• 2025年3月9日

20代で発症する変形性膝関節症の原因と若年層向け治療方法を解説

変形性膝関節症は、高齢者の病気と思われがちですが、20代でも発症するケースが増えています。スポーツや過度な負担、遺伝、肥満などが原因として挙げられており、将来への不安を抱えている方もいます。

この記事では、20代で発症する変形性膝関節症の原因と、若年層向けの治療方法を解説します。 膝関節への負担を軽減する運動療法や薬物療法、手術療法といった治療方法に加え、生活習慣の改善策も提案します。 将来にわたって健康な膝を維持し、アクティブな生活を続けるために今すぐできる予防策と対策をわかりやすくお伝えします。

20代で発症する変形性膝関節症の原因

20代で発症する変形性膝関節症について、以下の3つの原因を解説します。

  • 外的要因:スポーツや過度な負担
  • 内的要因:遺伝や肥満の影響
  • 筋力不足が引き起こす膝への負担

外的要因:スポーツや過度な負担

20代で変形性膝関節症を発症する原因として最も多いのは、スポーツや日常生活での過度な負担です。ジャンプや急な方向転換、ストップ動作など、膝関節に大きな負荷がかかる動きが多いスポーツをしている方は注意が必要です。動作を繰り返すことで、膝関節内の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じやすくなります。膝への負担が大きい代表的なスポーツは以下のとおりです。

  • バスケットボール
  • バレーボール
  • サッカー
  • バドミントン

ランニングやジョギングも、間違ったフォームで行うと膝を痛めるリスクが高まります。健康な日本人64膝を対象とした研究では、膝の回転の可動域(内反・外反)は、内反のほうが外反より大きく(内反3.6°±1.3°、外反2.9°±1.0°、p<0.0001)、平均してわずかに内側に動きやすいという結果が出ています。

膝関節は内側に過度に捻じれる動きに弱いことを示唆しています。正しいフォームで運動を行い、適切な休息とケアを心がけることが重要です。過去に膝のけがをした経験がある方も、変形性膝関節症のリスクが高まります。

半月板損傷や靭帯損傷などのけがを放置すると、関節の構造が不安定になり、軟骨の摩耗を促進してしまう可能性があります。けがは早期に適切な治療を受け、後遺症を残さないようにすることが大切です。

内的要因:遺伝や肥満の影響

変形性膝関節症の発症には、遺伝的な要因も影響します。両親や祖父母に変形性膝関節症の方がいると、遺伝の影響で発症リスクが上がるとされており、特に膝軟骨の代謝や炎症に関与する遺伝子が関係している可能性が示唆されています。遺伝的要因は自分でコントロールできませんが、他のリスク要因を管理することで発症の予防ができます。

肥満も、変形性膝関節症の大きな要因の一つです。体重が増加すると、膝関節にかかる負担が大きくなり、軟骨のすり減りが加速します。20代は食生活の乱れや運動不足によって体重が増加しやすいため、バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持することが重要です。

筋力不足が引き起こす膝への負担

膝関節は、周囲の筋肉によって支えられています。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は膝の安定性を保つうえで重要な役割を果たしています。運動不足やデスクワーク中心の生活を送っていると、筋肉が弱くなり、膝関節への負担が増加します。

筋力が不足すると、膝関節が不安定になり、わずかな衝撃でも軟骨が損傷しやすくなります。関節の動きが悪くなり、痛みや炎症を引き起こす原因にもなります。

若年層向けの治療方法3つ

若年層向けの治療方法は以下のとおりです。

  • 保存療法:運動療法・薬物療法
  • 手術療法の種類と適応
  • リハビリテーション

保存療法:運動療法・薬物療法

保存療法は、膝関節への負担を最小限に抑えながら、痛みや炎症をコントロールし、日常生活の質を向上させるための第一歩です。大きく分けて2つの保存療法があります。運動療法は、膝関節を支える筋肉を鍛え、関節の柔軟性を高めることが目的です。具体的には以下の方法があります。

  • ストレッチ
    筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げる効果があります。太ももの前後の筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス)、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)などを中心にストレッチを行いましょう。入浴後など、体が温まっているときに行うと効果的です。
  • 筋力トレーニング
    膝関節を支える筋肉を強化することで、関節への負担を軽減し、安定性を向上させます。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は重要です。スクワットやレッグプレスなどが有効ですが、痛みが出ない範囲で、正しいフォームで行うことが大切です。椅子に座ったまま行うレッグエクステンションなども、膝への負担が少ないためおすすめです。
  • 水中運動
    水中では浮力が働くため、膝関節への負担が軽減されます。水中ウォーキングや水中エアロビクスなどは、痛みを気にせずに行える有酸素運動として最適です。プールでの水中運動は、膝への負担が少ないだけでなく、全身の血行促進にも効果があります。

薬物療法では、痛みや炎症を抑えるために以下のような薬剤を使用します。

  • 鎮痛薬
    痛みを軽減する薬です。痛みの程度に合わせて、適切な種類の鎮痛薬が処方されます。
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
    痛みと炎症を抑える薬です。内服薬だけでなく、外用薬(湿布や塗り薬)もあります。胃腸障害などの副作用が出ることがありますので、医師の指示に従って服用することが重要です。
  • ヒアルロン酸注射
    関節液の粘性を高め、関節の動きを滑らかにすることを目的とした注射です。関節内の潤滑油の役割を果たすヒアルロン酸を直接関節内に注射することで、痛みの軽減や関節の動きの改善が期待できる場合があります。

保存療法は単独で行うよりも、組み合わせて行うことでより効果的です。薬物療法で痛みをコントロールしながら運動療法を行うことで、安全かつ効果的にリハビリを進めることができます。

手術療法の種類と適応

保存療法で十分な効果が得られない場合、あるいは症状が進行している場合には、手術療法が選択肢として検討されることがあります。20代では人工関節置換術はあまり行われず、以下の手術療法が行われることが多いです。

  • 関節鏡手術
    関節内に小さなカメラを挿入し、損傷した半月板や軟骨などを修復する手術です。傷口が小さいため、体への負担が少ないというメリットがあります。入院期間も短く、早期の社会復帰が可能です。
  • 高位脛骨骨切り術
    脛骨(すねの骨)を切って角度を変え、膝関節への負担を軽減する手術です。変形性膝関節症の進行を遅らせる効果が期待できます。O脚が強い場合に有効な手術法です。
  • 単顆性膝関節置換術(UKA)
    損傷が一部に限局している場合に、損傷部分のみを人工関節に置き換える手術です。リハビリ期間が短く、スポーツ活動への復帰も比較的容易です。人工関節置換術と比較して、より多くの自分の骨を残すことができるため、将来的な再置換術の選択肢が広がるという利点もあります。

どの手術が適しているかは、症状の程度や患者さんのライフスタイル、年齢、将来的な活動レベルの希望などによって異なるので、医師とよく相談し、ご自身の状況に最適な治療方法を選択することが重要です。

リハビリテーション

保存療法や手術療法後には、リハビリテーションが重要です。理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニング、歩行訓練などを行い、膝関節の機能回復を目指します。リハビリテーションは、痛みの軽減だけでなく、再発予防にもつながりますので、医師や理学療法士と相談しながら、積極的に取り組みましょう。

変形性膝関節症の予防策と生活上の注意点3つ

変形性膝関節症は進行性の病気ですが、適切なケアを行うことで進行を遅らせ、痛みを和らげ、快適な生活を送ることが可能です。変形性膝関節症の予防策と生活上の注意点について、以下の内容を解説します。

  • 筋力トレーニングで膝を守る
  • 適正体重の維持
  • 日常生活での膝への負担を軽減する工夫

筋力トレーニングで膝を守る

変形性膝関節症の予防・改善には、膝関節周辺の筋肉がしっかりと膝関節を支えることで、膝への負担を軽減し、安定性を高めることができます。以下の種類の筋肉があります。

  • 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)
    膝を伸ばす筋肉で、階段を上る、立ち上がるといった動作で使われます。
  • ハムストリングス(太ももの後ろの筋肉)
    膝を曲げる筋肉で、歩行やランニング時に地面を蹴り出す際に重要な役割を担います。
  • 臀筋群(おしりの筋肉)
    股関節の動きに関与し、膝関節の安定性にも寄与します。

最初は軽い負荷から始め、徐々に強度を上げていくようにしましょう。自己流で行うと、かえって膝を痛めてしまう可能性があるので、専門家の指導を受けるのがおすすめです。

適正体重の維持

体重増加は膝関節への負担を増加させるため、体重管理は重要です。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持しましょう。BMI(体格指数)を目安にするのも有効です。BMIは、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)で計算できます。

日常生活での膝への負担を軽減する工夫

日常生活の中で、膝への負担を軽減するための工夫を意識することも重要です。以下の点に注意しましょう。

  • 正しい姿勢を保つ
    猫背や反り腰は、身体の重心がずれ、膝への負担を増大させるため、正しい姿勢を意識しましょう。
  • 重いものを持ち上げるときは膝を曲げる
    重いものを持ち上げるときは、腰ではなく膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。腰に負担がかかり、姿勢が悪くなるのを防ぎます。
  • 椅子に座るときは膝の角度に注意
    椅子に座るときは、膝が90度程度になるようにしましょう。膝の角度が狭すぎると、膝関節への負担が増加します。
  • 階段の上り下り
    手すりを使うことや一段ずつゆっくりと上り下りするなど、膝への負担を軽減しましょう。急な階段の上り下りは避け、エレベーターやエスカレーターを利用するのも一つの方法です。
  • 和式トイレを避ける
    和式トイレは膝への負担が大きいため、洋式トイレを使用するようにしましょう。どうしても和式トイレを使用しなければならない場合は、手すりなどを利用し、ゆっくりと動作を行うように心がけましょう。
  • 適切な靴を選ぶ
    クッション性があり、足に合った靴を履きましょう。ハイヒールや底の薄い靴は、膝への負担を増大させる可能性があります。

まとめ

20代の変形性膝関節症は、適切な治療方法の選択と生活習慣の改善によって、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させる可能性があります。医師と相談し自分に合った治療方法を選びましょう。

運動療法や薬物療法で症状をコントロールしながら、無理のない範囲でリハビリに取り組むことが大切です。手術が必要な場合でも、関節鏡手術など膝関節を温存する手術があるため、前向きに考えましょう。日常生活でも、膝への負担を減らす工夫を取り入れることが重要です。

適正体重の維持や正しい姿勢、負担の少ない運動など、できることから始めてみましょう。焦らず、少しずつ改善を目指すことが大切です。

参考文献

Akagawa M, Saito H, Takahashi Y, Tsukamoto H, Abe K, Iwamoto Y, Yoshikawa T, Abe T, Kijima H, Kasukawa Y, Nozaka K, Miyakoshi N. Varus-valgus native knee laxity in extension displays an almost rectangular pattern and does not correlate with lower limb alignment. PLoS One, 2024 Nov 12;19(11):e0313402.

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