- 2025年5月21日
ぎっくり腰の治し方を徹底解説|応急処置・予防策・受診の目安を解説
ぎっくり腰によって激しい痛みを感じ、身動きがとれなくなることがあります。日本腰痛学会の報告では日本人の85%が生涯に一度は腰痛を経験するとされ、ぎっくり腰(急性腰痛症)も含まれます。ぎっくり腰は、適切な知識によって痛みが軽減され、早期回復が期待できる場合があります。
この記事では、ぎっくり腰の症状や原因、応急処置、再発を防ぐ生活習慣、医療機関受診のタイミングについて解説します。具体的な対処法を学ぶことでぎっくり腰の不安を解消して、快適な日常生活を取り戻しましょう。
ぎっくり腰の治し方|市販薬・医療の選び方と活用法
ぎっくり腰の治療には、症状の程度に応じた適切な対処が重要です。軽度な場合は市販薬や冷却によるセルフケアが有効ですが、痛みが強い場合は医療機関を受診しましょう。ぎっくり腰の治療法について、以下の4点を解説します。
- 痛みが軽い場合のセルフケアと市販薬の使い方
- コルセットの活用と注意点
- 医療機関での治療法
- 病院での検査と診察の流れ
痛みが軽い場合のセルフケアと市販薬の使い方
自宅でセルフケアをする際は無理に動かず、氷のうや保冷剤を使って患部を冷やしましょう。1回15〜20分を目安に冷却することで、炎症を抑える効果が期待できます。市販の鎮痛薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で痛みや炎症緩和が期待できます。空腹時の服用や過剰摂取は避け、使用上の注意を守りましょう。
服用の際は薬剤師や医師に相談することをおすすめします。最初は冷湿布を使用し、痛みがやわらいできたら温湿布に切り替えることで血行促進効果が期待できます。痛みが改善するまでの1〜2日は安静にし、少しずつ体を動かしましょう。
コルセットの活用と注意点
コルセットで腰を支えることで動作時の不安定さが軽減し、ぎっくり腰の痛みをやわらげる効果が期待できます。立ち上がるときや歩くときに不安がある人は、腰をサポートすることで動作が楽になり、再発防止につながる可能性があります。使い方には注意が必要で、締めすぎると血流が悪くなることがあります。
コルセットを長時間・長期間常用すると腰まわりの筋肉が弱くなり、再発リスクが高まることもあります。使用は必要なときに限り、できるだけ控えめにしましょう。医療機関で適切なサイズや装着方法を相談するのが理想的です。
医療機関での治療法
市販薬やセルフケアで痛みが軽減しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。整形外科では痛みの程度を評価し、必要に応じてブロック注射を行うことがあります。神経の周辺に薬剤を注入し、炎症や痛みを抑える治療です。
医療処置を早期に受けることで、症状の悪化や慢性化を防げるという報告があります。理学療法(リハビリ)で行われる主な治療は、下記のとおりです。
- 電気療法
- 温熱療法
- 軽いストレッチ
専門家のサポートを受けることによって、痛みの緩和と機能回復が期待できます。自己判断で長引かせる前に、適切な治療を受けましょう。
病院での検査と診察の流れ
ぎっくり腰は単なる筋肉の炎症ではなく、椎間板ヘルニアや圧迫骨折などが原因の場合があります。子供の30%が腰痛を経験するという報告もあり、大人と同じように注意が必要です。症状が3日以上続く場合や足のしびれや脱力感がある場合は、整形外科や脊椎外科などの専門医療機関で診察を受けましょう。
病院では問診で症状の経緯や痛みの性質を確認し、必要に応じてレントゲンやMRI、CTなどの画像検査が行われます。椎骨のずれや神経の圧迫がないかを詳しくチェックし、保存療法や手術を検討することもあります。ぎっくり腰の多くは軽症で済みますが、自己判断せず専門医の診断を仰ぐことをおすすめします。
ぎっくり腰になったときの応急処置
ぎっくり腰はくしゃみや咳、重い物を持ち上げるなど、些細な動作が引き金となることがあります。応急処置の注意点は以下のとおりです。
- まずは安静にして患部を冷やす
- 横向き・膝を軽く曲げた体勢をとる
- 動けるようになるまでは無理をしない
腰に鋭い痛みが走り不安を感じる方が多くいますが、落ち着いて適切な応急処置を行いましょう。
まずは安静にして患部を冷やす
ぎっくり腰の初期には、損傷した組織から炎症物質が放出されます。炎症反応は体を回復しようとする自然な働きですが、痛みや腫れの原因にもなります。ぎっくり腰になった直後は、患部を冷やすことが重要です。炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。
保冷剤や氷嚢(ひょうのう)をタオルに包み、1時間ごとに10〜15分患部に当てて冷やすと効果的です。凍傷の恐れがあるため、長時間続けたり皮膚を直接冷やしたりすることは避けましょう。痛みが強い場合は無理に動かず、楽な姿勢で安静にすることが重要です。
横向き・膝を軽く曲げた体勢をとる
ぎっくり腰になった場合は、横向きに寝て膝を軽く曲げた体勢がおすすめです。腰への負担を最小限に抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。抱き枕やクッションなどを膝の間に挟むと、楽な姿勢を保つことができます。左右どちらの向きが楽か試し、痛みが少ないほうを選びましょう。
仰向けで寝ると腰が反りやすく、痛みが悪化することがあります。うつぶせも腰をひねる動作が必要になるため、避けましょう。
動けるようになるまでは無理をしない
ぎっくり腰になった直後は動けないほどの激痛でも、時間が経つと動けるようになることがあります。ぎっくり腰は筋肉や靭帯などの組織に負担がかかり、炎症や損傷が生じている状態です。無理に動くと損傷を悪化させ、回復が遅れる可能性があります。
痛みが軽減しても1〜2日は安静を続け、損傷した組織の修復を促すことが大切です。痛みが治まってきたら、徐々に体を動かす範囲を広げることをおすすめします。重い物を持ち上げることや激しい運動は避け、日常生活で腰に負担がかからないように意識することが大切です。
適切な応急処置と安静によって、1〜2週間程度で症状が軽減することがありますが、数か月以上痛みが続くケースもあります。痛みが長引く場合は他の病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。
ぎっくり腰で病院に行くべきタイミング
ぎっくり腰で病院に行くべきタイミングは以下のとおりです。
- 痛みが3日以上続く・悪化している場合
- 足にしびれや力が入らないなどの神経症状
- 再発を繰り返している場合
深刻な症状を見逃さないために、ご自身の状態を適切に判断しましょう。
痛みが3日以上続く・悪化している場合
ぎっくり腰の痛みは、通常であれば数日〜1週間程度で軽減する可能性があります。3日以上経過しても痛みが引かない、悪化している場合は、医療機関への受診をおすすめします。医療機関では症状に合わせ、以下の治療が行われることがあります。
- 痛み止め
- 湿布の処方
- 物理療法(温熱療法や電気刺激療法など)
- 運動療法
痛みが継続する場合、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などが起きている可能性があります。放置すると慢性的な腰痛に移行し、神経症状を引き起こす場合があります。早期に適切な診断と治療を受けることで症状の悪化を防ぎ、日常生活への早期復帰を目指すことができます。
足にしびれや力が入らないなどの神経症状
足のしびれや脱力、感覚低下などの神経症状が現れた場合、椎間板ヘルニアなどが原因で神経が圧迫されている可能性があります。具体的な神経症状は、以下のとおりです。
- しびれ:足先やふくらはぎにしびれがあり、左右で感覚に差がある
- 筋力低下:足に力が入らず、歩行や立ち上がりが難しい
- 排尿・排便障害:排尿・排便の異常があり、コントロールができない
神経症状が現れた場合、早めに医療機関を受診ましょう。MRI検査などで神経の圧迫の程度を診断し、薬物療法や神経ブロック注射、手術など、症状に合わせた治療が期待できます。
再発を繰り返している場合
ぎっくり腰は、一度経験すると再発しやすい傾向があります。組織が完全に回復しないまま日常生活に戻り、同じ動作や姿勢を繰り返すことで腰に負担がかかっている場合があります。医療機関では、再発予防のために以下のアドバイスを行うことがあります。
- 姿勢指導
- 運動療法
- ストレッチ指導
ぎっくり腰を繰り返す場合は、医療機関を受診し原因を探ることが重要です。姿勢の悪さや筋肉のアンバランス、動作の癖などを見極めることで、再発を防げる可能性があります。日常生活の中で意識的に取り組める対策は、以下のとおりです。
- 生活習慣の見直し:正しい姿勢を意識し、長時間同じ姿勢を避ける
- 運動療法:腹筋・背筋を鍛えて体幹を強化する
- ストレッチ:太ももや股関節の柔軟性を高める
再発防止と予防のための生活習慣
再発防止と予防のための生活習慣で大切なのは、以下の4つです。
- 正しい姿勢と体の使い方を心がける
- 適度な運動やストレッチで体幹を強化する
- 同じ姿勢を長時間続けず、こまめに動く
- 睡眠とストレス管理を意識する
日常的に腰への負担を減らす工夫をしましょう。
正しい姿勢と体の使い方を心がける
ぎっくり腰を繰り返さず腰の健康を保つためには、正しい姿勢を意識することが大切です。耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線にそろっている状態は、腰への負担軽減が期待できます。正しい姿勢を保つために意識したい点は、以下のとおりです。
姿勢 | 意識すること | 注意点 |
立っているとき | お腹に軽く力を入れ、背筋を伸ばす | 猫背にならない |
座っているとき | 椅子に深く腰掛け、背もたれを利用する | 足を組まない |
重い物を持ち上げるとき | 膝を曲げ、物を体に近づける | 一気に力を入れたり、無理に持ち上げたりしない |
くしゃみや咳をするとき | 上体を起こして胸を張り、腰を反らす | 急に体をひねったり、かがんだりしない |
布団から起き上がるときや洗面所で顔を洗うときなど、無意識に腰を曲げてしまうことがあるので注意しましょう。靴の中敷きを使うことで、日常の動作による衝撃を緩和することもおすすめです。
適度な運動やストレッチで体幹を強化する
体幹を鍛えることで腰回りの筋力が強化され、ぎっくり腰の再発予防が期待できます。腰の安定性を高める主な体幹トレーニングは、以下のとおりです。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- 水泳
- 腹筋や背筋を鍛える
ストレッチもぎっくり腰の予防に効果が期待できます。筋肉の柔軟性を高めることで腰の可動域が広がり、急な動きによる負担軽減が期待できます。腰痛予防に効果が期待できるストレッチは、以下のとおりです。
- キャットキャメル
- 膝抱え体操
- 太もも伸ばし体操
太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)が硬いと骨盤が傾き、腰に負担がかかりやすくなる場合があります。ハムストリングスのストレッチを毎日行い、柔軟性を保つことがおすすめです。
同じ姿勢を長時間続けず、こまめに動く
長時間同じ姿勢を続けると腰の筋肉に負担がかかり、ぎっくり腰のリスクを高める可能性があります。デスクワークなどで長時間座りっぱなしの場合は、1時間ごとに立ち上がり、軽い運動やストレッチを行うようにしましょう。簡単にできるストレッチは以下のとおりです。
- 肩回し
- 首回し
- 屈伸運動
こまめに体を動かすことで血行が促進され、筋肉の緊張をほぐす効果が期待できます。
睡眠とストレス管理を意識する
睡眠不足やストレスは免疫機能を低下させ、ぎっくり腰を含むさまざまなリスクを高める可能性があります。以下を参考に、自分なりのリラックス方法を見つけてみましょう。
- 趣味を楽しむ
- 軽い運動をする
- 好きな音楽を聴く
- 友人や家族と話す
規則正しい生活を送り、心身ともにリラックスできる時間を確保することで、ぎっくり腰の再発予防が期待できます。質の良い睡眠を十分にとり、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。
まとめ
ぎっくり腰によって突然の痛みを感じて不安になる方がいますが、適切な応急処置とケアで早期回復が期待できる場合があります。痛みが軽い場合は患部の冷却や市販薬、コルセットなどのセルフケアによって症状の軽減が期待できます。楽な姿勢を保ち、動けるようになっても無理な動作は避けましょう。
痛みが続く、悪化する、神経症状が現れる、再発を繰り返す場合は、医療機関の受診をおすすめします。再発予防には正しい姿勢や適度な運動、ストレッチ、こまめな休息、睡眠とストレス管理が効果的です。日頃から腰への負担を軽減するよう心がけ、快適な毎日を送りましょう。
参考文献
- Cooper CG, Crider K, McDevitt AW, Arnold EA, Shaheen HM, Kaygisiz B, Ebadi S, Henschke N, Forogh B, Nakhostin Ansari N, van Tulder MW, Babaei-Ghazani A, Fallah E, Hochheim M, Ramm P, Amelung V, Mekonnen TH, Sheehan LR, Di Donato M, Collie A, Russell G, Parreira P, Heymans MW, Esmail R, Koes BW, Poquet N, Lin CC, Maher CG, Friedrich JM, Stecco A, Anderson DJ, Bonaldi L, Fontanella CG, Stecco C, Pirri C, Clewley DJ, Andersen JC. Effect of physical therapy timing on patient-reported outcomes for individuals with acute low back pain: A systematic review with meta-analysis of randomized controlled trials. Physical Therapy, 2023, 103, 5, p.1-15
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- 一般社団法人 日本腰痛学会 :腰痛は国民愁訴で最も多く、一生のうち85%の国民が経験する