- 2025年3月2日
膝の痛みは自分で治せる!専門医が教える効果的な対策法
膝の痛みにお悩みではありませんか?膝の痛みへの適切な対処法を知っている人は、意外と少ないのが現状です。そこで、この記事では慢性的な膝の痛みや最近になって膝に痛みを感じ始めた方に向けて、専門医が教える膝の痛みを改善できる効果的な対策法を5つご紹介します。
すぐに始められる簡単なものから日常生活に取り入れやすい改善策まで含まれています。痛みのない快適な生活を取り戻しましょう。
自分で治せる膝の痛み対策5選
自分で改善できる膝の痛み対策は、以下の5つの方法が挙げられます。
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- アイシング
- 生活習慣の改善
- サポーター・装具
ストレッチ
ストレッチは、膝の痛みの緩和や柔軟性の向上が期待できる方法の一つです。硬くなった筋肉を柔らかくすることで、膝関節への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。以下、効果的なストレッチ方法を3つご紹介します。
①大腿四頭筋(だいたいしとうきん)ストレッチ:太ももの前のストレッチ
立った状態で、片方の足を後ろに曲げ、手で足首を持ちます。かかとをお尻に近づけるように、太ももの前を伸ばします。このとき、骨盤が前に倒れないように注意し、お腹に力を入れて安定させましょう。この姿勢を20〜30秒間維持します。反対側の足も同様に行いましょう。
②ハムストリングストレッチ:太ももの裏のストレッチ
床に座り、片方の足を伸ばし、もう片方の足を曲げます。伸ばした足のつま先を両手で持ち、息を吐きながら上体を前に倒します。太ももの裏が伸びているのを感じながら、この姿勢を20〜30秒間維持してください。無理に伸ばしすぎず、心地よいと感じる範囲で行いましょう。反対側の足も同様に行います。
③ふくらはぎのストレッチ
壁に手をついて、片方の足を後ろに引きます。後ろの足の膝を伸ばし、かかとを床につけたまま、上体を壁に近づけます。アキレス腱が伸びていることを意識しましょう。ふくらはぎが伸びているのを感じながら、この姿勢を20〜30秒間維持してください。反対側の足も同様に行います。
ストレッチは、1日に数回行うのが効果的です。お風呂上がりなど、体が温まっているときに行うとより効果的です。痛みを感じない範囲で行い、無理はしないようにしましょう。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、膝の安定性を高め、痛みを予防・改善するために重要です。特に、大腿四頭筋やハムストリングス、お尻の筋肉(中殿筋:ちゅうでんきん)を鍛えることは、膝の安定性を高め、痛みを予防・改善するために効果的です。以下、効果的な筋力トレーニング方法を2つご紹介します。
①椅子からの立ち上がり
椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばします。太ももの筋肉を意識しながら、ゆっくりと立ち上がり、再びゆっくりと座りましょう。これを10回繰り返します。慣れてきたら回数を増やし、ダンベルなどの重りを持って行うと、より効果的に筋力アップができます。
②スクワット(壁に手をついて行う)
壁に軽く手をついて、肩幅に足を開いて立ちます。椅子に座るようなイメージで、膝を曲げて腰を落とします。このとき、膝がつま先よりも前に出ないように注意しましょう。太ももが床と平行になるまで腰を落としたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。これを10回繰り返します。
筋力トレーニングは、無理のない範囲で行うことが大切です。痛みがある場合は、回数を減らす、またはトレーニングを中止しましょう。
アイシング
アイシングには、炎症や痛みを和らげる効果が期待できます。運動後や痛みを感じる際の対処法の一つで、炎症によって生じた熱や腫れを取り除き、痛みを鎮める効果があります。効果的なアイシング方法の手順は以下のとおりです。
- 氷をビニール袋に入れ、タオルで包む
- 痛む部分に15〜20分間当てる
- 氷を直接皮膚に当てないように注意する
- 感覚がなくなってきたら、アイシングを中断する
長時間冷やしすぎると凍傷の恐れがあるため、時間を守ることが大切です。
生活習慣の改善
日常生活における姿勢や体重、歩き方、靴なども、膝の痛みに大きく影響します。以下、膝の痛みを軽減するための生活習慣改善のポイントを4つご紹介します。
①正しい姿勢を保つ
猫背は、膝への負担を増大させます。日頃から正しい姿勢を意識し、背筋を伸ばすように心がけましょう。デスクワークが多い方は、椅子に深く腰掛け、背もたれを利用するなど、姿勢に気を配ることが重要です。
②適正体重を維持する
体重が増えると、膝関節にかかる負担も大きくなります。バランスの良い食事と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸や骨の健康に必要なビタミンD、カルシウムを積極的に摂取することも有効です。
③歩き方を見直す
歩くときに足を引きずったり、外股で歩いたりすると、膝に負担がかかります。かかとから着地して、つま先で地面を蹴り出すように歩くよう、正しい歩き方を意識しましょう。
④靴を見直す
かかとの高い靴や底の薄い靴は、膝への負担を増大させます。歩きやすい靴を選び、必要に応じてインソールを使用するのも良い方法です。
サポーター・装具
サポーターや装具は、膝関節をサポートし、安定性を高めることで痛みを軽減する効果が期待できます。サポート用具には、さまざまな種類があります。
テーピングは、関節を固定し、安定させる効果があります。スポーツ時などに使用すると、怪我の予防にも役立ちます。サポーターは、膝関節を圧迫することで、痛みや腫れを軽減するのが特徴です。日常生活で使いやすいものが多く、手軽に使用できます。
装具は、膝関節を支え、動きを制限することで、痛みを軽減します。変形性膝関節症などの場合に使用されることが一般的です。ご自身の症状や生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。使用する際は、必ず医師や専門家に相談し、適切なものを選びましょう。
膝の痛みで病院を受診する3つの目安
膝の痛みは、多くの人が経験する一般的な症状ですが、痛みの程度や原因は、人それぞれ異なります。膝の痛みが続く場合、早めの受診が重要です。以下の3つの症状に当てはまる場合は、整形外科の受診を検討しましょう。
- 症状が長く続いている
- 症状が悪化している
- 日常生活に支障が出ている
症状が長く続いている
1週間未満の痛みの場合は、様子を見ましょう。1〜2週間続く場合は安静にし、アイシングや市販の鎮痛剤などで様子を見てください。痛みが引かない場合は受診を検討しましょう。2週間を超えて痛みが続く場合、自然治癒が難しい原因が潜んでいる可能性があります。
代表的な疾患は、変形性膝関節症と半月板(はんげつばん)損傷です。変形性膝関節症は、加齢に伴う軟骨のすり減りによって起こります。初期段階では自覚症状が少ないことが多く、痛みが続くようになって初めて異常に気付くケースが少なくありません。
半月板損傷は、スポーツなどによる急な外傷で起こります。放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。症状が続く場合は、症状の悪化を防ぐために、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
症状が悪化している
膝の痛みが悪化している場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。昨日より痛みが強くなっている、腫れや熱がある、膝に力が入りにくいなどの症状がある場合は、病状が進行している可能性があります。特に、安静にしていても痛みが強い場合や夜間に痛みで目が覚める場合は、早急に医療機関への受診が必要です。
急に膝が動かなくなった、歩行が困難になったという場合も、一刻を争う可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。早期の受診が治療期間の短縮や後遺症のリスクの軽減につながります。
日常生活に支障が出ている
以下の症状で日常生活に支障が出ている場合は、医療機関への受診を検討しましょう。
- 歩くのがつらい
- 階段の上り下りが困難
- 正座ができない
- しゃがむのがつらい
- 靴下が履けない
- 長時間立っているのがつらい
上記の症状は、単に不便なだけでなく、仕事や趣味、人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。膝の痛みをかばいながら生活すると、腰痛や股関節痛など、他の部位に負担がかかることもあります。 痛みが広がる前に適切な対処をすることが大切です。
医療機関では、痛みの原因を特定し、適切な治療法や日常生活での注意点についてアドバイスを受けられます。早期の受診が症状の悪化を防ぎ、快適な生活につながります。 少しでも気になる症状があれば、我慢せずに相談しましょう。
膝の痛みの治療法
膝の痛みは、原因や程度によって適切な治療法が異なります。主な治療法は、以下のとおりです。
- 薬物療法
- 手術療法
- 理学療法
薬物療法
薬物療法は、炎症や痛みを抑え、症状を緩和するための治療法です。内服薬や外用薬、注射薬など、さまざまな種類があります。症状や痛みの程度や患者さんの状態に合わせて使い分けられます。
痛み止め(鎮痛薬)は、痛みを軽減するための薬です。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などがあります。非ステロイド性抗炎症薬は、炎症を抑える効果がありますが、胃腸障害などの副作用が生じる場合があるため、医師の指示に従って服用しましょう。最近では、胃への負担が少ない非ステロイド性抗炎症薬も開発されています。
外用薬(湿布)は、痛みや炎症のある部分に直接貼ることで効果を発揮します。冷感タイプと温感タイプの2種類があります。炎症が強い急性期には冷感タイプ、慢性的な痛みには温感タイプが用いられることが多いです。湿布は、内服薬に比べて副作用が少ないというメリットがありますが、かぶれなどの皮膚症状が現れる場合があるため、注意が必要です。
ヒアルロン酸注射は、関節液の主成分であるヒアルロン酸を膝関節内に直接注射する治療法です。ヒアルロン酸は関節の動きを滑らかにし、クッションの役割を果たしています。加齢やスポーツの影響でヒアルロン酸が減少すると、膝の痛みが生じやすくなります。ヒアルロン酸注射で、関節内のヒアルロン酸を補充することで痛みの緩和や関節機能の改善が期待されます。
ただし、効果には個人差があるため、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。通常、1週間に1回、計3〜5回の注射が行われます。
手術療法
保存療法で効果が見られない場合や、重度の関節症などの場合は、手術療法が検討されます。主な手術療法には、人工関節置換術や関節鏡手術、骨切り術などがあります。
人工膝関節置換術は、損傷した膝関節を人工関節に置き換える手術です。変形性膝関節症の末期などで、日常生活に支障をきたす強い痛みがある場合に適応されます。人工関節は、耐久性に優れた素材で作られており、長期間にわたって膝の機能を維持することが期待できます。
関節鏡手術は、内視鏡を用いて関節内を観察し、損傷した半月板や靭帯を修復する手術です。傷が小さく、体への負担が少ないため、回復が早いことが特徴です。スポーツによる怪我などで、関節内に損傷がある場合に適用されます。骨切り術は、膝関節への負担を軽減するため、骨の形を調整する手術です。
比較的若い患者さんで、変形性膝関節症の初期の場合に適応されることがあります。手術療法は入院が必要な場合もあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。医師とよく相談し、自分の状態に合った手術法を選択することが大切です。
理学療法
理学療法は、運動療法や物理療法、装具療法を用いて、膝関節の機能回復や痛みの軽減を目指す治療法です。専門の理学療法士の指導のもと、個々の状態に合わせたプログラムを作成し実施します。
運動療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどを通して、膝関節周辺の筋肉の柔軟性や筋力を改善し、関節の安定性を高めます。45歳以上で活動時に膝の痛みがあり、朝のこわばりが30分未満の場合、変形性膝関節症の可能性が高く、運動療法が推奨されます。
物理療法では、温熱療法や電気刺激療法、超音波療法など、物理的な刺激を用いて痛みや炎症を軽減します。温熱療法は、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があり、電気刺激療法は、痛みの伝達を抑制する効果があります。
装具療法では、サポーターや装具を用いて膝関節をサポートし、安定性を高めます。日常生活での負担を軽減し、痛みの悪化を防ぎます。理学療法は、継続して行うことが重要です。自宅でできる運動やストレッチを指導してもらい、日常生活に取り入れることで、効果を高めることができます。
まとめ
膝の痛みの改善に効果的な改善策は、すぐに始められる簡単なものから、日常生活に取り入れやすい方法までさまざまです。幅広いアプローチで痛みのない快適な生活を取り戻すために取り組めます。
ストレッチや筋力トレーニング、アイシング、生活習慣の改善やサポーター・装具の活用などの対策を実践することで、膝の痛みを緩和・予防し、快適な生活を送ることができます。痛みが続く場合や悪化している場合は、早期に医療機関を受診し、専門医の診断を受けて適切な治療を受けるようにしましょう。
参考文献
Vicky Duong, Win Min Oo, Changhai Ding, Adam J. Culvenor, David J. Hunter. Evaluation and Treatment of Knee Pain: A Review. JAMA, 2023, 330(16), p.1568-1580.