- 2025年1月21日
交通事故で怪我をした際に整形外科でどのような治療を受けられるか
交通事故によるケガ、大丈夫ですか? 事故直後は興奮状態のため自覚症状が少ないことも多く、数日後に痛みや痺れが現れるケースは少なくありません。整形外科では、レントゲンやMRIなどの検査で正確な診断を行い、むち打ち症や骨折、靭帯損傷など、様々なケガに対応します。さらに、リハビリテーションで早期回復をサポート。1968年のBritish medical journalの報告では、シートベルト着用者でも内臓破裂などの重傷例が報告されているように、事故後は見た目上の損傷がなくても、内臓損傷の可能性も考慮した検査が必要です。この記事では、交通事故後の整形外科治療について、受診からリハビリ、後遺症までを網羅的に解説します。安心して日常生活に戻れるよう、ぜひ参考にしてください。
交通事故後の整形外科治療:受診からリハビリまで
交通事故は、突然私たちの生活を揺るがす出来事です。身体の痛みだけでなく、精神的なショックも大きく、今後の生活への不安に襲われる方も少なくありません。整形外科では、交通事故によるケガの治療はもちろんのこと、患者さんの不安な気持ちにも寄り添いながら、一日も早く日常生活に戻れるようサポートいたします。どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
受診の流れと手続き
交通事故後の整形外科受診は、初めての方にとっては複雑に感じるかもしれません。まずは落ち着いて、以下の流れを把握しておきましょう。
警察への連絡: 事故が発生したら、規模の大小に関わらず、必ず警察に連絡しましょう。これは、事故の事実を公的に記録するためだけでなく、ご自身の安全を守るためにも非常に重要です。警察への連絡が遅れると、適切な事故処理が進まず、後々の保険手続きに支障をきたす可能性があります。
保険会社への連絡: ご自身の保険会社、そして相手方の保険会社にも連絡し、事故の状況を伝えましょう。この際、事故発生日時や場所、相手方の情報、ケガの状況などを正確に伝えることが大切です。連絡が早ければ早いほど、保険会社による対応もスムーズに進みます。
整形外科の受診: 事故直後、痛みや異変がなくても、必ず整形外科を受診しましょう。レントゲン検査では異常がないように見えても、後からむち打ち症のような症状が現れる場合があります。受診の際は、事故の状況(例えば、追突されたのか、横から衝突されたのかなど)や、痛み、違和感などを詳細に医師に伝えましょう。些細なことでも伝えることで、医師はより正確な診断を行うことができます。私の経験では、事故直後は興奮状態のため自覚症状が少なく、数日後に痛みや痺れが出てくるケースをよく見かけます。
診断と治療開始: 医師は、患者さんの話や診察、レントゲンなどの検査結果をもとに診断し、適切な治療方針を立てます。患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの治療を提供することが重要だと考えています。
治療終了まで通院: 医師の指示に従って、定期的に通院し、治療を続けましょう。治療を中断してしまうと、症状が悪化したり、後遺症が残ってしまう可能性があります。
保険会社への治療終了連絡: 治療が終了したら、保険会社に連絡しましょう。
手続き | 内容 | 担当 |
---|---|---|
警察への連絡 | 事故状況の報告、事故証明の取得 | 警察 |
保険会社への連絡 | 事故状況の報告、治療費や慰謝料などの請求 | 保険会社 |
整形外科の受診 | ケガの診断、治療 | 医師 |
交通事故による代表的なケガの種類
交通事故では、様々なケガが起こりえます。代表的なケガの種類と症状をまとめました。シートベルトの着用は安全性を高めますが、1968年のイギリスの医学雑誌の報告では、シートベルト着用者でも内臓破裂や頸部の骨折といった重傷例が報告されています。そのため、事故後は見た目上の損傷がなくても、内臓損傷の可能性も考慮した検査が必要です。
診断・検査方法と治療方針
整形外科では、様々な検査方法を用いてケガの状態を正確に診断します。問診では、事故の状況(速度、衝撃の強さ、シートベルトの着用有無など)や、現在の症状、過去の病歴などを詳しく伺います。視診・触診では、患部の腫れ、熱感、変形、圧痛などを確認します。レントゲン検査では骨折の有無を確認し、MRI検査では筋肉、靭帯、神経などの軟部組織の状態を詳細に評価します。CT検査では骨の詳細な形状や内臓の状態を調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、患者さんにとって最適な治療方針を決定します。治療には、痛み止めや湿布などの薬物療法、ギプスや装具による固定、手術、リハビリテーションなどがあります。
リハビリテーションの内容と期間
リハビリテーションは、ケガの回復を早め、後遺症を防ぐために非常に重要です。物理療法では、電気治療、温熱療法、冷却療法などで痛みや腫れを軽減します。運動療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどで関節の可動域を広げ、筋力やバランス機能を回復させます。作業療法では、日常生活動作の練習を通して、社会復帰を目指します。リハビリテーションの期間は、ケガの種類や程度、患者さんの状態によって大きく異なります。医師や理学療法士の指示に従って、無理なくリハビリテーションに取り組みましょう。
治療費・保険適用について
交通事故によるケガの治療費は、自賠責保険や任意保険が適用される場合がほとんどです。治療を受ける前に、保険会社に連絡し、手続きについて確認しておきましょう。
交通事故で起こりやすいケガと症状
交通事故は、予期せぬ瞬間に起こり、私たちの生活を一変させてしまう可能性があります。身体へのダメージはもとより、精神的なショックも大きく、今後の生活への不安に苛まれる方も少なくありません。だからこそ、交通事故によるケガの種類や症状、そして適切な治療について理解しておくことが重要です。
むち打ち症(頸椎捻挫)
むち打ち症は、交通事故、特に追突事故で非常に多く見られるケガです。追突された瞬間、頭は急激に前後に揺れ動き、鞭を打つような動きになることから「むち打ち症」と呼ばれています。この急激な動きによって、首の骨や筋肉、靭帯などが損傷し、様々な症状が現れます。
むち打ち症の特徴的な症状の一つに、事故直後には自覚症状がほとんどない、もしくは軽微であるにも関わらず、数時間後、あるいは数日後に痛みや不調が現れるという点があります。初期症状としては、首の痛みやこりはもちろんのこと、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、視力低下など、多岐にわたります。
私の経験では、20代の女性が軽い追突事故に遭い、事故直後は少し首が痛む程度だったため、そのまま帰宅しました。しかし翌日になると、首の激痛に加え、頭痛と吐き気に襲われ、来院されたケースがありました。レントゲン検査では異常が見られなかったものの、MRI検査で頸椎の靭帯損傷が確認され、むち打ち症と診断しました。
また、50代の男性で、追突事故後数週間経ってから、腕にしびれや脱力感が出現したケースもありました。これは、頸椎の神経が圧迫されたことによる症状で、これもむち打ち症の一つです。このように、むち打ち症の症状は多様であり、時間経過とともに変化することもあります。
腰椎捻挫
腰椎捻挫は、交通事故の衝撃によって腰椎(腰の骨)周辺の筋肉や靭帯が損傷するケガです。むち打ち症と同様に、事故直後には痛みを感じない場合もありますが、数日後から腰痛や下肢のしびれなどの症状が現れることがあります。
例えば、30代の男性が交通事故に遭い、その時は腰に痛みはなかったのですが、3日後から徐々に腰が痛くなり、整形外科を受診しました。レントゲン検査では骨に異常は認められませんでしたが、MRI検査で腰椎の靭帯の損傷が確認され、腰椎捻挫と診断しました。
また、高齢者の場合、骨粗鬆症があると比較的軽い衝撃でも骨折してしまう可能性があり、注意が必要です。70代の女性が軽い追突事故に遭い、腰に痛みを訴えて来院されました。レントゲン検査で腰椎の圧迫骨折が認められ、骨粗鬆症も合併していたため、入院加療となりました。
打撲・挫傷
打撲は、体に強い衝撃が加わることで、皮膚や皮下組織が損傷するケガです。挫傷は、筋肉や腱が損傷するケガを指します。交通事故では、シートベルトやハンドル、ダッシュボードなどへの衝突によって、体幹や四肢に打撲や挫傷が生じることがあります。症状としては、痛み、腫れ、皮下出血、運動痛などが挙げられます。
例えば、40代の男性が交通事故でハンドルに胸を強打し、胸部に痛みと腫れが出現しました。レントゲン検査で肋骨骨折は認められませんでしたが、打撲と診断され、痛み止めの処方と安静の指示を受けました。
また、10代の女性が交通事故でダッシュボードに膝を強打し、膝関節の痛みと腫れが出現しました。MRI検査で膝関節周囲の筋肉の挫傷と靭帯の損傷が確認され、固定とリハビリテーションによる治療を行いました。
骨折
交通事故の強い衝撃は、骨を骨折させることがあります。骨折は、骨にひびが入る不全骨折から、骨が完全に折れる完全骨折まで、様々な程度があります。症状は、強い痛み、腫れ、変形、異常可動性などです。
例えば、バイクに乗っていた20代の男性が交通事故に遭い、大腿骨を骨折しました。手術と入院が必要となり、リハビリテーションにも長い期間を要しました。
高齢者の場合、骨粗鬆症があると骨折しやすいため、特に注意が必要です。60代の女性が交通事故で手首を骨折し、骨粗鬆症の治療も併せて行いました。
腱・靭帯損傷
腱は筋肉と骨をつなぎ、靭帯は骨と骨をつなぐ組織です。交通事故の衝撃でこれらの組織が損傷することがあります。損傷の程度は部分断裂から完全断裂まで様々です。症状としては、痛み、腫れ、関節の不安定性、運動痛などが挙げられます。
例えば、サッカー選手である20代の男性が交通事故で膝前十字靭帯を断裂し、手術とリハビリテーションが必要となりました。
また、40代の女性が交通事故で足関節の靭帯を損傷し、関節の不安定性と痛みが出現しました。装具療法とリハビリテーションで治療を行いました。
内臓損傷(シートベルトによる損傷など)
交通事故では、シートベルトの着用が重要ですが、強い衝撃が加わると、シートベルト自体が原因で内臓を損傷するケースも報告されています。1968年のBritish medical journalに掲載された報告では、シートベルト着用者でも内臓破裂や頸部の骨折といった重傷例が報告されています。外傷がない場合でも、腹痛、吐き気、血尿などの症状が現れたら、内臓損傷の可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診する必要があります。
交通事故によるケガは、後遺症を残さないためにも早期の診断と適切な治療が重要です。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
交通事故後の後遺症と対処法
交通事故は、身体だけでなく心にも深い傷を残す可能性があります。特に、後遺症は日常生活や仕事に大きな支障をきたし、QOL(生活の質)を低下させる深刻な問題です。
整形外科医として、多くの交通事故患者さんを診てきましたが、後遺症の早期発見・早期治療がいかに大切かを痛感しています。
この章では、交通事故後の後遺症の種類、症状、診断の重要性、そして治療法について詳しく解説します。
後遺症の種類と症状
後遺症の種類は多岐にわたり、その症状も人それぞれです。代表的な後遺症をいくつかご紹介します。
むち打ち症(頸椎捻挫): 交通事故で最も多く発生する後遺症の一つです。追突事故などで頭部が激しく揺さぶられることで、首の筋肉や靭帯、神経などが損傷します。首の痛みやこり、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、視力低下など、実に様々な症状が現れます。事故直後は症状が軽くても、数日後から徐々に悪化することも少なくありません。30代の男性で、追突事故の翌日になってから激しい頭痛とめまいに襲われ、来院されたケースがありました。レントゲンでは異常なしでしたが、MRI検査で頸部の靭帯損傷が確認され、むち打ち症と診断しました。
腰椎捻挫: 腰の痛み、しびれ、運動制限などが主な症状です。重症の場合、下肢のしびれや麻痺、排尿・排便障害が生じることもあります。50代女性で、追突事故後、徐々に腰痛が悪化し、1週間後には足にしびれを感じるようになったケースを経験しました。レントゲンとMRI検査の結果、腰椎捻挫と診断し、安静と理学療法による治療を開始しました。
骨折: 交通事故の衝撃で、腕や脚、肋骨、脊椎などを骨折することがあります。骨折部位の痛み、腫れ、変形などが主な症状です。骨が皮膚を突き破る開放骨折の場合、出血や感染症のリスクも高まります。若い男性で、バイク事故により大腿骨を骨折し、緊急手術が必要となったケースがありました。術後はリハビリテーションを継続し、社会復帰を目指しました。
腱・靭帯損傷: 関節の痛み、腫れ、不安定感、運動制限などが主な症状です。膝や足首、肩などの関節で多く発生します。20代女性で、交通事故により膝前十字靭帯を断裂し、手術が必要となったケースがありました。術後のリハビリテーションは長期にわたり、スポーツへの復帰までにはかなりの時間を要しました。
高次脳機能障害: 頭部外傷によって脳に損傷が生じ、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、感情のコントロール障害などの症状が現れます。これらの症状は周囲から理解されにくく、社会生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害):事故の記憶がフラッシュバックする、事故に関連する場所や状況を避けるようになる、不安や恐怖感が強い、不眠などの症状が現れます。
後遺症診断の重要性
後遺症は早期に発見し、適切な治療を開始することが重要です。放置すると症状が慢性化し、日常生活に支障をきたす可能性が高まります。1968年のBritish medical journalに掲載された報告では、シートベルト着用者でも内臓破裂や頸部の骨折といった重傷例が報告されています。これは、外傷がなくても深刻な損傷を受けている可能性があることを示唆しています。
交通事故後、少しでも体に異変を感じたら、速やかに医療機関を受診しましょう。医師は、問診、視診、触診、画像検査(レントゲン、MRI、CTなど)などの精密検査を行い、後遺症の有無や程度を正確に診断します。
後遺症の治療法とリハビリテーション
後遺症の治療法は、症状の種類や程度によって異なります。
薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬を処方します。
物理療法: 温熱療法、電気刺激療法、牽引療法などを行い、痛みや炎症を軽減します。
注射療法: 痛みや炎症の原因となっている部位に直接薬剤を注射します。
手術: 骨折や靭帯断裂など、重症の場合には手術が必要となることもあります。
リハビリテーション: 理学療法士や作業療法士の指導のもと、運動療法や日常生活動作訓練などを行い、身体機能の回復を目指します。
リハビリテーションは後遺症の改善に不可欠です。医師や理学療法士と相談しながら、自分に合ったリハビリテーションプログラムを作成し、根気強く取り組むことが大切です。
後遺障害等級認定と補償
交通事故の後遺症が一定の基準を満たす場合、「後遺障害等級」が認定されます。等級は1級から14級まであり、症状の重さに応じて等級が決定されます。後遺障害等級が認定されると、自賠責保険や任意保険から慰謝料や逸失利益などが支払われます。
専門家への相談窓口
後遺症、治療、補償などについて、不安や疑問がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。整形外科医、弁護士、行政機関などに相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。
まとめ
交通事故によるケガは、初期の痛みや外傷だけでなく、後遺症にも注意が必要です。整形外科では、レントゲン、MRI、CTなどの検査を通して、骨折や靭帯損傷、むち打ち症など様々なケガの診断と治療を行います。リハビリテーションも重要で、症状に合わせた運動療法や物理療法で早期回復を目指します。治療費は自賠責保険や任意保険が適用されるケースがほとんどです。事故後は速やかに医療機関を受診し、後遺症の早期発見・治療に繋げることが大切です。些細な痛みや違和感でも、放置せずに専門医に相談しましょう。
参考文献
- Hamilton JB. “Seat-belt injuries.” British medical journal 4, no. 5629 (1968): 485-6.
追加情報
[title]: Seat-belt injuries.,
シートベルトによる外傷
【要約】
正面衝突事故において、4名全員がラップ式と斜め掛け式のシートベルトを着用していたにも関わらず、4名中3名が内臓破裂、2名が頸部の屈曲圧迫骨折を負った。
シートベルト着用者で、表在性の打撲や痛みのみを訴える交通事故被害者においては、診断が困難である。
このような症例では、内臓損傷の可能性を考慮すべきである。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5697665,
[quote_source]: and Hamilton JB. “Seat-belt injuries.” British medical journal 4, no. 5629 (1968): 485-6.