靴選びが重要です。
足首の痛みに効果的な治療法4選
足首の痛み。日常生活で何気なく歩くたびにズキズキしたり、スポーツで思い切り動けないのは本当につらいものです。一刻も早く痛みから解放されたい気持ち、痛いほどよく分かります。
「少しぐらいなら大丈夫」と軽く考えて放置してしまう方も多いのですが、初期の適切な対処こそが、早期回復のカギとなります。適切な治療法を選択するために、まずはどんな治療法があるのかを知ることが大切です。この記事では、足首の痛みに効果的な治療法を4つ、整形外科医の視点から分かりやすく解説します。
保存療法(安静・冷却・圧迫・挙上)
保存療法は、ケガの直後や痛みが強い時にまず行うべき基本的な治療法です。RICE処置とも呼ばれ、「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の4つの要素から成り立っています。
安静:痛む足首は極力動かさないようにしましょう。日常生活での歩行も、痛みが強い場合は松葉杖の使用を検討します。私のクリニックでは、痛みの程度に合わせて、杖の種類や使い方を丁寧に指導しています。
冷却:氷水を入れたビニール袋をタオルで包み、15~20分程度、患部に当てます。冷却は1~2時間おきに繰り返すと効果的です。冷却により、炎症や腫れを抑えることができます。
圧迫:弾性包帯などで患部を適度に圧迫することで、腫れや内出血の進行を抑えます。ただし、締めすぎると血行が悪くなるため、適度な圧迫を心がけてください。
挙上:足を心臓よりも高い位置に上げることで、血液の循環を促進し、むくみや痛みを軽減します。クッションや枕を使うと、楽に足を高く保つことができます。就寝時にも、足を少し高くして寝ることをお勧めします。
これらの処置は、炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。先日、私のクリニックにバスケットボールの練習中に足首を捻挫した高校生が来院しました。すぐにRICE処置を施した結果、数日で腫れが引き、痛みも軽減しました。
薬物療法(鎮痛剤・消炎剤)
痛みが強い場合は、薬物療法も有効な手段です。内服薬として鎮痛剤や消炎鎮痛剤を服用することで、痛みや炎症を抑えることができます。市販薬としては、ロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェンなどが広く使用されています。薬剤師や医師に相談し、自分に合った薬を選ぶようにしましょう。
痛みが特に強い場合には、医師の判断でステロイド注射を行うこともあります。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、炎症を抑え、痛みを速やかに軽減する効果が期待できます。ただし、ステロイド注射は、症状のある足関節変形症の治療において必ずしも第一選択となるわけではありません。
薬の種類や服用方法、副作用などについては、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。例えば、胃腸の弱い方には、胃腸への負担が少ない薬を選択する必要があります。
理学療法(ストレッチ・筋力トレーニング)
足首の痛みを根本的に改善し、再発を予防するためには、理学療法が非常に重要です。理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを行うことで、足首周りの筋肉を強化し、関節の安定性を高めることができます。
ストレッチ:足首の柔軟性を高め、怪我の予防や痛みの軽減に効果があります。アキレス腱を伸ばすストレッチや、足首を回すストレッチなど、様々な種類のストレッチがあります。
筋力トレーニング:足首周りの筋肉を鍛えることで、関節を安定させ、怪我をしにくい強い足首を作ります。タオルギャザーやカーフレイズなど、自宅で手軽に行えるトレーニングもあります。
理学療法は、痛みが治まった後に行うことが一般的ですが、痛みが残っている場合でも、医師の判断で開始できるケースもあります。私のクリニックでは、患者さんの状態に合わせて、適切な理学療法プログラムを提供しています。
手術療法(関節鏡手術・人工関節置換術)
保存療法や薬物療法、理学療法を行っても痛みが改善しない場合や、変形性足関節症などで関節の変形が高度な場合は、手術療法が検討されます。足関節症に対する治療として、理学療法や鎮痛剤などの保存療法を第一選択とし、重度の変形症の場合には、人工関節置換術などの手術療法が必要となる場合があります。
関節鏡手術:関節内に小さなカメラを挿入し、関節内の状態を直接確認しながら、軟骨や靭帯などの損傷を修復する手術です。傷口が小さく、術後の回復も比較的早いというメリットがあります。
人工関節置換術:損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。重度の変形性足関節症などで、他の治療法で効果がない場合に実施されます。
手術療法は最終手段として行われることが多く、手術を受けるかどうかは、医師と十分に相談し、メリットとデメリットを理解した上で慎重に決める必要があります。
足首の痛みを予防するための対策4選
足首の痛み。歩くたびにズキズキする、スポーツで思い切り動けない、仕事に集中できない…など、本当につらいものです。つらい痛みを我慢しながら生活するのは本当に大変ですよね。
「これくらい大丈夫だろう」と安易に考えて放置してしまうと、後々、日常生活に大きな支障をきたす可能性も出てきます。
足首の痛みを予防するための対策を講じることで、痛みを未然に防いだり、軽く済ませたり、早期回復に繋げたりすることが期待できます。
この記事では、整形外科医の視点から、簡単にできる4つの対策をご紹介します。ぜひ、今後の生活の参考にしてみてください。
適切な靴選び
適切な靴選びは、足首の痛みの予防にとても重要です。自分に合った靴を選ぶことで、足首への負担を軽減し、痛みを防ぐことができます。
私のクリニックにも、合わない靴を履いていたことが原因で足首を痛めた患者さんが多く来院されます。例えば、小さすぎる靴を履いて外反母趾になり、足首のバランスが崩れて痛みが出たケースや、ハイヒールを長時間履いてアキレス腱を痛めたケースなど、様々です。
では、具体的にどんな靴を選べば良いのでしょうか?
まず、靴のサイズは自分の足にぴったり合ったものを選びましょう。大きすぎる靴では足が靴の中で滑ってしまい、足首を捻挫するリスクが高まります。逆に小さすぎる靴では、足が圧迫されて痛みやしびれの原因になります。特に成長期の子どもの場合は、足のサイズがすぐに変わるため、定期的に足のサイズを測り、適切なサイズの靴を選ぶことが大切です。
次に、靴のかかと部分に注目してみましょう。かかとがしっかり固定される靴を選ぶことで、足首が安定し、捻挫しにくくなります。かかとが浅い靴や、スリッパなどは、足首が不安定になりやすいため注意が必要です。
靴底のクッション性も重要です。クッション性が高い靴は、地面からの衝撃を吸収してくれるので、足首への負担を軽減することができます。特に、ジョギングやバスケットボールなど、足に大きな衝撃がかかるスポーツをする場合は、クッション性の高い靴を選ぶようにしましょう。
靴を選ぶ際には、実際に履いてみて、歩いてみることが大切です。自分の足の形や歩き方に合った靴を選ぶようにしましょう。お店で試し履きをする際は、少し歩いてみて、足に違和感がないか確認しましょう。
ウォーミングアップとクールダウン
運動の前後には、ウォーミングアップとクールダウンを必ず行いましょう。ウォーミングアップは、筋肉を温めて柔軟性を高めることで、怪我を予防する効果があります。クールダウンは、運動後の筋肉の疲労を回復させ、筋肉痛を軽減する効果があります。
ウォーミングアップでは、軽いジョギングやストレッチなどを行いましょう。足首を回したり、アキレス腱を伸ばしたりするストレッチは特に効果的です。クールダウンでは、ウォーキングや軽いストレッチを行い、筋肉をリラックスさせましょう。
ウォーミングアップとクールダウンを行うことで、足首の痛みだけでなく、他のスポーツ障害の予防にも効果的です。面倒くさがらずに、運動の前後には必ず行いましょう。
ストレッチで柔軟性を高める
足首の柔軟性を高めることも、足首の痛みを予防するために重要です。足首が硬いと、捻挫などの怪我をしやすくなってしまいます。
ストレッチは、お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うのが効果的です。足首をゆっくりと回したり、アキレス腱を伸ばしたりするストレッチを、毎日続けるようにしましょう。
適正体重の維持
適正体重を維持することも、足首の痛みを予防するために大切な要素です。体重が増えると、足首への負担が大きくなり、痛みが出やすくなります。実際、私のクリニックでも、肥満が原因で足首の痛みを訴える患者さんを多く診ています。
バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持するようにしましょう。具体的には、野菜や果物を中心としたバランスの良い食事を摂り、揚げ物や甘いものは控えめにしましょう。また、ウォーキングやジョギングなどの適度な運動を習慣づけることも大切です。1日30分程度のウォーキングでも、足首の強化に繋がります。
適正体重を維持することで、足首の痛みだけでなく、様々な生活習慣病の予防にも繋がります。健康的な生活習慣を送り、足首の痛みを予防しましょう。
まとめ
この記事では、足首の痛みの原因と対策について解説しました。スポーツによるケガだけでなく、日常生活の動作や靴選び、加齢なども原因となるため、まずは自分の痛みの原因を探ることが大切です。
痛みを感じたら、安易に考えて放置せず、適切な対処をしましょう。「RICE処置」などの保存療法や、薬物療法、理学療法といった様々な治療法があり、症状に合った方法を選択することで、痛みを和らげ、早期回復へとつなげることが可能です。
また、日頃から適切な靴選びや、運動前後のウォーミングアップ・クールダウン、ストレッチなどを心がけることで、足首の痛みを予防することができます。適正体重の維持も、足首への負担を軽減する上で重要な要素です。
足首の痛みは、日常生活に大きな影響を与えます。この記事で紹介した情報が、あなたの健康管理の一助となれば幸いです。
参考文献
- Jantzen C, Ebskov LB, Andersen KH, Benyahia M, Rasmussen PB, Johansen JK. [Ankle arthrosis]. Ugeskrift for laeger 182, no. 42 (2020).
追加情報
[title]: [Ankle arthrosis].,
足関節変形症
【要約】
症状のある足関節変形症は人口の1~4%に影響し、最も一般的な原因は外傷後である。
症状には、痛み、腫れ、可動域制限が含まれる。
診断は足関節の荷重位X線に基づき、治療は変形症の程度と患者の特性に依存する。
本レビューでは、理学療法、鎮痛剤、注射療法、および/または装具/矯正具といった非手術療法を第一選択治療とすることを主張する。
関節鏡検査は一部の患者にとって効果的な治療法となりうるが、重度の変形症の場合、骨切り術、人工足関節置換術、または関節固定術が必要となる場合がある。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33046192,
[quote_source]: Jantzen C, Ebskov LB, Andersen KH, Benyahia M, Rasmussen PB and Johansen JK. “[Ankle arthrosis].” Ugeskrift for laeger 182, no. 42 (2020): .