変形性膝関節症の運動療法で痛みを軽減！専門家が教える方法

膝の痛みが日常生活に影響を与えることがあります。歩行や階段の上り下り、スポーツ活動などに支障をきたす場合、変形性膝関節症が原因の可能性があります。変形性膝関節症の痛みを軽減し、日常生活を取り戻す効果的な方法として注目されているのが運動療法です。

米国退役軍人省の研究では、段階的な運動プログラムが症状改善に効果的であると報告されています。この記事では、変形性膝関節症のための運動療法を具体例とともにわかりやすく解説します。｢もう膝の痛みに耐えられない｣と感じている方も、適切な運動療法によって症状が改善し、日常生活の質が向上する可能性があります。

変形性膝関節症の運動療法の種類と特徴4選

変形性膝関節症の運動療法は、大きく分けて以下の4種類があります。

• 有酸素運動：全身の持久力を向上させる
• 筋力トレーニング：膝の安定性を向上させる
• ストレッチ：関節の柔軟性を高める
• バランス訓練：転倒を予防し膝への負担を軽減させる

それぞれの特徴を理解し、ご自身の状態に合った運動療法を段階的に進めていきましょう。

有酸素運動の効果と具体例

有酸素運動は心臓と肺の機能を高め、全身の持久力を向上させる効果が期待できます。同時に、血行を促進し、膝関節の炎症を抑える可能性も示唆されています。おすすめの有酸素運動は以下の3つです。

• ウォーキング：10分程度から始め、最終的には30分程度を目安に行う
• 水中ウォーキング：水深は胸あたりまでが適切。体の冷えすぎに注意する
• サイクリング：筋力アップに効果的。膝が過度に曲がらないように注意する

週に3回以上行うのが理想です。痛みが強い場合は無理せず休憩し、治まってから再開しましょう。

筋力トレーニングの重要性と方法

筋力トレーニングは膝関節を支える筋肉を強化し、膝の安定性を高めるために重要です。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)と後ろの筋肉(ハムストリングス)、そしてふくらはぎの筋肉を鍛えると効果的です。これらの筋肉が衰えると、膝関節への負担が増加し、痛みが悪化しやすくなります。

おすすめの筋力トレーニングは以下の4つです。

• スクワット：膝がつま先よりも前に出ないように注意し、背筋を伸ばす
• レッグエクステンション：椅子に座り、足をまっすぐ伸ばす
• レッグカール：うつ伏せになり、膝を曲げてかかとをお尻に近づける
• カーフレイズ：つま先立ちをする。段差を利用すると効果的

10回を1セットとして、1日に2〜3セット行うと効果的です。負荷をかけすぎると逆効果になる場合があるので、無理のない範囲で行いましょう。

ストレッチの役割と実践方法

ストレッチは膝周りの筋肉を伸ばし、関節の柔軟性を高める効果があります。膝の動きがスムーズになり、痛みの軽減が期待できます。筋肉の緊張がほぐれ、血行が促進されるため、痛みの緩和にもつながります。

• 太もも前のストレッチ：立った状態で片方の足首を持ち、かかとをお尻に近づける
• 太もも後ろのストレッチ：床に座り片方の足を伸ばし、もう片方の足を曲げて、伸ばした足に近づけるように上体を倒す
• ふくらはぎのストレッチ：壁に手をつき、片方の足を後ろに引いて、かかとを地面につけたままアキレス腱を伸ばす

1回30秒程度、呼吸を止めずに、ゆっくりと筋肉を伸ばしましょう。朝起きたときやお風呂上がりなど、身体が温まっているときに行うと効果的です。

バランス訓練で期待できる効果

バランス訓練で身体のバランス能力を高めることで、転倒を予防し、膝への負担を軽減する効果が期待できます。変形性膝関節症は、膝の痛みによってバランス能力が低下しやすいです。転倒のリスクを減らし、安全な日常生活を目指しましょう。

• 片足立ち：慣れてきたら支えなしで行う。目を閉じると難易度が上がる
• バランスボール：最初はボールに軽く触れる程度から始める

1日に数回行うのが効果的です。日常生活での動作も安定し、転倒のリスクを減らします。

運動療法で痛みを軽減する方法と注意点

変形性膝関節症の痛みは、患者さんによっては日常生活に大きな支障をきたします。階段の上り下り、椅子からの立ち上がり、そして歩くことさえも苦痛になり、不安や焦りを感じている方も少なくありません。適切な運動療法を行うことで、痛みの軽減や動きの改善が期待でき、より活動的な生活を送れる可能性があります。

運動療法で痛みを軽減する方法と注意点について、解説します。

正しいフォームの維持とけがの防止

運動療法は、適切な方法で行わなければ、かえって膝への負担を増大させ、症状を悪化させる可能性があります。効果を最大限に引き出し、けがを防ぐためには、正しいフォームの維持が重要です。

スクワットは、膝がつま先よりも前に出てしまうと、膝関節への負担が大きくなってしまいます。膝がつま先よりも前に出ないように、椅子に座るように腰を落としましょう。

ウォーキングも、何気なく歩いているだけでは十分な効果が得られません。かえって膝を痛めてしまう可能性があります。背筋を伸ばし、かかとから着地し、つま先で地面を蹴り出すように意識することで、膝への負担を軽減し、効率的な運動ができます。

運動中は鏡でご自身のフォームを確認したり、トレーナーや理学療法士など専門家から指導を受けたりすることをおすすめします。自己流で行うのではなく、専門家のアドバイスで、より安全かつ効果的な運動療法が期待できます。

運動頻度と強度を意識する方法

運動療法の効果を高めるためには、適切な頻度と強度で運動を行う必要があります。「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉があるように、運動の頻度や強度が高すぎると、膝への負担が大きくなり、痛みが増す可能性が高まります。逆に、頻度や強度が低すぎると、十分な効果が得られない場合があります。

一般的には、週に2〜3回、1回あたり30分程度の運動が推奨されます。息が少し上がる程度から始め、徐々に強度を上げましょう。無理なく続けられるペースが重要です。変形性膝関節症は慢性疾患であり、長期的な視点で運動療法に取り組む必要があるからです。

痛みのサインを見逃さないためのチェックポイント

運動療法中は、ご自身の身体の状態に常に気を配り、痛みのサインを見逃さないようにしましょう。痛みは身体からのSOSであり、決して無視してはいけません。無理を続けると、症状がさらに悪化する可能性があります。痛みを感じたらすぐに運動を中止し、休息しましょう。

運動後、痛みが長引いたり、腫れや熱感などの症状が現れたりする場合は、速やかに医療機関を受診してください。自己判断で運動療法を続けると、症状が悪化し、日常生活にさらに大きな支障をきたす可能性があります。

変形性膝関節症は一般的に時間とともに変化する可能性がある疾患です。症状に気づいたら医師に相談し、適切な対応を行いましょう。

運動療法で効果を実感できるまでの期間と併用できる治療法

変形性膝関節症の運動療法は、効果が現れるまでの期間や、他の治療法との併用について疑問を持つ方も多いです。運動療法で効果を実感できるまでの期間と併用できる治療法について解説します。

効果が現れるまでの平均的な期間

個人差はありますが、一般的には数週間〜数か月かけて徐々に効果が現れてきます。アメリカの退役軍人省の研究では、9か月後には一定の改善が報告されています。

最初の3か月はインターネットベースの運動プログラムを行い、効果が不十分な場合は、次の3か月で週2回の身体活動コーチング電話を追加しました。さらに効果が不十分な場合は、最後の3か月で対面での理学療法訪問を行います。

研究事例を参考に、段階的に運動療法の強度やサポート体制を調整していくことで、症状の改善が期待できます。個人差はありますが、3か月で変化を感じられなくても、6か月後、9か月後と徐々に変化を感じられる方もいます。医師や理学療法士と相談しながら継続することをおすすめします。

医療機関でのサポートと併用可能な治療法

医師や理学療法士は、患者さんの症状や身体の状態に合わせて、適切な運動プログラムを作成し、指導してくれます。医師の指導のもと他の治療法と併用することで、症状の改善が期待できる場合があります。

患者さんの状態に応じて、薬物療法やヒアルロン酸注射、装具療法、温熱療法、冷却療法などを提案する場合があります。運動療法の効果を補完する役割を果たし、より早く、より確実に症状の改善を目指します。どのような治療法が適しているかは、医師にご相談ください。

まとめ

運動療法によって、変形性膝関節症の痛みの軽減や、動きの改善が期待できます。有酸素運動や筋力トレーニング、ストレッチ、バランス訓練などがあり、組み合わせて行うとより効果的です。ご自身の状態に合った運動を選び、正しいフォームで無理なく行いましょう。痛みを感じたらすぐに中止し、医療機関を受診してください。

効果が感じられるには数か月かかる場合もあり、継続することが大切です。医師や理学療法士の指導を受けながら、薬物療法やヒアルロン酸注射などの他の治療法との併用も検討しましょう。多くの患者さんが運動療法によって痛みを軽減し、生活の質を向上させています。ご自身に合った運動療法について、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

参考文献

Kelli D Allen, Sandra Woolson, Helen M Hoenig, Dennis Bongiorni, James Byrd, Kevin Caves, Katherine S Hall, Bryan Heiderscheit, Nancy Jo Hodges, Kim M Huffman, Miriam C Morey, Shalini Ramasunder, Herbert Severson, Courtney Van Houtven, Lauren M Abbate, Cynthia J Coffman. Stepped Exercise Program for Patients With Knee Osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial. Ann Intern Med, 2021, 174(3), p.298-307.