- 2025年3月2日
膝が曲がらない原因を特定!痛みの種類と効果的な治療法
膝の痛みや曲げにくさに悩んでいませんか? 歩く、座るといった日常動作が困難になる「膝が曲がらない」状態は、健康寿命に影響を与える可能性がある問題です。原因は変形性膝関節症や靭帯損傷など、多岐にわたります。
この記事では、膝が曲がらない5つの考えられる原因と、痛みの種類や一般的な4つの治療法をご紹介します。原因を理解することで、医療機関での適切な診断や治療につながる可能性があります。
膝が曲がらない5つの原因
膝が曲がらないと、日常生活に支障が出ることがあります。歩く、座る、階段の上り下りなど、通常行っている動作が困難になり、生活の質に影響を与える可能性があります。
膝がスムーズに動かなくなって活動量が減ることで、筋力低下や体力低下を招き、要介護状態のリスクを高める可能性があります。精神的なストレスや社会的な孤立にもつながりかねません。
膝が曲がらないときに考えられる原因は、以下の5点です。
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- 関節内遊離体
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかり合うことで痛みや炎症を引き起こす病気です。
初期には、立ち上がりや歩き始め、階段の上り下りなどで膝に違和感や軽い痛みを感じることがあります。進行すると、安静時にも痛みを感じるようになり、膝の腫れや水が溜まることもあります。最終的には、膝の変形が目に見えるようになり、正座やしゃがむことさえできなくなってしまうこともあります。
変形性膝関節症は加齢とともに発症リスクが高まりますが、肥満や遺伝、激しいスポーツなども原因となります。過度な体重増加は膝関節への負担を増大させ、軟骨のすり減りを加速させるため注意が必要です。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫システムが自分の体の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
関節リウマチの特徴は、左右対称に複数の関節が炎症を起こすことです。膝関節も例外ではなく、炎症によって痛みや腫れ、こわばりが生じ、膝が曲がりにくくなります。進行すると関節が変形し、日常生活に深刻な影響を及ぼすこともあります。
関節リウマチは早期発見・早期治療が重要です。少しでも気になる症状があれば、すぐに受診し、適切な検査と治療を受けるようにしてください。
半月板損傷
半月板は大腿骨と脛骨の間にあるC型の軟骨で、膝にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。スポーツや転倒など、急激な動作や強い衝撃によって半月板が損傷することがあります。
半月板が損傷すると、膝の痛みや腫れ、引っ掛かり感などが現れ、膝が曲がりにくくなります。損傷の程度によっては、膝に水が溜まったり、ロッキングと呼ばれる膝が動かなくなる症状が現れたりすることもあります。半月板損傷は、スポーツ選手だけでなく、日常生活でも起こり得るため、注意が必要です。
靭帯損傷
靭帯は、骨と骨をつなぎ、関節を安定させる役割を持つ組織です。膝には、以下の4つの主要な靭帯があり、スポーツや転倒によって損傷することがあります。
- 前十字靭帯
- 後十字靭帯
- 内側側副靭帯
- 外側側副靭帯
靭帯が損傷すると、膝の痛みや腫れ、不安定感などが生じ、膝が曲がりにくくなります。損傷の程度によっては、日常生活に支障が出る場合もあり、手術が必要となるケースもあります。
関節内遊離体
関節内遊離体とは、関節腔内に存在する小さな骨片や軟骨片のことです。関節軟骨の損傷や骨折などによって生じ、関節の中で動くことで、膝の痛みや引っ掛かり、ロッキングといった症状を引き起こし、膝が曲がりにくくなります。骨や軟骨が消耗したり、関節が破壊されたりすると、膝が曲がりにくくなる症状が現れます。
遊離体が小さい場合は自然に消失することもありますが、症状が続く場合は手術で取り除く必要があります。関節内遊離体は、放置すると関節の炎症や変形を進行させる可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
膝が曲がらないときの痛みの種類と症状
膝が曲がらないときに同時に痛みを伴う場合、痛みの種類はさまざまです。痛みの種類を把握することは、原因を特定し、適切な治療を選択するために重要です。膝が曲がらないときの痛みの種類と症状には、以下が挙げられます。
- 鋭い痛み
- 鈍い痛み
- 腫れ
- 熱感
- クリック音、摩擦音
- 関節が引っかかる感じ
鋭い痛み
鋭い痛みは、まるでナイフで刺されたような、瞬間的にズキッとくる痛みです。階段を昇り降りするとき、立ち上がるとき、深くしゃがむときなど、膝に負担がかかる動作をしたときに感じやすい痛みです。
半月板損傷や靭帯損傷といった、膝の内部構造に損傷が起きている可能性を示唆しています。スポーツ中に急な方向転換をした際などに起こりやすい症状です。
鋭い痛みを感じた場合は、無理に動かすと悪化させてしまう可能性があるので、まずは安静にすることが重要です。速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
鈍い痛み
鈍い痛みは、鋭い痛みとは異なり、常に重苦しい痛みや違和感がある状態です。安静にしているときにも痛みを感じることがあり、じわじわと続く痛みです。
変形性膝関節症のように、関節の軟骨がすり減って骨同士がぶつかり合うことで生じる痛みで、慢性的に続きます。加齢とともに症状が現れることが多いですが、肥満や激しい運動なども原因となることがあります。
鈍い痛みは日常生活にも支障をきたすため、早期に適切な治療を受けることが大切です。適切な治療には、薬物療法やリハビリテーション、手術療法など、さまざまな方法があります。
腫れ
腫れは、膝に関節液や血液が溜まることで起こる場合があります。内出血している場合は、赤紫色に変色していることもあります。ぶつけた、捻ったなど、心当たりがあれば比較的わかりやすいですが、原因がはっきりしない腫れの場合、関節リウマチなどの病気が隠れている可能性もあります。
健康な膝は、左右対称で滑らかな形状をしています。しかし、腫れが生じると、膝の周囲が膨らみ、左右の膝を比較した際に大きさや形が異なって見えるようになります。
腫れに伴い、膝の周りの皮膚が赤くなったり、熱を持ったりする場合もあります。腫れや赤み、熱を持つなどの症状が見られる場合は、自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。
熱感
膝に触れると、熱を持っているように感じる場合は、関節内で炎症が起きている可能性があります。感染症や関節リウマチなどが原因として考えられます。熱感に加え、痛みや腫れを伴うこともあります。
通常、膝に触れても熱を感じることはありません。しかし、炎症が起こると、患部の血流が増加し、熱を帯びたように感じます。体内の免疫システムが炎症の原因となる物質と戦っている証拠でもあります。
炎症がひどい場合は、安静にして患部を冷やすことが大切です。冷やすことで、炎症の進行を抑え、痛みを和らげることができます。
クリック音、摩擦音
膝を曲げ伸ばしするときに、ポキポキ、ゴリゴリといったクリック音や摩擦音が鳴ることがあります。半月板損傷や変形性膝関節症などで、関節の動きが悪くなっていることで音が鳴ることがあります。関節内に遊離体(小さな骨片など)がある場合にも、音が鳴ることがあります。
健康な膝は、曲げ伸ばしする際に滑らかに動きます。しかし、関節内に異常があると、骨や軟骨が擦れ合い、異音が発生することがあります。
痛みがない場合でも、放置すると症状が悪化する可能性があります。音が鳴る頻度や大きさ、痛みの有無などを観察し、医療機関を受診するようにしてください。
関節が引っかかる感じ
膝を動かしたときに、関節がスムーズに動かず、引っかかるような感覚がある場合は、半月板損傷や靭帯損傷が考えられます。関節内遊離体がある場合も、引っかかりを感じることがあります。変形性膝関節症が進行すると、関節の変形によって引っかかりが生じることもあります。
健康な状態では、膝関節はスムーズに曲げ伸ばしできます。しかし、何らかの異常があると関節の動きが制限され、引っかかるような感覚が生じることがあります。関節内の構造物に損傷が生じているサインかもしれません。
膝が曲がらないときの痛みや症状を放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
膝が曲がらない場合の4つの治療法
膝の曲げ伸ばしは、健康を維持するうえで重要な機能の一つです。医療機関での適切な診断と治療によって、症状が改善する可能性があります。膝が曲がらない場合の一般的な治療法を以下の4つご紹介します。
- 薬物療法
- リハビリテーション
- 手術療法
- 装具療法
薬物療法
薬物療法は、炎症や痛みを抑え、膝の動きの改善を目指す治療法の一つです。内服薬や外用薬、注射など、さまざまな種類があり、患者さんの状態に合わせて薬剤が選択されることがあります。
炎症がある場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用薬が用いられることがあります。NSAIDsは炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで、痛みや腫れを軽減する作用があります。
関節内の炎症が強い場合には、ステロイド注射を行うこともあります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つため、短期間で炎症を抑えることができます。
変形性膝関節症などで関節の軟骨がすり減っている場合には、ヒアルロン酸注射が有効な場合があります。ヒアルロン酸は関節液の主成分であり、関節の動きを滑らかにする働きがあります。ヒアルロン酸注射を行うことで、関節のクッション性を高め、痛みの軽減が期待できます。
薬の効果や副作用には個人差があるため、医師とよく相談しながら治療を進めていくことが重要です。
リハビリテーション
リハビリテーションは、膝の機能を回復させるための重要な治療法です。専門家の指導のもと、患者さん一人ひとりの状態に合わせた運動プログラムを作成し、実施します。リハビリテーション方法の例は以下の通りです。
- 関節を動かす運動療法
- 筋肉を温めたり電気刺激を与えたりする物理療法
- 筋肉の柔軟性を高めるストレッチ
- 膝関節を支える筋肉を鍛える筋力トレーニング
リハビリテーションの効果を高めるためには、継続して行うことが重要です。焦らず、ゆっくりと時間をかけて、膝の機能を回復させていきましょう。最近では、遠隔リハビリテーションも注目されています。遠隔リハビリテーションとは、インターネットなどを利用して自宅で行うリハビリテーションのことです。
手術療法
薬物療法やリハビリテーションで効果がない場合や、症状が重い場合には、手術が必要となることもあります。手術療法には、関節鏡手術や人工膝関節置換術などがあります。
関節鏡手術は、小さな手術部位からカメラや器具を挿入し、関節内の状態を確認しながら行う手術です。半月板損傷や靭帯損傷などの治療に用いられます。手術部位が小さいため、体への負担が少ないというメリットがあります。
人工膝関節置換術は、傷ついた関節を人工関節に取り替える手術です。変形性膝関節症などで関節の変形がひどい場合に検討されます。手術によって痛みを軽減し、膝の機能を改善することができます。
手術療法は最終手段として考えられます。手術を受けるかどうかは、医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解したうえで判断しましょう。
装具療法
装具療法は、膝サポーターや杖などの装具を使って、膝関節を保護したり、動きをサポートしたりする治療法です。
膝サポーターは、膝関節を固定することで、痛みの軽減や関節の安定性を高める可能性があります。スポーツ時や日常生活で、膝への負担を軽減したい場合に使用されます。さまざまな種類のサポーターがあるので、医療機関で相談し、症状や目的に合ったものを選びましょう。
杖は、体重を分散させることで、膝への負担を軽減します。歩くのがつらいときや、長い時間歩く必要があるときに使用すると効果的です。杖を使うことで、膝への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。
歩行器は、歩行を補助する器具で、より安定した歩行を可能にします。足腰が弱っている方や、バランスを崩しやすい方に適しています。歩行器を使うことで、転倒のリスクを減らし、安全に歩くことができます。
装具療法は、他の治療法と組み合わせて行われることが多いです。自分に合った装具を使うことで、日常生活を快適に送ることができます。
まとめ
膝が曲がらない原因は、変形性膝関節症や靭帯損傷などさまざまで、痛みの種類や症状も多岐に渡ります。日常生活への影響が考えられるため、症状がある場合は医療機関を受診することが推奨されます。
薬物療法やリハビリテーション、手術療法、装具療法は代表的な治療法の一例ですが、適切な治療法は個人の状態により異なります。症状に応じた専門的な診断と治療を受けることが大切です。
参考文献
J M Soucie, C Wang, A Forsyth, S Funk, M Denny, K E Roach, D Boone. Range of motion measurements: reference values and a database for comparison studies. Haemophilia, 2011, 17(3), p.500-507