- 2025年1月21日
整形外科での骨折治療の流れと治療方法
転んだり、ぶつけたりして強い痛みを感じたら、骨折しているかもしれません。実は骨折には様々な種類があり、それぞれ適切な処置が必要です。この記事では、骨折の種類や症状、そして緊急性の高い症状について分かりやすく解説します。さらに、整形外科における治療の流れやリハビリ、日常生活の注意点まで、骨折に関するあらゆる情報を網羅。150万人以上が年間で骨折を経験するといわれており、決して他人事ではありません。この記事を読むことで、骨折への不安を解消し、適切な対処法を学ぶことができます。万が一の際に備え、正しい知識を身につけておきましょう。
骨折の種類とよくある症状
転んだり、ぶつけたりして強い痛みを感じたら、骨折しているかもしれません。実は、骨折には色々な種類があり、それぞれ適切な処置が異なります。この記事では、骨折の種類、症状、緊急性の高い症状について、小学生にもわかりやすく説明します。
骨折の種類(開放骨折、閉鎖骨折、疲労骨折など)
骨折は、骨の連続性が完全に断たれた状態、あるいは骨にヒビが入った状態を指します。中足骨骨折は比較的よく見られる骨折の一つです。医学的には、骨膜と呼ばれる骨を覆う膜の状態や、骨折部の皮膚の損傷の有無、骨折線の形状、骨片の数など様々な分類基準があります。ここでは、特に重要な3つの種類について説明します。
開放骨折: 骨折部分が皮膚を突き破り、外部に露出している状態です。木の枝が折れて、樹皮を突き破って飛び出ている様子を想像してみてください。この場合、傷口から細菌が侵入し、感染症を引き起こすリスクが高いため、迅速な治療が必要です。例えば、交通事故でバイクから投げ出された際に、手首の骨が皮膚を突き破って露出したケースなどがあります。
閉鎖骨折: 骨は折れていますが、皮膚は損傷しておらず、骨折部分が外部に露出していない状態です。木の枝が折れても、樹皮の中にとどまっている様子をイメージしてください。開放骨折に比べて感染リスクは低いですが、適切な治療が必要です。例えば、転倒して手をついた際に、手首の骨が折れたものの、皮膚には傷がないケースなどがあります。
疲労骨折: 一つの大きな力ではなく、小さな力が繰り返し加わることで起こる骨折です。毎日ジョギングをしていると、足に小さな力が何度も加わり、その積み重ねで骨にひびが入ることがあります。これは、まるで消しゴムを同じ場所で何度も折り曲げていると、最終的にちぎれてしまうようなものです。スポーツ選手に多く見られます。特に、ジャンプやダッシュを繰り返すバスケットボール選手や陸上競技選手は、足の甲の骨である中足骨に疲労骨折を起こしやすいです。しかし、激しい運動をしていない方でも、長時間の歩行や立ち仕事などによって疲労骨折を起こす可能性はあります。
その他にも、骨がバラバラに砕ける粉砕骨折、骨にひびが入るだけの不全骨折など、様々な種類の骨折があります。粉砕骨折は、高エネルギー外傷、例えば交通事故や高所からの転落などで起こりやすく、治療が複雑になる場合が多いです。不全骨折は、子どもに多く見られ、治癒も比較的早い傾向があります。
症状(痛み、腫れ、変形、内出血など)
骨折の症状は、骨折の種類や部位、程度によって様々ですが、一般的には以下の症状が現れます。
痛み: 骨折した部位には、鋭い痛みや鈍い痛みなど、様々な種類の痛みを感じます。安静にしていても痛む場合や、患部を動かすと痛みが強くなる場合があります。
腫れ: 骨折した部位の周囲が腫れてきます。これは、骨折によって炎症反応が起こり、組織液が患部に溜まるためです。
変形: 骨折によって骨の位置がずれると、患部が変形することがあります。見た目で明らかにわかる変形の場合もあれば、触診によってわかるわずかな変形の場合もあります。
内出血: 骨折によって血管が損傷すると、皮下に出血が広がり、患部が青紫色に変色することがあります。これは、いわゆる「あざ」と同じメカニズムです。
これらの症状は、打撲や捻挫といった他の怪我と似ていることがあり、自己判断で骨折かどうかを判断することは難しいです。整形外科を受診し、医師の診察を受けることが重要です。骨折の診断には、X線検査が不可欠です。場合によっては、CT検査やMRI検査が必要となることもあります。
緊急性の高い症状(激痛、感覚麻痺、出血が止まらないなど)
以下のような症状が現れた場合は、重症な骨折の可能性があるため、すぐに救急車を呼ぶか、近くの病院に連絡してください。
激痛: 我慢できないほどの激しい痛みがある場合。鎮痛剤を服用しても痛みが治まらない場合も、注意が必要です。
感覚麻痺: 骨折した部分の周辺にしびれや感覚の低下がある場合。神経が損傷している可能性があります。例えば、手首を骨折した場合、指先にしびれを感じることがあります。
出血が止まらない: 開放骨折で、出血がなかなか止まらない場合。ガーゼなどで圧迫しても出血が続く場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
患部が明らかに変形している: 骨折部分が明らかに変形している場合。見た目でわかるほどの変形がある場合は、骨が大きくずれている可能性が高く、緊急の処置が必要です。
これらの症状は、一刻も早く適切な治療を受けなければ、後遺症が残るリスクが高まります。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
整形外科における骨折治療の流れ
整形外科を受診される方の多くは、骨折の治療に不安を抱えていることでしょう。そこで、ここでは整形外科における骨折治療の流れを、小学生にも理解できるよう、具体的にご説明します。受診から治療、そしてリハビリまで、各段階で何が行われるのかを具体的にイメージできるように解説することで、少しでも安心して治療に臨んでいただけるようお手伝いさせていただきます。
受診から診断までの流れ(問診、視診、触診、画像検査など)
皆さんが整形外科を受診すると、まずはケガをした時の状況や症状について詳しく聞かれます(問診)。例えば、「どこで、どのようにケガをしましたか?」「どんな時に痛みを感じますか?」といった質問です。医師は、まるで探偵のように、ケガの謎を解き明かすために、色々な角度から質問をします。例えば、高いところから落ちたのか、それとも走っていて転んだのか、ぶつけられたのかなど、状況によって骨折の種類や重症度が推測できるからです。
次に、医師は患部をよく見て(視診)、触って(触診)確認します。腫れや変形、熱感などをチェックし、骨折の可能性があるかどうかを判断します。視診では、皮膚の色や腫れ具合、傷の有無などを観察します。触診では、患部に優しく触れて、骨の変形や異常な動きがないか、押すと痛みが増す場所がないかなどを確認します。これは、まるで熟練した職人さんが、材料の状態を確かめるように、丁寧に患部を調べます。
骨折の疑いがある場合は、レントゲン検査を行います。レントゲン写真を見ると、骨が折れているかどうか、どの部分がどのように折れているかを正確に知ることができます。レントゲン検査は、骨の状態を写し出す魔法のカメラのようなものです。これにより、骨折の有無や種類、骨折線の入り方、骨片のずれ具合などを確認できます。例えば、腕の骨が折れているのか、それともヒビが入っているだけなのかを判断するのに役立ちます。
場合によっては、CT検査を行うこともあります。CT検査はレントゲン検査よりも詳しい情報が得られるので、複雑な骨折の場合に役立ちます。CT検査は、体の断面を輪切りにしたような画像をたくさん撮影し、コンピューターで処理することで、骨の詳細な構造を立体的に見ることができる検査です。レントゲン検査ではわかりにくい小さな骨折や、関節面の骨折などを診断するのに役立ちます。例えば、手首の小さな骨が複雑に折れている場合、CT検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。
保存療法(ギプス固定、シーネ固定、装具療法など)
骨折の治療には、手術をしない保存療法と、手術を行う手術療法があります。保存療法は、骨が大きくずれていない場合や、手術のリスクが高い場合に選択されることが多いです。保存療法は、骨が自然に治る力をサポートする治療法です。
保存療法の代表的な方法は、ギプス固定です。ギプスは、骨折した部分を固定して、骨がくっつくまで動かないようにする役割があります。ギプスは、まるで骨折した骨を優しく包み込む保護者のようです。骨折部分をしっかりと固定することで、骨がずれずに安定し、治癒を促進します。最近は、従来の石膏ギプスよりも軽く、水に濡れても大丈夫な素材を使ったギプスも登場しています。
シーネ固定は、ギプスよりも軽く、取り外しが可能な固定具です。骨折の程度が軽い場合や、腫れがひどい場合に用いられることがあります。シーネは、骨折部分を部分的に固定するもので、ギプスほどではありませんが、患部を安定させる効果があります。取り外しができるため、患部の状態を確認したり、清潔を保ったりする際に便利です。
装具療法は、関節を保護したり、動きを制限したりするための装具を使用する治療法です。骨折の種類や部位に合わせて、さまざまな種類の装具があります。装具は、骨折した関節をサポートし、適切な動きを導くことで、機能回復を促します。装具療法は、骨折後のリハビリテーションにおいても重要な役割を果たします。
手術療法(観血的整復固定術、創外固定術など)
骨が大きくずれている場合や、保存療法でうまく治らない場合は、手術療法が必要になります。手術療法は、骨を直接操作して整復・固定することで、より確実な治癒を目指す治療法です。
観血的整復固定術は、皮膚を切開して骨を元の位置に戻し、金属のプレートやネジなどで固定する手術です。この手術によって、骨をしっかりと固定することができ、早期に日常生活に復帰できる可能性が高まります。この手術は、まるで骨の修復工事のようなものです。金属のプレートやネジは、骨を支えるための強力な補強材として機能し、骨がしっかりとくっつくまで安定させます。
創外固定術は、骨に金属製のピンを刺し、体の外に取り付けた器具で骨を固定する手術です。複雑な骨折や、皮膚に大きな傷がある場合に有効な方法です。この手術は、骨折部を体の外から固定するため、皮膚への負担を軽減することができます。中足骨骨折の場合、中足骨放物線や中足骨頭の前後方向の位置関係を維持することが重要であり、変位のある骨折では、正常な歩行バイオメカニクスを維持するために手術が必要となる場合があります。
治療期間の目安
骨折の治療期間は、骨折の種類や程度、年齢、全身状態などによって大きく異なります。例えば、子どもの骨折は治りが早いですが、高齢者の骨折は治るまでに時間がかかることが多いです。一般的には、3ヶ月から半年程度で骨がくっつきますが、完全に元の状態に戻るまでには、さらに時間がかかることもあります。
骨折の治癒には、骨の新生やリモデリングといった複雑なプロセスが involved します。これらのプロセスは、年齢や栄養状態、骨折の種類などによって影響を受けます。例えば、高齢者では骨の代謝が低下しているため、若年者に比べて治癒に時間がかかる傾向があります。また、糖尿病や骨粗鬆症などの基礎疾患がある場合も、治癒が遅れる可能性があります。
治療費用の目安と保険適用について
骨折の治療費用は、治療方法や入院の有無、使用する材料、医療機関などによって異なります。健康保険が適用されるため、自己負担額は医療費の3割(70歳未満の方の場合)または1~3割(70歳以上の方の場合)となります。高額療養費制度を利用すれば、自己負担額を抑えることもできます。具体的な費用については、医療機関にお問い合わせください。
骨折治療後のリハビリと日常生活の注意点
骨折治療は、骨がくっついた後も続きます。むしろ、骨がくっついた後からが、本当のスタートと言えるかもしれません。
骨折が治癒したとはいえ、そのままでは関節が硬くなってしまったり、筋肉が落ちてしまったりして、以前のようにスムーズに動けなくなってしまうことがあります。骨折前の日常生活に復帰し、元気に動き回るためには、リハビリテーションと日常生活での注意が非常に重要です。
この章では、骨折治療後のリハビリテーションの内容と目的、日常生活での注意点、後遺症のリスクと予防策、そして再発予防のための生活習慣改善について、小学生にもわかりやすく説明します。
リハビリテーションの内容と目的
リハビリテーションの目的は、骨折した部分を以前と同じようにスムーズに動かせるようにすること、そしてケガをする前の日常生活に戻れるようにすることです。
皆さんが学校で算数を学ぶように、リハビリテーションも段階的に進めていく必要があります。最初は簡単なことから始め、徐々に難易度を上げていきます。骨折の種類や場所、ケガの程度、そして患者さんの年齢や体力によって、リハビリテーションの内容は大きく異なります。
例えば、足の指の骨折であれば、足の指を曲げ伸ばしする運動や、足の裏全体で地面を踏む練習などから始めます。一方、足の付け根の骨折であれば、松葉杖を使って歩く練習や、階段の上り下りの練習なども必要になります。
リハビリテーションは、専門家である理学療法士や作業療法士の指導のもとで行います。彼らは、まるでスポーツのコーチのように、患者さんの状態に合わせて、適切な運動や訓練を指導してくれます。
リハビリテーションは、時に痛みを伴うこともありますが、焦らず、ゆっくりと進めていくことが大切です。目標は、マラソンを完走するように、着実にゴールに到達することです。
日常生活での注意点(入浴、食事、運動、睡眠など)
骨折治療中は、日常生活でもいくつか注意すべき点があります。
入浴: ギプスをしている場合は、ギプスを濡らさないように特に注意が必要です。お風呂に入りたい気持ちはわかりますが、ギプスが濡れてしまうと、皮膚がかぶれたり、ギプスが緩んでしまったりする可能性があります。医師から許可が出るまでは、シャワーで済ませるか、濡れないように工夫して入浴しましょう。
食事: 骨を強くするために、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を積極的に摂りましょう。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、豆腐、納豆などがおすすめです。骨は、まるで家を建てるためのレンガのように、カルシウムとビタミンDによって丈夫に作られます。
運動: 骨折した部分は安静にする必要がありますが、他の部分は適度に動かすことが大切です。動かさないと、筋肉が落ちてしまったり、関節が硬くなってしまったりするからです。医師や理学療法士の指示に従って、適切な運動を行いましょう。特に、中足骨骨折は、足の甲にある5本の骨が折れる骨折で、足のアーチ(土踏まず)を形成するのに重要な役割を果たしているため、適切な運動が重要です。中足骨骨折では、中足骨放物線や中足骨頭の前後方向の位置関係を維持することが、正常な歩行バイオメカニクスにとって重要です。
睡眠: 睡眠不足は、骨の修復を遅らせてしまうため、十分な睡眠をとりましょう。睡眠中は、まるで工場で製品を修理するように、体が骨を修復する時間です。
後遺症のリスクと予防策
骨折の後遺症には、関節の動きが悪くなる、筋肉が弱くなる、骨折部分が変形する、神経が傷ついて痺れが残るなど、さまざまなものがあります。これらの後遺症は、骨折の種類や重症度、治療の方法、そして患者さんの年齢や体質などによって、起こる可能性が異なります。
後遺症のリスクを減らすためには、適切な治療を受けること、リハビリテーションをきちんと行うこと、そして日常生活で注意することが大切です。まるで、植物を育てるように、骨折の治癒にも適切なケアが必要です。
再発予防のための生活習慣改善(栄養、運動、転倒予防など)
一度骨折を経験すると、同じ場所を再び骨折するリスクが高まる可能性があります。「二度あることは三度ある」ということわざがあるように、再発を防ぐためには、生活習慣を改善することが大切です。
栄養: カルシウムやビタミンDを十分に摂取することで、骨を強くすることができます。骨を強くすることは、まるで家を建てる時に丈夫な材料を使うのと同じように重要です。
運動: 適度な運動は、骨を強くするだけでなく、バランス能力も高めてくれます。ウォーキングやジョギング、水泳などがおすすめです。
転倒予防: 高齢者の場合は、家の中に手すりをつけたり、滑りにくい靴下を履いたり、ポータブルトイレを使用したりすることで、転倒のリスクを減らすことができます。また、骨粗鬆症の予防や治療も大切です。
まとめ
この記事では、整形外科での骨折治療の流れと治療方法について解説しました。骨折には種類があり、症状や緊急性も様々です。整形外科では、問診、視診、触診、画像検査を経て診断を行い、保存療法もしくは手術療法で治療を行います。治療期間は骨折の種類や程度、年齢などによって異なり、費用は健康保険適用となります。治療後には、リハビリテーションと日常生活での注意が重要です。後遺症のリスクを減らし、再発を防ぐためには、適切な治療とリハビリ、そして栄養バランスの良い食事、適度な運動、転倒予防などの生活習慣改善が大切です。骨折は適切な治療で治癒する可能性が高いので、少しでも異変を感じたら、ためらわず整形外科を受診しましょう。
参考文献
- Straus SA, Henry JD, Clements JR. “Metatarsal Fractures.” Clinics in podiatric medicine and surgery 41, no. 3 (2024): 379-389.
追加情報
[title]: Metatarsal Fractures.,
中足骨骨折
【要約】
中足骨骨折は人体で最も頻度の高い骨折の一つである。
外科的技術と固定法の最近の進歩により、治癒と患者の転帰が改善されている。
中足骨骨折の治療目標は、中足骨放物線、中足骨頭の前後方向の位置、そして合致した中足趾節関節を維持することである。
これらの損傷のほとんどは非手術的に治療できるが、変位骨折は正常な歩行バイオメカニクスを維持するために手術的介入が必要となる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38789159,
[quote_source]: Straus SA, Henry JD and Clements JR. “Metatarsal Fractures.” Clinics in podiatric medicine and surgery 41, no. 3 (2024): 379-389.