- 2025年3月23日
膝の痛みが治らない原因を徹底解明!専門医が教える改善のポイント
膝の痛みは、約2500万人の日本人が抱える悩みです。階段の昇り降りや、夜寝ているときでも痛みを感じることがあります。加齢だけが原因ではなく、スポーツや日常生活の何気ない動作、肥満も膝の痛みにつながることがあります。
この記事では、膝の痛みが治らない原因を専門医の視点から紐解き、具体的な症状や、ご家庭でできる初期対応、改善のためのポイントを詳しく解説します。膝の痛みと真剣に向き合い、快適な日常生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
膝の痛みが治らない5つの原因
膝の痛みが治らない5つの原因をご紹介します。
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 靭帯損傷
- 関節リウマチ
- 痛風
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ったり、変形したりすることで痛みや炎症を引き起こす病気です。加齢とともに発症しやすいため、中高年の方に多く見られます。日本には約2500万人の患者さんがいると推定されており、国民の約5人に1人が変形性膝関節症に悩まされている計算になります。
初期症状としては、立ち上がり時や歩き始めなどに痛みを感じることが多く、正座が難しくなることもあります。日常生活では、椅子から立ち上がるときに声が出てしまう、和式トイレの使用がつらくなってきた、などの変化に気付く方もいます。症状が進むと、階段の昇り降りや、夜寝ているときにも痛みを感じるようになります。
最終的にはO脚の変形や歩行困難に至るケースもあり、日常生活に大きな影響を与えます。変形性膝関節症の痛みは、骨の変形だけでなく、炎症や関節内の異常な血管の増加も関係しています。ある研究では、膝関節変形性関節症の患者さんにおいて、歩行時の膝の外反角度が大きい(O脚の度合いが強い)ほど、痛みを感じやすい傾向があるという結果が報告されています。
半月板損傷
半月板は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にあるC型の軟骨で、膝関節にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。激しいスポーツや急な方向転換など、膝をひねる動作によって損傷することがあります。加齢に伴う変性が原因となることもあります。
半月板が損傷すると、膝の曲げ伸ばし時に痛みや引っ掛かり、クリック音を感じることがあります。膝が動かなくなる「ロッキング」という症状や、膝に水が溜まることもあります。
靭帯損傷
靭帯は、骨と骨をつなぎとめる役割を持つ丈夫な線維状の組織です。膝関節には、前十字靭帯や後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯の4つの主要な靭帯があります。スポーツ外傷や交通事故など、強い力が膝に加わることによって靭帯が損傷することがあります。
靭帯が損傷すると、損傷した瞬間に強い痛みと「ブチッ」というような断裂音を感じることがあります。断裂音後、膝の腫れや関節が不安定になるなどの症状が現れます。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫システムの異常によって関節に炎症が起こる病気です。膝だけでなく、手や足の複数の関節に痛みや腫れ、こわばり、熱感などが現れることが特徴です。朝起きたときに、手や指の関節がこわばって動かしにくいという症状がよく見られます。関節リウマチは進行性の病気であるため、早期診断と適切な治療が重要です。
痛風
痛風は、血液中の尿酸値が高くなることで、関節に尿酸の結晶が溜まり、激しい炎症を起こす病気です。痛風発作が起こると、突然の激しい痛みや腫れ、熱感を伴います。特に足の親指の付け根に起こりやすいですが、膝関節に起こることもあります。
痛風は、食生活の欧米化や生活習慣の変化に伴い、患者数が増加している病気です。肥満も痛風のリスクを高める要因の一つです。
膝の痛みの症状4つのタイプ
痛みを感じる場所によって、疑われる原因が異なるため、ご自身の症状を正しく理解することが重要です。痛む場所別で、症状の特徴や考えられる原因について、以下の4つを解説します。
- 膝の内側が痛む
- 膝の外側が痛む
- 膝全体が痛む
- 膝のお皿が痛む
膝の内側が痛む
膝の内側が痛む場合、鵞足炎(がそくえん)や変形性膝関節症といった病気が考えられます。膝の内側にある縫工筋や薄筋、半腱様筋という3つの筋肉の腱が合流する部分を鵞足と呼びます。鵞足炎は、鵞足部に炎症が起こる状態です。ランニングやジャンプのように、膝を繰り返し曲げ伸ばしする動作によって発症しやすく、運動後に痛みが強くなる傾向があります。
運動のしすぎや、急に激しい運動を始めたときにも起こりやすいです。痛みが続くときは、無理をせず休んだり、整形外科を受診することが大切です。
膝の外側が痛む
膝の外側が痛む場合、腸脛靭帯炎(ランナー膝)の可能性が高いです。腸脛靭帯は大腿の外側から膝の外側にかけて伸びている丈夫な結合組織で、ランニングやジャンプ、急な方向転換などで膝を繰り返し曲げ伸ばしする際に、大腿骨外側上顆という骨の突出した部分と擦れ合うことで炎症を起こし、痛みが発生します。
ランニングをする人に多く見られることから「ランナー膝」と呼ばれることがあります。腸脛靭帯炎の特徴として、運動中に痛みが強くなり、安静にすると軽減することが挙げられます。痛みを予防するためには、大腿の外側の筋肉のストレッチが有効で、ランニングフォームの改善や適切なシューズ選びも重要です。
膝全体が痛む
膝全体が痛む場合は、変形性膝関節症に加えて、関節リウマチや痛風などの病気が疑われます。これらの病気では、関節の中に炎症が起きて、関節液がたまり、腫れや熱っぽさが出ることがあります。膝の動きが悪くなったり、曲げ伸ばしがしづらくなったりすることもあります。
左右両方の膝が同時に痛むこともあるので、いつもと違う痛みを感じたら、無理をせず医療機関へ相談しましょう。
膝のお皿が痛む
膝のお皿が痛む場合、膝蓋大腿関節症やオスグッド・シュラッター病などが考えられます。膝蓋大腿関節症は、膝のお皿の裏側の軟骨がすり減ったり、炎症を起こしたりすることで痛みが生じる病気です。階段の昇り降りや椅子から立ち上がるときなどに痛みを感じやすいという特徴があります。
オスグッド・シュラッター病は、成長期の子供に多く見られる病気です。膝のお皿の下にある脛骨粗面という骨の突起部分が、太ももの筋肉の牽引力によって炎症を起こし、痛みや腫れが生じます。ジャンプやダッシュなど、膝に負担がかかるスポーツをしている子供に多く発症します。膝の痛みは多様な原因によって引き起こされます。
ご自身の症状を理解し、適切な対処法や治療法を見つけることが、一日でも早く痛みから解放されるための近道です。痛みが長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることをおすすめします。
膝の痛みを改善するためのポイント6つ
膝の痛みを改善するためのポイントは以下の6つです。
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 適正体重の維持
- 膝に負担をかけない生活習慣
- 適切な靴選び
- 定期的な医療機関への受診
ストレッチ
膝の痛みを改善し、再発を予防するためには、膝周辺の筋肉の柔軟性と筋力を維持することが重要です。ストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進することで、痛みの緩和や関節の可動域の改善が期待できます。太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)や裏側の筋肉(ハムストリングス)、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)は、膝の動きに大きく関与しているため、重点的にストレッチを行いましょう。
大腿四頭筋のストレッチは、立位または座位で行います。立位の場合は、片足を後ろに曲げ、かかとをお尻に近づけるように持ち上げ、その姿勢を30秒間保持します。座位の場合は、椅子に座り、片方の足を前に伸ばし、もう片方の足を軽く曲げ、伸ばした足の大腿部に手を当てて、軽く前に倒れるようにします。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、膝関節を支える筋肉を強化することで、関節の安定性を高め、痛みを軽減する効果が期待できます。スクワットやレッグレイズなどのトレーニングは、自宅でも簡単に行うことができます。スクワットは、足を肩幅に開いて立ち、椅子に座るように腰を落とす動作を繰り返します。膝がつま先よりも前に出ないように注意することが大切です。
レッグレイズは、以下の手順で行います。
- 仰向けに寝て、片足をまっすぐ伸ばす
- もう片方の足を軽く曲げる
- 伸ばした足を床から10〜15cmほど持ち上げて、その姿勢を5秒間保持する
筋力トレーニングは、10回を1セットとして、1日に2〜3セット行うと効果的です。なお、無理のない範囲で行うことが大切です。痛みを感じる場合は、すぐに中止し、医師に相談するようにしてください。
適正体重の維持
適正体重を維持することは、膝の痛みを改善し、再発を予防するために重要です。肥満は、変形性膝関節症の大きな要因の一つです。体重が増えることで、膝関節への負担が増大し、軟骨のすり減りが加速され、炎症が悪化しやすくなります。
バランスの良い食事や規則正しい生活、適度な運動を心がけ、健康的な体重管理を行いましょう。野菜や果物を中心とした食事、適度な有酸素運動は、体重管理だけでなく、全身の健康維持にもつながります。
膝に負担をかけない生活習慣
日常生活の中で、無意識に膝に負担をかけている場合が多くあります。膝の痛みを改善するためには、日常生活の中で膝への負担を意識的に減らす工夫が重要です。
重い荷物を持つときは、両手でバランスよく持ち、膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。正座やあぐらを長時間続けることは、膝関節に大きな負担がかかるため、なるべく避けるべきです。椅子に座る際には、足を組むのではなく、膝と足首を90度に曲げた状態を保つように心がけてください。
階段の昇り降りも、手すりを使うなどして、膝への負担を軽減しましょう。和式トイレではなく、洋式トイレを使用することも、膝への負担を軽減するうえで有効です。日常生活における小さな工夫の積み重ねが、膝の痛みを改善し、将来の膝の健康を守ることへとつながります。
適切な靴選び
適切な靴選びも、膝の痛みを改善し、予防するために重要です。靴は、歩行時の衝撃を吸収し、膝関節への負担を軽減する役割を果たしています。靴を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- クッション性:衝撃吸収性に優れた素材が使われているか確認する
- かかとの高さ:3〜5cm程度の安定したヒールを選ぶ
- サイズ:つま先に1cm程度の余裕があるものを選ぶ
- 靴底:滑りにくい素材で、溝が深く刻まれているものが安全に使える
定期的な医療機関への受診
膝の痛みが長引く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、自己判断で治療を続けるのではなく、医療機関を受診することが重要です。人工膝関節置換術後も前方膝痛が続くケースは、部品の位置ずれや感染症、摩耗、骨吸収、不安定性、緩みなど、多様な原因が考えられます。
医師の診察によって痛みの原因を特定し、より効果的な治療を受けることができます。レントゲン検査やMRI検査などで、変形性膝関節症や半月板損傷といった病気が隠れていないかを確認することも重要です。
まとめ
膝の痛みの原因は、変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷、関節リウマチ、痛風などがあります。痛みを感じる場所によって、疑われる原因が異なります。原因を理解し、適切な対処法を見つけることが大切です。
ストレッチや筋トレ、適正体重の維持、膝に負担をかけない生活習慣、適切な靴選びなど、改善策をぜひ試してみてください。痛みが長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることで、痛みの原因を特定し、より効果的な治療と痛みの改善が期待できます。
参考文献
- Mouhanad M. El-Othmani, Abdul K. Zalikha, Roshan P. Shah. Anterior Knee Pain After Total Knee Arthroplasty: A Critical Review of Peripatellar Variables. JBJS Reviews, 2023 Jul 21;11(7).
- Laura Hutchison, Jane Grayson, Claire Hiller, Nicole D’Souza, Sarah Kobayashi, Milena Simic. Relationship Between Knee Biomechanics and Pain in People With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Arthritis Care & Research (Hoboken), 2023 Jun;75(6):1351-1361.
- 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 日本整形外科学会, 2023.