• 2025年1月8日
  • 2025年3月23日

ACL損傷の治療方法を徹底解説!手術と保存療法の違い、リハビリの進め方まで

「膝がブチッといった」「膝がガクッとなる」こんな経験はありませんか?それは、スポーツや日常生活動作で膝関節内の前十字靭帯(ACL)が損傷したサインかもしれません。ACLは膝の安定性を保つ重要な靭帯で、損傷すると日常生活に大きな支障をきたすことも。この記事では、ACL損傷のメカニズム、症状、診断方法から、保存療法・手術療法といった治療法、そして術後のリハビリテーションや再発予防まで、ACL損傷に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。スポーツ復帰を目指すアスリートから、日常生活での不安を抱える方まで、ぜひご自身の状況と照らし合わせて、適切な知識を身につけてください。

当院では、ACL損傷をはじめ、膝や肩、肘、骨、交通事故、スポーツ障害などさまざまな診療を行っています。専門的な診療とリハビリテーションを提供し、患者様一人ひとりに最適な治療プランを提案しています。詳しい診療内容やアクセス方法については、公式サイトをご覧ください。
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ACL損傷とは?原因・症状・診断方法

膝の「ブチッ」という音、経験したことはありませんか?それは、スポーツ中の激しい動きや日常生活での何気ない動作で、膝関節内の前十字靭帯(ACL)が損傷したサインかもしれません。ACLは、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぎ、膝の安定性を保つ重要な靭帯です。この靭帯が損傷すると、膝がグラグラしたり、痛みが出たり、歩くのが難しくなるなど、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

ACL損傷のメカニズム

ACLは、膝関節内で大腿骨と脛骨をつなぎ、膝が前後にぐらつかないように安定させる役割を担っています。特に、ジャンプの着地時や急な方向転換時など、膝に大きな負荷がかかる際に、ACLは重要な役割を果たします。

例えば、バスケットボールの選手がジャンプして着地する際、膝はわずかに内側に入り込むような動きをします。この時、ACLは脛骨が前にずれすぎるのを防ぎ、膝関節の安定性を保っています。しかし、着地の際にバランスを崩したり、足が地面に引っかかったりすると、膝に過剰な力が加わり、ACLが損傷してしまうことがあります。

スポーツ活動以外で起こるACL損傷

ACL損傷はスポーツ活動中に発生することが多いですが、日常生活でも起こりうるということを忘れてはいけません。階段を踏み外したり、雪道で滑って転倒したりした際に、膝を強く捻ってしまうとACL損傷を起こす可能性があります。

ACL損傷の主な症状3つ

ACL損傷の主な症状は、「痛み」「不安定感」「歩行困難」の3つです。受傷直後は、膝に激痛が走り、歩行が困難になることもあります。その後、数時間から数日かけて膝が腫れてくる場合もあります。また、「膝がガクッとなる」「膝が抜ける感じがする」といった不安定感を感じることもあります。

ACL損傷による痛みや不安定感は、膝関節の他のトラブルとも共通することがあります。半月板損傷や膝関節捻挫、変形性膝関節症なども膝の痛みや腫れを引き起こす可能性があります。

膝の痛みや腫れが突然起こった場合、原因を特定し、適切な対応を取ることが大切です。膝の痛みの原因や対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>膝の痛みと腫れが突然!考えられる原因と対処法を徹底解説

ACL損傷の診断方法:身体診察と画像検査

ACL損傷の診断には、医師による身体診察と画像検査が不可欠です。身体診察では、医師が膝の腫れや圧痛、可動域制限などを確認します。さらに、ラクマンテストや前方引き出しテストといった特殊な検査を行い、ACLの損傷の有無や程度を判断します。これらのテストでは、医師が患者さんの膝を特定の方向に動かして、ACLの安定性を評価します。

画像検査では、レントゲン検査とMRI検査が行われます。レントゲン検査では、骨折の有無を確認します。MRI検査では、ACLの状態をより詳細に評価できます。ACLが断裂している場合は、MRI画像上でACLが途切れている様子が確認できます。また、MRI検査では、半月板や他の靭帯など、ACL以外の組織の損傷の有無も確認できます。

早期診断と適切な治療のために、少しでも気になる症状があれば、迷わず整形外科を受診することをお勧めします。

ACL損傷に対する主な治療方法3つ

膝の靭帯の中でも、前十字靭帯(ACL)は膝関節の安定性に大きく関わる重要な組織です。ACL損傷は、スポーツ活動中に起こることが多いですが、日常生活での転倒や事故などでも発生する可能性があります。損傷の程度は部分断裂から完全断裂まで様々で、それに応じて適切な治療法を選択する必要があります。大きく分けて、保存療法と手術療法の2つの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。今回は、それぞれの治療法の特徴や適応、高齢者の注意点について詳しく解説していきます。

保存療法:装具やリハビリテーションによる機能回復

保存療法は、手術を行わずにACL損傷を治療する方法です。主な対象は、日常生活での支障が少なく、スポーツへの復帰を急がない方や、高齢者の方、あるいは比較的軽度の損傷の方です。

保存療法のメリットは、手術による身体への負担や入院の必要がないことです。日常生活への復帰も比較的早く、費用も抑えられます。しかし、ACLが完全に治癒するわけではないため、再発のリスクは残ります。また、スポーツ、特に高いレベルの競技への復帰を目指す場合は、保存療法では十分な安定性を得られない可能性があります。

手術療法:再建術の種類と特徴

手術療法は、損傷したACLを再建する治療法です。自分の体の他の部分から腱を採取し、それをACLの代わりに移植します。この自家移植組織としては、ハムストリング腱、膝蓋腱、大腿四頭筋腱などが用いられます。

手術療法のメリットは、ACLを再建することで関節の安定性が向上し、スポーツ復帰の可能性が高くなることです。また、再発のリスクも低くなります。しかし、手術による身体への負担や入院、リハビリテーション期間が必要となるため、日常生活への復帰には時間がかかります。費用も保存療法に比べて高額になります。

かつては二重束再建術が行われることもありましたが、現在では解剖学に基づいた単束再建が主流となっています。単束再建は、ACLの本来の構造により近い形で再建するため、より自然な膝の動きを再現できるとされています。

手術療法:縫合術のメリット・デメリット

ACL損傷に対する縫合術は、断裂した靭帯を直接縫い合わせる手術法です。部分断裂で、断裂端が明瞭な場合に限り、縫合術が選択される可能性があります。しかし、縫合術だけでは十分な安定性が得られないことが多く、現在ではあまり行われていません。特に、完全断裂の場合には、縫合術は適応がないと考えられています。

手術と保存、どちらが最適?選択のポイント

ACL損傷に対する最適な治療法は、損傷の程度、年齢、活動レベル、スポーツへの復帰の希望など、患者さん一人ひとりの状況によって異なります。

若い方でスポーツへの復帰を希望する方や、重度のACL損傷の場合は、手術療法が選択されることが多いです。一方、高齢の方や、日常生活に支障が少ない軽度の損傷の場合は、保存療法が選択されることもあります。

治療法の選択に迷う場合は、医師とよく相談し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。セカンドオピニオンを求めることも有効です。前十字靭帯(ACL)断裂は、若くて活動的な人に最も多く発生し、長期的な身体的および精神的な悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な治療選択が重要です。

高齢者のACL損傷に対する治療の注意点

高齢者の場合、若い方に比べて骨や筋肉が弱くなっていたり、他の病気を持っている場合も多いです。そのため、手術による負担を考慮し、保存療法が選択されることが多いです。

高齢者で手術を行う場合も、合併症のリスクを最小限にするために、慎重な術式選択と術後の管理が必要です。高齢者に合わせたリハビリテーション計画も重要になります。

ACL損傷の術後リハビリと復帰に向けて

ACL損傷の手術は、日常生活やスポーツへの復帰への第一歩です。しかし、手術が成功したとしても、その後のリハビリテーションが非常に重要です。リハビリテーションは、まるで家を建てるようなもの。土台作りから始め、徐々に壁を立て、屋根を葺いていくように、段階的に進めていく必要があります。焦りは禁物です。適切なリハビリテーションを行うことで、再発を防ぎ、より安定した膝関節を手に入れることができるのです。

術後リハビリテーションの内容と期間

ACL損傷の術後リハビリテーションは、大きく分けて3つの時期に分かれます。初期、中期、後期で、それぞれ目標が異なり、行うトレーニングも変わってきます。

初期リハビリテーション(術後0~2ヶ月):この時期の目標は、痛みと腫れの軽減、そして膝の曲げ伸ばしの範囲を広げることです。安静を保ちながら、アイシングや電気治療などで炎症を抑え、徐々に膝を動かす練習を始めます。例えば、膝を軽く曲げ伸ばしする運動や、太ももの筋肉を軽く収縮させる運動などです。

中期リハビリテーション(術後2~6ヶ月):この時期の目標は、筋力強化と日常生活動作の回復です。スクワットや階段昇降など、日常生活で必要な動作を練習しながら、膝周りの筋肉を鍛えていきます。

後期リハビリテーション(術後6ヶ月~):この時期の目標は、スポーツへの復帰です。ランニングやジャンプ、急な方向転換など、スポーツで必要な動作を練習します。復帰時期の目安は、患者さんの状態やスポーツの種類によって異なりますが、一般的には6ヶ月から1年程度かかります。

スポーツへの復帰時期の目安

スポーツへの復帰時期は、損傷の程度やスポーツの種類、そして何よりもリハビリテーションの進捗状況によって大きく異なります。焦って復帰すると再発のリスクが高まるため、医師や理学療法士と相談しながら慎重に判断することが重要です。

例えば、ジョギングなどの比較的軽い運動であれば、術後3ヶ月程度で再開できる場合もあります。一方、バスケットボールやサッカーなど、膝に大きな負担がかかるスポーツの場合は、9ヶ月から1年以上かかることもあります。

再発予防のための対策

ACL損傷は、一度治癒しても再発する可能性があります。特に、スポーツ活動中に再発しやすい傾向があります。再発を防ぐためには、以下の対策が重要です。

  • 筋力トレーニング: 特に、太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)を鍛えることで、膝関節の安定性を高めることができます。
  • 神経筋トレーニング: バランスボールなど不安定な足場の上でトレーニングを行うことで、バランス能力や反応速度を向上させることができます。
  • プライオメトリクストレーニング: ジャンプなどの瞬発的な動きを伴うトレーニングで、スポーツに必要な筋力やパワーを養うことができます。

これらのトレーニングは、リハビリテーション期間中だけでなく、スポーツ復帰後も継続して行うことが重要です。

日常生活での注意点

日常生活でも、膝に負担をかけすぎないように注意することが大切です。具体的には、以下のような点に注意しましょう。

  • 階段の上り下りでは、手すりを使う。
  • 和式トイレはなるべく使用しない。
  • 正座は避ける。
  • 重い荷物を持つ際は、カートなどを使用する。

前十字靭帯(ACL)断裂は、若くて活動的な人に最も多く発生し、長期的な身体的および精神的な悪影響を及ぼす可能性があります。だからこそ、適切な治療とリハビリテーション、そして再発予防への意識が重要となるのです。

膝の痛みや違和感を感じる場合、ACL損傷だけでなく、半月板損傷や変形性膝関節症など、さまざまな原因も考えられます。膝のどの部位が痛むのか、どのような動作で症状が出るのかをセルフチェックすることで、より適切な対策を講じることができます。

膝の痛みが気になる方は、以下の記事で部位別の痛みの原因や注意すべき症状をチェックしてみてください。
>>【セルフチェック】膝の痛みを部位別に解説!要注意な症状を確認

まとめ

ACL損傷は、スポーツだけでなく日常生活でも起こりうる怪我です。痛みや不安定感、歩行困難などの症状が現れたら、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。治療法は、保存療法と手術療法があり、年齢や活動レベル、スポーツ復帰の希望などを考慮して選択します。若い方やスポーツ復帰を目指す方は手術療法を選択するケースが多いですが、高齢者の方などは保存療法を選択するケースもあります。いずれの場合も、医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。手術後のリハビリテーションも重要で、焦らず段階的に進めることで再発を防ぎ、日常生活やスポーツへの復帰を目指しましょう。日常生活でも膝への負担を軽減する工夫を心がけ、再発予防に努めましょう。

膝の痛みはACL損傷だけでなく、半月板損傷や変形性膝関節症、靭帯損傷などさまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。痛みの種類や発生状況によっては、早期に医療機関を受診することで症状の悪化を防ぎ、適切な治療を受けることができます。

膝の痛みの種類や原因、放置が危険な症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>【医師監修】膝の痛みの種類と原因!放置が危険な症状と改善策

参考文献

Stephanie R Filbay, Hege Grindem. Evidence-based recommendations for the management of anterior cruciate ligament (ACL) rupture. Best Pract Res Clin Rheumatol, 2019, 33(1), p.33-47.

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