• 2025年1月21日

リウマチかもしれないけど、何科を受診すればいいの?

関節の痛みや朝のこわばり、もしかしてリウマチの初期症状かもしれません。実は、2021年のアメリカリウマチ学会のガイドラインでも早期発見・早期治療の重要性が強調されているほど、リウマチの早期診断は非常に大切です。初期症状は風邪と似ていることもあり、見過ごされがちですが、適切な治療によって進行を遅らせ、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。この記事では、リウマチの症状、受診すべき診療科、そして最新の治療法まで、具体的な例を交えながら分かりやすく解説します。ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ読み進めてみてください。

リウマチの症状を詳しく解説:早期発見の重要性

リウマチは関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じる病気です。放っておくと関節が変形し、日常生活に支障をきたすこともあります。

「もしかしてリウマチ?」と感じたら、なるべく早く医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療によって、病気の進行を遅らせ、痛みを軽減し、関節の機能を保つことができる可能性が高まります。この記事では、リウマチの初期症状から進行した状態まで、具体的な例を交えながらわかりやすく説明します。

関節の腫れや痛み:初期症状を見逃さない

リウマチの初期症状として最もよく見られるのは関節の腫れや痛みです。特に、朝起きたときに手がこわばる、左右の手の同じ指の関節が痛むといった特徴があります。

例えば、右手の人差し指の付け根が痛む場合、左手の同じ場所にも痛みを感じることが多いです。これはリウマチの大きな特徴です。私の患者さんでも、最初は「朝、指輪が抜けないんです」と訴えて来院された方がいました。実はこれがリウマチの初期症状だったのです。

また、リウマチによる痛みは、安静にしていてもズキズキ痛むことが多く、動かさなくても痛みがあるという点が他の関節痛との違いです。痛みの程度は人それぞれで、「何となく痛い」「我慢できないほどではない」という方もいます。

初期症状は風邪に似ている場合もあるため、見過ごさないように注意が必要です。例えば、微熱や倦怠感があるからといって風邪薬を飲んで様子を見ていたら、実はリウマチが進行していた、というケースも少なくありません。関節の腫れや痛みを感じたら、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。

朝のこわばり:起床時の関節の硬直

朝起きたときに、手足がこわばって動かしにくいと感じたことはありませんか?これは「朝のこわばり」と呼ばれる症状で、リウマチの代表的な症状の一つです。

健康な人でも寝起きは体が多少硬くなっているものですが、すぐに動けるようになります。しかしリウマチの場合、このこわばりが30分以上続くこともあります。1時間以上続く方もいます。

例えば、朝起きたときに歯磨き粉のチューブがなかなか絞り出せなかったり、ペットボトルのフタが開けられなかったり、ドアノブを回すのが難しかったりするのは、朝のこわばりのサインかもしれません。日常生活動作に影響が出始めるのです。

「いつもより朝の支度に時間がかかる」「こわばりが1時間以上続く」などと感じたら、リウマチの可能性も考えて医療機関を受診しましょう。

関節以外の症状:全身倦怠感や微熱

リウマチは関節以外の症状が現れることもあります。風邪のような症状、例えば、「疲れやすい」「体がだるい」「微熱が続く」といった症状です。

また、「食欲がない」「体重が減ってきた」という方もいます。これらの症状は他の病気でも見られるため、「ただの風邪かな?」と思ってしまいがちです。

しかし、風邪薬を飲んでもなかなか治らない場合は、リウマチの可能性も考えて医療機関を受診しましょう。実際に、倦怠感で内科を受診した結果、リウマチと診断された患者さんもいます。

症状の進行:変形性関節症との違い

リウマチは進行すると関節が変形してしまう可能性があります。初期段階では関節が腫れたり痛んだりするだけですが、徐々に軟骨や骨が破壊されていき、最終的には関節が変形して動かしにくくなってしまいます。

変形性関節症も関節の痛みや変形を伴う病気ですが、リウマチとは原因が異なります。変形性関節症は、加齢や肥満、激しい運動などによって関節がすり減ることが原因で起こります。一方、リウマチは、免疫の異常によって自分の体の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。

2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)のガイドラインでは、リウマチの治療において免疫の働きを抑える薬を使用することが推奨されています。これは、リウマチの根本原因である免疫異常に対処するためです。

リウマチは自然に治ることはなく、進行性の病気です。だからこそ、早期発見・早期治療が非常に重要になります。

リウマチの診断と治療:何科を受診すればいい?

リウマチかな?と思ったら、不安でいっぱいですよね。誰に相談すれば良いのか、どんな検査が必要なのか、治療はどうなるのかなど、多くの疑問が頭をよぎると思います。

この記事では、リウマチの診断と治療について、どの診療科を受診すれば良いのか、そしてどんな検査や治療が行われるのかを、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。安心して受診できるよう、一緒に見ていきましょう。

リウマチ専門医:受診のメリット

リウマチの治療は、専門知識を持ったリウマチ専門医の受診をおすすめします。リウマチ専門医は、豊富な経験と知識を持ち、患者さん一人ひとりの症状や状況に合わせた最適な治療法を選択できます。

例えば、同じリウマチでも、症状の重さ、年齢、合併症の有無などによって適切な治療法は異なります。2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)の治療ガイドラインでは、一人ひとりの状況に合わせた治療の重要性が強調されています。

リウマチ専門医は、このガイドラインに基づき、従来型合成DMARDs(メトトレキサートなど)、生物学的DMARDs(インフリキシマブなど)、標的合成DMARDs(トファシチニブなど)といった様々な薬剤の中から、患者さんに最適な薬剤を選択し、治療を行います。

また、リウマチ専門医は最新の治療法や研究についても常にアンテナを高くしているので、より良い治療を受けられる可能性が高まります。

最初に受診すべき科:整形外科、リウマチ科など

「リウマチかな?」と思ったら、まずどの科を受診すれば良いのでしょうか?

理想的には、リウマチ専門医がいる「リウマチ科」や「膠原病科」を受診するのがベストです。

しかし、近くにそういった病院がない場合や、症状が軽い場合は、まずは近くの「整形外科」を受診するのも良いでしょう。整形外科の先生は関節の痛みや腫れについて精通しているので、リウマチかどうかを判断する最初のステップとして適切です。

私のクリニックにも、最初は膝の痛みで受診された方が、実はリウマチの初期症状だったというケースが何度かありました。整形外科でリウマチの疑いがあると診断された場合は、専門的な検査や治療が必要になるので、リウマチ科や膠原病科のある病院を紹介してもらえます。

かかりつけ医がいる場合は、まず相談してみるのも良いでしょう。適切な診療科へ案内してもらえます。

診断方法:問診、診察、血液検査、画像検査

リウマチの診断は、いくつかのステップで行われます。

まず、医師は患者さんの症状やこれまでの経過について詳しく話を聞きます(問診)。「いつから症状が現れたのか」「どの関節が痛むのか」「どんな時に痛みが強くなるのか」など、具体的な質問をされるので、できるだけ正確に伝えることが大切です。

次に、実際に身体を診て、関節の状態などを確認します(診察)。関節の腫れや圧痛、動きの範囲などをチェックします。

その後、血液検査で炎症の程度やリウマチに特徴的な物質(CCP抗体やリウマチ因子)を調べます。これらの物質はリウマチ患者さんの多くで陽性になります。

さらに、レントゲンやMRIなどの画像検査で関節の炎症や変形の程度を確認します。レントゲン検査では骨びらん(骨の破壊)の有無を確認し、MRI検査では炎症の程度をより詳細に評価できます。

これらの検査結果を総合的に判断して、リウマチかどうかを診断します。

治療方法:薬物療法、手術療法、リハビリテーション

リウマチの治療法は、大きく分けて「薬物療法」「手術療法」「リハビリテーション」の3つがあります。

薬物療法は、痛みや炎症を抑える薬や、病気の進行を抑える薬を使います。2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)のガイドラインでは、メトトレキサートなどの従来型合成DMARDsを初期治療として使用することが推奨されています。また、効果不十分な場合は、生物学的DMARDsや標的合成DMARDsといった新しい薬剤も使用されます。

手術療法は、関節の痛みや変形がひどい場合に行われます。人工関節置換術などで、損傷した関節の機能を回復させます。

リハビリテーションは、関節の動きを良くしたり、筋力をつけるための運動療法や物理療法を行います。日常生活動作の改善やQOL(生活の質)の向上を目指します。

これらの治療法は、患者さんの症状や状態に合わせて、組み合わせて行われます。

リウマチと共に生きる:日常生活の注意点

リウマチと診断されると、将来への不安や生活への影響が心配になると思います。誰しもが、健康な毎日を送りたいと願うものです。しかし、リウマチは慢性疾患であり、完治は難しい病気です。

それでも、日常生活に気を配り、適切な治療を継続することで、症状をコントロールし、病気と上手に付き合っていくことは十分に可能です。私の患者さんの中にも、リウマチと診断された当初は不安でいっぱいだったものの、生活習慣を見直し、治療に積極的に取り組むことで、趣味のガーデニングや旅行を楽しめるようになった方がたくさんいらっしゃいます。

この章では、日常生活における注意点について、食事、運動、ストレス管理、通院、そして最新の治療法という5つの側面から、具体的な例を交えながら詳しく解説していきます。

食事:バランスの良い食事で健康維持

リウマチの症状を和らげるためには、バランスの取れた食事が重要です。栄養バランスの良い食事は、健康維持に役立ち、免疫力を高める効果も期待できます。2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)のガイドラインでも、リウマチ治療において、患者さんの全身状態の管理、つまり健康維持が重要であると強調されています。

具体的には、以下のような食品を積極的に摂り入れるようにしましょう。

  • 抗酸化作用のある食品: 活性酸素による細胞のダメージを防ぐ効果が期待できます。活性酸素は、いわば体の中の錆のようなもので、細胞を傷つけて炎症を引き起こす原因の一つと考えられています。抗酸化作用のある食品は、この錆を抑える働きがあります。例えば、ブルーベリー、ブロッコリー、トマト、ナッツ類などが挙げられます。朝食にヨーグルトとブルーベリー、昼食にトマト入りのサラダ、夕食後にはナッツを少量、といったように、毎日の食事に取り入れてみてください。

  • オメガ3脂肪酸: 炎症を抑える効果があると言われています。魚、特に鮭やサバ、イワシなどに多く含まれています。また、アマニ油やえごま油なども良いでしょう。私の患者さんの中には、毎日大さじ一杯のアマニ油をサラダにかけて摂取することで、関節の痛みが軽減したと話す方もいます。

  • ビタミンD: カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする効果があります。鮭、マグロ、卵黄などに加え、日光浴によっても体内で生成されます。1日15分ほど、午前10時から午後2時の間に日光を浴びるだけでも、ビタミンDを生成することができます。

反対に、以下のような食品は控えるようにしましょう。

  • 飽和脂肪酸: 炎症を悪化させる可能性があります。脂肪の多い肉、乳製品、揚げ物などに多く含まれています。例えば、霜降り肉やベーコン、バターなどはなるべく控えめにしましょう。

  • 精製糖: 血糖値を急上昇させ、炎症を促進する可能性があります。お菓子、ジュース、白米などに多く含まれています。白米を玄米に変えたり、ジュースの代わりに果物をそのまま食べるなど、工夫してみましょう。

  • 加工食品: 添加物が多く含まれており、炎症を悪化させる可能性があります。インスタント食品、レトルト食品、スナック菓子など、手軽で便利な反面、添加物が多く含まれていることが多いので、注意が必要です。

毎日の食事で気を付けることで、リウマチの症状をコントロールしやすくなります。食事療法は、薬物療法と同じくらい大切な治療法の一つです。

運動:適度な運動で関節の柔軟性を保つ

リウマチになると、関節の痛みや腫れのために運動を控えがちになります。しかし、適度な運動は関節の柔軟性を維持し、筋肉を強化するのに役立ちます。痛みが強いときは無理せず安静にすることが大切ですが、痛みが落ち着いているときは、積極的に体を動かすようにしましょう。

水中ウォーキングは、浮力によって関節への負担が軽減されるため、リウマチ患者さんにとって特に適した運動です。また、ストレッチやヨガ、太極拳なども、関節への負担が少ない運動です。

運動をする際には、以下の点に注意しましょう。

  • 痛みのない範囲で、無理なく行う
  • 自分の体力や体調に合わせた運動を選ぶ
  • 運動の前後には、必ずストレッチを行う
  • 水分補給をこまめに行う

ストレス管理:心身のリラックスを心がける

ストレスは、リウマチの症状を悪化させる要因の一つです。「ストレスなんて感じていない」と思っていても、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでいることもあります。日常生活でストレスを溜め込まないよう、心身のリラックスを心がけましょう。

リラックスする方法は人それぞれですが、例えば、趣味を楽しむ、好きな音楽を聴く、散歩をする、読書をする、友人や家族と話す、瞑想やヨガをする、などがあります。

自分に合った方法を見つけて、ストレスを上手に発散することが大切です。

定期的な通院:専門医との継続的な治療

リウマチは、進行性の病気であるため、早期発見・早期治療が重要です。定期的にリウマチ専門医の診察を受け、適切な治療を継続することで、病気の進行を抑え、関節の破壊を防ぐことができます。2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)のガイドラインでも、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)による早期の治療開始が推奨されています。

治療には、薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどさまざまな方法があります。医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。

また、治療中の疑問や不安、日常生活での困りごとなどがあれば、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。

最新の治療法:生物学的製剤やJAK阻害薬

近年、リウマチの治療法は大きく進歩しています。従来の抗リウマチ薬に加え、生物学的製剤やJAK阻害薬といった新しい薬が開発され、治療の選択肢が広がっています。これらの薬は、従来の薬では効果が不十分だった患者さんにも効果が期待できる、有効性の高い薬です。2021年のアメリカリウマチ学会(ACR)のガイドラインでも、これらの薬剤の使用について言及されています。

生物学的製剤は、炎症を引き起こす特定の物質の働きを抑えることで、炎症や関節の破壊を防ぎます。JAK阻害薬は、炎症シグナルの伝達を阻害することで、炎症を抑える薬です。これらの薬は、注射や内服薬などさまざまな種類があります。医師とよく相談し、自分に合った薬を選択することが大切です。

まとめ

リウマチの症状は、関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなど、初期症状を見逃しやすいものがあります。しかし、早期発見・早期治療が非常に重要です。リウマチかな?と思ったら、まずは整形外科、リウマチ科、膠原病科などを受診し、専門医の診断を受けましょう。関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなど、気になる症状があれば、自己判断せずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、日常生活の質を維持できる可能性が高まります。安心して受診できるよう、前向きな気持ちで医療機関に相談してみましょう。

参考文献

  • 2021年アメリカリウマチ学会(ACR)関節リウマチ治療ガイドライン

追加情報

[title]: 2021 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid Arthritis.,

2021年アメリカリウマチ学会(ACR)関節リウマチ治療ガイドライン

【要約】

  • 本ガイドラインは、関節リウマチの薬物治療に関する最新のガイドラインを作成することを目的としている。

  • 臨床的に関連する患者集団、介入、比較対象、アウトカム(PICO)に関する質問を設定し、系統的文献レビューを実施。GRADEアプローチを用いてエビデンスの確実性を評価し、臨床医と患者からなる投票パネルで推奨の方向性(賛成・反対)と強度(強または条件付き)についてコンセンサスを得た。

  • 従来型合成DMARDs、生物学的DMARDs、標的合成DMARDsを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の治療、グルココルチコイドの使用、肝疾患、心不全、リンパ増殖性疾患、過去の重篤な感染症、非結核性抗酸菌肺疾患などの高リスク患者集団におけるDMARDsの使用について網羅している。

  • 合計44の推奨事項(強推奨7件、条件付き推奨37件)が提示されている。

  • 本ガイドラインは、臨床医と患者の意思決定を支援するためのツールとして意図されており、推奨事項は絶対的なものではなく、患者の価値観、目標、好み、合併症に基づいた共有意思決定プロセスを通じて個々の治療決定が行われるべきである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34101387,

[quote_source]: Fraenkel L, Bathon JM, England BR, St Clair EW, Arayssi T, Carandang K, Deane KD, Genovese M, Huston KK, Kerr G, Kremer J, Nakamura MC, Russell LA, Singh JA, Smith BJ, Sparks JA, Venkatachalam S, Weinblatt ME, Al-Gibbawi M, Baker JF, Barbour KE, Barton JL, Cappelli L, Chamseddine F, George M, Johnson SR, Kahale L, Karam BS, Khamis AM, Navarro-Millán I, Mirza R, Schwab P, Singh N, Turgunbaev M, Turner AS, Yaacoub S and Akl EA. “2021 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid Arthritis.” Arthritis care & research 73, no. 7 (2021): 924-939.

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