- 2025年5月22日
腰椎すべり症は治りますか?根本改善や痛み緩和の対策、治療法を解説
腰に痛みや違和感があり、もしかしたら腰椎すべり症かもしれないと不安を抱えている方はいませんか?腰椎すべり症は、腰の骨が前方にずれて神経を圧迫し、腰や足に痛みやしびれを引き起こす病気です。放置すると日常生活に支障をきたすこともあります。
この記事では、腰椎すべり症が「治る」状態についてや具体的な症状、診断方法、痛みを和らげるための対策、治療法を解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後まで読んでみてください。腰椎すべり症の理解を深め、適切な対処法を知ることで、症状との付き合い方を考えるきっかけになれば幸いです。
腰椎すべり症は治るのか?完治と慢性化の違い
腰椎すべり症の完治と慢性化の違いについて、以下の内容を解説します。
- 一時的に症状が改善する場合
- 慢性化して長期間付き合う場合
- 手術での改善が見込まれる場合
- 「治る」の定義と医師の判断基準
一時的に症状が改善する場合
軽度の腰椎すべり症の場合、保存療法によって症状が一時的に改善することがあります。保存療法には以下の種類があります。
- 安静
- 薬物療法
- 理学療法
- 装具療法
保存療法により、痛みの軽減や日常生活の質の向上が報告されています。しかし、骨のずれは残っているため、再発する可能性があります。腰に負担がかかる動作や姿勢を続けると、症状が再発しやすいため注意が必要です。
慢性化して長期間付き合う場合
腰椎すべり症は、加齢とともに進行しやすいため、慢性化する場合も少なくありません。加齢によって椎間板や靭帯、関節などが弱くなり、骨のずれが大きくなったり、神経への圧迫が強くなったりすることがあります。慢性化した場合、痛みやしびれが持続し、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
長期間にわたって症状と付き合っていく必要があるため、痛みのコントロールや生活習慣の改善が重要です。
手術での改善が見込まれる場合
保存療法で効果が見られない場合や、神経の麻痺など重篤な症状が現れている場合は、手術が検討されます。手術の主な目的は、神経の圧迫を取り除き、痛みやしびれなどの症状の改善です。手術によって症状が改善する方もいますが、すべての人が手術で症状が完全に改善するわけではありません。
手術には合併症のリスクもあるため、医師とよく相談し、手術を受けるかどうかを判断する必要があります。
「治る」の定義と医師の判断基準
腰椎すべり症において医学的に「治る」とは、症状が軽減し、日常生活に支障なく過ごせるようになる状態を指します。医師は、患者さんの症状や日常生活への影響、画像検査(レントゲンやMRI、CT)の結果などを総合的に判断し、治療方針を決定します。腰椎すべり症の治療では、早期診断と適切な治療開始が重要です。
症状が軽くても放置せず、医療機関を受診し、専門医の診察を受けるようにしてください。
腰椎すべり症の主な症状
腰椎すべり症の主な症状は以下のとおりです。
- 腰痛
- 下肢のしびれ
- 歩行障害
腰痛
腰椎すべり症の腰痛は、ずれた骨が周囲の組織を刺激したり、神経を圧迫したりすることで発生します。腰痛についての詳細は、以下のとおりです。
- 痛みの種類:鈍い痛みや鋭い痛み、ズキズキする痛み、電気のようなピリピリとした痛み
- 痛みの場所:腰の中心や左右どちらか、腰からお尻、太ももにかけて
- 痛みが強くなるとき:重い物を持ち上げたり、長時間立っていたり、腰をひねったり、中腰の姿勢を続けたりするとき
- 痛みが軽くなるとき:安静にしたり、横になったりするとき
腰痛は日常生活に大きな影響を与えます。痛みによって、仕事や家事が思うようにできなくなったり、趣味やスポーツを楽しめなくなったり、睡眠不足に陥ることもあります。
下肢のしびれ
腰椎すべり症では、腰痛だけでなく、足にしびれが出ることもあります。ずれた骨が神経根を圧迫することで、神経が支配する領域に沿って症状が現れるためです。下肢のしびれについては以下のとおりです。
- しびれの場所:太ももやふくらはぎ、足先など
- しびれの程度:軽いしびれから強いしびれまで
- その他の症状:痛みや冷感、灼熱感(焼けるような感覚)、違和感など
しびれる場所は人によって異なります。片側の足にしびれが出ることもあれば、両足にしびれが出ることもあります。しびれの症状が進行すると、感覚が鈍くなったり、全く感じなくなったりする場合もあります。下肢のしびれも、日常生活に支障をきたすことがあります。
しびれのせいで、歩くのが困難になったり、バランス感覚が低下して転倒しやすくなったり、足が動かしにくくなることもあります。
歩行障害
腰椎すべり症が進行すると、歩行障害が現れることがあります。神経圧迫によって下肢の筋力低下が起こるためです。歩行障害についての詳しい症状は、以下のとおりです。
- 間欠性跛行:しばらく歩くと足にしびれや痛みが現れ、休むとまた歩けるようになる
- 歩行困難:痛みやしびれのせいで、歩くこと自体が困難になることもある
- その他の症状:足がもつれたり、ふらついたり、つまずきやすくなる
間欠性跛行は、脊柱管狭窄症にも同様の症状がみられます。腰椎すべり症が進行すると、歩行困難で杖や歩行器などの補助具が必要になる場合もあります。歩行障害は、日常生活を著しく制限します。外出が困難になったり、買い物に行けなくなったり、仕事や趣味に支障が出たりする可能性があります。
腰椎すべり症は、加齢に伴う椎間板や靭帯の変性、スポーツによる疲労骨折などによる腰椎のずれが原因です。症状を緩和し、日常生活の質を向上させるためには、医療機関で適切な治療を受けることが重要です。
腰椎すべり症の診断と治療法
腰椎すべり症の診断方法と治療法、手術を検討する場合について、以下の内容を解説します。
- 診断方法:レントゲン・MRI・CT
- 保存療法:薬物・理学療法・装具療法
- 手術療法:減圧術・固定術・低侵襲手術
- どのような場合で手術を検討すべきか
早期発見・早期治療が重要ですので、少しでも気になることがあれば、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
診断方法:レントゲン・MRI・CT
腰椎すべり症の診断には、主にレントゲンやMRI、CTといった画像検査を用います。以下の検査を組み合わせることで、骨のずれの程度や神経の圧迫状況など、より詳細な情報を得ることができます。
- レントゲン検査:腰椎の骨の形状や並び方の検査
- MRI検査:レントゲンでは映らない椎間板や神経、靭帯などの軟部組織の状態を検査
- CT検査:断層画像を撮影
レントゲン検査は、すべり症の程度を確認する、基本的な検査です。レントゲン検査には、前かがみになったときと後ろに反らしたときのレントゲン写真を比較する「動態X線検査」があります。「動態X線検査」は、骨のずれの程度を評価するうえで重要です。レントゲン検査は、費用も比較的安価で、多くの医療機関で実施可能です。
MRI検査は、神経がどの程度圧迫されているか、炎症の有無なども評価でき、より正確な診断に役立ちます。MRI検査は、変性すべり症の原因となる椎間板や靭帯、関節の変性も評価できます。
CT検査は、レントゲン検査と同様に骨の状態を調べますが、骨のずれの程度や方向、骨折の有無などをより詳しく確認できます。CT検査は、分離すべり症における疲労骨折の診断に有用です。MRI検査と組み合わせて行うことで、より多角的な診断が可能です。
保存療法:薬物・理学療法・装具療法
腰椎すべり症の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。多くの場合、まずは保存療法から開始します。保存療法は、日常生活における姿勢や動作の改善指導と並行して行います。保存療法について、以下の表にまとめました。
治療法 | 内容・方法 | 目的・効果 |
薬物療法 | ・痛みや炎症を抑える薬を服用する ・主に非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が用いられる ・痛みが強い場合は、神経ブロック注射を行う | ・痛みのコントロール ・日常生活の質を向上 |
理学療法 | 専門家(理学療法士)の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを行う | ・腰周りの筋肉を強化 ・腰椎への負担軽減 ・症状緩和 ・再発防止 |
装具療法 | ・コルセットを装着し、腰椎の動きを制限する ・コルセットの種類や装着時間は、症状や生活状況に合わせて調整する | ・痛みを軽減 ・症状の悪化防止 |
手術療法:減圧術・固定術・低侵襲手術
保存療法で効果が見られない場合や、神経麻痺の症状が出ている場合などには、手術療法を検討します。手術療法には、大きく分けて神経の圧迫を取り除く減圧術と、ずれた骨を固定する固定術があります。手術療法について、以下の表にまとめました。
手術法 | 内容・方法 | 目的・効果 | 代表的な術式例 |
減圧術 | 圧迫されている神経を解放する手術 | ・神経の圧迫を取り除く ・痛みやしびれを緩和する | ・椎弓切除術 ・椎間板摘出術 |
固定術 | ずれた骨をボルトやプレートなどで固定する手術 | ・脊椎を安定化 ・再発防止 | ・後方椎体間固定術 ・経椎間孔腰椎椎体間融合術 |
低侵襲手術 | 内視鏡などを用いて、小さな切開で行う手術 | ・体への負担軽減 ・早期回復 | PLDD法(レーザー治療)など |
固定術には、器具を使用する方法と使用しない方法があり、それぞれ特徴があります。長期的な治療成績や患者さん満足度などを考慮すると、症例によって最適な選択が異なることが報告されています。手術方法の選択は、患者さんの年齢や症状の程度、骨の状態など多くの要因を考慮して医師と相談しながら決めることが大切です。
どのような場合で手術を検討すべきか
腰椎すべり症の手術は、保存療法で十分な効果が得られない場合や、以下の症状がある場合に検討します。
- 強い痛みやしびれが続く
- 神経症状の悪化
- 日常生活に支障が出る
- 脊椎の不安定性が強い
- 保存療法で効果がない
排尿・排便障害などの神経症状が現れたり、悪化したりする場合は、早急に手術が必要となる場合もあります。痛みやしびれにより、立つ、歩く、座るなどの動作が困難になり、日常生活に支障が出る場合は、手術を検討する必要があります。激しい痛みや日常生活への支障が手術適応の基準として報告が挙げられています。
レントゲンやMRI検査で、脊椎の不安定性が強いと診断された場合も、手術が推奨されることがあります。3か月以上の保存療法で効果がない場合は、手術を検討します。手術にはリスクも伴いますので、医師とよく相談し、メリットとデメリットを比較検討したうえで、最終的に手術を受けるかどうかの判断が大切です。
腰椎すべり症は自然治癒する病気ではありません。しかし、適切な治療を行うことで、症状が改善し、日常生活への支障が軽減する可能性があります。
痛みを和らげるための生活対策
痛みを和らげるための生活対策について、以下の内容を解説します。
- 日常生活での注意点(姿勢・動作・持ち上げ方)
- 自宅でできるストレッチ・運動
- コルセットの使い方
日常生活での注意点(姿勢・動作・持ち上げ方)
日常生活での注意点は以下のとおりです。
- 正しい姿勢を意識する
- 急な動作を避ける
- 重い物を持ち上げる際は、腰ではなく膝を使う
- 同じ姿勢を長時間続けない
立つときは、お腹に軽く力を入れて背筋を伸ばし、あごを引きます。壁に背中をつけて、後頭部や肩甲骨、お尻、かかとの4点が壁につく姿勢が理想的です。座るときは、浅く腰掛けず深く座り、背もたれに寄りかかり、足を床につけましょう。柔らかいソファや椅子では、硬めのクッションで腰を支えると、腰の負担を減らせます。
急に体をひねったり、かがんだりする動作は、腰椎に瞬間的に大きな力が加わるため、すべり症を悪化させる原因になります。動作は常にゆっくりと丁寧に行い、腰をひねる動作は特に注意が必要です。重い物を持ち上げる際は、腰を曲げて持ち上げるのではなく、膝を曲げて腰を落として持ち上げると、腰椎の負担を軽減できます。
背中を丸めずに、荷物はお腹に近づけて持ち上げることもポイントです。重い荷物はできるだけ持たず、必要な場合は台車などを使用したり、誰かに手伝ってもらったりしましょう。デスクワークや車の運転など、同じ姿勢を長時間続けると、特定の筋肉に負担がかかり続け、腰痛を悪化させる可能性があります。
30分〜1時間ごとに立ち上がったり、軽いストレッチをしたりして、腰への負担を軽減しましょう。
自宅でできるストレッチ・運動
適度な運動やストレッチは、腰周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めます。ストレッチの作用により、腰椎の安定性が増し、すべり症の症状緩和につながります。しかし、腰椎すべり症で腰に痛みがある場合、激しい運動は禁物です。無理のない範囲で、以下のストレッチや運動を行いましょう。
- 腰をひねるストレッチ
- 太ももの裏側を伸ばすストレッチ
- ウォーキングなどの軽い有酸素運動
ストレッチは、痛みのない範囲で、気持ち良いと感じる程度に行いましょう。入浴後など、体が温まっているときに行うとより効果を期待できます。ウォーキングは、腰への負担が少なく、筋力維持にも効果が期待できます。水中ウォーキングは、浮力によって腰への負担がさらに軽減されるため、おすすめです。
プールがない場合は、自宅のお風呂でゆっくりと歩くだけでも効果が期待できます。
コルセットの使い方
コルセットは、腰を支え、安定させることで痛みを軽減できる可能性があります。適切に使用することで、日常生活動作時の痛みを軽減し、活動性を高めることが期待できます。コルセットにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。医師の指示に従い、症状や体型に合ったコルセットを選びましょう。
コルセットは、腰痛を和らげるための補助的な役割のため、コルセットだけで腰椎すべり症が治るわけではありません。装着時間や装着方法については、医師の指示に従いましょう。長時間の装着は、腹筋や背筋を弱める可能性があり、かえって腰痛を悪化させる可能性があります。
根本的な治療には、日常生活での注意点を守ることや、ストレッチ、運動、薬物療法、手術療法などを組み合わせることが重要です。腰椎すべり症は自然には治りませんが、適切な治療を行うことで症状を和らげ、快適な生活を送ることは可能です。日々の対策と並行して、医療機関で専門医の診察と適切な治療も受けましょう。
まとめ
腰椎すべり症は、腰椎が前方にずれて神経を圧迫し、腰や足に痛みやしびれを起こす病気です。自然治癒はせず、骨のずれが元に戻ることはありません。腰椎すべり症の「治る」とは、症状が改善し日常生活に支障なく過ごせるようになることなので、適切な治療で効果を期待できます。
腰椎すべり症の主な症状は、腰痛や下肢のしびれ、歩行障害です。治療法には、保存療法と手術療法があり、多くの場合、保存療法で痛みの軽減が期待できます。腰椎すべり症は、適切な治療と生活習慣の改善で快適な生活を送れる可能性があります。
少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。
参考文献
- Dana-Georgiana Nedelea, Diana Elena Vulpe, Florentina Gherghiceanu, Bogdan Sorin Capitanu, Serban Dragosloveanu, Ioan Cristian Stoica. Surgical and non-surgical management of spondylolisthesis: a comprehensive review. J Med Life, 2025, 18, 3, p.196-207
- Andreas K Andresen, Mikkel Ø Andersen, Leah Y Carreon, Jan Sørensen. Cost-Effectiveness of Instrumented Versus Uninstrumented Posterolateral Fusion for Single-Level Degenerative Spondylolisthesis. Spine (Phila Pa 1976), 2025, 50, 8, p.501-507