- 2025年3月2日
【医師監修】膝の痛みの種類と原因!放置が危険な症状と改善策
膝の痛み、我慢していませんか?歩く、階段を上り下りする、椅子から立ち上がるなどの日常動作で痛みを感じると、生活の質は著しく低下します。実は、膝の痛みは放置すると歩行困難になるケースもあります。
約2,500万人が罹患しているとされる変形性膝関節症をはじめ、半月板損傷や靭帯損傷など、原因は多岐にわたります。この記事では、さまざまな膝の痛みの種類と原因を解説します。放置すると危険な症状や、膝の痛みに対する主な治療方法についても医師の監修のもと詳しくご紹介します。
記事を読むことで、健康な膝を取り戻すための第一歩を踏み出せます。
膝の痛みの種類と原因
膝の痛みの種類と原因について、以下の内容を解説します。
- 変形性膝関節症|加齢による軟骨のすり減り
- 半月板損傷|スポーツや外傷による損傷
- 靭帯損傷|膝の捻挫や打撲による損傷
- 鵞足炎|ランニングなどによる膝の内側の痛み
- 滑液包炎|膝の滑液包の炎症
自分の症状と照らし合わせながら読んでみてください。
変形性膝関節症|加齢による軟骨のすり減り
変形性膝関節症は、加齢とともに膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こします。まさに「膝の老化現象」です。健康な膝では、骨と骨の間に軟骨が存在し、クッションの役割を果たしています。
加齢や肥満、O脚、激しいスポーツなどによって、軟骨が徐々にすり減ることで変形していきます。初期症状としては、動き始めや階段の上り下りで痛みを感じることが多く、しばらくすると治まるのが特徴です。病気が進行すると、安静時にも痛みが続くようになり、最終的には歩行も困難になる場合があります。
変形性膝関節症は、特に40代以降の女性に多く、膝の痛みを訴える方の約9割がこの病気に該当すると言われています。30代から発症するケースも報告されているため、年齢に関係なく注意が必要です。
半月板損傷|スポーツや外傷による損傷
半月板損傷は、膝関節内にある半月板が損傷することです。半月板は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC型の軟骨で、膝関節にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
スポーツや転倒など、膝に強い力が加わると、半月板が損傷することがあります。半月板が損傷すると、損傷の程度や場所によって痛む場所が異なり、損傷した部分が関節内で引っかかることで膝が急に動かなくなる「ロッキング」という症状が現れることもあります。
サッカーやバスケットボールなど、急な方向転換を伴うスポーツで起こりやすい損傷です。加齢とともに半月板も弱くなるため、60代以降は日常生活での何気ない動作でも損傷しやすくなります。若い頃は平気だった動作でも、年齢を重ねると膝への負担が大きくなり、損傷のリスクが高まります。
靭帯損傷|膝の捻挫や衝撃による損傷
靭帯が損傷すると、痛みだけでなく、膝のぐらつき(不安定感)や、膝が外れるような感覚を伴うこともあります。靭帯は、骨と骨をつないで関節を安定させる役割を持つ、強靭な組織です。膝関節には、主要な靭帯が4つあります。
- 前十字靭帯
- 後十字靭帯
- 内側側副靭帯
- 外側側副靭帯
スポーツ中の接触や転倒、交通事故など、強い外力が加わることで靭帯損傷は起こります。損傷の程度はさまざまで、軽度の捻挫から靭帯が完全に断裂してしまう場合まであります。
靭帯が損傷すると、膝関節が不安定になり、日常生活に支障をきたすだけでなく、将来的に変形性膝関節症のリスクを高める可能性があります。
鵞足炎|ランニングなどによる膝の内側の痛み
鵞足とは、膝の内側にある3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)が付着する部分のことです。鵞足部に炎症が起こることを鵞足炎と言います。ランニングやジャンプなど、膝を曲げ伸ばしする動作を繰り返すことで、鵞足部に負担がかかり、炎症を起こしやすくなります。
膝の内側に痛みを感じ、押すと痛みが増すのが特徴です。安静にしていれば痛みは治まりますが、運動を再開すると再び痛み出すことが多いです。
滑液包炎|膝の滑液包の炎症
滑液包に炎症が起こることで、痛みや腫れ、熱感などが生じ、膝の曲げ伸ばしが困難になることがあります。滑液包は、関節の動きをスムーズにするためのクッションの役割を果たす、滑液で満たされた小さな袋です。膝には、膝蓋骨(お皿)の前や鵞足部など、いくつかの滑液包があります。
炎症の原因は、使いすぎや外傷、感染などさまざまです。滑液包炎は、適切な治療を行えば比較的早く治癒する疾患ですが、放置すると慢性化し、日常生活に支障をきたす場合もあります。
鵞足滑液包炎(ペスアンセリン滑液包炎)は、酸素オゾン注射やプロロセラピー(増殖療法の一種で、高濃度ブドウ糖注射など)による治療法が有効です。
放置が危険な症状3選
膝の痛みにおいて、放置が危険な症状は、以下の3つです。
- 激しい痛み
- 腫れ
- 歩行障害
症状に少しでも当てはまる場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
激しい痛み
激しい痛みは、スポーツや転倒など、何らかのきっかけで突然、膝に激痛が走った場合に起こります。靭帯や半月板、あるいは骨折といった重大な損傷の可能性があります。膝をひねった際に、激痛が生じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
放置すると、日常生活に深刻な支障をきたすだけでなく、将来的に変形性膝関節症などのリスクを高める可能性があります。膝に力が入らず、立ち上がることさえ困難な場合は、靭帯損傷、特に前十字靭帯断裂の可能性があります。
鋭い痛みとともに膝が腫れてきた場合は、骨折の可能性も考えられます。応急処置としてRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行い、できるだけ早く整形外科を受診することが重要です。
腫れ
膝の痛みとともに腫れや熱感を伴う場合、関節内に炎症が生じている可能性があります。炎症の原因は、細菌感染や外傷、使いすぎなど、多岐にわたります。鵞足炎や滑液包炎は、炎症によって膝の周辺が腫れ上がり、痛みを伴います。
初期段階であれば安静や冷却、湿布などで症状が改善される場合はあります。腫れが引かない、痛みが強くなる、発熱などの症状が現れる場合は、医療機関への受診が必要です。
関節リウマチのような自己免疫疾患が原因で炎症が起こっている場合もあります。自己免疫疾患は、体の免疫システムが自分の組織を攻撃してしまう病気です。関節リウマチでは、持続的な炎症によって関節が破壊され、変形や機能障害を引き起こす可能性があります。関節リウマチが疑われる場合は、医療機関を受診して、治療を受けることが重要です。
歩行障害
膝の痛みで歩行が困難になる場合は、注意が必要です。体重をかけると痛みが増したり、膝がぐらつく、急に力が入らなくなるといった症状がある場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
歩行障害は、変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷など、さまざまな膝の疾患で起こりうる症状です。放置すると症状が進行し、日常生活に支障をきたす可能性があります。歩行障害があると、転倒のリスクも高まります。
高齢者の場合、転倒による骨折は寝たきりの原因になることもあるため、特に注意が必要です。高齢者の場合、加齢に伴う筋力低下やバランス感覚の衰えも相まって、歩行障害がより深刻な問題となる可能性があります。少しでも異変を感じたら、躊躇せずに医療機関を受診して、適切な検査と治療を受けましょう。
膝の痛みに効果的な改善策
膝の痛みに効果的な改善策は以下のとおりです。
- 薬物療法
- 理学療法
- 手術療法
薬物療法
薬物療法は、炎症や痛みを抑え、膝関節の機能を改善する治療法です。患者さんの症状や痛みの程度、原因疾患に合わせて、適切な薬剤が選択されます。主な薬物療法の種類は、以下の表のとおりです。
薬剤の種類 | 具体例 | 効果・特徴 |
内服薬 | 鎮痛剤・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | 炎症物質の生成を抑え痛みを軽減する |
内服薬 | ヒアルロン酸製剤 | 関節液の粘性を高め、関節運動をスムーズにする |
外用薬 | 塗り薬・湿布薬 | 皮膚から吸収され患部に直接作用する |
注射薬 | ステロイド注射 | 強力な抗炎症作用がある(長期使用は副作用リスクあり) |
注射薬 | ヒアルロン酸注射 | 関節の動きをスムーズにする(特に変形性膝関節症に有効) |
注射薬 | 超音波ガイド下注射 | 特定の炎症に効果的である(ペスアンセリン滑液包炎など) |
新たな治療法として、酸素オゾン注射やプロロセラピー注射は、コルチコステロイド注射と同等以上の効果を持ち、効果の持続期間が長いことも示唆する研究もあります。
理学療法
理学療法は、運動や物理療法を用いて膝関節の機能を改善し、痛みを軽減する治療法です。患者さんの状態に合わせて、適切なプログラムを作成し、実施します。主な治療法と効果については、以下の表のとおりです。
治療法 | 目的・効果 |
筋力トレーニング | 膝を支える筋肉を強化し、関節の安定性を向上させる。特に大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えることが重要になる。 |
ストレッチ | 筋肉の柔軟性を向上させ、関節の動きをスムーズにし、痛みを軽減する。硬くなった筋肉は痛みの原因となる。 |
マッサージ | 筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することで痛みを軽減する。酸素供給を改善し、疲労物質の排出を促す。 |
温熱療法 | 患部を温めて血行を促進し、慢性的な痛みに効果的である。 |
装具療法 | サポーターや装具で膝関節を安定させ、負担を軽減し痛みを抑える。 |
理学療法は、膝関節の痛みや機能障害を改善するために、多様なアプローチを組み合わせて行うことが重要です。
手術療法
手術療法は、患者さんの状態や痛みの原因に応じて、適切な術式を選択することが重要です。医師とよく相談し、手術のメリットとデメリットを理解したうえで、手術を受けるかどうかを判断しましょう。人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。重度の変形性膝関節症の患者さんに対して、痛みを軽減し、関節の機能を回復させる効果があります。
関節鏡視下手術は、関節鏡という小さなカメラを用いて、関節内部の状態を確認しながら行う手術です。損傷した半月板や靭帯の修復などを行います。低侵襲な手術であり、術後の回復も比較的早いです。
骨切り術は、骨を切って変形を矯正する手術です。O脚などの変形が強い場合に、関節にかかる負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。
まとめ
膝の痛みは種類も多く、原因もさまざまです。放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があるので、少しでも違和感を感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
「少し休めば治るだろう」と安易に考えず、ご自身の症状を理解し、適切な対応をすることで、健康な膝を維持し、快適な日常生活を送ることができます。少しでも不安な方は、専門医に相談してみましょう。
参考文献
- Babaei-Ghazani A, Eftekharsadat B, Soleymanzadeh H, ZoghAli M. Ultrasound-Guided Pes Anserine Bursitis Injection Choices: Prolotherapy or Oxygen-Ozone or Corticosteroid: A Randomized Multicenter Clinical Trial. American journal of physical medicine & rehabilitation 103, no. 4 (2024): 310-317.
- 公益財団法人日本リウマチ財団