- 2025年3月2日
【セルフチェック】膝の痛みを部位別に解説!要注意な症状を確認
膝の痛みで、お悩みではありませんか?歩行や階段の上り下り、正座など、日常生活の何気ない動作で膝に痛みを感じる場合があります。膝の痛みは、痛む場所によって原因が異なるため、正しい原因を特定することが重要です。
この記事では、膝の痛みを「前面」「内側」「外側」「裏側」の部位別に分けて考えられる原因を解説します。放置すると悪化する可能性がある注意するべき症状3選もご紹介します。膝の痛みの可能性のある原因について正しく理解し、適切な対処法を見つける一助となれば幸いです。
膝の痛み部位別セルフチェック
膝の痛みは、日常生活において大きな負担となる症状です。膝の痛みの原因は多岐にわたりますが、痛む部位によって原因をある程度絞り込めます。以下の部位ごとの痛みを解説します。
- 膝前面の痛み
- 膝内側の痛み
- 膝外側の痛み
- 膝裏の痛み
膝前面の痛み
階段の昇り降りで痛みが強くなる、膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)の周りに違和感があるなど膝の前側に痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。
- 腱の炎症:膝蓋腱炎(しつがいええん)、大腿四頭筋腱炎(だいたいしとうきんけんえん)
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
- 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
- 膝蓋骨軟化症(しつがいこつなんかしょう)
ジャンプやランニングなどのスポーツで膝に負担がかかっている方は、膝蓋腱炎や大腿四頭筋腱炎といった腱の炎症を起こしやすいです。膝蓋骨の上下にある腱に負担がかかり続けることで発症し、膝前面の痛みを引き起こします。
加齢とともに進行する変形性膝関節症も、膝前面の痛みが初期症状として現れることが多いです。歩き始めや立ち上がりといった動作で痛みを感じる場合が多く、進行すると安静時にも痛みが続くようになります。
若い方では、膝蓋骨が正常な位置からずれる膝蓋骨脱臼や、膝蓋骨軟化症なども考えられます。膝蓋骨軟化症は、膝蓋骨の裏側の軟骨がすり減って痛みを生じる疾患です。
膝内側の痛み
膝の内側が痛む場合、O脚気味の方や正座が困難な方は、以下の原因が考えられます。
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
- 内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)の損傷
膝関節の内側にある軟骨がすり減る変形性膝関節症や、内側側副靭帯の損傷で膝の内側に痛みを感じている可能性があります。内側側副靭帯は膝関節の内側を支える靭帯です。膝が外側に開きすぎるのを防ぐ役割をしています。スポーツや転倒など、膝に強い力が加わった際に損傷することがあります。
膝外側の痛み
膝の外側が痛む場合、X脚気味の方やランニング中に痛みを覚える方は、以下の原因が考えられます。
- 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)
- 外側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)の損傷
- ランナー膝
腸脛靭帯は、大腿の外側から膝の外側にかけて伸びる靭帯で、ランニングなどで膝を繰り返し曲げ伸ばしすることで炎症が起こります。外側側副靭帯は、膝関節の外側を支える靭帯です。膝が内側に曲がりすぎるのを防ぐ役割を担っており、強い衝撃や捻挫によって損傷する可能性があります。
ランナー膝は、ランニングなどによって膝の外側にある腸脛靭帯が大腿骨外側上顆(だいたいそくがいそくじょうか)と摩擦を起こし、炎症や痛みを感じる状態です。
膝裏の痛み
膝の裏側に痛みがあり、腫れやこわばり、膝の曲げ伸ばしが制限される場合は、以下の原因が考えられます。
- 膝窩嚢胞(しつかのうほう)
- 膝関節の炎症
- 後十字靭帯(こうじじんたい)損傷
- ハムストリングの肉離れ
膝窩嚢胞(ベイカー嚢胞)は、膝の裏側にできる袋状の腫瘤で、関節液が溜まることで発生します。後十字靭帯は、膝関節の奥にある靭帯で、脛骨(すねの骨)が後ろにずれるのを防ぐ役割をしていて、スポーツや交通事故などで損傷する場合があります。ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の肉離れも、膝裏の痛みの原因になります。
要注意するべき症状3選
膝の痛みは、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。初期症状を見逃さず、適切な対処をすることが大切です。以下の3つの症状が現れた場合は、深刻な膝の疾患である可能性があるため注意が必要です。
- 激しい痛みや腫れがある
- 可動域が狭くなっている
- 日常生活に支障がある
激しい痛みや腫れがある
以下の症状がある場合は、関節の内部で炎症が起きているサインです。
- 安静時でもズキズキと痛む
- 熱を持っている
- 赤く腫れている
- 痛みがどんどん強くなっている
細菌感染による化膿性関節炎(かのうせいあんせつえん)では、激しい痛みや腫れ、熱感を伴います。痛風発作(つうふうほっさ)は、尿酸の結晶が関節に溜まることで炎症を起こし、耐え難い痛みが生じる症状です。特に発熱を伴う場合は、感染症の可能性があるため緊急性が高いです。
可動域が狭くなっている
以前のように膝がスムーズに曲げ伸ばしできなくなっている場合、関節の動きが悪くなっているサインです。主な原因として以下が考えられます。
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
- 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
変形性膝関節症では、軟骨がすり減ることで関節の隙間が狭くなり、膝が伸びなくなったり、正座ができなくなったりします。半月板損傷では、損傷した半月板によって関節内に炎症が生じ、膝の動きが悪くなります。初期段階では症状が軽微な場合もありますが、進行すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があり早期治療が必要です。
日常生活に支障がある
膝の痛みは、歩くのがつらい、長時間立っていられない、階段の上り下りが困難など、日常生活に支障をきたすことがあります。日常生活に支障が出るほどの痛みを感じる原因として、以下が考えられます。
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)の進行
- 半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
- 靭帯(じんたい)損傷
変形性膝関節症が進行すると、軟骨のすり減りにより骨同士が直接ぶつかって激しい痛みが起こり、歩くことさえ困難になる場合があります。半月板損傷は、膝関節のクッションの役割を果たしている半月板を損傷させます。結果、膝の安定性が低下して、痛みや動きに制限が生じてしまいます。靭帯損傷は、スポーツや転倒などによって、痛みや腫れ、関節の不安定感を引き起こす状態です。
日常生活に支障が出ている場合は、我慢せずに医療機関を受診し、専門医の適切なアドバイスを受けるようにしましょう。早期に適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、日常生活の質を維持することができます。
膝の痛みを和らげるための対処法5選
膝の痛みを和らげるための5つの対処法と注意点を紹介します。
- アイシング
- ストレッチ
- 湿布や痛み止め
- サポーター
- 専門医の受診
アイシング
アイシングは、炎症による熱や腫れを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。特に、スポーツ後のクールダウンや膝に熱っぽさを感じるとき、痛みが強いときにおすすめの対処法です。患部を冷やすことで血管が収縮し、炎症反応が抑えられます。炎症が抑えられると痛み物質の産生も抑えられ、痛みが軽減します。
アイシングを行う際は、氷をビニール袋に入れ、タオルで包みましょう。氷嚢を使うのもおすすめです。氷を痛みがある部分に15〜20分ほど当てると、患部をクールダウンできます。
氷が冷たすぎると感じたら、タオルをもう一枚巻いたり、時間を短縮したりして調整してください。凍傷を防ぐため、同じ場所に長時間当て続けないように注意しましょう。冷たい感覚がなくなってきたら、すぐにアイシングを中断してください。
ストレッチ
ストレッチは、膝周りの筋肉をほぐし、柔軟性を高め、関節の可動域を広げることで、痛みを軽減する効果が期待できます。硬くなった筋肉は、関節の動きを制限するため、痛みを増悪させる原因です。適切なストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が改善され、関節にかかる負担を軽減できる可能性があります。
膝の痛みがある場合は、太ももの前や裏、ふくらはぎのストレッチがおすすめです。太ももの前側をストレッチする場合は、椅子に座り、片方の足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるように持ち上げてください。
太ももの裏側を伸ばすときは、床に座って片方の足を伸ばし、もう片方の足を曲げます。伸ばした足のつま先を上に持ち上げ、上体を前に倒しましょう。ふくらはぎのストレッチでは、壁に手を付いて片方の足を後ろに引き、かかとを床につけたまま、アキレス腱を伸ばします。
ストレッチを行う際は、伸びを感じる姿勢を15〜30秒ほどキープしましょう。痛みを感じる場合は、無理に伸ばしてはいけません。反動をつけずに、静止した姿勢をキープすることも重要です。
湿布や痛み止め
湿布や痛み止めは、炎症や痛みを一時的に和らげる効果が期待できます。市販薬を使用する場合は、用法・用量を守り、使用上の注意をよく読んでから使用しましょう。湿布には、冷湿布と温湿布があり、症状に合わせて使い分けます。痛みが強い場合や炎症が強い場合は冷湿布、慢性的な痛みや血行不良の場合は温湿布が効果的です。
湿布を長時間貼り続けるとかぶれなどの原因になります。適正な時間を守って使用しましょう。副作用が現れた場合は、湿布や痛み止めの使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。湿布や痛み止めは根本的な治療にはなりません。症状が長引く場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
サポーター
サポーターは、膝関節を安定させ、痛みを軽減する効果が期待できます。スポーツ時や日常生活での膝の負担を軽減したい場合に有効です。膝関節を外部からサポートすることで、関節の安定性が増し、痛みや不安定感を軽減できます。サポーターの種類は以下のとおりです。
- 膝全体を覆うタイプ
- 膝のお皿部分を覆うタイプ
- ひざ裏を支えるタイプ
サイズが合っていないサポーターは、逆効果になる場合があるため、適切なサイズを選びましょう。サポーターを長時間使用する場合は、定期的に外して膝を休ませることも重要です。
専門医の受診
セルフケアで痛みが改善しない場合や痛みが強い場合は、整形外科を受診しましょう。自己判断で治療を続けると、症状が悪化したり、慢性化したりする可能性があります。
医療機関では、レントゲン検査やMRI検査などを行い、痛みの原因を特定します。原因に応じた適切な治療を受け、早期に痛みを改善し、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
膝の痛みは部位ごとに原因が異なります。膝の痛みを感じる場所や症状に合わせて原因を探り、セルフチェックで適切な対処法を見つけましょう。激しい痛みや腫れがある場合、日常生活に支障がある場合などは、要注意な状態であるため、医療機関を受診してください。
膝の痛みの対処法には、アイシングやストレッチなどがあります。対処法を実践しても痛みが続く場合は、迷わず医療機関を受診してください。医療機関で適切な治療を受けることで、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
参考文献
Kim L Bennell, Kade L Paterson, Ben R Metcalf, Vicky Duong, Jillian Eyles, Jessica Kasza, Yuanyuan Wang, Flavia Cicuttini, Rachelle Buchbinder, Andrew Forbes, Anthony Harris, Shirley P Yu, David Connell, James Linklater, Bing Hui Wang, Win Min Oo, David J Hunter. Effect of Intra-articular Platelet-Rich Plasma vs Placebo Injection on Pain and Medial Tibial Cartilage Volume in Patients With Knee Osteoarthritis: The RESTORE Randomized Clinical Trial. JAMA, 2021, 326(20), p.2021-2030.